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『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』 第 39 話「地獄の門番ペット・ショップ その 2」

動物対決! そのすてきな敵愾心がアニマルどもを行動させたッ! イギーの「ザ・フール」(破壊力 : B / スピード : C / 射程距離 : D / 持続力 : C / 精密動作性 : D / 成長性 : C)は砂を操る。対するペット・ショップの「ホルス神」(破壊力 : B / スピード : B / 射程距離 : D / 持続力 : C / 精密動作性 : E / 成長 : C)は氷を操ることができる。ほぼ互角と言っていい性能だが、「ザ・フール」は精密動作性が、「ホルス神」はスピードで相手を上回っている。 C を B で上回るのと E を D で上回るのとでは話が違うと思うが、ともかくスタンドそれ自体のエネルギーは大凡対等である。

だが嘘付けッ! 「ホルス神」の息も吐かせぬ猛攻! どこが精密動作性「E(超ニガテ)」だ! 『HD ver.』では防御力も上方修正されやがって! だが思うにこれは、荒木先生が嘘つきな訳でも、間違えてしまったのでもない。『HD ver.』に関しては多分間違えたのだろうが、恐らく照準もままならないであろう「ホルス神」のエイミングを、ペット・ショップ自体の動物的能力によって補っているのだ。例えばの話、スター・プラチナが他の誰かに備わったとしても、承太郎ほどに上手く扱えはしない。他の能力も同じことで、全く同じスタンドを持っていたとしても、使い手の能力如何で異なる運用がなされることだろう。スタンド自体が持つ不得意を、使い手自身の能力によって補佐できるとすれば、「E」は「E」でなくなる。パラメーターの「C」とは「人間と同じ」とされるが、使い手が人でない、人以上の存在であった場合、スタンド能力はカタログ・スペックを大きく超えた性能を発揮するのだ。クソ犬と鳥野郎、両者の持つスタンド・パワーはほぼ互角。「砂」と「氷」という特性も、どちらかが一方的に苦手とするものではない。ならば勝敗を決するのは唯一つ、「どちらがより動物として優れているか」ッ!

最強動物論、色々あるだろう。機動力と破壊力を兼ね備えたスーパー・ハヤブサに、地を這うボストンテリアが勝つなど不可能かもしれない。だがイギーはやってのけた。決まり手は「噛みつき」である。スタンド使ってねえッ! ……野生だ。滑稽なほどの野生がイギーを勝利へ導いたのだ。一匹のハヤブサには大きすぎる火力を逆に利用した訳だが、肝要なのはそこではない。ペット・ショップはその機動力で、縦横無尽に獲物を追い立てていく怖さがあった。だが最後の最後に失策を犯した。追いつめたようでいて、そこは狭い穴の中。天駆けるハヤブサは、自らの翼を封じてしまったのだ。まさに「相手が勝ち誇ったとき そいつはすでに敗北している」というやつである。その行動は、スタンド使いとしては正しかったかもしれない。だが動物として、自らの特性を封じるような行動は正常な行動とは呼べないだろう。過剰な進化を促された野生生物は、そのパワーをコントロール出来ず自滅する運命にあるのかもしれない。ならば日頃からスタンドに頼らず、あくまで一匹の犬として生きるイギーとは……。かくして動物対決はここに決着した。スタンド能力はあくまで補助として、最後は己の肉体で勝利してみせたイギー。そしてスタンド能力に頼り切った結果、動物力で負けたペット・ショップ。何とも象徴的な結末ではないか。

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