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ドラマ『岸辺露伴は動かない』 第一話「富豪村」

ドラマ『岸辺露伴は動かない』高橋一生、中村倫也らキャストコメント

今年の 10 月あたりに一報を聴いて、「へー」と思ってたら「あっ」と言う間に放送日がやってきた。……よくわからん書き出しだな。

内容は『岸部露伴は動かない』(1 巻)より「富豪村」。漫画家岸部露伴のもとに新しい編集者、泉京香が訪ねてくる。彼女が自身の幸福のため、そして露伴の漫画のネタのため、ある山中の村を訪ね家を購入しようとする話。購入した者に富を与えるらしいその「家」は、しかしある「試験」をクリアしなければ手に入らないという……。

筋書こそ原作通りだが、冒頭で露伴亭に空き巣(居直り強盗)が忍び込んだり、泉編集の婚約者がお目見えしたり、最後の大勝負の前に露伴が利き腕を奪われたりと、原作既読者にとってもなかなか見ごたえのある内容に仕上がっていた。本作は『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフであり、露伴もスタンド使いなので、冒頭の泥棒たちはその事実を視聴者へと知らしめる為に必要な役割だった。その後「スタンド」という言葉が一切登場しないのが好印象(「ギフト」という表現はどうかと思ったが)でもある。またドラマ第三話は原作二巻掲載の「DNA」らしく、泉編集の婚約者が強めに描写されているのはその話に関わってくるからだろう。露伴の利き腕のくだりもシンプルに緊迫感を高める演出としてありがたかった。他にも何気ないセリフが伏線になっていたり、かなり構成が練られていることが伺えて上出来なドラマ化なのではないかと思う。

ただ強いて言えば決着の付け方が気になった。「最大のマナー違反とは、その場でマナー違反を指摘すること」というセリフ。このセリフ自体は頷けるし好ましいのだが、そもそも『ジョジョ』は論争で相手をやり込めて決着ッ! という展開に持って行かない。あくまで根底に「能力(ルール)バトル」があって、ルールに則り相手に一発入れた方が勝つ、それが荒木先生流……だと受け取っている。なので「マナー違反をその場で指摘するのはマナー違反」というのはその通りではあるが、それを言い出したら富豪村のシステムそのものが成り立たないし、山の神今までなにやってたのだし、前提にあるルール自体を批判する、というのは、どうにも「『ジョジョ』っぽくない」なという印象を受けた。ただこれはあの場面だけを抜き出しての話で、一話で露伴のキャラを強調し、かつ『ジョジョ』と知らずにドラマに入った視聴者を引き付けるのに重要な描写だったとも思うので、まあ痛し痒しなのかなと。後は雛鳥が削られたのが惜しくはあるが、ラストの「差し入れ」シーンにかなりグッと来たので良しとさせて頂きたい。何を偉そうに。ともかく三日間、楽しめそうで何より。次回「くしゃがら」。このエピソードは小説版が原作で、情けないことに未読。

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