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『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』第 38 話「ゴールド・E・レクイエム」

OP ッ! まだ変身を残しているとは思ったが、予想通り! そして予想以上だった。あくまで個人的な受け取り方ではあるが、正直なところジョルノという主人公、ジョースターとディオの血統であるにも関わらず、それを感じさせる描写が欠けていると思っている。随所で発揮されるリーダーシップや頭のキレ方、そしてぶっ飛んだ発想、そして漆黒の意志などが血筋を感じさせる部分ではあるのだが、それはそういった描写から読者が「設定上の事実」へ思いを馳せているだけで、荒木先生自信が「ジョルノの行動や性格には血筋が強く影響している」という描き方をしていないように思えるのだ。そう思ってしまうのはジョルノの能力に「血」が反映されていない為だとも言える(もっともジョルノの能力が「生命」や「テントウムシ(太陽)」に強く関わる力であるのが波紋、そして逆説的にディオを意識したものだという読み解きはできる)。言い方を変えるならジョルノが「JOJO でありDIO」であるという異質さを有する設定に、どれだけ意味があったのか分からない、というのが率直な感想だった。ジョースターの血を受け継いでいるのだから、ジョルノが「主人公」としての資格十分なのは当たり前なのだ。だが OP ッ! あそこであれだけ「DIO の息子である」という点を強調されては納得せざるを得ない。これは「凄み」なのだ。ディアボロという悪魔のような出自を持つ男が、対して本物の吸血鬼、しかも邪悪の化身であった男の血統に、「凄み」で圧倒されたと強烈に思える。そこにジョースターの「凄み」まで加われば、そりゃ一たまりもないはず。これは「主人公 vs. ラスボス」という構図の影に、「ラスボス vs. ラスボス」という構図が隠れていた事を想起させてくれる灼熱の演出なのだ。 DIO とディアボロはどちらが強いのか。議論は尽きず、もちろん第五部の最終決戦でその答えが出た訳でもない。だが公式で叶うはずもないドリームマッチ、その片鱗を、あの OP は叶えてくれたように感じるのである。何を言ってるんだろうか。ありがとう……それしか言う言葉がみつからない。

っつー訳で本編。実際は決着も間近だったという事であっさりしたものだ。後は見たいものが見られるだけ。「ゴールド・E・レクイエム」は「全てのエネルギーを 0 に戻してしまう」というもの。要するに何をしようが全部「なかったことにされる」。ただの主人公にありがちな能力キャンセル系能力なのでは? と思うかもしれないが、「ゴールド・E・レクイエム」の能力を叩き込まれた対象は「死んだ事実」すら無かった事にされ、終着点に到達する事無く永遠に「死の間近」までを繰り返し続けることになるのだ。後のトリッシュの言葉から、ディアボロが未だ生存中である事が伺える。そしてこの反応が消える事は無いのだ。きっとトリッシュの死後も。むご過ぎるとも言える。ディアボロがドン引きするチョコラータが生温く死ねたのに、当のディアボロがこの仕打ちとは納得できない! と思う方もいるだろう。まあここら辺は議論が続く部分だと思う。ただ個人的には、ディアボロは悪行の報いを受けたというよりは、今まで「キング・クリムゾン」によって不都合さを飛び越えてきた「ズルさ」への報いを受けたのではないかと考えている。悪い仮定を吹き飛ばし、良い結果のみを独占しようとした。故にその報いとして、「結果」そのものを永久にはく奪されたのではないか。弱々しくも気高く「真実に向かおうとする意志」を紡いできた者達全てから殴り返されたのではないか。そして或いは「世界」そのものから。カーズが地球から追い出されたのと同じ、大いなる意志によって。あの世界に神のような存在があるかは不明だが、「王の中の王」たるジョルノが得た力は、その代行者としてのものなのかもしれない。

また「矢」が生物から「スタンド」を、そして「スタンド」から「レクイエム」を産み出す為のものであり、それは同様の進化を世界中へ波及させる為だったのではないかと、いつだか書いた。目的も糞もない、進化こそが「矢」に宿るウイルスの目的なのではと。ならば、対してジョルノの「レクイエム」とは、そういった強制的な進化へのキャンセル、いわば「アンチ・レクイエム」として存在するのではないか。不都合な進化をキャンセルする、それこそ「王」の如き権能なのだろうか。……まあこの考えが正しいのなら第六部でジョルノは何やってたんだという話になるんだけども(荒木先生曰くあの近くに来ていたようだが)。

さて残すはエピローグのみ。続きは次回書こう。

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