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ミランダ仮説

はじめに

おはようございます。いやぁ『ELDEN RING』、売れに売れているおかげか考察が賑わっておりますね。気が済んだりひと段落したら、その調子で過去作にも目を向けてくれるとありがたいのでよろしくお願いします。そんなわけで大賑わいの『ELDEN RING』考察。それだけネタ被りも多くなりそうですが、まあ観測した範囲では見つけられなかった部分を混ぜておけば書く意義もあるかなと思ってこの度筆を取りました。あまり長くするつもりもないのでお付き合いください。

ミランダ仮説

エム娘 スカーレットダービー

神人やデミゴッドたち、その名に規則性があるという話についてはご存じでしょうか。御存じなんでしょうね、ええ。ちなみにただでさえ物覚えが悪い当サイト管理人は初見時に「うげえ! 固有名詞多すぎ!」とクラクラしながら遊んでいました。なんか名前が似てる人がいるのは血縁かな? くらいには思ってましたが、終わってみてから周囲を見回してみると、まあ実際そんな感じの規則性に則っているのは間違いなさそう。

一応あんまり気にしてなかった方の為に記述しておくと、例えば「ゴッド」フレイの子が「ゴッド」ウィンであり、「ラダ」ゴンの子が「ラダ」ーンであるというような。より厳密にすると、「G」「R」「M」で血の連なりが表現されているようです。実は「ジョージ・R・R・マーティン(George Raymond Richard Martin)」氏から取っているとの噂もありますが……ありそうではある。

(追記 : 有識者から先ほど教わりましたが、この噂はマーティン氏自身が否定なさっておられるんですね。情報ありがとうございました。)

概ねこんな感じなんじゃないの、というまとめ。画像付きでもっと奇麗に整頓されている方がおられるので探してみてください。補足しておくとゴドフロアの立ち位置なんかはどこにも記述されていなかったはずなので、そこは想像でやんす。

で、今回やりたいのはデミゴッドたちの連なりではなく、「ミリセントの姉妹たち」についてです。

ミリセント
「実は、私はマレニアの血縁のようなのだ。私が彼女の子なのか、妹なのか、あるいは分け身なのか、それは分からない。けれど確かに、彼女との間に、近親の繋がりを感じるのだ」
ゴーリー
「…ミリセントは、私が拾い上げたのですよ。まだほんの幼い赤子の頃、エオニアの沼でね。あれは、私の愛しい娘の、一人なのです」
腐敗翼剣の徽章
腐敗の女神に仕える、戦乙女たちの徽章
四姉妹は、エオニアの沼に生まれ落ち ゴーリーの手引きにより、聖樹へと至った
だが彼女たちは、出来損ないの蕾であった

マリカの娘がマレニア(M)だったように、マレニアの娘たちにも名前に「M」が……つかない子もいるじゃねーか。しかしこれはこれで面白い。末妹のポリアンナはエオニアの沼で召喚できるのですが、その際の名は「養女ポリアンナ」。腐敗の女神の戦乙女たち、或いはそこに養女としての参入が許されているなら、三姉エイミーもまた怪し。恐らく「M」の有無で近親か否かを分けているのだろうと思っています。

ではマレニアの娘たち、少なくともその近親の子らがどのようにして生まれてきたのかというと、それは文字通り花が芽吹くように生まれてきたのでしょう。

人に宿るものではない
ゴーリー
「…あの娘、ミリセントは、蕾なのです。まだ硬く、未熟ではありますが、何れ艶やかに花開く。楽しみなことではありませんか。あれは私が見た中でも、最上の蕾なのですよ。姉妹たちも、あの娘の前では色を失うでしょうて…」

きっしょ。ゴーリーの台詞は比喩のみに留まらず、恐らく彼女たちの由来に関わります。エオニアの沼で拾われたというミリセント、並びに姉妹たちは、恐らくケイリッドに朱き腐敗が広がったことを切欠に生まれました。朱き腐敗の広がり、それは即ちマレニアの開花を意味する。連想としてはシンプルですね。朱き腐敗の正体とは、きっとただの花粉なんです。

話が変わるようですが、『ELDEN RING』には「陸ほや」なる怪生物が登場します。

陸ほや

ほやほや

ちなみにほやは実在する生き物です。ゲーム中だとこいつらは毒を吐き出しますが、陸ほやたちにとっては異なる意味を持つのでしょう。生殖の手段、子種としての。

その道20年の研究者が語る、実はすごい「ホヤ」という生き物の秘密

ほやは雌雄同体の生き物だそう。精子も卵も自ら吐き出すようですが、自分の吐き出したもの同士が結びつかないようなメカニズムがあるんだとか。生命の神秘でございますね。失敬、余談でした。

何が言いたいのかというと、恐らく劇中で毒物に分類されるものは、特にそれを生物が吐き出す場合、人に宿らず蝕みさえする性質故に毒性ありと判断されているだけで、その生物にとっては生殖の手段である可能性がある。だから、ほやがそうであるように、きっと朱き腐敗もまた、ただ咲き広がろうとする意志の顕れなのでしょう。新型コロナはただの風邪、朱き腐敗は花粉症。

そして最も強かった二人の戦場を爆心地として、不敗のマレニアは遂に咲き、その粉状細胞はケイリッド全土へ飛散しました。しかし朱い花粉は尋常の生命に宿るものではなく、劇的に蝕み、よって腐敗と称するしかありませんでしたが、芽吹くものもあった。それこそミリセントたち「分け身」なのではないでしょうか。彼女たちは文字通りに「蕾」だったわけです。

ただし疑問は残ります。腐敗が花粉だというのなら、めしべとおしべのやりとりが必要なはず。では娘たちはどのようにして人の形へと芽吹いたのか。雌雄同体の植物が自分自身の花粉によって受粉するケースがあるようですが、その場合、遺伝子の交換が無くなるため、例えば病に弱い遺伝子はそのまま継承されてしまう。ここら辺、マリカとラダゴンから生まれたマレニアとミケラに通じるものがありますが、今回は置いておくとして、分け身でありながら、いや分け身故に自らの母の腐敗に侵される娘たちとは、つまり朱い花が自家受粉によって生み出したと推測できるかもしれません。では腐敗に侵され、しかしある程度の適性を発揮した人間の娘などが養女となるのでしょうか? まあ、ここら辺は大いに想像力の助けを借りるポイントですね。また今度膨らませてみましょう。

別に花粉に拘らなくてよくない? と思うかもしれません。それは最初から種子であり、そこから姉妹たちは芽吹いたとした方がシンプルかもしれません。ですが一連の仮説を立てる上で捨て置けない存在が 2 つあります。その 1 つがエオニアの蝶です。曰く、それは腐敗の女神の翼なのだと。

エオニアの蝶
朱い枯れ葉の羽を持つ蝶
エオニアの沼で見られる
古い神話では、この蝶は 腐敗の女神の翼であったという

花は元より虫や鳥などを媒介者として受粉を行うもの。つまりエオニアの蝶とは、マレニアが第二形態時に見せたような文字通りの翼である以前に、腐敗の女神がその腐敗を遠方へと運ぶための翼(媒介者)だったのではないかと見ています。蝶の存在を際立たせるため、腐敗が花粉であった方が都合が良いわけです。

朱いエオニアの花粉。その腐敗は翼に乗って、やがて狭間の外側へと運ばれていくのでしょうか。

ミランダ仮説

タイトル回収しときましょ。本題でもないんですが、ここまでの仮説を踏まえて考えて欲しいことがあります。ミランダフラワーについて。

ミランダフラワー

火に弱いので気を付けてあげよう

ミランダパウダー
人を襲う花、ミランダフラワーの花粉
散布される前の花粉は香りが強く 古くから調香に用いられる
小ミランダの遺灰
人を喰う花、ミランダフラワー
その可愛らしい子株たちの霊体
ゆっくりと蠢き、毒の花粉をけなげに放出する
火に弱いので気を付けてあげよう

宿せぬものたちにとって毒であっても、それは花粉。ミランダパウダーもまた同様であり、そして花の名には「M」が付きました。何を意味するかと想像してみるなら、腐敗から芽吹いたマレニアの分け身、そのなりそこないこそがミランダフラワーだったのではないか……なんてことが、まず考えられます。この類似性こそ腐敗を花粉と考える理由の 2 つめ。

自らの親株がそうしたように、けなげに毒(花粉)をまき散らす、朱く咲けなかった花、ミランダ。同じ由来を持ちながらも何らかの条件下で厳正され、人の形を獲得した個体のみが、もしかすれば晴れてマレニアの娘たる資格を得るのではないか。そんな仮説をまず一つ立ててみました。

このミランダについてもう一つ仮説を立てるなら、この植物の「M」はマレニアではなく、マリカに由来するのではないかということ。根拠として挙げたいのが、ミランダの攻撃手段である「光柱」です。

光柱

ミランダの光柱

劇中でそんな呼び名はないはずですが、『DARK SOULS 3』における「天使の光柱」を彷彿とさせるのでそう呼びました。過去作との類似は、ミランダの招くそれが「光柱」だと示す為なのではないかと仮定した上で、ローデイルの指読みおばあちゃんの台詞が以下。

指読みの婆(王都ローデイル)
「あんたにも見えるだろう? 天を覆う黄金。光柱の出処たる大樹が。褪せ人よ、その麓に向かうがよい」

……大樹から出てる光柱ってなに? 黄金樹からそんなの出てましたっけ。祝福の導きのこと? まあ、何か出てるんでしょう、おばあちゃんがそう言ってるんだから。で、光柱とやらがミランダの呼ぶそれと関りあるとして、それこそ即ちマリカ(黄金樹)とミランダを繋ぐ要素なのではないか。つまりミランダフラワーとはマレニアではなく、マリカの分け身であったのかもしれない……という仮説でもう 1 つ。付け足しておくと、ミランダという植物が狭間の地全域に生息していることを考えると、それは腐敗というよりは黄金樹的とも言え、これはミランダ=マリカの分け身説を支持する証左なのかもしれない。

もう一つ言っておくと、マレニアがマリカの子であるなら、両者から顕れたものは同じ形を取るとも言えます。もしかすると「マリカのミランダ」「マレニアのミランダ」がいるのかもしれませんね。

もう一人の「M」

もう一人の「M」について。そう、メリナですね。彼女の言動とそのイニシャルから、メリナはマリカの娘、分け身のようなものなのではないかというのは結構予想されているようです。面白いのはメリナが外套の下に着る「旅の服」、これをミリセントたち姉妹も着ている点。

旅の服
軽く丈夫な布の服
運命に向き合うために旅に出る 娘たちの装束

「娘たち」とは、つまりそういうことなんでしょう。メリナがマレニアの娘という意味ではなく、人ならざる母を持つ「娘たち」は、この衣を纏って旅に出る。マリカの娘、マレニアの娘。それぞれから顕れたものは、やはり同じ形を取り、そして同じく使命の道を行くのだと。

更にはメリナが狂い火エンドで見せた左目の色から、それは宵眼、よって彼女にそれを受け継がせた母こそが宵眼の女王であり、即ち永遠の女王マリカの前身なのだ……という説に接続できるようです。さてどうなのでしょうね。正直自分の中では煮詰め切れていないのが正直なところなのですが、ここまで書いてきてふと思いついたことがあります。

メリナ
「…探しているの。かつて、黄金樹で母から授かったはずの、私の使命を。焼け爛れ、霊の身体となってまで、生き続けている理由を。…貴方にも、詫びたいと思っていた。指の巫女様の代わりになる、そう言いながら、私は貴方を導けない。私は巫女ではなく、そして…使命を失くしてしまっているから」

謎多きメリナ。彼女が焼け爛れた理由、そして失くした使命とは何か。それを「爛れた刻印」から読み取ることは可能でしょうか。

マリカの刻印
エルデのルーンが刻印された瞳
それは、女王マリカの印であるという
刻印は、神に見出された者が 生涯の使命を与えられた証である
マリカの爛れ刻印
エルデのルーンが刻印された瞳
それは、女王マリカの印であるという
強き使命は、その主を蝕む
まるで逃れ得ぬ呪いのように
マリカの刻印
マリカの爛れ刻印
ラダゴンの刻印
ラダゴンの爛れ刻印

それ以上のことはない。

ルーンが刻印された瞳だそうですが、まさか本人たちのものでしょうか。おあつらえ向きにマリカもラダゴンも、実際に相対した姿は半面を失くした状態でしたが、刻印に意味があるのであって瞳が誰のものかはそこまで意味のあることではないかもしれません。

強き使命は、その主を蝕む。例えばミリセントたちが母共々腐敗に蝕まれていたように、メリナもまたかつて授かったという使命により蝕まれ、爛れたのでしょうか。だからこそ霊体となって尚蝕まれぬよう、彼女の目(使命)は閉ざされていたのか。

だとして女王マリカ自身はどうなのでしょうか。娘が親からその名と血、そして使命さえも受け継ぐというなら、女王マリカ自身がそうでなかったと何故言えるのか。宵眼の女王と永遠の女王マリカは同一人物ではなく、親と子、或いはミリセントが自身の血に感じたように、妹か分け身、いずれにせよ近親の関係だった可能性は大いにあります。神人マリカを継ぎ、次代の女王となるべき「娘」たち。しかしそれはマリカより端を発したものではなく、或いはマリカ自身もまた、何らかの使命を授かった「娘」だったとも。ひょっとすればかつて、若きマリカもまた、狭間の地で旅の服に身を包んでいたのでしょうか。

仮にメリナが母と呼ぶ者がマリカだとして、もしかすると、マリカが母より授かり、しかし果たせなかった使命をメリナは継いだのかもしれません。彼女の生とは、その為のものだったのだと、少なくともメリナ自身はそう考えていたようです。

またこれは少し余談になりますが、恐らく他のデミゴッドたちとは異なり、メリナの在り方は、やはりミリセントらの如く、ある種の植物のような形で芽吹いたのだと推測しています。ミリセントとメリナは、そういう意味でお互いがお互いの似姿だったのではないかと。証拠とまでは言えませんが、モーゴット戦で召喚できるメリナは、プレイヤーには扱えない特殊な祈祷のようなものを放ちます。それはミランダが招いたものと同様の、しかし黄金に輝く光柱でした。それはもしかすると、神から生まれた花々だけに許された祈りだったのでしょうか。

神の名を継ぐ娘たち。彼女たちは爛れ続けながらも、けなげにその使命を果たそうとする。さながら花のようでいて、美しく、しかしだからこそ。

火に弱いので、気を付けてあげましょう。

まとめ

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