ACID BAKERY

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「4 部」のラストに見る杜王町の開放感

あれです、あれ。仗助が「バーン」と腰に手を当て鞄を担いでるあれ。ここの場面について新発見、という話では無いんですが、改めて見直して「良いなあ」と思ったので「良いなあ」と思ったポイントを書きます。

この絵は仗助のポージングにのみ触れられる事が多いんですが、ポイントはそこだけじゃないと思っていて、まあ良く見なくても背景に船があるじゃないですか。勿論この船には承太郎とジョセフが乗っているんですが、要するに「杜王町から去っていくジョジョ」と「杜王町へ帰っていくジョジョ」の図になっている訳なんですな。で、ひとしきり、色々と複雑な心境でジョセフ達を見送った仗助は(小遣いもせしめたし)、「帰るか」とでも呟いて鞄を担ぎ、腰に手を当てて、今まさに歩き出し――という瞬間を切り取った絵なんですね。何か良いですよね。仗助には帰る家があって、ちょっぴり大変な戦いがあったけど、それすら日常の一部に組み込んでしまう杜王町という場所そのものの「気楽さ」がこの絵から伝わってくるというか。承太郎たちは今度もジョースターを巡る因縁や DIO の残滓と戦い続けていくけど、杜王町と仗助だけはそういった因縁から解き放たれていて、これから独自の道を開拓していくんだなあとかそういう広々とした自由な気持ちになる。宇宙一巡するけど。

『ジョジョ』は因縁や運命に雁字搦めにされた血統の話で、裏を返せば息苦しいものとも言い換えられる。そんな中で「4 部」は杜王町という固定された舞台であるにも関わらず、他のどの部よりも開放されている気さえする。好きな部に「4 部」を挙げる人が多いのは、その奇妙な開放感に要因があるのかなあと。このシーンはそういった全てを物語っているようで、「良いなあ」。

ちなみに「本筋とは関係ない」というのは「5 部」にも言えるんですが、正直ジョルノが「ジョナサンの肉体を介して生まれた DIO の息子」という部分はもっと根掘り葉掘り掘り下げるべきだったと思うんですよ。ある種外伝的という位置づけは「4 部」と共通しているのに、少し消化不良に感じたのはそこかな。

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