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『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』第 19 話「ホワイト・アルバム」

光から背を向けた男の息子が、暗闇の中で輝きを求めるのが「黄金の風」だ。覚悟とは自己犠牲によって完結するものではなく、その先にあるもの。『ジョジョ』は最初から一貫して「覚悟」の物語であったように思うが、五部はそのメッセージ性が特に強い。凄惨なギャングの戦いの中だからこそ余計に強調しなければならないのだろう。

「ホワイト・アルバム」は非常に強力なスタンドだった。シンプル故に応用が利き、真正直に、ただ強い。というか「氷使い」の力がド派手でなければ嘘というもの。正直ミスタの「ピストルズ」はその手の能力と比べると圧倒的に地味で弱いかもしれない。先週ギアッチョが口にした「拳銃使い」という言葉が痛烈な皮肉に聞こえる。だがだからこそ勝つ姿が映える。終盤、鉄柱に固定されたギアッチョとミスタの繰り広げたある種のラッシュ比べは『ジョジョ』全体でも屈指と言っていい名シーンだ。

しかし哀しいかな。何となく全体的に展開が間延びしているような印象を受けた。『ジョジョ』にありがちな「全部が一瞬の出来事」だったと思うのだが、合間に回想を挟んだり状況解説をすることで、一挙手一投足に凄まじく時間をかけているかのように感じてしまう。回想は冒頭にもってきたり、台詞や動作の省略をガンガン駆使して、バトル自体はもっと短く済ませても良かったかもしれない。原作通りにやろうとすると、不思議と原作通りにならないのだ、たぶん。

ところでジョルノの「おもしろくなってきた」は、「世界」の片鱗を見た承太郎の「野郎…おもしろくなってきたぜ」のリフレインというか、もしかすれば意図したものではないにしても、荒木先生の中で「ジョースターはピンチの時に弱音など吐かない」という方針から繰り返された言葉なのかもしれないが、どちらにせよ同じ言葉を発したジョルノの父親がかつて「言われる側だった」というのは感じ入るものがある。

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