2022 年 12 月 9 日の The Game Awards 2022 にて『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』が発表されました。『アーマード・コア』とは何か、新作発表でどれほどの反響があったかと言った話をする気はないのですが、そうして注目を浴びた結果、「フロム・ソフトウェアは元々豚の餌やりを管理するアプリを作っていた」という話題が（観測範囲で）目につくようになったと思います。もっともこれ、wikipedia に普通に記載されている情報なので衝撃の事実でも何でもないのですが、しれっとそこにあった情報が改めて認知されるようになったんでしょう。
1986 年 11 月創業。当初は大型汎用コンピュータ向けを中心としたビジネスアプリケーション開発を手がけており、豚の餌やり管理といった農業系アプリケーションも開発していたという。
（2022 年 12 月 時点の wiki より引用）
豚の飼育管理ソフトを開発していた会社が今では豚（ユーザー）を飼育する側になったのだなんて余りにもな言い草も生まれているようですが、ところでこれソースはどこ？ と思いまして。もしかすると面白くてそれらしい言い回しが事実を上書きしてしまっているパターンではないかと思って以前少し調べてみたところ、当時は見つけられませんでした。
そんでそろそろはっきりさせたいなと思い、先日改めてサーチしてみたところ、まず以下のツイートが引っかかりました。
1) One of my favorite studios, Tokyo-based FromSoftware, is currently rumored to be an M&A candidate for Sony.
— Dr. Serkan Toto / Kantan Games Inc. (@serkantoto) April 18, 2022
Here is a quick run-down of its weird background feat. pigs, right-wing newspapers, Toyota and the metaverse.
And their early valuation... unspeakable.
Buckle up??
セルカン・トト氏。Kantan Games CEO にしてアナリストである方の投稿なのですが、フロム・ソフトウェアを扱うに当たってその簡単な経歴を追い、その中で同社が元々豚の餌やりソフトを作っていたことを取り上げています。これがソースか？ と一瞬思いましたが、当該ツイートは 2022 年 4 月 19 日投稿。いやいや wikipedia にはもう何年も前から記載されてるわと考え直します。というかそもそも wikipedia にこの情報が記載されたのって何時よと編集履歴から追っかけることを今更思いつき、遡ってみると恐らく2011 年 9 月 16 日に当該情報が初めて記載されていますね。しかも。
当初は大型汎用コンピュータ向けを中心としたビジネスアプリケーション開発を手がけており、鍋島俊文プロデューサーのインタビューで、豚の餌やり管理といった農業系アプリを開発していたいう。
（2011 年 9 月 16 日時点の wiki より引用）
ほお？ 引用箇所には確かに脱字が確認できますが、なんで大事な部分ごと削った？ と思いながら、「2011 年」「鍋島俊文」「インタビュー」「豚の餌」で絞り込むと……。
「アーマード・コア V」発売延期の真意を語る鍋島プロデューサーインタビュー
- G：
- ということは8年くらいはずっとアプリケーションを制作していたということですね。当時はどんなアプリケーションを作っていたのでしょうか。
- 鍋島：
- 私が入社したのが 15 年前、96 年ですね。その頃はまだ半々だったんです。スタッフの半分がゲームを作っていて、半分がそれまでの業務のシステム開発をやっていて、私はゲーム側のスタッフとして採用されていて、ゲーム開発しかやっていないので、あまり詳しくはないのですが、豚の餌やりの管理システムとかを開発をしていたみたいです。
見つけた。ってかフッツーにネット公開されてる情報だったので、以前サーチかけて見つからなかったのは単純に粘りとやり方が悪かっただけなんでしょう。ただ該当情報の初出がこれ、とは断定しません。或いは別所、ネット以外の媒体で同じことを述べている可能性も全然在り得るわけですからね。しかしながら、取りあえず「wikipedia に記載されている情報のソース」としてはこの記事がそれに当たるかなと思います。ちなみにこのインタビュー記事おもしろいのでオススメ。
（追記 : 2023.09.24）『ゲーム戦線超異状 任天堂 VS ソニー』にこの旨記載されておりました。現状確認できる限りではこれが最古のソースでしょうか。取りあえず該当箇所のみ引用すると『牛や豚、鶏などの飼育を管理するパッケージ・ソフトなどを開発して農協から発売したこともある』とのこと。というかこの本メチャメチャ面白いので読んで欲しい。
というわけでちょっとした思いつきで書いた記事ですが、フロム・ソフトウェアに関する「なんか公然と事実のように扱われてるけど意外とソースはすぐに出てこないし、みんなもそこまで調べないこと」は他にもあるはずで、また何か思いついたら調べてみようかなと思いました。
豚の餌やり管理ソフトから始まったというフロム・ソフトウェア。今でこそ日本を代表するゲーム会社へと変貌を遂げたと言えるでしょうが、今もかつての経験と志は受け継がれているものと確信しています。だってほら、こんなにも
ほーら餌だよ