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『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』第 33 話「そいつの名はディアボロ」

トリッシュでもなければドッピオでもない。それは まぎれもなく やつさ。

ブチャラティはもはや「魂」でしか人物を判定できないから、ディアボロがちょこっと工夫すればドッピオをトリッシュに誤認させることくらいなんてことは無い。力技にも程がある気がするが、死者が動くのだ。生者の振る舞いくらい目を瞑ろう。さて一行が決死の思いで約束の場所へ辿り着こうとしていたが、皮肉にもボス自身をそこへ案内してしまう事になった。そもそもブチャラティ達の運転する船の「迷いの無さ」などというふわふわした印象から追跡を開始し、よくもまあここまで辿り着けたものだ。さすがはボス。人生の絶頂を維持し続ける男。そうでなくとも『ジョジョ』各部のボスは文字通り運命によって「命を運ばれている」と思わざるを得ないほどに「ツキ」を持っている。もっともツキが無ければラスボスなど務まらないのだろう。裏を返せばツキまくっているからこそ、転落が始まるとも言える。

さてジョルノたちを導いた男はポルナレフだった。かつての仲間と共に世界中の「矢」を追い、そしてその先でディアボロという厄災に辿り着いてしまったようだ。恐らく「パッショーネ」にマークされるまでは承太郎と連絡を取り合っていたのだろうし、物語冒頭で承太郎が康一君をイタリアへ向かわせた際にはポルナレフの動向を気に掛けるという意図も……いや無いか。ポルナレフがどうこうなる危機を感じていたら康一君を派遣させるなんて絶対しなかったろうし。ともかく幾多の苦難を乗り越えたポルナレフも今回ばかりは敗れた。相手が悪いし、何より孤独なのが辛い。最もポルナレフは強敵との闘いで仲間の死を経験しているので、こうなる事が分かっていても誰かと協力する発想にはならなかった可能性もある。そんな思いもあって尚、ブチャラティ達に接触した。ディアボロとはそれほどの敵なのだ。

しかし奮闘も空しく、ポルナレフ……死亡。回想にあるカメオがネタにされるのを良く見かけるが、その下にある石柱は「アヌビス神」と戦った場所なので、一応印象深い敵を順繰り思い出しているのだろう。そしてカメオを思い出すという事は妹の事も思い出すという事だと思う。回想に描かれていないのは、彼女の事はポルナレフの中で「乗り越えた」証明なのかもしれない。トイレを舐めたのは都合よく忘れてるかもしれないが。

そんな訳でいよいよ娘を始末するだけといったディアボロの前に奇怪な人影が現れた。少し前にポルナレフは自身のスタンドを矢で貫いていた。本体ではなく、像でしかないスタンドを。そして現れた、この人影。その首筋には矢の痕。それはまぎれもなく――。

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