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『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』第 38 話「クレイジー・ D(ダイヤモンド)は砕けない その 2」

開幕は爆弾パンティーから。うなだれる仗助。祖父がそうであったように、また彼は大事な人を失ってしまったのだ。四部は「治す力」をもった仗助が「死んだ人間は治せない」という事実を突きつけられる、そんな戦いから始まる物語だった。これの何が皮肉かって、ラスボス吉良吉影は主人公と対をなすように「あらゆるものを破壊する力」をもっていて、そしてそんな吉良に、時間を巻き戻すという方法ではあるが「死んだ人間を生き返らせる力」が宿ってしまったこと。何という皮肉。何という数奇な運命。しかし仗助は絶望しない。強さとは何からも奪われない戦闘力を指すのではない。打ちのめされても立ち向かう、その精神を強さと呼ぶのだ。「クレイジー・ダイヤモンド」は砕けないッ!

荒木先生の作劇で「丁寧だなあ」と思うのは、携帯電話のくだりだと思う。冒頭で吉良が会社に遅刻の報告をしているが、この局面でそんなことをやる吉良の几帳面さ、負ける気がさらさら無いのだという余裕、更に今は亡き川尻浩作の日頃の態度などが窺い知れる面白い場面になっている訳だが、それだけではない。この一幕を差し込んでおくことで、この後に「吉良が携帯電話を使って父親と通じていた」という展開から唐突さが無くなっているのだ。ただ前もって見せておくだけなら誰でもできる。しかしそれを「面白い一幕」の影に隠して気づかせない。これが「技術(テクニック)」である。

さあそんなことを言っている間に仗助の自動追尾弾がヒットし、億康の目も覚めた。死にゆくはずだった仲間たちが一堂に会していく。この流れるような勝利演出の畳みかけがまた凄い。吉良の知略を仗助が上回り、そしてそこから歯車がズレて、或いは正常に戻ったのか、吉良の幸運が嘘のように崩壊していく。仗助にとって都合の良い出来事が何か一つでも戦闘中に起こっていたら、ここまで痛快なシーンにはなっていなかっただろう。仗助が、勝ったのだ。だから負けた吉良にとって不都合な出来事が積み重なっていく。説得力を絵で魅せる。荒木先生の手腕が光る回だった。そして次週、最終回。

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