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『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』 第 41 話「ダービー・ザ・プレイヤー その 2」

この時代のコンピューター・ゲーム・テクノロジーは異常である。『SC』の時代設定は 1988 - 1989 年。現実に照らし合わせれば、メガドライブや GB が発売されていた時期だ。 SFC が発売されるのが 1990 年ということを考えると、作中に登場したゲーム機のモデルは恐らく FC だろう。だがこのグラフィックはどうだ。とても FC の域ではない。むしろクオリティを素直に受け取ると、少なくとも PS3 レベルである。『SC』連載時期は 1989 - 1992 年、終了の翌年にようやくアーケード『バーチャファイター』が登場することを考えると、とんでもなく時代を先取っている。「そこは漫画だし」で済ませても構わないのだが、『ジョジョ』世界にはアレが存在するではないか。そう、生けるオーバー・テクノロジー、シュトロハイムであるッ。軍事的必然とエロスが技術を発展させるというのは良くある謳い文句だが、第二次世界大戦時にあのレベルのサイバネ技術が存在したという時点で、現実世界からは大きく逸脱している。結果としてドイツは敗れたものの、 SPW 財団と交わったこともあり、その技術は多方面に転用されたことだろう。無論、コンピューター・ゲームもその一つ。奇しくも石仮面の因縁、引いては数万年にも渡った柱の闇の一族と人類との宿命が、このような形で結実したのだ。一方でゲームの内容面での「手探り感」、逆にニッチ路線を狙わなくて構わないがゆえの「直球感」、そして次世代ハード・レベルのグラフィック等の実現を可能としていながら、クラシカルなコントローラーやロムカセット媒体がかもしだす「アナログ感」、それらのアンバランスさが妙に生々しく面白い。やはりゲームというのは、手数を増やして場数を踏んで、ネタ切れと戦いながら少しずつ発展していくものなのだろう。

さっ、こんな稚拙なゲーム論は置いておいて、花京院が華麗に勝利するところを、花京院――――――ッ!! ま、負けた……。怪我で離脱していた仲間が復帰戦で負けるとかそうそうねぇぞッ! だが勝負は勝負。変なところで技術は高度化していても、多分インターネットは一般的に普及していない時代だ。ゲームの攻略法も口コミで広まっていただろうし、如何せんこのコース飛び越しの裏技は、一人で遊んでいたのではできない。知っていたとしても対策が取れていなかったのだろう。……花京院……友達いないから……。ともかく裏技的な手法で負けるのは、あからさまなバグと言い張れない分、心が折れる。個人的に『マリオカート 64』で似たような負け方をしたことがあるので、花京院の心情、察するに余りあるッ! さらば花京院! きみのことは忘れない!

先発が負けちゃったので、承太郎先輩が出てきた。相変わらずの凄みを発しているが、どうやらゲームはやったことないらしい。何事もそうだが、ゲームは慣れだ。格闘ゲーム、 STG、アクションゲーム。各ジャンルにはそれぞれの「動かし方」がある。しかしどれか一つでも得意なら、他のジャンルにおいても「得意なゲームをプレイするように」ある程度技術を流用できる部分がある。チェスや将棋で言うところの「定石」が、研究すれば研究するほど身の内に蓄積されていくように、ゲームにも「ゲーム勘」というものが存在するのである。この苦境を、承太郎は持ち前の観察力と学習能力で乗り切ろうとしていた。だがテレンスには、まだ秘められた能力が存在するのだ。アニメ版始まって以来、戦いは三週に渡って繰り広げられる。次回決着!

ところで、このゲーム対決は原作三部中第二位の長さである。基本的に 5,6 話構成で敵を倒していく中で、テレンスは破格の扱いだ。荒木先生がお気に入りを公言するダービー(兄)との戦いですらその縛りを守っていたのに、ここにきて破られたことになる。描いていて楽しくなってしまったのか、或いは館に入ったことで最終戦が始まったという心積もりなのだろうか。花京院と承太郎の二部構成ということなのだろうが、同じ理由でギャンブル対決も長くできたはずだ。やはり最終戦に入ったことで展開がパワー・アップしたということなのだろう。文字通り、遊びの時間はもう終わりなのだ。

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