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君の瞳に恋してる (1) - 虫と瞳の編 -

これだけ読めば大丈夫! そういうつもりで書きました。

前回は獣の病、獣化という呪いの発症条件について結論めいた仮説を出したこともあり、今回は上位者という存在、並びに劇中掲げられた「瞳」という概念についての結論じみたものを書かせて頂こうかと思います。今まで書いてきたことの纏め的な記事でもあるので、「とりあえずこれだけ読んどきゃ大丈夫」くらいまで持っていきたい。実際にそうなってるかは知らない。

苗床

瞳は卵

手短に行きたくて仕方がない。「瞳」とは何か。「卵」です。劇中の探求者たちが夢見る「高次の叡智を正しく認識できる思考能力」という捉え方は、間違ってはいないようですが、あくまで人間の領域(レベル)の話であり、本質ではないかもしれない。では一体なんの「卵」だというのか。

本編のヒントを盛大に放流したと思われる DLC。漁村なる場所ではメンシスの悪夢のように丸々とした何かが散乱していました。洞窟の中、アホかと思うほど敷き詰められたナメクジに似た生き物、「ゴースの先触れ」と思われる軟体生物が産んだ卵でしょう。瞳、瞳うるせえメンシスの悪夢に似た光景を DLC で見せた理由を考えるなら、これぞ「『瞳』は『卵』」という啓示なのだと、都合よく受け取ってみます。

メンシスの瞳
漁村の卵

私、魔女のキキです。左がメンシスの瞳。右が漁村の卵。……こうして並べると言うほど似てないかもしれない。

「苗床」
この契約にある者は、空仰ぐ星輪の幹となり「苗床」として内に精霊を住まわせる
ゴースの寄生虫
海岸に打ち棄てられた上位者ゴースの遺体
その中に大量に巣食う、ごく小さな寄生虫
人に宿るものではない
ただ握りしめて殴る、武器とも呼べぬ一匹だが この虫は「苗床」の精霊を刺激するという

カレル「苗床」を装備し、内に精霊を住まわせた狩人は、そうなって初めて「人に宿らない」ゴースの寄生虫から神秘を得ます。この寄生虫と精霊の相互作用を前提とし、かつてこういった仮説に辿り着きました。

上位者とはそれ自体が「苗床」であり、彼らは皆「虫」から力を得ている。

一つ地味に重要視しているのが、苗床のテキストにある「『苗床』として内に精霊を住まわせる」というくだり。精霊(軟体生物)の苗床、とも読めるのですが、精霊を内に住まわせることで、狩人の頭部を「虫にとっての」苗床と化すというようにも解釈できます。ゴースという巨大な軟体生物が苗床として機能するなら、小さくも軟体生物を住まわせる狩人の頭部も同じ機能を有する訳です。

つまり「苗床」と寄生虫を装備した狩人は、上位者という存在の縮図と言えます。たった一匹の寄生虫と人間の頭部程度の苗床で、あれだけのパワー。ならば上位者ゴースほどの巨体と、そこに巣くう寄生虫の群れともなればどれほどの……。そう想起させる為の DLC でした。

瞳を得るとは何か。それは、人に宿らない寄生虫をその身に宿す資質のことであり、転じて上位者になる事とは、巨大な一個の「苗床(卵)」になること。かつてそういった結論を出しました。今回の記事では、その半歩先を目指したい。

苗床になれない僕らの強がりをひとつ聞いてくれ

さて血の拝領は人に人ならざる力を与えます。シンプルで良い。夢がある。

遡ることトゥメル。代々同名の女王を戴き、その血を拝領することで強固な生命力を得ていた古代の人々。彼らが如何に強力な存在かは聖杯ダンジョンへ潜ったプレイヤーなら理解できるはずです。「古老」や「末裔」、果てに「女王」など、人とは思えぬ力を有した人らこそ、まさに血によって人を超えた者どもです。彼らの存在に気付いたビルゲンワースは、トゥメル人が上位者との関わりを有していたことを知り、その血を拝領することこそ人間を上位の存在へと繋げる秘密なのではないかと考えました。ウィレームが危険視した血の進化に焦がれた者達により、かくして「ヤーナムの血の医療」は萌芽し、女王と同じ名を持つ街に古代トゥメルを再臨させんとする一大ブラッド・ロマンスが幕を開けます。しかしそうした一瞬の栄華の後、トゥメルすら克服できなかった呪いに街は沈んでいくのでした。

トゥメルの呪いとは何か。それがダンジョン各所を徘徊する「獣」。女王の血を受け入れた者は超人的生命力だけでなく、哀れにも獣として人を失う者もいます。獣血の主などはその最たるものでしょう。首の無いこの巨大な獣は、同時に巨大な寄生虫に支配されていました。

獣血の主の主
銀獣の主

全ての獣化者が寄生虫を宿すなら、敵は獣か虫なのか。

ローラン産の銀獣もまた腹から同種と思われる虫を吐き出します。どうせなのでこの共通項を、獣の病への「解答」の一つとしてしまいましょう。

獣化者は皆、寄生虫を宿している。

ノコギリや炎が獣への特効となる理由。人よりも強靭となったはずの獣が、人よりもそれらに「弱く」なる理由。ノコギリによって多くの血とそこに潜むものを排出させ、炎によってそれを焼く。二つの特効は獣それ自体ではなく、獣の意志を支配する寄生虫に対するものだった。これは全ての獣の中に寄生虫が蠢く、一つの証左となるのではないでしょうか。醜い獣、ルドウイークが HP を半減させられることで僅かばかりの人間性を取り戻したのも、 HP(血)の排出と共に、そこに巣くう「虫」の支配力が弱まったからだと考えることが出来ます。

で、寄生虫でございます。

汚物の内に隠れ蠢く、人の淀みの根源

果たして上位者の中にも、獣の中にも「虫」は蠢いていました。簡潔に言ってしまえば連盟の見出した「淀み」とは正しく、そもそも『Bloodborne』って何が「Bloodborne(血液感染)」してたの? という疑問に対するシンプルな答えが「虫」だった……と、今は言っておきます。しかし正確な捉え方ではなさそうなので、これは後述させてください。

いやしかしこの虫、こいつらなんなの……。注目して欲しいのは獣血の主、また銀獣に寄生するそれらが共通してウジ虫であること。特に前者に宿るものは、それはそれは巨大な蠢きでした。すくすく育つのは良いことですが、幼虫とはいつか成虫に変態するもの。子どものまま大きくなってどうするの? いつまでウジウジしてるのよ……!? しかし実はこの疑問点こそ重要で、ここに思い至ると、獣と上位者の関係がうっすら見えてきます。

虫の話をさせてください。こいつら宇宙悪夢的寄生虫も生き物のようですから、その目的は繁殖でしょうか。そしてこれは実在の話ですが、ある種の寄生虫にとって、幼体として過ごす宿主と、成体となって有性生殖を行うための宿主が分かれているケースがあるそうです。前者は「中間宿主」、後者は「終宿主」と呼称されています。何分勉強不足なので間違っている部分もあると思われますが、詳しくは各々おググリ頂くとして、そういった種は中間宿主の中でどうあっても成熟には至れず、また逆に成体となった寄生虫が中間宿主に戻ることはない。仮にそうなったとしても宿主にとって様々な害が発生すると言われています。

なぜ獣に生じる虫は、(サンプルが少なく恐縮ですが)総じてウジの形態を取るのか。なぜゴースの寄生虫は人に宿らないのか。それは人や獣が中間宿主でしかなく、一方で上位者に宿る寄生虫が成体であるからです。

「我らの脳に瞳を与え、獣の愚かを克させたまえ」

人(中間宿主)と上位者(終宿主)を分けるものこそ「瞳」の有無。つまり「苗床」とは、虫が成体へ変わる為の重要な寝床なんです。瞳(苗床たる資質)の欠けた人(獣)の中で、幼虫はどう足掻いても成体にはなれない。どれほど永い時と強大な力を得ようと、獣の中で永久に幼体のまま肥大化するしかない。完全なる行き詰まり。

ならばこそ上位者とは、これら奇妙な寄生虫を成体へ導く偉大な終宿主であり、同時に「瞳を得る」とは、寄生虫にとっての「終宿主(苗床)になること」を意味するのでした。

ともかく、どこまで成長を続けてもウジどまりの寄生虫たちは、上位者という真なる苗床の中でならば晴れて成体と至るようです。無個性なウジ虫野郎のあなたとは今日でお別れ。上位者の冷たい血肉の中で、キミだけの個性的なコーデを獲得しちゃえ!

メンシスの脳みその寄生虫(生きているヒモ)
ゴースの中で成体となった。だから「ゴースの」寄生虫。

オシャレなあの子マネするより 自分らしさが一番でしょ

いや、おかしい。だって寄生虫の成体化が終宿主の中でのみ起こるなら、当の宿主はどうやって上位者(終宿主)になったのでしょう。「卵」が先か「虫」が先か。それともこの奇妙な共生関係は、共に進化を迎えたと考えるべきなのでしょうか。何か、大きな切欠が存在していたのだと。

全ての秘密は虫! そんなことを言って分かった風を装ってましたが、まだまだ整理もしきれておらず、掘り下げも足りていないようです。これからそれをやっていきましょう。

補足 : 蟲毒

連盟の言い分を信じるなら世の中のアレもコレも原因は「虫」のようなのですが、実は劇中に登場する状態異にも虫が関与していました。具体的には「遅行毒」「劇毒」、これらは厳密には毒ではなく、「虫」が毒の如く作用しているだけだったのだ、という話をちょっとします。

論より証拠。獣血の主との闘いを経験した方ならご存知かもしれませんが、奴は戦闘中身震いと共に自身の血を飛ばして攻撃してきます。これを受けることで劇毒ゲージが蓄積してしまうのですが、それを踏まえた上で以下の画像をご覧ください。

劇毒の秘密

羽の生えたウジ。俺らは大人になんてならねえ。

血飛沫攻撃の正体は、羽の生えたウジでした。徹底してウジから先には育たない。これが毒虫であると考えてもいいのですが、違う見方をしてみると、「劇毒」とは虫に齧られることによる出血ダメージだったとも解釈できます。少しずつ虫食まれ、その傷(ゲージ)が一定値を超えた直後、一気に激しい出血が起こる。それが「劇毒」の正体だったのではないかと思います。

なぜ「虫に齧られている」状態を白い丸薬で治癒できるのか。それは丸薬が一種の「虫くだし」だったからではないのでしょうか。だとして、「虫くだし(白い丸薬)」によって同じように治癒できる「遅行毒」もまた虫が引き起こす状態異常だったと連想できるでしょう。遅行の原因は色々考えられます。遅行毒の虫に毒があったのか、こちらも虫からの噛みつきなのだけれど、「劇毒」と比較して余りに小さな蟲であるが故にそのダメージも遅行だったのか。考え方は色々。しかし医療教会の特殊医療者なるものたちが扱う「毒メス」にこの「毒物」がたっぷりと塗布されている辺り、教会もある程度は「虫」に着目し利用していた可能性が出てきました。

実は「発狂」にも同じことが言えるのですがここら辺は後程。

人か獣かウジ虫か

ということで、「瞳」とは虫の寄生環境にして「苗床(卵)」のことだったと仮定した上で、獣の病含む数多の怪異の根源にも「虫」が蠢いていたという話をしてきました。

「どこもかしこも、獣ばかりだ」

「どこもかしこも『虫』だらけだ!」

ご存知の通り、それぞれがガスコイン神父とヴァルトールの台詞です。被せているのは勿論意図したものでしょう。両狩人はともに狩猟者として同じ夜を挑み、しかし見出したものは別のものでした。 ガスコインはただ獣を、ヴァルトールはその原因を。しかし「虫」への着目こそがより本質に近い視点だとしても、こういう記述が存在するのも事実。

獣の咆哮
つんざくその悲鳴は、しかし使用者の声帯が出しているものだ
人の内に、いったい何者が潜むのだろうか

一方で旧市街では今日もデュラが獣を守ります。なぜなら彼にとって獣とは徹底して「人」であり「被害者」だからです。

「貴公は獣など狩ってはいない……あれは……やはり人だよ」

しかし禁域の森にて、人の意識を残しながら人を貪るやつし頭の男は、獣の姿で言います。

「人は皆、獣なんだぜ…」

『ブラッドボーン』とは血の感染の物語。血に蠢く「虫」が人の在り方を淀ませているのかもしれませんが、それでも「獣性」とは元来人の内に潜むものであると、一連のテキストや供述からは読み取れます。仮に「虫」が獣化を促し、その意志すら操縦しているのだとしましょう。しかし、それでも、淀みを生む本当の害悪とは、人が持つ人間性そのものなのかもしれません。

神秘の触覚

瞳は瞳にあらず

「瞳」とは「虫」が体を横たえる為の寝床・苗床を指すというのは分かってきました。では具体的には? 何がどうあれば、それは「苗床である(瞳を持っている)」と言えるのか。以下のアイテムをご覧ください。

夜空のヒトミ

あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ

夜空の瞳
精霊に祝福された軟らかな瞳
かつてビルゲンワースが見えた神秘の名残だが 終に何物も映すことはなかった
その瞳孔の奥には、暗い夜空が果てしなく広がり 絶え間なく、隕石の嵐が吹き荒れている
僅かに瞳を擦りもすれば、それは飛び出してくるだろう

何処にも書いてないですが、これを夥しい寄生虫を宿す眼球と断定します。「中間宿主」という言葉を前述しましたが、例えば現実でもナメクジ等にうかつにも触ってしまった人が寄生虫に感染するケースが存在します。だからナメクジやネズミなんかは自身の病原体を他の宿主へ移動させる「媒介者」と呼ばれているのですが、要するに上位者の先触れ(精霊)と呼ばれる媒介者からの寄生虫感染を指して、どこかの誰かが「精霊の祝福」と騒いだ訳です。まあ、そりゃ眼球から隕石飛び出して来たら度肝抜かれるよね。

そして「精霊」という言葉を用いている以上、祝福により眼球へ感染した寄生虫は上位者由来のものと考えていいでしょう。この眼球が人間のものかどうかは分かりませんが、そうだと仮定して、なぜ人の身に宿らないはずの「上位者の寄生虫」がそこへ宿り得たのか。それは眼球が「軟らかい」からです。

一部の上位者には共通項があります。「軟体」であること。星界からの使者、星の娘エーブリエタース、イカの娘ゴースなどが分かりやすい。上位者の先触れたる小生物がどれも軟体生物だというのもヒントになるでしょう。正直軟体とは呼べそうもない個体はこの場では除外させて頂いて、取り合えずはこう考えてみます。

虫は「軟らかい場所」を好む。

「瞳」が寄生虫にとっての寝床を指すなら、要はその役割を果たす環境でさえあれば、それは「瞳」と呼べる訳です。それこそ軟体であり、つまり(一部)上位者が「軟らかい」のは、寄生虫が最も力を発揮できる環境だからなんじゃないかと。「夜空の瞳」のテキストにわざわざ「軟らかな」と記述されているのはその意図からであり、転じて「瞳とは軟体である」ことを示すダイレクトなヒントアイテムだった訳です。

そしてこのヒントは、劇中の人物たちに対して大いなる誤認をもたらしました。

教会の使い
ヘムウィックの魔女

目の付け所がシャープでしょ。

その軟らかさ故、実際に眼球は触媒と成り得ました。かつて人に宿らぬ上位者の力が、精霊を介し軟らかな眼球にのみ宿った。その祝福こそが一部のものたちへ「瞳を得る」という言葉への上っ面の認識を植え付け、しかし実際にそれらは上質の触媒となってしまった。一部探求者の眼球(瞳)への執着は本質でこそないにしても、その一端に触れていたんです。

ちなみにですが、恐らく両者が触媒とする眼球は「祝福」されたものではなく、即ち上位者の虫は宿っていないと思われます。ヘムウィックの魔女は狩人を捕らえて眼球を抉り取っていたようで、つまり「狩人の瞳」を纏う事で神秘を行使していたのでしょう。言い換えるなら成体ではない「虫」であろうと、「苗床(軟体)を刺激する性質」は既に有しており、故に眼球という環境により神秘を生むのですね。

皆、何も分かっておらず、しかし懸命に理解に努めたのです。努力賞くらい贈っても損はないでしょう。或いは彼らは正答に興味など無く、ただ使えるものを使っただけなのかもしれません。

触覚を得よ

夜空の瞳がそうであるように、魔女や教会の使いがそうしたように、また「苗床」を宿した狩人に肉体がそうであるように、「軟体物質」と「虫」が合わさることで宇宙悪夢的な力が発揮されるようです。それは以下の秘儀からも読み取れます。

エーブリエタースの先触れ
上位者の先触れとして知られる軟体生物、精霊を媒介に 見捨てられた上位者、エーブリエタースの一部を召喚するもの
彼方への呼びかけ
かつて医療教会は、精霊を媒介に高次元暗黒に接触し 遥か彼方の星界への交信を試み、しかしすべてが徒労に終わった
すなわちこれは失敗作だが、儀式は星の小爆発を伴い 「聖歌隊」の特別な力となった。まこと失敗は成功の母である

祝福(二次感染)された瞳が触媒となるなら、その媒介者である精霊自身も「虫」を宿す道理です。ならば触媒として機能しないはずがありません。しつこいようですが、「虫」と「軟らかなもの」が一揃いになった時に神秘は引き起こされる訳です。

それを踏まえて以下の方々。

星界の使者
脳喰らい
鐘持ち

触覚、触手持ちの方々

共通して触覚、触手を生やしていることが見受けられるのですが、これらはヘムウィックの魔女にとっての眼球と同じもの、即ち「軟らかな」苗床となります。星界の使者などはこの触覚持ちしか神秘を放ってこない辺り分かりやすい。神秘に属するものたちは、「虫」に刺激され得る軟体器官(触覚)が発達しているために、このように神秘へアクセスすることが叶うのだと思われます。

また「触覚」というものの別サンプルですが、実験棟において頭の肥大した患者の一部も神秘を操ります。この現象が見られるのは「露台の鍵」で至る萎びた花畑においてのみ。

萎びた花畑

命と引き換えに撮影を成功させた狩人。

ここの花々は時計塔前、星輪樹の庭から移植されたものでしょうか。星輪が精霊を宿すのなら、きっとこの場所の患者たちは星輪花、或いはそこに棲む精霊を触媒として、限定的に神秘を操ることに成功しているものと思われます。こういった間接的な形で、人は人にあるはずもない「触覚」という器官を得ることが出来ました。「彼方への呼びかけ」にある「失敗は成功の母」とは、恐らくこの場所における実験結果の事であり、真に生み出そうとしたものは「失敗作」として終わったものの、それでも貴重な事例として「得るもの」はあったようです。思えば同じ場所に「夜空の瞳」が配置されていたことは何とも暗示的。瞳と花畑は同じ「苗床(瞳)」なのだと。

ちなみにアメンドーズやロマ、ゴースにも触覚と思わしきものがあります。エーブリエタースに至っては全身触覚みたいなものかもしれません。軟体として疑わしい個体は触覚に注目してみるのも考察の一助になるでしょうか。

上位者のなりそこない、蛇

「虫」は人を獣に変えます。では元から獣であったもの、動物が摂取するとどうなるのかというと、劇中に登場したネズミや豚、カラスのように一律して「肉体の肥大化」という症状がもたらされます。しかし一種気になる例が存在しました。蛇です。

マダラスの笛
腑分けされた獣を餌とし、毒蛇は途方も無く育った
また死した後も、悪夢の内から双子の笛に応えるという

蛇だけが他の動物と異なり、死して悪夢に住まい、森の中で人を苗床としてその版図を拡げているように思えます。笛などにより肉体の一部を召喚される様は、さながらエーブリエタースのよう。獣を餌とした毒蛇は、その血肉に蠢く寄生虫を内に宿したのでしょうか。ではなぜ蛇だけが他の動物のように、ただ肥大化するのではなく、奇妙な進化を遂げているのか。言い方を変えましょう。「軟らかさ」が寄生虫にとっての苗床と成り得るなら、「軟らかな肉体を持った動物」が宿主となった場合、何に至るのか。

柔軟な肉体を持つ蛇は、寄生虫の力によって上位者に進化したのではないか。以前そのような仮説を述べました。この点に関しては結局よく分かっていません。マダラスの笛が、他の秘儀のように神秘補正ではなく、唯一血質補正を受けるのは、大蛇が上位者そのものではなく「なりそこない」でしかないと見ることも出来ますし、例外的に進化を果たした上位者だ、と解釈することもできます。印象論以上の事は言えないので、これに関しては解釈をお任せしたい。

ただ、以前より蛇を軟体と表現していましたが、タコやイカのような意味での「軟体生物」とは異なります。あくまで柔軟な肉体を持つ生物としての表現だったのですが、語弊があるどころの騒ぎじゃありませんのでこの場で訂正させて頂きます。

触覚の真なる役割

触覚 is 軟体。そんな話をしてきましたが、一概にそうとも言えない事例が一つあります。

メンシスの檻
隠し街を主宰する「メンシス学派」
その奇妙なやり方を象徴する六角柱の鉄檻
この檻は意志を律し、また俗世に対する客観を得る装置であり
同時に、夢の上位者と交信するための触覚でもある
そして、これは実際に、彼らを望む悪夢に導いたのだ

メンシス学派は狩人の悪夢、実験棟での治験をなぞらえていた痕跡があります。「メンシスの檻」が触覚であり、彼らがそれを装着したのは、かつて得た星輪の植物が失敗に終わりながらも神秘の触媒として一定の成果を上げた事例への着目でしょうか。重要なのは軟体でない「檻」が「交信のための触覚」として機能したこと。この檻が上位者たちが持つ触覚と比較してどの程度の力を持つのか、その真価は分かりません。或いは軟体でないが故に不完全なものなのかもしれない。しかしながら見逃せない事実として「夢の上位者と交信した」というものがあります。

夢の上位者とは何か。

悪夢の上位者とは、いわば感応する精神であり 故に呼ぶ者の声に応えることも多い

「夢」と「悪夢」は異なるものという主張ももしかしたらあるかもしれませんが、当サイトでは同一のものと仮定します。その上で悪夢(夢)の上位者とは、つまり人の意志に感応する上位者なのだと。「月」のカレルをドロップする辺り、あの巨大な脳みそこそ「悪夢の上位者」であり、メンシス学派を導いたのかもしれませんが、もう一体それらしき個体がいます。ヤーナムの赤子メルゴーです。

乳母戦には一つミスリードが仕込まれています。討伐後に表記される「HUNTED NIGHTMARE」という一文ですが、あれは乳母そのものではなく、乳母の中にいた(?)メルゴーの消失を指すもの。つまり「悪夢」を、「悪夢の上位者」を狩猟した瞬間だった訳です。ちなみに「NIGHTMARE」とは「夢魔」を指す言葉でもあります。

そして同文が表記されるのは「月の魔物」、そして「ゴースの遺子」……戦後に母体から立ち上る黒いもやを晴らしたタイミングです。共通するのは「どれも赤子であった」ということ。つまり「悪夢の上位者」とは、そのまま「赤子の上位者」を指すのだと認識して良さそう。

さて、メンシスの檻、硬質な彼らの触覚が実際に機能を発揮したのであれば、こんな考え方もできるでしょう。「触覚」とは、そも「夢の上位者(赤子)と繋がる」ための器官を指すのだと。つまり上位者が持つ「虫」や「軟体」による宇宙悪夢的パワーは副産物に過ぎず、彼らが真に求めたのは「赤子との繋がり」、それを得るための「触覚」だったのかもしれません。

3 本目のへその緒(メルゴー)
全ての上位者は赤子を失い、そして求めている
それ以上のこと

全ては寄生虫のせい! それで終わらせておけばよかったのですが、ちょっと話がややこしくなってしまいました。

最初の記事でこんな事を言った覚えがあります。「石ころには 3 つの意味がある」

  1. 投擲アイテムとしての意味。
  2. 「瞳」をプレイヤーへと暗示する、フレーバー・アイテムとしての意味。
  3. そして、それが嘘であることを気づかせないための意味。
石ころ
夜空の瞳

瞳に似た石と、瞳に似た石に似た瞳

石ころが瞳を暗示させるべく瞳に似せた造形をしているのか、はたまた本物の眼球が石化したものなのかは不明ですが、上述した通り、『ブラッドボーン』を貫くキーワードである「瞳」を強調するアイテムであった事は確かでしょう。そしてこれまでの記事で述べた通り、しかしそれは半ば嘘・誤認であり、「瞳(眼球)」それ自体はフレーバーに過ぎず、その本意とは「虫」にとっての「苗床」、そして「苗床」たるを指していた、というのが、ここまでの当サイトの主張です。

しかし本当にそれだけなのでしょうか。もしかすれば一見して正解っぽい仮説に喜んでしまい、考えることを止めてしまっていたのかもしれません。石ころ、そして「瞳」が指し示す先には、もう半歩だけ「続き」があったかもしれない。そんな話を、次回します。

まとめ

虫について
瞳について

続きます。

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