夜神月を雛見沢に閉じ込めてみた/ひぐらしがなくですの ライト「くそ! どうして僕たちに相談しなかったんだ! 自分ひとりで勝手に決めて! 父親の恋人を殺すなんて!」 レナ「言ってどうにかなるなんて思わなかったんだよ。相談したらどうにか出来た? ライトくんに何が出来たのかな?」 ライト「方法なんていくらでもあったよ! 僕の父は警察だぞ!? まずその女達の会話を録音して…手段なんかいくらでもあった……」 レナ「……………。」 ライト「僕は誰にもこのことを言わない。レナは僕が守る!」 レナ「……ライトくん……。」 魅音「…私も。」 沙都子「わたくしもですわ。」 梨花「……。……ボクもなのです。」 ライト「ああ! 絶対に守ってみせる!」 ―――――――――――――――――― 竜宮礼奈 6月×日 綿流し後に自殺 ―――――――――――――――――― ■ようこそ ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい  さっきから誰だ?  人がせっかく久しぶりの安眠を貪っているというのに…。 「ごめんなさぁあい! すみませェん幸子」  父さん……。いくら仕事で失敗してして地方に転勤させられたからってそんなに謝らなくても……。  母さんも許してやれよ。どれだけ殴れば気が済むんだよ。  もう父さんっていうかなんだよそれ。ユッケみたいになってるよ。 『クックック…、まさかこんな田舎に飛ばされるとはな。お前の野望もここで頓挫か?』  馬鹿言うなよリューク……。新世界の神がこんなところで終わるわけが無いだろ? 「ねぇお兄ちゃん、いいところだといいね」 「ああ、そうだな粧裕」 「名所とかは無いみたいだけど、少し出れば割と大きな街があるみたいだよ」  ……お前は能天気で羨ましいよ。 「ええと……えへへ……お兄ちゃん、これなんて読むんだっけ」 「……また忘れたのか? 僕達がこれから住む場所の名前くらい覚えておけよ……」 「ごめんなさーい」 「これはな……雛見沢、ひなみざわって読むんだ」 ひぐらしがなくですの ■朝 ライト「行ってきます」 幸子「はーい、お弁当持った?」 ライト「勿論だよ。母さんのご飯を忘れたら僕が皆に怒られる。学校で評判なんだよ? すごく美味しいってさ」 幸子「あら、そうなの?」 ライト「おかげで友達も沢山できた。感謝してるよ」 幸子「おほほ……」 リューク『ホームドラマっぷりはここでも健在だな』 ライト「うるさいよリューク」 リューク『お、あれは……』 ライト「おはようレナ。今日も早いんだね」 レナ「そんなことないよ。本当に今来たところなんだよ。」 ライト「たまには僕が待っていられるようにもう少し早く起きようかな。なんならレナの家に迎えに言ってもいいかもしれない」 レナ「そ、それは駄目だよ。うち散らかってるから、見られたくないかな、かな?」 ライト「はは……まああれだけ『お持ち帰り』してればそうなるよね」 レナ「うん、でもみんなかあいいんだよー☆」 ■朝2 魅音「ライちゃーん、レナー! 遅いぞー。」 レナ「魅ぃちゃんだ。」 ライト「魅音……僕を『ライちゃん』って呼ぶの止めてくれって言ってるじゃないか………」 魅音「『ライト』って何だかそわそわするんだよねー。外人みたいでさ。おじさんだって呼びたくて呼んでるわけじゃないよー。」 ライト「じゃあ止めてくれよ」 魅音「あははー。もしライちゃんの名前が『圭一』とかなら『ケイちゃん』って呼べるんだけどね。今からでも改名しない?」 ライト「しないよ。この名前は結構気に入ってるんだ。でもまぁ、変な呼び方だけど魅音なら許せるな……」 魅音「え、それってどういう……。」 レナ「あ、魅ぃちゃん赤くなってる〜。かあいいんだよ〜☆」 リューク『なにこのラブコメ』 ■目の取引 梨花「おはようなのですライト。」 ライト「おはよう梨花ちゃん。今日もかわいいね」 沙都子「おはようございますですわ、ライトさん!」 ライト「おはよう沙都子。今日も妙に発育がいいね」 沙都子「挨拶のついでに何を言ってるんですか!」 ライト「え、セクハラだけど……?」 沙都子「わたくしの方が変なことを言っているような反応をなさらないでください!」 梨花「発育だったら魅ぃの方が断然いいですよ。ボクと同じ生物とは思えないです。」 魅音「り、梨花ちゃん何言って…。」 ライト「確かに……」 魅音「ライちゃん近い! 顔近いよ!」 ライト(おっぱい……僕の創る新世界には欠かせないものだ……。はっ! ……おっぱい帝国……) リューク『ライト……死神の目のことで言ってないことがあったんだが……。死神の目は、相手のスリーサイズやその他も見ることが出来る……』 ライト(リューク…………後で詳しく頼む) ■壁に耳アリ 魅音「ライちゃーん。」 ライト「ん、なんだいおっぱい(絶妙に韻をふみつつ)」 魅音「おっぱ・・・!」 ライト「ああ…ごめん、ついね」 魅音「絶対わざとだ…。」 ライト「で、どうしたの?」 魅音「ふっふっふ。ライちゃん、昨日の昼は一体何してたのかなー?」 ライト「? 興宮に買い物に行ってたよ。図書館で勉強もしたかったからついでにね」 魅音「何を買ったのかなー? 本屋で随分とこそこそやってたみたいだけどー。」 ライト「…どうしてそれを」 魅音「おじさんに分からないことなんざ無いのさ。で、なに買ったのかな?」 ライト「……べ、別に大したものじゃないよ…」 魅音「ふっふー。あてて見せようか。ズバリ、叶美香のヌード写真集! いやらしい! エッチなのはいけないんじゃないかなぁ。ていうかライちゃんああいうのが趣味なんだー。ふーん」 ライト「何が悪いってんだ!」 魅音「!!」 ライト「僕だって自分自身が分からなかったさ! でもなんていうの? 恐いものみたさっていうのがあるじゃんよ! 感想は…ちくしょう! ある意味表紙で騙されたよ! はふう!」 魅音「……なんか…ごめんね。」 ライト「あ…こちらこそ…」 ■勉強 レナ「ライトくんは勉強教えるの上手だね。」 ライト「僕は器用だからね」 魅音「ライちゃん、ここ教えて。」 ライト「……魅音はもう少し出来てもいいんじゃないか?」 魅音「へへー」 梨花「ライトは受験とかどうするのですか?」 沙都子「ライトさんなら東大狙えるんじゃないですこと?」 ライト「そうかな…自信ないな…全国模試で1位とった程度だし……」 魅音「十分じゃないの!?」 ライト「いや…へへ…別に自慢じゃないさ…へへ…ふふ…」 レナ「嘘だッ!!」 ■私、立派な当主になる! お前ならなれるって婆っちゃが言ってた! クロックアップ。 魅音「6はシックス。狐はフォックス。電話で送るのはファックス。じゃあ、アレは?」 沙都子「そ、そんなこと答えられませんわ!」 ライト「セックス」 魅音「ち、違うよ!」 ライト(! なんだと?) 魅音「沙都子はなんだと思ったのかなぁ?」 沙都子「うぅ……。」 ライト「……セックスは惜しいんだろ?」 魅音「か、かすりもしないね!」 ライト「馬鹿な…」 魅音「……正解は『ザット』でしたー! 英語で『アレ』は『ザット』でしょ?」 ライト「乙女はDo my best でしょ?」 魅音「なに言い出したの!?」 ライト「じゃあ僕からも問題な。女性専用の問題だから心して答えろよ」 沙都子「なんだか嫌な予感がしますけれど…。」 ライト「自分の両足を想像してください。人差し指と薬指の間にあるのは?」 魅音「……中指?」 ライト「正解。では、親指と親指の間にあるのは?」 沙都子「えーと…。」 魅音「沙都子! 逃げるよ! 変態だあ!」 沙都子「えっ? えっ?」 ライト「タマがねぇ! チンも!」 ■白熱! ライトVS部活メンバー 魅音「あれれー、ライちゃんはまだトランプの絵柄を覚えられないのかなー?」 沙都子「そんなんじゃいつまでも優勝なんて夢のまた夢ですわ!」 梨花「でもライトは何だかんだ言いつつ、最下位にはならないのです。」 レナ「ギリギリのところで頑張ってるんだよ。」 ライト「僕の記憶力ならそろそろカードを覚えられるはずだ…僕なら出来る!」 魅音「駄目だなー。絵柄を覚えることに終始してたら勝てないよ?」 沙都子「その前に勝ち星を稼がさせていただきますわ! アガリです!」 梨花「ボクのアガリなのです。」 レナ「私もあがりだよ。」 魅音「ふっふっふ〜。さぁて、おじさんとライちゃんの一騎打ちだね〜」 ライト「魅音……。まぁ、魅音にやられるなら本望かな……」 魅音「ラ、ライちゃん……。」 沙都子「いけませんわ魅音さん! 敵は動揺を誘おうとしていますわ!」 レナ「色仕掛けだよ!」 梨花「ライトは女ったらしなのです。」 ライト「……。なぁ魅音……。君から見て右手側にあるハートの4…僕にくれないか…」 魅音「なっ!?」 沙都子「魅音さん!? その反応…まさか!」 魅音「あ、当たってる……!」 ライト「当ててんのよ」 梨花「ライトはカードと傷を一致させたのですか……?」 ライト「さて、どうかな……もしそうだとすればこれで条件は互角……」 魅音「ク…! 遊び過ぎた! ライちゃんには短期で決着をつけるべきだったか……!」 ライト「僕は器用だからね」 ■素晴らしき雛見沢 -トイレ- リューク『くっくっく…ライト…楽しそうだな』 ライト「楽しいよ。程度は低いけど」 リューク『そうなのか? 部活って奴は結構白熱してなかったか?』 ライト「馬鹿いうなよ。手加減してたんだよ。悪いけど彼女達程度が僕に知略で挑むなんて無謀としか思えない」 リューク『……けどカードの絵柄覚えるなんて凄くないか? なんていうか、あいつらの情熱』 ライト「そう? あんなの初見である程度覚えられたよ。ギリギリで覚えたのは演技さ。あまり強すぎても彼女達はきっと僕を歓迎しないよ」 リューク(こいつどんな記憶力してるんだ……?) ライト「ま、馬鹿に付き合うのは前の学校でも同じだったからね。真に優秀な人間は低劣な人間とも付き合えるのさ」 リューク(確かに部活見てるよりライトの裏の顔見てるほうが面白!) ライト「さ、適当に切り上げて早く帰ろう。ゲームでもやろうよ」 リューク『うほっ! 地球防衛軍2やろうぜ!』 ■ANGEL MO-DE 総一郎「な、なんだこの店は!」 ライト「父さん声大きいよ。ここは興宮で最近有名な店だよ。デザートが美味しいらしいよ。見れば分かると思うんだけどそれだけじゃないよ」 総一郎「あの服は…制服か…とんでもないな…!」 ライト「別に如何わしい店ってわけじゃないよ。たまには父さんと親子水入らずでこういう店に来たかったんだ。と言っても僕も来るの初めてだから勝手が分からないんだけど…何食べようかな」 総一郎「うお! いいのか!? あの服のあの角度はいいのか! なぁライト!」 ライト「うるさいよ父さん」 総一郎「おおう……おおう…見える…見えてしまう…畜生! デザートの傍ら、女の子というオカズも売ってるってわけかよ!」 ライト「誰が上手いこと言えと言った」 ■ANGEL MO-DE2 総一郎「くっ、駄目だ私は刑事だ! こんな店に来ては…! 母さんに殺されちゃうよぅ!」 ライト「……秘密にすればいいじゃないか。それに粧裕は来たことあるらしいよ。制服がかわいいって興奮してた。その姿を見て僕も興奮した」 総一郎「えっ!? いかん! いかんぞ! 粧裕があんな露出度の高い制服を着ては……駄目だ…。…はーっ。はーっ。HAA! あっおっい、いかん…! うっ……!」 ライト「……父さん? なぜ小刻みに震える? 父さん?」 総一郎「さて、何を頼もうか」 ライト「待て! なぜ急に冷静になる! おかしいじゃないか!」 総一郎「ライト…はしゃぎたいのも分かるが落ち着きなさい。他のお客さんに失礼だぞ」 ライト「う、うん…分かったよ…。なに頼む?」 総一郎「そうだな……いや、やはり冷たくて気持ち悪いから先にトイレに行ってくる。先に頼んじゃ駄目だぞ。待ってて」 ライト「気持ち悪いって何が!? 父さん! ……」 リューク『人間てすげーな。死神はあんな服着ない』 ライト(……死神も同じようなもんじゃないのか?) ■ANGEL MO-DE3 総一郎「ライト、この間話した、この村の事件のことなんだが……」 ライト「父さん。こんなところで話すことじゃないよ」 総一郎「うむ…そうだな…。おっ…料理もそうだが、デザートもなかなか美味いな」 ライト「そうだね。制服だけで客寄せしてるのかと思ったけど、中身もしっかりしてる」 総一郎「おいおいライト、ほっぺに生クリームがついてるぞ」 ライト「そう? はは、何だよ。父さんこそ顔中真っ白じゃないか」 総一郎「おっと! こりゃ一本取られたな」 ライト「ははは」 総一郎「わっはっはもけけー」 ■さよなら知恵先生 沙都子「そんな……知恵先生が……。」 梨花「……。」 魅音「職員室で倒れてるところを校長先生が見つけたんだって。多分、みんな帰った後に一人きりで……。」 ライト「……どうしたんだ?」 魅音「ライちゃん…。知恵先生が…」 ライト「! …………。知恵先生が死んだ…? ……心臓…マヒだって…?」 レナ「私たちもさっき聞いたの」 ライト「だから朝から学校が妙にバタついていたのか…」 沙都子「で、でも、ならどうして朝のHRで知恵先生は病欠だなんて嘘ついたんでしょう。」 ライト「……先生達も半分パニックになってたんだろう。大人が状況を把握できていない時に生徒達を混乱させるようなことはしたくなかったんだと思う。ほら、今も知恵先生のことを聞いただけでみんな明らかに動揺している。…中には泣き出しているもいるじゃないか…。くっ・・・知恵先生…」 魅音「ライちゃん…。」 レナ「ライトくん…大丈夫かな、かな?」 ライト「…出会ってまだ日も浅かったけど…知恵先生はとても素晴らしい先生だった。前にいた学校じゃあんなに生徒に親身になってくれる人なんていなかった。先生…どうしてこんな事に…」 魅音「ライちゃん……そんな顔しないでよ…。」 沙都子「綿流し前なのに…。」 梨花「…沙都子。」 ライト「……。」 魅音「綿流しとは関係ないよ。知恵先生は自然死なんだから。」 沙都子「……でも。」 魅音「沙都子。」 沙都子「……はい。」 ライト「なんの話だ?」 魅音「……何でもないよ。」 ライト「……」 レナ「………。」 ■目を口ほどに語る レナ「ライトくん。」 ライト「ん?」 レナ「なにか……嘘をついてないかな、かな?」 ライト「……? 嘘?」 レナ「あ、その……責めてるとかじゃなくて……。レナは目を見ればその人が嘘をついているかどうか分かるんだよ。それでライトくんが何か嘘ついてるように感じたから……。……違うの。何となく気になっただけで、嘘が許せないとかそういうことじゃないの。ごめんね、ごめんね。」 ライト「……そうなんだ。でも、僕って結構何を考えてるか分からない奴って言われるんだよ。本当に目を見ただけで嘘かどうか分かるの?」 レナ「う、うん。」 ライト「じゃあ……僕の目を見て」 レナ「あ……。」 ライト「『僕は女だ』」 レナ「……嘘。」 ライト「『僕の父は警察官だ』」 レナ「…ほんと。」 ライト「『僕には死神が憑いている』」 レナ「………。」 ライト「『僕は新世界の神だ』」 レナ「……嘘、ついてない……。嘘なのに嘘じゃない…。あはは、なんだ、レナの直感も大したことないかな、かな?」 ライト「僕はレナが好きだ……」 レナ「そ、それは嘘! ……でも、ライトくんの嘘は嘘かどうか分からないから……」 ライト「レナ……」 レナ「ラ、ライトくん……だ、駄目だよ…!」 魅音「あれ、なにしてんのー?」 ライト「何もしてないよ」 ■犯人はお前だ! ライト「……リューク」 リューク『な、なんだ?』 ライト「リュークだな?」 リューク『な…なんの話だ?』 ライト「知恵留美子の名前をノートに書いただろって言ってるんだ! なぜそんなことをした!」 リューク『い、いや…。目障りだったから…』 ライト「…? 目障りだった…? どういうことだ?」 リューク『なーんかあの女、オレのこと見えてたような…』 ライト「…! なんだって?」 リューク『オレも気のせいだって思ってたんだが…。ライトの周りをウロチョロするオレをあの女………目で追いやがった』 ライト「! 勘違いじゃないのか?」 リューク『一回や二回だったらオレだって気にしないけどよ』 ライト「一度や二度じゃきかなかった、と?」 リューク『はっきりオレを見るとかそういうんじゃなかったと思うんだが、オレの雰囲気か何かは感じ取ってたんじゃないか? 黙ってても構わなかったんだが…やっぱウザかったから殺した』 ライト(死神が見えていた? ノートに触られたのか? いや、ノートは家の引き出しの二重底に隠してあるし、発見されれば燃えるようにもしてある…それはない…。では切れ端を触られた? いま僕が持ってるノートの切れ端は財布の中に入っている数枚だけ。神としての裁きはほとんど本物のノートで行い、切れ端は不慮の事態にしか使っていない。万が一誰かに触られでもすれば面倒なことになる。……その万が一が起きたか…? いや…そんな覚えは無いが…しかしここは…) リューク『でももし死神が見えてたんだとしたらお前にとってもマズイだろ? 今回は特別サービス…』 ライト「馬鹿いうなよリューク」 リューク『え?』 ライト「なんてことをしてくれたんだ! 人がわざわざ雛見沢とは関係の無いところで犯罪者を裁いていたっていうのに! それもご丁寧に心臓マヒだと!?」 ■なんてこと リューク『な、なんだよ』 ライト「いいか? 世界はもうすぐ神の存在に気づくだろう。神は犯罪者だけを選別し、心臓マヒで殺せるのだと。いずれ世界の正義は変わり、僕は新世界の神となるが、今はまだ犯罪行為だ。警察はキラを捕まえようとするだろう。その時に手がかりになるのが、心臓マヒという手口だ。僕は警察関係者しか知りえない犯罪者も裁いている。すなわち…。そう遠くない将来、キラは警察関係者であるという結論に達するはずだ。だが、そこまでは想定の内だ。そこからが問題なんだよ。こんな地方の、誰も知らないような村で心臓マヒが起きた。どうなる? 警察はこの情報を掴む。しかし確たる捜査の根拠としては認識できないかもしれない。けどその村に警視庁から転勤してきた刑事とその一家がいるとなれば? キラが追われるのは構わない。かく乱する手段はそれこそいくらでもある。だけど『夜神月はキラかもしれない』なんて疑いをもたれるのは、それこそ1%でもありえちゃいけないんだよ! ただでさえ父は警視庁にいられなくなって警察の情報を得るのが難しくなったんだ。もしかしたら裁きの傾向から『犯人は警察内部の情報を得られなくなった』なんて思われるかもしれない。リューク…。お前は僕の敵でも味方でもないと言ったな? あれは嘘か?」 リューク『……い、いや…嘘じゃない…』 ライト「今回の一見は明らかに僕に、いや、キラに対する嫌がらせだ。敵対行為じゃないのか?」 リューク『そ…そうだな。お前に一言相談すればよかったかもしれない……』 ■なんてこと2 ライト「これで一つ貸しだからな。リュークは僕の味方じゃないけど、いつかそれなりの協力はしてもらう。わかったな?」 リューク『わ、わかった…』 ライト(……フフ…ここでリュークに貸しを作れたのは大きい。死神は利用価値がある。さっき言ったことは嘘じゃない。嘘じゃないが、それでも僕が捕まるはずがない。知恵は犯罪者じゃないし、本当に偶然心臓マヒで死んでる人間なんてそれこそ腐るほどいる。無能な警察がキラと僕をイコールで結ぶなんてそれこそ低い可能性だ…。危険が高まったのも事実は事実だが、それでデスノートの存在が露呈することは絶対に無い。最初から僕を捕まえるなんて無理なんだよ…) リューク『そういえばライト』 ライト「…なに?」 リューク『あの女…知恵とかいう女教師だが…偽名だったぞ。俺には本名丸分かりだったけどな』 ライト「! なんだって?」 (偽名…何者だ? 若い女こんな所に住むくらいだから中には色々な事情がある奴もいるのかもしれないが…。結果だけ取り出してみればリュークが殺してくれてよかったのかもしれないな……) 「とりあえず帰ってビデオでも見るか。今日は蒼井そらかな」 リューク『萩原舞がいいな…』 ■突撃、夜神の晩ご飯 ピンポーン ライト「ん?」 沙都子「ライトさん、わたくしがやって来ましたわよ!」 ライト「沙都子? どうして?」 沙都子「どうせ晩ご飯はカップラーメンか何かだと思いましたので、私がお世話を焼きに来たのですわ」 ライト「わざわざ僕のために? ……沙都子……」 沙都子「そ、そんな情熱的な目で見ないでくださいまし! 勘違いしないで欲しいですわね!」 ライト「ふ、ふん! 勘違いなんかしてないさ!」 ライト「野菜炒め…うん、美味しい。沙都子って料理上手なんだな」 沙都子「当然ですわ!」 ライト「これなら…僕のお嫁に…」 沙都子「!?」 ライト「いや…なんでもない」 沙都子「……そ、そんなこと……。」 ライト(女なんて簡単なもんだ……) ■焼いたおもち 梨花「………。」 羽入「なにやら不機嫌そうな梨花なのです。」 梨花「……そんなことはないわよ。」 羽入「またライトの事でも考えてたのですか?」 梨花「? なんで?」 羽入「いや別に、なのです。」 梨花「ライトってモテるわよね。」 羽入「はいなのです。顔だけで言えばピカイチなのです。」 梨花「……プレイボーイよね。」 羽入「……まあ、そうなのです。嫌なのですか?」 梨花「? なんで?」 羽入「いや別に、なのです。」 ■障子に目アリ 魅音「ケイちゃーん」 ライト「なんだいおっぱい(天才的な韻を踏みつつ)」 魅音「……ごほん! ライちゃん、お父さんとエンジェルモート行ったでしょ!」 ライト「な…なぜそれを!」 魅音「おじさんは何でも知ってるって言ったでしょ。随分と鼻の下を伸ばしていたみたいだけど…。」 ライト「いや…悪いがそれはない」 魅音「!?」 ライト「どんな娘を見ても…魅音に敵うおっぱいがいなかったんだ」 魅音「ラ、ララ…ライちゃん…。……私って…胸だけの女かな…?」 ライト「馬鹿野郎ーっ! 魅音! 何を言ってる!」 魅音「ひっ!?」 ライト「その最強のおっぱいは魅音だからこそ相応しい! 同じおっぱいを取り上げたってその適正に適う人間はほんの一握りなんだ! その点、魅音は最高だ! 魅音にそのおっぱいは必要! おっぱいは正義!」 魅音「こ…声が大きいってば…!」 ライト(……女なんてこんとんじょのいこ……) ■ソーセージ ?「ライちゃーん。」 魅音「げっ!」 ライト(このおっぱいは…詩音か) 詩音「……人の胸をジロジロと……。」 ライト「……ところで今日はどうしたんだ?」 詩音「たまたま近くを通りかかったのでお姉愛しのライちゃんに声をかけようかと。」 魅音「ちょっ…!」 ライト「そんな言い方照れるじゃないか。僕らはまだ健全な付き合いを…」 魅音「ラ、ライちゃんなに言って…。」 詩音「まあお熱いこと! それじゃあライちゃん、またエンジェルモートに遊びに来て下さいね!」 ライト「ワクワクが止まらねぇ!」 リューク(……前から気になってたが…あの姉妹って…) ■ライトくんとおはぎ レナ「こんばんは。」 魅音「やっほーライちゃん。」 ライト「二人とも…どうしたんだ、こんな夜中に。」 レナ「あのね。二人でおはぎ作ったからおすそ分けに来たの。」 魅音「婆っちゃが作ったのもあるからいっぱいあるよー。」 ライト「二人で…? もう本当に僕と結婚してくれないか?」 レナ「は、はぅ…!?」 魅音「ななな、なに言ってんのさ、おはぎくらいで!」 ライト「済まない……僕にはどちらかを選ぶなんて…」 魅音「話を聞け。」 ■夜神兄妹とおはぎ 粧裕「ぎゃっ。おはぎだ。お兄ちゃんどうしたのこれ」 ライト「僕の将来の嫁達が作ってきてくれたんだ」 粧裕「…『嫁達』ってのもどうかと思うよ」 ライト「粧裕はいないのか?」 粧裕「い、いないのかって…彼氏ってこと? い、いないよ!」 ライト「いや…セックスフレンド」 粧裕「お母さん! お兄ちゃんがなんか言い出した!」 ライト「おいお前、母さんに言うなよ! やーめーろ! やーめーろーよ!」 ■夜神家とおはぎ 幸子「……おはぎ?」 粧裕「うん。お兄ちゃんのセッ……えー…友達が作ったんだって」 幸子「ふーん、モテモテねー。お父さんも昔は結構モテたんだけどねー」 粧裕「お父さんは今でもモテるよ。私の友達の間でお父さん人気だもん」 幸子「ほんとに? へー……あんな堅物なのにねー」 粧裕「見てるだけならいい男だから。お兄ちゃんもね」 幸子「おはぎ一個貰おうかしら」 粧裕「あ、なんかね。その中のどれかに当たりがあるんだって」 幸子「あら何かしら……もぐもぐ。あら美味しい!」 粧裕「当たりってなんだろねー。わさびとかタバスコとか入ってるのかな」 幸子「じゃあこれは外れね。外れてよかった!」 粧裕「あはは。私も外れだったぎゃ」 総一郎「む…おはぎ…辛! かっら! うほああああ!!」 リューク『おはぎって美味い…』 ■足音 リューク『なぁライト』 ライト「なに?」 リューク『なんかこの間からライトの行動が村中に筒抜けみたいに感じるんだが…』 ライト「なんだ、今ごろ気づいたのか?」 リューク『ど、どういうことだ?』 ライト「こういう小さな村は村民同士のコミュニティが完成していてね。端の出来事が村全てに伝わるなんてよくある話なんだよ。僕としては自分の行動がどの程度見られてしまっているのか計る必要があったからね。だからこっそり本屋で写真集を買ったり、父さんとあんな店に出かけたりしたのさ。その甲斐もあって、大体どの程度なら大丈夫で、どの程度なら伝わってしまうのか理解できた。どうやら思っていたより村人同士の情報交換が激しいみたいだね。あまり目立つことは出来そうにない。外で話すのはこのくらいの声が限界ってところかな」 リューク『全部計算通りってわけか……。さすがだな……』 ライト「おっと…靴紐が…」   …ペタ ライト「……。……? ……」 リューク『なぁライト……。? どうした? おい。おーい』 ■ここまで来れば大丈夫かな… ライト「……リューク」 リューク『お。やっと喋った』 ライト「デスノートを触っていない人間に死神が知覚されることはあるか?」 リューク「無い……と言いたいが、あの女教師の例もあるからな。だがそんな奴滅多にいないし、俺も経験が無い」 ライト「……。……リュークはリンゴォを食べるときに実体化するよな。そのリンゴを地面に落とせばどうなる? 当然リンゴは落ちるし、音もするだろう。リンゴは砕けるかもしれない。それは実体化した死神が小石を弾いたり、何かに触れて二次的な現象も引き起こせるということだ」 リューク『…そうかもしれないな……考えたこともないけど。死神界のルールと人間界のルールが同じなのか、人間界の物理法則が死神にも適応されるのかは知らない……』 ライト「………さっきの奴は何が目的なんだ?」 リューク『は? ……?』 ■ペタ ライト「………さっき、足音のようなものを聞いた」 リューク『? そうなのか?』 ライト「リュークは僕の敵でも味方でもない。だから自分に得がある場合以外は僕に協力なんてしないし、その反対に僕の邪魔もしない。だったな?」 リューク『…ああ…』 ライト「つまりさっきの僕の問いかけにリュークは分からないって顔をした。僕はそれを信じるよ」 リューク『なんの話だ?』 ライト「たぶん、どれだけ精巧な追跡者でもリュークの目はごまかせない。尾行者はあくまでも僕に気づかれないのが目的なんであって、僕が見えていない時には大胆に動いてるものだからね。だからそんな動きがあればリュークが見逃す筈が無い。つまり、仮に僕の後をついてきている奴がいるとして、そいつは人間じゃない。じゃあ死神か? なんて思ったりもした。でもそうだとしても、やっぱりさっきのリュークの反応はおかしい。同じ死神を見かけてもリュークは僕に教えないだろう。けど、逆を言えば嘘の返答もしないはずだ。リュークを信じるならね。つまり、さっきの足音は人間でも死神でもなく……」 リューク『………』 ライト「気のせい、かな」 リューク『そ、そうか……』 ライト「気を張って損したよ……。さぁ、大神でもやるかな」 リューク『なんでいつも一人用のばっかりやるんだよ』 ■神のお言葉 沙都子「ライトさん。」 ライト「ん?」 沙都子「ライトさんは、誰かに対して『いなくなってしまえ』なんて思ったことはおありですか?」 ライト「……。……どうして?」 沙都子「いえ…ふと思っただけなのですが。」 ライト「そうだな…うん、あるよ。『世の中腐ってる』『こんな奴はいない方がいい』なんてね。そういう感情は誰もが持っているんじゃないかな。だから、間違っているわけがない」 沙都子「……ですが。」 ライト「ん?」 沙都子「誰もが正しくありたくても、その境遇から正しさを選択できないこともある…のではないでしょうか。」 ライト「……。……」 沙都子「あ! い、いえ……もちろん許せない人もいますわ。『あの人さえいなければ』……わたくしは聖人じゃありませんもの。ですが……正しくあることを強要してしまうのもまた悪なのではないでしょうか。………おかしいですわね。なぜこんな話を……。わたくしはただ、夢の話をしたかっただけですのに。」 ライト「……夢?」 沙都子「はい……とても変な夢です。ここと同じ世界なのに、違う世界のような……。そんな変な場所で、これまた変な方に今のようなことを言われたんですのよ。まあ…所詮は夢の話なんですけれど。……とにかく、あの…優しい人間になりたいな、とか…この話のオチはそんなところですわ。いやですわね! こんな辛気臭い雰囲気にするつもりじゃありませんでしたのに!」 ライト「…………。」 リューク『……ライト?』 □ようこそ-2 ワタリ『L……L……』 L「……。ああ…済まない。眠っていた」 ワタリ『いえ……それより、もうすぐ到着しますよ』 L「雛見沢村……4年連続変死事件……か。綿流し…鬼隠し…オヤシロサマ…。ミステリーのようだな」 ワタリ『私がLをこちらにお連れしたのは、休暇を兼ねてのことです。最近Lが休んでいらっしゃるところを拝見しておりませんでしたので』 L「余計なことを…。まあ、いい。資料を読んで興味を惹かれなければ拒否しようかとも思っていたが…」 ワタリ『お気に召しましたでしょうか』 L「いや……いい場所だな」 ワタリ(やはり疲れている……) ひぐらしがなくですの □裏の裏は表 大石「世界最高の探偵L…この村に身を置いているんですかねぇ。」 熊谷「雛見沢分校に竜崎エルという転校生が……。」 大石「そんなことは分かっています! あらゆる局面においても警察の前にすら姿を表さないLが、わざわざ自分から学校に通うわけないでしょう!」 熊谷「に、偽物ってことですか?」 大石「当たり前です!」 □どうも L「どうも。今日から転校して参りました。L……竜崎エルです。よろしく」 沙都子「……個性的な方ですわね」 梨花「目の下に凄いクマなのです」 レナ「クマさん…かぁいいんだよー☆」 魅音「レナ……」 詩音「お姉の好みとは程遠いですね」 魅音「詩音!」 知恵「よろしくお願いしますね。竜崎くん」 L「よろしくおねがいします」 □質問 レナ「竜崎くんはどこから来たの?」 L「難しい質問ですね…世界中を回っていますので」 沙都子「というか国籍は…。」 L「不明です。本籍は……あったかどうか……」 梨花「国籍が分からないのですか……。かわいそかわいそです」 L「ありがとう…ございます…(私が…かわいそ…)」 魅音「なんで雛見沢に?」 L「観光です。秘書にここを薦められまして。日本のこういった場所は新鮮で気持ちがいいです」 詩音「田舎だって馬鹿にしてませんか? 少し出ればそれなりに栄えてるんですよ。」 L「馬鹿になんてとんでもない。そもそもこういう一所に留まる経験が乏しいので、本心から楽しんでいますよ。イギリスには五年ほどいましたが」 魅音「イギリスに五年!? ……世界中を回ったり…エルちゃんってもしかしてお金持ち?」 L(エルちゃん…)  「そうですね……大富豪というわけでもないでしょうが。資産運用は秘書に任せてます」 魅音「頭もいいんだ?」 L「頭が良いかは知りませんが、常に使うようには心がけています。甘い物が手放せません」 魅音(これは……部活にいい人材が…) □ランチ レナ「エルくんはお弁当持ってきての?」 L「はい。やはり皆さんと早く打ち解けなくてはいけないので、そういう準備は抜からないように、とワタリに言われました」 梨花「秘書さんはいい人なのです。」 沙都子「とても大きなお弁当箱ですわね。」 L「はい。どうぞみなさんも摘んでください」 レナ「わー……い?」 詩音「あ、甘いものしか入ってないじゃないですか!」 魅音「凄いデザートの量だね…肝心のご飯やおかずは?」 L「? これがお昼ご飯ですが…」 梨花「……。」 □部活だよ 魅音「それでは、エルちゃんの部活参入を推薦します!」 レナ「意義なし!」 沙都子「わたくしもでしてよ!」 梨花「僕もなのです。」 L「はぁ……部活というのは?」 魅音「くくく……。」 詩音「ふふふ……。」 L「なるほど、つまりは知略を駆使してあらゆる状況にも対応できるような訓練をする部、ということですか」 魅音「そういうこと。まずはジジぬきね。エルちゃん、ルールは?」 L「知ってます」 魅音「話が早いね。じゃあ配るよ。」 L「その前に少し見せて貰ってもいいですか? …とても使い込まれていますね…」 レナ「結構年代ものだよねー。」 L「あ……すみません」 魅音「?」 L「珍しくて眺めているだけのつもりだったんですが、カードの傷と絵柄を完全に覚えてしまいました。もう忘れられません」 梨花「!!」 □部活終了 魅音「エ…エルちゃん強すぎ…。」 レナ「同じ人間とは思えないよ…。」 沙都子「わ、私の仕掛けた数々のトラップが逆に返されるなんて…!」 梨花「……。」 詩音「こんなところにとんだ怪物ですね…。」 L「誇張無く、とてもいい経験になりました」 魅音「またまたー。私たちなんて何でもなかったクセに!」 L「いえ…誰かとこうして遊んだ経験など孤児院時代から無かったので」 魅音「…ほんとに楽しかった?」 L「はい……皆さんとは一日も早く友達になりたいです。」 レナ「? なに言ってるのかな?」 L「はい?」 詩音「喋ってご飯食べてゲームして……私たち、とっくに友達じゃないですか。」 L「……もう…友達……」 沙都子「今回は敗北を喫しましたけれど、次はこうはいきませんわよ!」 魅音「そうだね。部長であるおじさんの実力がこんなもんだと思われるのは心外だよ。」 レナ「次は負けないもんね、梨花ちゃん。」 梨花「おー、なのです。」 L「………」 レナ「どうしたのかな、かな?」 L「いえ」 □質問2 大石「あなたがL…?」 L『いえ、そこにいるのは代理です。私はいま雛見沢に建てた家でおやつを食べています』 大石「そ、そうですか…。」 L『事件の概要は大体分かりました。事件資料にも目を通して……まぁ、ほとんど解明できました』 大石「!?」 L『とは言ってもまだ推測でしかないですし、まだ調べてみたいこともあります。……本当は綿流しの夜に実際に人が死んでくれれば一番いいのですが、やはりそれは防がなければなりません。当日の夜は警備を強化し、備える。当面はこれ以上言うことは無いです。それでは』 大石「ちょっ…!」 ワタリ「私はこれで」 大石「………。」 □犯人は… L『Lです』 大石「今日は何か…?」 L『これまでの捜査方針を見てまず思ったんですが……。とりあえず大石さんにはもうちょっと一歩引いた捜査をお願いします』 大石「!?」 L『結論から言ってしまいますが、園崎家はシロです。強いていうなら貴方が犯人です』 大石「は!?」 L『というのは言い過ぎですが……。貴方の接触の仕方はここの住民に他ならず、無知な人間ほど不安にさせてしまいます。雛見沢でなければ問題は無いのですが……申し訳ありません。それと鷹野さんの奇行にもちょっと注意を傾けてください。そこら辺の詳細はまた後日ご説明します。では、私は学校がありますので』 大石「……。」 □勉強しよう そうしよう レナ「エルくんー。教えて貰った証明問題も簡単に解けたよー。」 L「ヘルマーの定理の証明はコツさえ掴めば簡単ですからね」 魅音「エルちゃん、ここ教えてよ。波動関数がどうのってやつ。」 L「魅音さん…そこは先程教えましたが」 魅音「わかるか!」 □『天使』の流法ッ L「……ここは?」 ワタリ『エンジェルモートという店です』 L「……なにやら物凄い賑わいだが」 ワタリ『本日はデザートフェアですので』 L「! デザート…フェア…だと…!」 ワタリ『チケットを手に入れるのに苦労しました。存分にお楽しみください』 L「素晴らしい働きだ」 ワタリ『がっちゃ』 L「ところで、お前は来なくていいのか?」 ワタリ『友人水入らずに、水は差せません』 L「?」 魅音「あー! エルちゃんいた。ヤッホー!」 レナ「今日はチケットありがとね。」 沙都子「魅音さんのコネでも入れましたのに、本当にLさんはええかっこしいですわ。」 梨花「感謝感謝なのです。」 L「……ワタリ……」 □『天使』の流法ッ -part2- 詩音「みなさんいらっしゃいませ! 今日は…うわ!」 L「ああどうも詩音さん。とても素敵な制服ですね。魅力的です。デザートもとても美味しくて…」 詩音「…そ、それはどうも……凄いですね。」 魅音「お、おじさん…もうお腹いっぱいだよ……。」 レナ「レナも…。」 沙都子「底なしですわ…。」 梨花「……けぷ。」 L「そうですか? とりあえず全種類は制覇したんですが、まだ食べ足りません。それにしてもお世辞抜きに本当に美味しいですね。この店は度々利用させて頂きます」 詩音「……人間じゃねー…。」 □エルくんとおはぎ レナ「こんばんわー。」 魅音「やーやー。」 L「お二人ともどうしたんですか?」 レナ「エルくんが家で一人ぼっちだって聞いたから遊びに来たんだよ。」 魅音「ついでに問題も作ってきましたよー。」 L「問題?」 魅音「じゃーん。」 L「……これは……。正解はおはぎですね?」 レナ「おはぎかどうかが問題なんじゃないよ!」 魅音「このどれか一つにある仕掛けをしてあります。どれでしょうーみたいな。私たちは正解知ってるからエルくんに当ててもらうよ。まあ今じゃなくてもオッケーだけど。」 L「なるほど面白いですね……全てお二人で?」 レナ「ううん。魅ぃちゃんのおばあちゃんも作ったんだよ。」 魅音「ふっふっふ…。毒が入ってるかもねー。」 L「素晴らしいです……。じゃあ一個頂きます。なんだかこれが正解な気がしますね……。もぐもぐ。」 レナ「あ。」 魅音「あ。」   ガタン! レナ「エルくん? エルくん!」 魅音「せ、正解!? 正解だったの!? でもタバスコが入ってるだけだからその反応はおかしいよね!」 L(やはり…私は間違っては……いなかった……。が……ま……) レナ「エルくーーーーーーーーーーーん!!」 □突撃、竜崎の晩ご飯 沙都子「エルさん、わたくしがやってきましたわよ!」 L「よく来ましたね、沙都子さん。いま晩ご飯を食べていたところです」 沙都子「…どこをどう見てもケーキにしか見えませんが…。」 L「ああ、すみません。間違えました。晩ケーキです」 沙都子「晩ケーキ!?」 沙都子「そんなのばかり食べていると栄養が偏りますわよ!」 L「大丈夫です。人間の生態維持に必要な栄養素を練りこんだスイーツをワタリが作ってくれますので。ワタリが作ってくれますので」 沙都子「2回言いましたわね! そういうことじゃありません!」 L「?」 沙都子「たまにはちゃんとした『料理』を食べませんと、身体は大丈夫でも心がやつれてしまいますわ。」 L「…身体は大丈夫でも心が…。名言です、沙都子さん。涙が出そうです」 沙都子「……ですから、今日は私が料理を作りに参りましたの!」 L「…沙都子さんがですか? 失礼ですが今日は用事が…」 沙都子「本当に失礼ですわね!」 □突(ry 2 沙都子「キッチンを借りますわよ。」 L「ああ、はい…ワタリ」 ワタリ「はい」 沙都子「ど、どこから…。」 ワタリ「こちらです」 沙都子「出来ましたわー。」 L「…野菜炒め、ですか…」 沙都子「こういった食事こそ人間らしさというものですわ。さぁ、召し上がってください。」 L(甘いもの以外は久しく口にしていないな…) 沙都子「どうですか?」 L「……美味しいです。こういう食事は本当に久しぶりですよ。ただ…」 沙都子「?」 L「まだまだ改善の余地ありです。申し訳ありませんが、沙都子さんに私秘伝の野菜炒めを伝授します」 沙都子「え、ええ!?」 ワタリ(L……アレを…) □と(ry 3 L「どうぞ召し上がってください」 沙都子「……お、美味しいですわ!」 L「何年ぶりでしょうか…特級調理師の大会で優勝して以来です」 沙都子「料理できるんじゃありませんの……わたくしなんて…。」 L「沙都子さんのおかげです。確かに私は何年も何年も人間らしい食事などしていませんでしたから。それを思い出させてくれたのは沙都子さんですよ。ありがとうございます」 沙都子「…エルさん…。と、当然ですわね! ところで、エルさん秘伝の調理方法を試しても構いませんか?」 L「はい。沙都子さんなら出来ますよ」 沙都子「少し教えて頂いただけでこんなに美味しく……!」 L「素晴らしいです。完璧とは言えませんが、上達が早いです」 沙都子「あ、当たり前ですわ! 淑女たるもの、日々進歩! もう数時間も前の私じゃありませんわよ!」 ※大量に余った野菜炒めは、後でワタリが美味しく頂きました! □理由 L「詩音さんと沙都子さんはとても仲が良いですね」 詩音「そう…見えます?」 L「? はい」 詩音「……良かった。……私…昔のことなんですけど、沙都子のこと嫌いだったんです。」 L「……。」 詩音「でも、悟史くん……あの子のお兄さんなんですけど、その人から沙都子を預けられて…。あー、どうなんでしょうね。それが理由ってわけじゃないと思います。悟史くんはもういないのに、沙都子の傍にいる理由なんて無いじゃないですか。………意地があったんだと思います。」 L「意地……」 詩音「……沙都子の事が嫌い。約束なんて知らない。そうする方が私としては自然だった筈なんですけど……どうしても駄目でした。そうする事を選べなかった。……そう、意地になってたんですよ。あの人との約束を守れる自分でいたい。沙都子の傍に居続ける自分でありたい。結局は自己愛。そして悟史くんの為。沙都子への愛は無かった……と、思います。」 L「……。」 詩音「だけど。……沙都子の好き嫌いを少しずつ無くしていったり、沙都子の事を考えたりすることが、私の中でだんだんと特別なことじゃなくなっていっているのが分かるんです。沙都子の為にカボチャを煮たり、沙都子の仕掛けた罠に引っかかったり。そうしている時間が、最近では驚くほどに心地良い。ただ順応しただけなのかもしれません。今でも沙都子の事が嫌いで、それを意識していないだけなのかも。そんな自分に嫌気が差すこともあります。けど……。私は、今の自分も結構気に入ってるんです。それは間違いなく本心ですから。」 L「……そうですか。貴重なお話ありがとうございます。……」 詩音「なんでこんなこと話したんでしょう…? エルちゃんを通して誰かに伝えたかった……のかな。エルちゃん、私が夢で見た人に似てるんですよ。顔とかは全然違うのに。……変ですね。」 ■□考えてみよう ライト(鷹野のスクラップを読んだから、というわけではないが…。これまでの事件資料や雛見沢の歴史を顧みるに、恐らく……雛見沢には複数の固定観念のようなものが存在する……) L(最低でも2つ) ライト(一つは疑心暗鬼に囚われ、自我を喪失するような状態。恐らくは一連の鬼隠しや殺人事件はこれに侵された人間が行っている。人間を特定の発狂状態に移行させる何かがこの土地にはある。閉鎖的な村に時折みられる何らかの心理行動の一環と言えなくもないが、それで説明づけるには明らかに行き過ぎている。外因性の精神疾患か…。鷹野は寄生虫だの御託を並べていたが、僕の推測ではさらに感染効率の高いもの。……ウイルス性の病か? つまり『オヤシロさま』とは……。) L(心理的条件に起因して発症するタイプのようだな。特異な病例だ。…世界の医療機関に掛け合って研究させるか…。そしてルールその2) ライト(鬼ヶ淵等の伝承…祟り…) L(鬼隠しと殺人事件の奇異な対応…。園崎の機密性と手の長さ。さらにはそこから派生する、ダム戦争時の派閥、確執…村による北条家への弾劾。それらが作り出している、この村特有の『事件発生を許容する精神的風土』) ライト(この二つが繋ぎ合わされることで毎年の事件が発生し、事件発生によって事件発生が自然なものと化す) L(互いのルールが互いを補強しあっている) ライト(上手く出来ているな…なかなか面白いが……タネをばらせばこんなもの) □■もっと考えてみよう L(だが……) ライト(それだけではないはず。外因性の病という背景があるからこそ、面白いほどに浮かび上がってくるものがある) L(私の考える『雛見沢特有の病が発症する条件』に北条沙都子は合致する。そして古手梨花と二人揃っての定期的な診療所への訪問。表向きな理由がそれらしく用意されてはいるが……、これは入江診療所による件の病の治療と考えられる) ライト(病が蔓延し、それを自覚しているのであればその対策機関が発達しているのは道理だからな。そしてそれほどまでの症状を、現在の沙都子レベルまで抑えることが出来る…。そこまで研究が進んでいるのであれば、何の資金援助・支援が無いというのは考えられない。病原菌一つとっても突き詰めた研究をするのに結構な金がかかるからな…。ならば) L(この村、いや、入江診療所にはそれなりのバックがついている。しかし雛見沢とそれだけの資金源が繋がっているというなどという話は聞かないし、こんなウイルスをこんな深度まで研究するメリットが限られてくる) ライト(大方、研究資金もそれ程割いているわけでは無いのだろう。案外見限られる直前なのかもしれないな……。だが、腐っても病体研究。そんなものを『片隅の予算』で賄えてしまう規模の組織……) L(派閥化した日本政府の一機関というオチか? 園崎と繋がっている、とも考えたが……) ライト(ダム事件のことを考えるとその線はあまり濃厚では無さそうだな……) L(なによりもそこまで派手に動いて警察が園崎の不自然さを何も掴めていないというのが…。ならば診療所と外部が繋がっていると素直に考えた方がいい。問題はそのパイプラインだが…) ■もっともーっと考えてみよう□ ライト(雛見沢での研究、そして資金援助の掛け合い。それを繋ぐ人間がいる) L(一定の間隔でこの村へ訪れ、それなりに背景が洗えない人物) ライト(富竹) L(そしてその恋人である鷹野三四は都合よく入江診療所に勤めている…。……。……。点と点が繋がりすぎて逆に面白くないな) ライト(そういう組織の存在を疑ってしまえば、ダム事件時の誘拐…その不自然さが見えてくる。例年の事件を調べていく中で、背後に妙な気配がちらほらと……。) L(雛見沢2つのルールを踏まえ理解した上で何者かが操縦している。……そんなニオイがするが……) ライト(もしそうだとするならば) L(入江診療所のバックボーンこそが) (雛見沢に存在する、最後のルール) □叔父の帰還 沙都子「………。」 L「おはようございます、沙都子さん」 沙都子「ええ……おはようございますわ……。」 L「沙都子さん? ………」 レナ「えるくん……ちょっといい?」 L「……沙都子さんの叔父が? (北条鉄平か……)」 レナ「う、うん…。」 魅音「身の回りの世話をさせているみたい…。」 梨花「あの様子では…酷いことをされているのです…。顔などに傷はないようですが…」 L「……。……」 レナ「えるくん?」 L(……親権者の立場から言えば別に北条鉄平は犯罪を犯しているわけではない…。現行犯として取り押さえなければ、身体にあるであろう痣もいくらでも言い逃れできる…。ならばカメラや盗聴器を仕掛けて…馬鹿な、常に北条鉄平がいる状態でどうやって…。い…いや…ただ仕掛けるだけならいくらでも方法が…なんだ、動揺しているのか私は…) 詩音「もう黙ってられるか! 今すぐ私が鉄平を殺す!」 L「!」 □なんとかします 魅音「詩音…。」 詩音「てめぇらはそうやって指くわえてろ! 私が…!」 L「待ってください、詩音さん」 詩音「あぁ?」 L「人を殺して得られる幸せなんて間違っています。『自分の所為で詩音さんに人殺しをさせてしまった』という傷を沙都子さんに負わせるつもりですか?」 詩音「! …それでもこのまま鉄平を野放しに出来るかァ!! 奇麗事なんていくらでも言え――!」 L「……かつての北条悟史さんの失踪…残された沙都子さん。なぜ彼女がここまで意固地になって、周りに助けを求めないのか…。ある程度状況証拠が揃っていれば推察できます。沙都子さんが自分で助けを求めなければ意味が無いんです」 詩音「沙都子は今! この瞬間に傷つけられてんだ!」 L「時間はかけませんよ。私に少し任せて下さい」 □エルえもん L「沙都子さん」 沙都子「……みなさんはどうしたんですの? …もう授業が…始まりますわよ…。」 L「叔父さんが帰ってきたそうですね」 沙都子「!」 L「色々と事情は聞き及んでいます。ですが、私は貴方を説得できるとは思っていません」 沙都子「……」 L「自分が最後まで耐え切れれば、悟史さんが帰ってくるかもしれない…そう思っているのでしょう? ……それが正しいとか間違っているとか、私には決められませんし、ここで『それは違う』と言った程度では絶対に揺るがない覚悟を、沙都子さんはしている筈なんです。ですから、手段だけ預けておきます」 沙都子「……?」 L「『スグカケツケール』!」 沙都子「!?」 L「ワタリが発明した、緊急救助要請ツールです。ベルト式なので着用してくださいね。バックル部分を二回叩けばワタリに救助要請がいきます。すぐに駆けつけます。はっ! 『スグカケツケール』ってそういう意味だったんですね…!」  沙都子「……いりませんわ、こんなもの。」 L「はい。言うと思いました。ですから『使え』とは言いません。しかしこれは沙都子さんのけじめのようなものだと思ってください」 □サト太くん 沙都子「けじめ…?」 L「いま沙都子さんはみんなに心配をかけています。これは分かりますね? ですが、そんなものを分かった上で、沙都子さんは自分の意地を通そうとしている。しかしそんな姿がみなさんの心配を増長させている。沙都子さんとしてはそんなものは煩わしい配慮に過ぎないのでしょうが…」 沙都子「……。」 L「……しかし、心配するな、と言われて止めるような友人達ではないことは、他ならぬ沙都子さんが一番知っているのではないですか? 彼らの誰か一人が沙都子さんのような状況に陥れば、沙都子さんが心配することを止められないように」 沙都子「…………。」 L「ですから、スグカケツケールはそんなみんなの心配を緩和させるものだと考えてください。こんなニッチモサッチも行かない状況よりも『助けさえ求めてくれればすぐにでも…』ということであれば、みなさんからは少なくとも自分がどうすればいいのか分からない、という不安を多少は取り除くことができます。………この理屈、分かります?」 沙都子「それは、暗にわたくしが助けを求めることを期待し、助けを求めないわたくしの所為に出来る、ということではありませんの?」 L(! ……会話が成立するようになった…判断力が復活してきたな…) □言葉は無意味 L「そう考えて頂いて結構です。というか、私たちは貴方に期待をしているんですよ」 沙都子「……わたくしに?」 L「助けてください、沙都子さん。私たちの大切な友人が、私たちに助けを求めてくれないんです」 沙都子「!」 L「助けてください、沙都子さん。私たちの大切な友人が、いつまでも自分の足で立とうとしないんです。『にーにーが助けてくれない限りは、自分では戦わない』。そう言って聞かないんです」 沙都子「!!」 L「助けてください、沙都子さん」 沙都子「やめてください…やめて!」 L「助けてください、沙都子さん。…こんなにも言葉が無力なんです」 沙都子「! …?」 L「いくら沙都子さんに勇気を発揮して欲しくて言葉を紡いでも、届かないんです。そちらから手を伸ばして貰わないと、届かないんです。助けてください。沙都子さんを助けることが出来ない私たちを、助けてください」 沙都子「………」 レナ「あ…沙都子ちゃん!」 魅音「……家に帰ったのかな……」 詩音「鉄平のいる家に!? 大丈夫なのかよ!」 L「…分かりません」 詩音「はぁ!?」 L「……自分で自分のことが理解できなくなったのは初めてです。他人のことで動揺している自分も始めてのことです。…………。…………。とにかく、手段は与えました。これで沙都子さんさえ我々に助けを求めてくれれば、いつでも……」 レナ「……確かに沙都子ちゃんは甘えているのかもしれない。でも、まだ子供だよ?」 L「………。………」 レナ「そこまでの強さを期待するのは酷なんじゃないかな。……無理にでも手を掴んで助ける方法があれば、今はそれがいいんだと思うけど…。」 L「………。………」 □もしも。  ……助けてください、沙都子さん…… 沙都子「……。」 テッペイ「sjfどjfdさjfjふぉ!!(訳:少し部屋が汚いと私は感じました)」 沙都子「ひっ!」 テッペイ「えおf8jvgfjffふぉ!!(訳:私は貴方に掃除しておけと言いました)」 ワタリ「スイッチが2回押されることで北条宅周囲に待機している警官の携帯がなり、虐待の現行犯として取り押さえる手筈になっております」 レナ「でも、もし沙都子ちゃんから助けを求められても、やっぱり恐い思いをさせちゃうんだね。」 ワタリ「………。」 魅音「沙都子は押すのかな……。」 詩音「押さなかったら、私が鉄平をぶち殺すだけ。」 魅音「詩音…。」 テッペイ「さふしあはhfdさhdhふぉ!!    (訳:誰に育てて貰っていると思っているのですか? せめて役に立ってください)」 沙都子「ごめ、ご、ごめんなさい! 今すぐ片付けますから…! お買い物にも行きますから!」  …兄が助けてくれない限りは、自分では戦わない… 沙都子「お洗濯もしますから!」  …ここで『それは違う』と言った程度では絶対に揺るがない覚悟を… 沙都子(違う、そんな覚悟なんて…!) □もしもしも 沙都子「いや、怒鳴らないで、怒鳴らないで! ………。」   楽しかったこと、嬉しかったこと、悲しかったこと、全てひっくるめて、   沙都子を動かすに足るものだと信じている。そこに込められた魂を信じている。 沙都子「!」 テッペイ「!? m、ふjysjfhsjkfへふぉ!!    (訳:どうしたのですか? なぜ突然喋らなくなったのですか?) 沙都子(もしも……。) ……彼らの誰か一人が沙都子さんのような状況に陥れば…… 沙都子(…………こんなこと……もし、梨花が………。……!) ……はい。沙都子さんなら出来ますよ…… 沙都子(……にーにーにも、出来たこと……。)   「……淑女たるもの……」 テッペイ「kgkgkgkぎshjgkdふぉ!!?(訳:ブツブツと何を言っているのですか?)」 沙都子「もう……。」 テッペイ「!?」 沙都子「もう、何年も前の私じゃありませんわよ!」    カチカチ □来ちゃった  ピー ピー ワタリ「!!」 レナ「なに!?」 魅音「これは……。」 詩音「沙都子……!」 ワタリ「L…! ……。…?」 刑事A「来た! 突入だ!」 刑事B(あれ、いま…?) 鉄「うぎゃあ!(訳:うぎゃあ!)」 沙都子(………? わたくし、殴られて……ない? …!) 「……あ……」 ワタリ「Lはどこに!? こ、これは! 変わり身の術だってばよ!」 魅音「エルちゃん!」 沙都子「……遅いんじゃありませんの?」 L「すみません」 □ぶっちゃけた話 L「……私の権限を使って、無理矢理に鉄平をどうにかすることも出来たんです。証拠なんてものはそれこそいくらでもでっち上げることはできましたし。手段を問わず沙都子さんと北条鉄平を引き離す、という結果だけを求めるなら、それこそ数多の方法があります。例えば先ほど詩音さんが仰っていたように北条鉄平を殺害すること。殺人で人が救えるとは思えませんが、傷はいつか癒えると無茶な期待すれば……この方法もアリと言えばアリです。雛見沢の特性を考えると、実行犯のアリバイを村ぐるみで隠蔽することも不可能ではないでしょう。北条鉄平が何者かに殺された。しかし誰のアリバイにも不備が無いことを私達全員が口を揃えて証言している。これで通ります。死体を隠すこともそれほど難しいことでは無いと思いますし、殺害が綿流しの夜ならば尚のこと良しです。まあ余りにも極端過ぎる例ではありますが……」 梨花(! ……綿流しの事を、知っている…?)」 レナ「でもエルくんは沙都子ちゃんに助けを求めて欲しかった。」 L「………はい。強くあれ、なんて口にするほど傲慢ではありませんが、沙都子さんから『にーにー』という逃げ場所を取り上げないと、何か別の形で彼女はまた繰り返してしまう…それを避けたかったんです。…と、頭の中では考えていましたが……考えている最中でさえ、それが正しいのかどうか分かりませんでした。レナさんから『沙都子さんはまだ子供』と言われたとき…迷いました」 (あるいは……犯人逮捕には確実な証拠をあげる、という私のやり方を崩したくなかっただけなのか……。……自分を冷静に分析できない) 魅音「エルちゃん……。」 L「私はこれまで友人に恵まれなかったもので、その接し方が分かりません。理詰めで考えようとしても、根底で冷静になりきれないんです……。初めての経験です」 ワタリ「ロスト・ヴァージンですね」 魅音「なに言ってんの!?」 詩音「けどエルちゃんは『スグカケツケール』が鳴る前に走りだしてたじゃないですか。まるでヒーローみたいで…かっこよかったですよ?」 L「…詩音さん……好きになりますよ?」 詩音「…いや、ほら、私には悟史くんがいますし…」 L「残念です。ワタリ、沙都子さんは…」 ワタリ「はい、病院にてごゆっくりと眠られておりますよ」 L「そうか……よかった」 梨花(……エル……ありがとう……) ■大変だ! ライト「なんだって!? 沙都子が…!?」 レナ「うん…叔父さんが帰ってきて……。」 ライト「くそ! なんだって今ごろ!」 魅音「ライちゃん、落ち着いて…。」 ライト「…そうだな。僕達が落ち着かなきゃな……。沙都子は、なんて?」 梨花「……自分からボクたちに助けを求めるつもりはなさそうなのです…。」 魅音「耐えれば、悟史が帰ってくると思ってるんだよ…。」 ライト「……じゃあ、ここでいま何かを言っても無駄か…よし、僕に考えがある」 レナ「?」 ライト「この村を根底から変えてやるのさ!」 リューク『なんだこの熱いライト……』 ■数時間後 ライト「さて、村人達と北条家の確執を取り除いて、園崎お魎さんを篭絡して力を貸してもらって、次は児童相談所への抗議を始めるわけだけど…」 レナ「…展開が早すぎる気がする。」 ライト「僕は器用だからね」 魅音「……うちの婆っちゃをメロメロにするなんて…。」 ライト「僕はルックスもイケメンだからね」 魅音「……婆っちゃと二人きりで何してたの?」 ライト「沙都子…頑張れよ…」 梨花「あとはどうするのですか?」 ライト「児童相談所の前に村人をごっそり引き連れてデモろう。僕の父に協力して貰って色々なことに目を瞑ってもらって、そして園崎の議員に手を回して貰う。あとは……いや、ここからが難しい」 魅音「? どういうこと?」 ライト「沙都子から助けを求めて貰わないと、結局のところは何の解決にもならないってことさ。だから、ここから沙都子をどう説得するか…だ」 梨花「でも…それが出来るのなら最初から問題が起きていない気がするのです…。」 ライト「いや……そうでもない。こうやって手を尽くしたのは僕たちからのアピールの意味がある。『僕たちは最善を尽くしている。あとは沙都子が手を伸ばすだけだ』ってね。もちろん全ては僕の理屈の上でのことだ。上手くいく保証なんてない。でも、僕は僕の打ち立てた理屈なんかよりも、これまで皆が沙都子と一緒に歩んできた時間、楽しかったこと、嬉しかったこと、悲しかったこと、全てひっくるめて、沙都子を動かすに足るものだと信じている。そこに込められた魂を信じている。だから……あとはよろしく頼むよ。僕に出来るのはここまでだ……」 魅音「……ライちゃん……。」 梨花「後は…私たちの仕事…。」 リューク『…………』 羽入「…………。」 ■ヒーロー 梨花『……ライトは、そう言っていたわ……。ねぇ沙都子、私たちの絆は、こんなことで崩れてしまうようなものなの…?』 テッペイ(jdさjふぉ…)(訳:不必要なことを言わないで下さいよ…) 沙都子「……………。」 梨花「私たちは、出来ることを全てやった! あなたは!? 本当にそのまま待っているつもり!? 自分が何もしないことを、悟史の不在の所為にして…! いつまでそうしているのよ! あなたがこちら来たいと思えば、すぐにでも全て終わりに出来るのよ……!」 沙都子「…………て…。」 梨花『!』 テッペイ「!?(訳:!?)」 沙都子「助けて! 私は……!」 テッペイ「fdそいsfふぉ!!(訳:あなた、ふざけないでください)」 沙都子「あっ! 痛っ…!」 テッペイ「ぐぁ! …ふぉ!?(訳:ぐぁ! なんだ!?)」 沙都子「あ……!」 ライト「沙都子!」 大石「まったく…うちの人間のより先に北条氏を拘束したら警察の格好つきませんよ…んっふっふ。」 総一郎「ライト…よくやった!」 リューク『ライト…マジでどうしちまったんだ? らしくないぞ……まぁ、これもまた面白だけど…』 羽入「ライト…かっこいいのです。」 ■みんなのところへ ライト「帰ろう。みんな待ってる」 刑事A「先に病院に……。」 沙都子「いいえ…みんなの顔を見てからにしたいですわ…。」 ライト「…そうか…じゃあ僕と沙都子は後部座席に座ろうか。二人でイチャイチャしよう」 沙都子「な、何を言ってるんですの! ライトさんは助手席に座ってください! わたくしなら大丈夫ですわよ!」 刑B「さ…さあ行こう」 刑A「今日は交通量が激しいなぁ。」 ライト「そうですね。……沙都子」 沙都子「はい?」 ライト「本当に身体は大丈夫なんだな?」 沙都子「もう…何度も言わせないでくださいませ…。」 ライト「ほら、顔にゴミがついてるぞ」 沙都子「あ…どうも…。! あ…ああ!!」 ライト「! どうしたんだ!?」 沙都子「いやああ! 化け物!!」 刑B「あ! ドアを開けちゃ……! あああ!」 ライト「沙都子!!」 ■回想 ライト(あの日から何度も足音を感じるような……。気のせいなのかもしれないが…。もし気のせいじゃなかったら危険だな…。リュークの反応から見て僕の気のせいだと判断したが……。……仮に死神だとすれば、リュークの姿が見えているはず。では、人間と死神の両方を意識して行動できるなら…。リュークに気づかせずに動けても不思議じゃない。……だがなぜボクの後をつける? 監視しているのか? 何のために? 死神でも所有者でも、僕をいつでも殺せるはずだ。……。もし、僕がこの村に仇なす存在か否かを見極めているとしたら…。僕に怪しいそぶりがあれば、村を守るために僕を殺す。くそ、僕が誰かに命を握られるなんて…。何か方法はないか…。僕は雛見沢にとって有益な人間であるとアピールする方法…) 総一郎「ライト」 ライト「父さん? どうしたんだ?」 総一郎「お前には話しておこうと思ってな…。実は北条鉄平という男が……」 ライト「……。……なんだって!?」 (…使える…) ■つまり… リューク『つまり、お前はいもしない死神と、憑かれた人間に怯えてここまで大掛かりな芝居をうったってことか?』 ライト「仕方ないだろ? 僕は死神なんてものと出会ってから日が浅いんだ。普通、人間界にどの程度潜伏しているものなのか、なんて分かるわけがない」 リューク『まあそれもそうか……。それで、色々とワケが分かんないんだが…』 ライト「村人の殆どを巻き込んだのは、ノートを持った人間が誰か分からなかったからだよ。あれだけ集めればあの中にはいるだろうとタカをくくったんだ」 リューク『北条家と村を仲直りさせたのもその為か…』 ライト「それだけじゃないけどね。扇動されて行動を起こそう、っていう人間は、得てして直情的なものなんだ。もしも僕に心動かされて沙都子を助けよう、と思ったらその時点でスティール(鉄平)の名前をノートに書いてもおかしくない。前に説明したが、雛見沢には『綿流し後には人が死んでもおかしくない』という不思議な空気がある。つまり綿流し前に鉄平を殺すということは、そういう雛見沢特有の空気にあまり触れていない人間がノートを持っていることになる」 リューク『かなり絞れるってわけか…まあ、全部お前の勘違いだったんだけどな』 ライト「言うなって…。でも、もしもノートを持っている人間が村に害のある者を殺すんじゃないかと考えたとき、焦ったよ」 リューク『なんで?』 ライト「リュークが知恵留美子を殺したからだろ!」 リューク『あ、ああ…そうだったな…忘れてた。……で、でもアレだな。グチャグチャになった沙都子を抱きかかえて泣き叫んだあの演技は見事だったな…。さすがライト……。ん? あの大騒ぎがノート持った奴へのアピールなら、沙都子を殺したら元も子もなかったんじゃないか…?』 ライト「沙都子をノートに書いて殺したんならね」 リューク『え? ……』 ■つまりつまり ライト「沙都子には車の中でノートの切れ端に触らせて、リュークの姿を見せただけさ。当然おびえる。病気の所為もあるし、しかもあんなことの後だ…まともじゃいられない。だからシートベルトをつけなくてもいい後部座席に座らせたんだ。それで僕が助手席に座れば、僕が何もしていないことと、沙都子が車から飛び降りた非が僕に無いことを二人の刑事が証明してくれる。飛び降りる前に沙都子が取り押さえられる可能性の方が高いし、そもそも飛び降りるかどうかも賭けだった。でもまあ、成功したね。正直な話、あの時点で沙都子が死のうが生きようがどちらでも良かったんだ。死神と所有者に接触できれば、後はどうにでもなる」 リューク『…そんな面倒なことしなくても、普通にノートで殺せばよかっただろ?』 ライト「馬鹿だな。デスノートは殺す人間の本来の寿命に関係なく効力を発揮するんだぞ? もしノートで殺したら、沙都子の寿命はまだ残ってるのに死んだ……つまり、ノートを持っている僕らが殺したってことが分かってしまうじゃないか。ノートで殺したわけでもない、本当に偶然に事故で死んだ沙都子のために泣く僕…。もう誰がどう見たって信用していい対象だろう」 リューク『なるほど……で、鉄平は殺さなくていいのか?』 ライト「おいおい……鉄平の前科は知らないが、今回やったことと言えば虐待程度だろ? そんなのを今の段階でいちいち殺してたら僕が神になるための計画が狂ってしまう。新世界の神は寛容さも持ち合わせているんだよ」 リューク『………で、だ。例の足音だが……俺がたてた物音なんじゃないのか?』 ライト「……あっちゃー……」 リューク『ライトはおっちょこちょいだなー』 ライト「めんごめんご(爆笑)」 ひぐらしがなくですの ■ステルス探偵 HA-NEW 羽入「ただいまなのです。今日のパトロール終了なのです。」 梨花「……おかえり。」 羽入「……元気だすのです。……無理……ですか…。」 梨花「ううん…ありがとう。……鷹野や山狗たちの動向はどう?」 羽入「どうもこうも……やはり普段は平穏そのものなのです。」 梨花「……鷹野を殺せば…。」 羽入「……確かに鷹野を殺せばこの村での作戦自体は止まるかもしれないのです…。でも……そんなことをしてもこの世界で沙都子は死んだし、レナも人を殺すのです。他の世界ではいざ知らず…もはやそういう問題ではないのです。」 梨花「分かってるわよ……くっ……あれだけ注意していたのに…沙都子……。やっぱり…ライトの世界では……無理なの?」 羽入「そんなことないのです……梨花の覚悟はその程度だったのですか?」 梨花「……そうね。例え、あと1000年かかろうとも、私は絶対に諦めたりしない!」 羽入「そのいきなのです。………。」 ■おっぱい界のヒマラヤ山脈やー 鷹野「あら……。」 ライト「アレエーッ! 鷹野さん!」 鷹野「…お…おはよう…。」 ライト「雛見沢の乳神大王に出会えるなんて…なんていい日なんだ…!」 リューク『パクんな』 鷹野「ち、ちちがみ…なに?」 ライト「はい。乳神姉妹の園崎魅音、詩音…そして彼女達のような至高のおっぱいを持つ神々を統括する存在……それがあなたです」 鷹野「そ…そう…ところでライトくん…。」 ライト「神! なんでしょう!」 鷹野「……ライトくんは、とっても頭がいいって聞いたんだけど……。」 ライト「いえ…僕はただおっぱいが大好きなだけで……」 鷹野「こ、これ読んで。私が書き溜めたものなんだけど、君の感想が聞きたいの! そ、それじゃあね!」 ライト「神の仰せのままに…あ、逃げた……。ふん…あれがツンデレって奴か…」 リューク『………』 ライト「スクラップ……この村の歴史について書き溜めてあるのか…? そんなことより今の出会いを乳ノートに書いておかないと」 リューク(……あの女……) ライト「おっぱいって柔(やわらか)ッ!」 リューク『パクんな』 □鷹野たん 鷹野「あら……。」 L「おはようございます、鷹野さん」 鷹野「おはよう……くすくす。沙都子ちゃんの一件は大活躍だったそうね。」 L「全て詩音さん達のお力添えがあったからこそ、です。それより――」 鷹野「さすがは世界最高の探偵ね。」 L「!」 (……。いや、この女が私の考えている通りの立場にいるなら、『Lの存在』だけなら調べられても不思議ではない。今の発言はあらゆる事件に対する何一つの証拠や根拠にはならない。だがこちらはこれでこの女達が警察とも繋がっている可能性を深めなければならなくなった……。いや、それよりもここであっさりと『Lが雛見沢にいることを知っている』ということを漏らしたのは、雛見沢の病やその背景を私が容易に調べられても、そこにある犯罪までは見つけられないという余裕の現われか? やはり決定的証拠は過去の事件を洗い直すことでは出てこない……? あるいはそう思わせたいがためのハッタリか……) 鷹野(……大方、こちらに対して何らかの情報を突きつけて揺さぶるつもりだったんでしょうけど…残念だったわね。警察内部に内通者がいる、と意識しただけで貴方は極端に動き辛くなるはず。仮に貴方がLじゃなくてもLだとしても、どこからか応援を呼ぼうとも、興宮警察の疑いを晴らそうとも……最早、綿流しまでには壊滅的なまでに時間が無い。逆に自分が焦れていることを証明してしまったわね。その行動力が仇となったのよ……くすくす。) L「……。ご存知でしたか、これはお恥ずかしい。実は私、雛見沢一連の怪死事件を追っていまして」 鷹野「少し唐突だったかしら。だけどあの『L』なら私の正体なんてとっくに掴んでいると思ったんだけど。」 L「……。はい、大体のところは。……。正直な話、私は一連の事件の背後に『あなたがた』が潜んでいるのではないか、と考えています」 鷹野(! ……思った以上に踏み込んでくる……。けど) 「まあ心外だわ。だけどそれもまた、綿流しの夜には分かることよ。」 L「……そうですね」 (結局……綿流しの夜にこいつらが暗躍するのであれば、その現場を抑える以外に逮捕の方法は無い……。そんなことは分かっている。だが、こいつは今、色々なことを認めた。推測でしかなかった私の推理の地盤が固まったということでもある) 鷹野「それじゃあ頑張ってね……探偵さん。……くすくす。」 L「はい」(……ここに来てこの女の余裕はなんだ…? ……この雰囲気だ。何か見透かされているような気になる) □スティール・ヘリコプター・ラン L「魅音さん」 魅音「んー?」 L「魅音さんはヘリの操縦が出来ると聞きましたが」 魅音「うん、訓練させられたからねー。」 L「腕に自信はおありですか?」 魅音「おじさんのテクは凄いよ。」 L「分かりました。ヘリの操縦なら私も出来ます。今度ご一緒しましょう」 魅音「へぇ。やっぱりどこかの国で訓練したんだ?」 L「いえ、何となくです。勘で動かしてます。ちゃんと飛びますよ」 魅音「………。」 □『成長』しろ…… 詩音「何食べてるんですか?」 L「詩音さんこんにちは。お昼ご飯です」 詩音「……桃の缶詰?」 L「はい。フルーツとしてのもぎたての桃も大好きなんですが、やはり桃缶は別格です。最強です。神です。神です!!」 詩音「エルちゃん声が大きい!」 L「申し訳ありません。桃缶の事となると興奮冷め遣らぬもので」 詩音「…言葉使いがおかしいですよ。そんなに好きなんですか。」 L「はい。食感もそうですし、シロップ漬けの味も堪りません。なんというか……そう、神です。神です!!!!」 詩音「エルちゃん声が大きい!」 L「申し訳ありません。あ、気が利かなくてすみません。詩音さんも一ついかがですか?」 詩音「あ…私は…。…………エルちゃんは凄いですよね。」 L「はい?」 詩音「私は……沙都子を救えなかった。」 L「そういう話でしたら、全く違います」 詩音「…?」 □ペッ詩音 L「私は沙都子さんに対して強くあることを強要しただけで、今思い返してみても早計だったと思います。動揺していたとはいえ、です。強くあらねばならない、強くあることは正しい…言葉で言うのは簡単なんです。レナさんの言う通り沙都子さんはまだ子供です。今は無理でも、いつか時間が解決する問題だったかもしれない。時間が無くても、他に方法なんていくらでもあった。ですからたまたま救出できたという結果だけを取り出して『あれは正しかった』と主張するのは恐ろしい行為です。正しければそれでいい……そんな考えは、力なき故に仕方なく正しくあることが出来ない人間を深く傷つけるものであり、あらゆる間違いの大本なのではないでしょうか。だから沙都子さんが必要な時に必要なだけ傍にいた詩音さんこそ、絶対に素晴らしい。貴方は彼女にとってどれだけ支えになったか分かりません。本当に誉められるべきはそんな詩音さんと、私の考え無しの言葉に応えてくれた沙都子さん。そして、沙都子さんの友人で在りつづけた魅音さん達全員だと私は思いますよ。……と、沙都子さんにはちゃんと言い訳させて頂きました」 詩音「…………やっぱり桃、一切れ貰ってもいいですか?」 L「ああ、どうぞどうぞ。あーん」 詩音「あーん……ん……。………ぅ…………。」 L「詩音さん? ………」 詩音「………ん……ふふ。……大丈夫、ちゃんと美味しいです。」 L「そうですか? それは良かったです」 ■綿流しの夜 ライト「……こんなところに勝手に入って大丈夫なんですか?」 鷹野「さぁ? どうかしらね……消されちゃうかも……くすくす。」 ライト「おっぱいでかいなぁ」 鷹野「話を聞いて。」 詩音「……拷問具がこんなに……やはりあの逸話は本当だった……。ライちゃんは刑事の息子さんですから、毎年の事件も、全て知ってるんですよね?」 ライト「いやらしい道具もあるのかなぁ」 詩音「外に出てて貰えますか?」 ■レナが心配だなあ 詩音「それじゃライちゃん、また。」 ライト「うん」 魅音「あ、いた! ライちゃん!」 ライト「魅音と梨花ちゃん…駄目じゃないか。迷子になったら…」 魅音「…ライちゃんがいなくなったんじゃない。」 ライト「あれ、レナは?」 魅音「それがねー、いないのよ。どこいったんだか。」 リューク『くっくっく…白々しいなライト……』 梨花「………。」 ライト「梨花ちゃん……どうだった? 演舞、上手くできた?」 魅音「え、見てないの!?」 ライト「すまない……途中で色々とあったんだ……」 魅音「沙都子がいなくなって、それでも梨花ちゃんは頑張ったのに……あっ。」 ライト「魅音……」 魅音「ご、ごめん。」 梨花「大丈夫なのです……。それより、レナが心配なのです。」 ライト「そうだね…今のレナは何をするか分からない。手分けして探そう。」 魅音「うん!」 ■お祭りの夜はどう足掻いても開放的になっちゃうの。 魅音「……ねぇ、ライちゃん。」 ライト「ん? 魅音はこっちじゃないだろ?」 魅音「そうじゃなくて……ライちゃん、詩音と会わなかった?」 ライト「会ったよ。鷹野さんと富竹さんと4人で祭具殿に入った。あんなおっぱい二人組みと密室で一緒にいるんだから、もう僕、興奮しちゃって。そうしたら追い出されちゃったよ」 魅音「そ、そう……。その話、誰にもしない方がいいからね!」 ライト「さてリューク。今こそ借りを返して貰うときだ」 リューク『え!?』 ライト「別にそう大したもんじゃない。……探してきて欲しいものがある」 リューク『おーい』 ライト「お帰り」 リューク『やっぱり診療所にいたぞ。だが、会話を聞く程度じゃ済まなかった。あの富竹とかいう奴が鷹野の命令で数人に襲われてたんだよ。注射してた』 ライト「! ……本当ならここでそいつら全員リュークに殺して欲しいところだが…。そこまでは期待しないさ。 (実際にこの目で見ていないから奴らが何を企んでいるかは推察しかできないが……。富竹を殺したのならその疑いが自分にかかることは明白なはず……。あるいはここで自身の死体を偽装でもして、全ての罪を入江に被せるつもりか? ……ならそれで得られるものは……。……。……。まあいい。ここで鷹野を殺せば様々なことに片がつく。偽名を使っている可能性も考慮して、分かりやすい死に方を指定しよう。」 ―――――――――――――――――――――――――― 鷹野三四 今夜中に姿を消した後に焼身自殺 ―――――――――――――――――――――――――― ■白々イト 総一郎「ライト……落ち着いて聞きなさい」 ライト「……! なんだって、富竹さんと…鷹野さんが!?」 総一郎「富竹氏は喉を掻き毟る変死……鷹野三四氏は焼死体で見つかった…」 ライト「! ……」 総一郎「……そしてもう一つ……」 ライト「…………嘘だ……。レナが……」 総一郎「…ライト……」 ■ネグレクト リューク『雛見沢の裏にある組織ってのを壊滅させたりしないのか? 面白そうなのに』 ライト「嫌だよめんどくさい。第一、証拠が無い。というかリュークが見た感じ、リーダー的存在の鷹野が死んだんならもう何も起こらないよ。多分ね。……富竹を殺したことでその容疑は鷹野と入江にかかるだろう。だから鷹野達が僕が考えている通りの存在なら、その罪を入江に被せるために鷹野を死んだことにする……ということまでは簡単にたどり着けた。問題は何を企んでいるかなんだが……僕としては鷹野は偽名で、僕が指定した死に方とは違う死に方をする……そのくらいはやって欲しかった。そこまで頑張るんなら、じゃあ僕も本腰を入れるかな、なんて思ってたんだけど……。……まったくぬる過ぎる…」 リューク『やる気無いな』 ライト「そりゃね。僕は新世界の神として悪を裁かなきゃならないんだ。秘密組織だなんだをしょっ引いたところで、一部の官僚の首が飛ぶだけだと思うよ。そんなことより、より多くの人々を救う使命が僕にはあるんだ」 リューク『つまり?』 ライト「放置プレイ。一応、僕の考えを父に伝えようとも思ったんだけど、今更……。……でもな。雛見沢なら静かに裁きを行えると思ったんだけど、予定が外れた。これならもといた所の方が便利だったよ。どうにか帰る方法でも探そうかな…」 ■おっぱいスカウター ライト「ひかるかっぜっをーおいーこしたらー」 リューク『にんにん!』 魅音「ライちゃんおっはよー」 ライト「ん? ああ、おはよう魅……。……」 魅音「どうしたの?」 ライト「おはよう魅音」 魅音「……ねえ、ライちゃん。昨日の夜なんだけど、詩音に会わなかった?」 ライト「……。会わなかったよ」 魅音「そっか…ほんとに?」 ライト「ああ」 ■電話だよ  『もしもし。ライちゃんですか? 夜分遅くに…。』 ライト「ああ。詩音か…。そんなことより聞いてくれ僕たちが分かれ   たあと鷹野さんと富竹さんが殺されたんだよどう考えても祭具   殿に親友したからとしか思えないんだだから僕たちもあの二人   に関わっていたことを誰にも漏らさないようにすることと身辺   の状況に注意することそして今夜のようにお互いの情報を細か   に交換し合うことを提案したいんだけどどうかな」  『え…ええ…それがいいですね…。』 ライト「うん、それじゃあまた今度ね。……。さてと……」 ライト「夜分遅くにメンゴ! 魅音さんはご在宅ですか?」   『! ラ、ラ、ライちゃん…どうしたの?』 ライト「あれ。随分と早く出たな。もしかして僕の電話を待ってたとか?」   『そ…そんなことないよ、うん!』 ライト「なんだよ残念だな」   『ところで、なに?』 ライト「ちょっと魅音の声が聞きたくなってさ。あ、お魎ちゃんに代わってくれる?」   『あ…あー、あのね、婆っちゃはちょっと……寝ちゃったんだ。   最近ちょっと体調が悪いみたいでねー、ごめんねー。』 ライト「そうかぁ…分かったよ。夜遅くごめん。じゃあね」   『あ……。』 ■学校で 梨花「ライト。おはようなのです。」 ライト「おはよう梨花ちゃん……大丈夫か? その…色々と」 梨花「はい…ところでライト。聞きたいことがあるのです。」 ライト「ああ…祭具殿に入ったんだ」 梨花「そ、そうなのですか。」 ライト「父から聞いたんだが、公由村長も失踪HOLIDAYだそうだね。もし鷹野さん達がこの村の暗部によって殺された、なんて想像を働かせている人がいたら余計に恐怖してしまいそうな状況だ。ところで話ってなんだ?」 梨花「い、いえ……。あのー。えーと…。…助けてあげて欲しいのです。」 ライト「! ……。どういうことだ?」 梨花「ライトは大体のことは分かっていると思うのです。詩ぃが綿流し翌日に姿を消していることも知っているのでしょう? 本当はボクが何とかできればいいのですけど……もう何も言わずに最悪の事態になるのは嫌なのです。もしかしたらライトなら…そう思ったのです。」 ライト「……。……。分かった…」 リューク『で? どうするんだ?』 ライト「もう少し僕の中で考えが纏まったらとも思ったんだけどね。梨花に言われて行動する形になったのが気に食わないけど、まあまだ犯罪が起きて無いならそれを防ぐに越したことはない。僕は自分の正義に殉じるさ」 リューク『……』 ライト「しかし梨花もある程度の知能はあるようだな」 リューク『…くっくっく…』 ■電話だって ライト「はい夜神ですが」  『ライちゃんですか?』 ライト「ああ。ところで、お前はどっちだ?」  『……はい?』 ライト「綿流し後に詩音の行方は途絶えている」  『く……』 ライト「く?」  『くけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ   けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ   けけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけけ』 ライト「おっぱい! おっぱいおっぱい! 乳首! 乳首乳輪!! 乳首乳輪乳首!!」  『かけ間違えました!』   ガチャン! ライト「はふーん」 ■行ってきます 大石「それでは我々は園崎邸を包囲します。ライトさんの希望でこういう形を取りますが……本当はおすすめ出来ませんよ。」 ライト「無茶を言って申し訳ありません」 総一郎「ライト。お前の友人を救ってやれ」 ライト「ああ…任せておいてくれ」 総一郎「この村では……色々とありすぎた」 ライト「……そうだね」 大石「この状況で何かするとも思えませんが、相手は園崎次期党首です。十分に気をつけてくださいよ。1時間たって戻らないようであれば、強引に突入します。ですから、それまでに……。」 ライト「一時間……ジャスト正午か…分かりました」 ■地下へ ライト「じゃあ……公由村長やお魎ちゃんも……詩音も…?」 魅音「……詩音は生きてるよ。」 ライト「! 本当か?」 魅音「案内するよ。監禁してあるんだ。」 ライト「ああ…。……。……あと20分で12時だな」 魅音「? うん…そうだけど…。」 ライト「さぁ、行こう」 魅音「うん。……なにしてるの?」 ライト「んー? ちょっとね」 ―――――――――――――――――――――― 園崎詩音 12:00 自ら舌を噛み切って死ぬ ―――――――――――――――――――――― ライト(馬鹿女が……お前の策は読めている……逃亡手段もだ。こうやって警察に包囲されることもお前の考えの内だろう。大方、僕を利用したつもりなんだろうが……。そんな古典的な入れ替わりトリックが僕に通用するとでも思っているのか? 本物の魅音の目の前で自殺しろ) ■気絶完了 魅音「詩音はあの中だよ。」 ライト「そうか…」 (ちっ、あと30秒で12時だ…少しかかりすぎたか……まあいい……ん?) 「大丈夫か? 魅音。ん? どうしたんだそんなに慌てて。後ろ? 後ろに何があるっていうんだ。おっと騙されないぞ。僕が後ろを向いている隙にそのおっぱいで、アフゥン!!」 ■『3時のおやつ』は実は理に適った行動なんだって ライト「う、うーん……は! 駄目だ粧裕、僕らは兄妹……! ん? ここは…」 魅音「……ライちゃん、何の夢を見ていたのかなぁ……?」 ライト「……なんだ? これは…どうなってるんだ?」 魅音「正直、あんな簡単にスタンガン食らってくれるとは思わなかったよ……ライちゃんって意外と馬鹿……?」 ライト「誰が馬鹿だ! そうか……。さっきのは電流だったのか……け、結構気持ちよかったなぁ」 魅音「………さぁライちゃん。命乞いすれば助けてあげないこともないよぉ?」 ライト(……この僕が命乞いだと? 新世界の神だぞ! 頭のおかしい馬鹿女が! くそ…このままこの馬鹿女に死なれたら拘束されたまま動けなくなる……なんてことだ……。……警察がここを発見してくれれば助かるだろうが…時間がかかるな……。拷問でもするつもりか? 冗談じゃない! こんな女にそんな惨めな目に合わされるのは僕のプライドが許さない! ………何とか口車に乗せて拘束を解除させなければ……大丈夫、僕なら出来る……。……。……ちょっと待て。時間は……?) 「なぁ、魅音……いま、何時だ?」 魅音「時間なんか気にしてどうしたの? もしかして助けが来てくれるとか期待してる?」 ライト「…………」 魅音「諦めたってわけ? ライちゃん素直でいいねー。今は12時10分だよ」                         ? ■あれぇ、俺ちゃんと答案に『ウ』って書いたっけなぁ…『エ』とか書いた気がするなぁ……やべー思い出せねー ライト「…………。………?」 (……えぇ? 12時ジャストに心臓麻痺を指定したはず……) 魅音「どうしたの? やっぱり死ぬのが恐くなった?」 ライト「…………馬鹿な……そんな筈無い……ありえない……!」 魅音「……なんだか幻滅だよ」 ライト(なぜだ!? ……! 名前を書き間違えた…? 僕に限って……どういうことだ……何を間違えた……。切れ端がデスノートじゃなかった……それはない。考えられるのは詩音と魅音が入れ替わっていたというのが僕の思い込みだということ……。いや、神たる僕が出した結論だ……。間違えている筈が無い……本当に? 本当にそうか? ……やはり字を書き間違えたとしか……あああー?) ■翼を授ける ライト「……。……。…魅音」 魅音「なーに?」 ライト「…喉が渇いたな」 魅音「こんな時に……まあいいよ。お水をあげる。お猪口でね。」 ライト「いや……レッド・ブルをくれないか?」 魅音「駄目だね。高飛びするつもりでしょ?」 ライト(! まずい……思ったよりも読まれている) 魅音「ポーションならあるけど。」 ライト(こ、殺される!!) ■入れ替わり 魅音「さぁてさてさて……どうやって嬲ってあげようかなぁ……。嬲るっていうのは間違いかな? 漢字的にさぁ。」 ライト(黙れ馬鹿女! 今考えている最中だ……くそっ! ……混乱している……落ち着け…何か手がある筈だ…) 魅音「聞いてる詩音!? これから始めるからね! ……? 詩音は随分と静かになったね。泣きつかれたのかな?」 ライト(詩音………? ああ、魅音のことか……。そういえばあの女が何も言わないのはおかしい。詩音の賛同者でもあるまいし……。愛すべき僕が殺されようとしている時に静止の声をあげないとは……。物言えないように拘束されているのか…? いや、そうされていないのは、今の詩音の口ぶりで明らか……。ならば眠っているのか? こんな時に何をやっている…! ……馬鹿…そんなこといま考えるようなことじゃないだろう。落ち着け! ……。……何も言わない…? 何も出来ない……? …………! そうか、そういうことか! ……僕がこんな読み違いをするなんて……) 「なぁ、魅音……いや、もういいか、詩音……」 魅音「! なにを……。」 ライト「もういいんだ、詩音……。僕には分かった。いや、最初から分かっていたんだ。二人が入れ替わっていること」 (やってやる……僕なら出来る……) 魅音「……やっぱりさすがですね。ライちゃんならもしかして、と思いましたが……」 ライト「……。……。いや、僕の考えでは多分……僕が出会う前から……かなり幼い頃から二人は入れ替わっていたんじゃないか? ……」 魅音「! ……どうして……? 園崎の後継者が決まるあの夜…魅音…ううん、詩音は確かに私を出し抜いて……。だから、本当の園崎魅音は、私。でも、どうしてそれが分かったんですか?」 ライト(読 み 通 り ! !) ■新世界の神に、僕はなる! ライト「普段から引っかかっていたんだ…魅音が詩音に対して強く出れないことにね……。もちろん、単に性格上の問題なんだとも思える……。でも、どうしてもそれだけとは思えなかったんだ…。だから、可能性の一つとして考えていた…。そういうこともありえるかもしれない…。……君のことは何と呼べばいいんだ?」 詩音「……詩音でいいですよ……。今更……。」 ライト「……人肉缶詰の話だって嘘だろう?」 詩音「……さすがにライちゃんには通じませんね……。でも、入れ替わっていること…私が何か企んでいることが最初から分かっていたなら、どうしてわざわざ危険を冒してまでこんなところにきたんですか?」 ライト「…………。…………。分かってはいた。けど、わざわざここまで手間をかけて詩音がしなければいけないと判断したことだ。詩音にとっては大事なことなんだと思ったのさ。……もちろん、僕の身に危険が及ぶかもしれない。だけど、僕にとって詩音は掛け替えの無い友人の一人だ。何か思うことがあるのなら、それを貫かせてあげたかったんだ……」 詩音「………馬鹿ですね。ほんと、馬鹿。……悟史くんみたい……」 ライト(……! 北条悟史! 行動の骨子は北条悟史か……? ならば……) 「僕は悟史のことは詳しくは知らない。……好きだったのか?」 詩音「………そう。私は悟史くんのことが好きだった……でも、園崎家は悟史くんを……いや、雛見沢が……」 ライト(キチガイが……いまいち要領を得ないな……。つまりこの馬鹿がこんなことをしたのは、悟史のため……。その悟史はいない。レナによればそれは『転校』……だが、この村から追い出された、というだけではここまではしない……。キチガイのすることだ……芯の通った理由は無いのかもしれないが……詩音は、悟史が何者かによって殺された、と思い込んでいる……。くっ……とんだ馬鹿話に付き合わされているな……) ■新世界の神になるんだってばよ! ライト「……復讐ってわけなのか?」 詩音「はい…。本当は梨花ちゃまも殺してやろうと思ったんですが…。まあ、ここから抜け出したらすぐにでも……。沙都子も私が殺す前に死にやがって…まったく…。」 ライト(あったま悪いなー。さて、あまり下手に出ていると、助かりたいが為に時間稼ぎをしていると思われてしまう。ここからは強気に…) 「……それだけ悟史が好きだったんなら…どうして沙都子の傍にいてやらなかったんだ!」 詩音「な! 何を…! 確かに私は沙都子を悟史くんに託された! ライト「…!…」 詩音「でもその悟史くんはもう……! ……全部沙都子の所為なんですよ! 裏で暗躍する園崎の所為! 私から次期当主の座をもぎ取ったくせに、悟史くんを救えなかった魅音の所為!! 北条家を毛嫌いする御三家の所為! 雛見沢の所為! 死ね! みんな! 殺してやる!」 ライト(うわーウザい。ウザイなー) 「人を好きになることは素晴らしいことだ。誰かを殺したいくらいに悟史が好きだったんだろう? なら、当時の詩音は、色々な事情はあれど幸福だったはずだ。違うだなんて絶対に言わせない」 詩音「……。そうですよ。幸せでした。何物にも変えられないほどに。」 ライト「だったらなぜ悟史から託された沙都子まで殺そうとした? 悟史が死んだからそんな託された約束に意味は無い、と?」 詩音「……はい。そうですよ? だからなんですか?」 ライト「………そうだな。意味は無いのかもしれない。でも、意地は貫くべきだったんじゃないのか?」 詩音「…はぁ?」 ■この世界の神になりたいのデスノートで僕は。そんだけ! ライト「この茶番が復讐? 嘘をつくなよ。君は自分の感情や実体の無い疑惑を解消したかったに過ぎない。詩音は最後の最後で、幸福であった頃の思いよりも憎悪を優先させたんだ。魅音や沙都子、梨花ちゃんがどうのと御託を並べてはいるが、結局は不条理の理由を他人の中に求めたかっただけだろう」 詩音「……お前に何が分かる。」 ライト「敵討ち? 復讐? なんのことです? 全部言い分けだろ! 悟史を失った自分が可哀想なだけだろ! 悟史のために、悟史のために……裏を返せばそれは、全てを悟史の所為にしているってことなんだぞ!」 詩音「違う! 違ぁあああう!!」 ライト(少し刺激し過ぎちゃったかな。僕の話をいつまでも大人しく聞いているとは限らない。ここからは慰める感じに…) 「……すまない。僕は詩音達のことを何も知らないのに……。……悔しかったんだ。詩音がこんな道を選ばなくてはならなかったことが」 詩音「……?」 ■この世の地図から未開を無くす男だ ライト「さっき言ったな。沙都子を託された約束にもはや意味は無い、と。確かにそうだ。自分がやっていることなんて詩音にはもう分かりきっていることなのかも。いくら沙都子を託されたからと言っても、それは沙都子への愛情ってわけじゃない。全て悟史への想い故に、だ。沙都子のためじゃない。そんな上辺だけの繋がりは、今の詩音には意味も無いし、吐き気を催すものなのかもしれない。……でも、だからこそ意地を張るべきだったんじゃないかと、僕は思う。約束を守る。沙都子を守る。守り抜く。強がりでしかないそんな行為こそが、『園崎詩音は北条悟史と出会って幸せだった』という証になるんじゃないのか」 詩音「……ぁ。」 ライト「こんなものは欺瞞だ。分かってる。僕は酷なことを言っている。分かってるさ。だが欺瞞の何が悪い? 例え嘘に塗り固められていても構わないじゃないか。その奥には本物がある。自分は悟史が好きだったのだと、そんな想いを最後まで押し通したのなら……。きっとこんな風に、詩音が詩音自身の思いを否定しまう結果にはならなかった筈なんだ……!」 詩音「…もう…もう! …遅いんですよ…。全部…済んでしまった後ですから」 ライト「ちくしょう…! ちくしょう! なんでこんなことに…!」 詩音「……。……。ライちゃん。」 ライト「……。……?」 詩音「もしも…もしもやり直せるなら…私…。」 ライト「ああ。その時こそは大丈夫だ! 絶対に…!」 ■電撃ライト 総一郎「ライト! どこだ!!」 ライト「! 警察! 詩音! 逃げろ!」 詩音「!?」 ライト「結局は詩音が決めることだ。とりあえずは逃げて、冷静になるんだ。そしてその時にまだ僕を殺したければ………いつでも来い。あ、でもその前に拘束を……」 詩音「……くっ!」 ライト「ちんげ!」 リューク『ぶほっ! また電撃! あ……逃げた。くくく…結局拘束はこのままなんだな…』 ■裁き ライト「う……」 総一郎「! 気がついたか、ライト」 ライト「ここは…病室…。…それより…魅音は……詩音は……」 総一郎「魅音くんは行方が掴めないそうだ。あそこまで包囲されて逃げおおせるとは…。しかし詩音くんは無事に保護された…だが、体が無事でも心が……。」 ライト「! ……詩音が…『保護』…」 総一郎「どうした?」 ライト「いや…結局僕は何の役にも立たなかったんだなって思って…」 総一郎「…そんなことはないだろう。」 ライト「ありがとう…。……ごめん、少し一人にしてくれないか…」 総一郎「…わかった…。」 ライト「……リューク」 リューク『はいはい?』 ライト「僕は服を着替えさせられているわけだが、誰もノートの切れ端に触っていないな?」 リューク『ん? ああ…もし触ってたら大騒ぎになってるからな』 ライト「だろうね……あったあった。財布の中とはいえ、誰かが触る可能性はゼロじゃないからね。ところでリューク。魅音が行方不明で詩音が保護…何か気にならないのか?」 リューク『馬鹿にするな。それくらい俺だって分かる。どうせ服でも交換してまた入れ替わったんだろ。警察に保護されて逃げるために。もう片方はどうせ死んだ後だから、どっかに隠せばいいだろうし。あそこはそういう隠し場所が沢山ありそうだからな』 ライト「なんだ、なかなか理解力があるな。さてと……」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― 園崎魅音 北条悟史への思慕と罪の意識に苛まれ続け発狂し、23日後に自殺 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― ライト「この村の病気は便利だな。少し無茶な殺し方でも実行される。それにしてもまったく…手間をかけさせる…女のくせに…。新世界の神に対する度重なる非礼…反吐が出る罪深さ。己の愚かさを最後まで悔やみつつ、その悔恨の中で死ぬがいい」 ■ある晴れた日のこと リューク「お前はあの娘の変装をおっぱいで見破ったのか?」 ライト「唐突だが例え話をしよう」 リューク「? あ、ああ……」 ライト「常日頃から気になっている男に唇を捧げたとする。その翌日、その子は普通の顔してその男に挨拶できるか?」 リューク「……人間のことに詳しくは無いが……。普通は照れたりするもんなんじゃ……おい待てライト」 ライト「簡単なんだよこんなの♪」 リューク「俺を鷹野達の偵察にいかせたのは……」 ライト「なんだよ。レナの時に見せてやっただろ」 リューク「………。」 ライト「なんだよ。お魎の時に見せてやっただろ」 リューク「見てねーよ」 □その実体は L「私はLです。」 沙都子「……知ってますわよ。」 レナ「大丈夫かな、かな?」 詩音「わざわざ自宅に呼び出しておいて、言いたいことはそれだけですか?」 L「……。……。実は探偵なんです。」 魅音「ええ!?」 詩音「………ええ?」 梨花「かわいそかわいそです。」 L「……。……。ワタリ。」 ワタリ『本当のことです』 沙都子「へぇ、そうなんですの。」 レナ「信じるよ。」 魅音「……で、エルちゃんが探偵さんなのは分かったけどさ。そんなことを何で私たちに話すの?」 詩音「確かに普通の人ではない、というのは誰の目から見ても明らかでしたが……。」 レナ「沙都子ちゃんを助けるとき、警察の人も動かしたよね。」 梨花「……。」 L「私の中で雛見沢についての推理…というよりは推測、仮説が固まったのでお話しておこうと思いました。皆さんにとっても有益な話ですし、私としても情報が欲しい。どうかお付き合いください」 □驚愕の梨花 L「以上が私の考えです。? どうかしましたか、梨花さん」 梨花「い、いえ、どうもしないのです……」 レナ「毎年の事件には直接的な関連性は無くて……偶然に?」 L「事件の一つ一つを点としてみれば、です。偶然と言っていい殺人事件が、毎年起きるという必然に誘導した存在がいるはずです。この村に来た私が捕まえるべき『犯人』とは彼らを指します」 詩音「警察が何かと園崎に疑いをかけてるのも……。」 L「それは色々と条件が重なる中で園崎を疑うのが一番自然で効率がいい、という話でしょうね。その辺は園崎現当主さんも何となく理解し、利用しているみたいですが。私の説で様々なことが覆ります。結論から言ってしまえば、警察の主観や2つあるいは3つのルールを抜きに見てみると雛見沢とは、いたって平和な村なのです。そしてそれらの事実を踏まえた上で、園崎家次期党首にお尋ねします」 魅音「!」 L「雛見沢住人はシロですか?」 魅音「……。……はい。いや、多分。」 詩音「…なんですか、その中途半端な応えは…。」 魅音「だ、だって!」 L「ではもう一つ。ダム事件での誘拐は園崎家の仕業ですか?」 魅音「…それはないよ、うん。」 L「分かりました。十分です。」 詩音「な…なんだか現実味の沸かない話ですね……」 レナ「でもそう考えれば説明がつくことが多いのも事実だよ。……悟史くんがおかしくなったのも……」 梨花(す……すごすぎる!!) □『覚悟』は『幸福』 沙都子「……。……」 梨花「…!」 沙都子「私の健康診断やお薬にはそういった理由があったんですの…?」 L「! ……。……」 レナ「……どうして私たちに話したの? 沙都子ちゃんが聞く必要はあったの?」 L「雛見沢に蔓延する病、というものがこの土地で一般的に知られて無い以上、どれほど診療所を問い詰めても出てはこないと思ったんです。診療所に盗聴器やカメラを仕掛けるわけにもいきませんし……。……診療所で実際に診断を受けている沙都子さんからお話を伺いたかったんです。口止めされていることも考えましたが……知らなかったとは……知りませんでした……」 梨花(通例ならば鉄平が帰ってくることによって沙都子の投薬が遅れ、病状が悪化していた……だけど今回は、鉄平の事件が早く解決しすぎたんだわ。早すぎたからこそ沙都子の投薬は遅れなかったし、沙都子が投薬が遅れてることで自分の身に何が起こるか分かっていない、ということに竜崎は気づけなかったんだ……) 沙都子「い、いえ! ……確かに驚きましたけれど…別にどうってことないですわ。むしろ自分がされていることの理由を知ることが出来てすっきりしましたわ! なんといいますか……こういうことを聞かされる心構えが前もって出来ていたというか…不思議ですけれど」 梨花「………。」 L「すいません……無神経でして……それに私の考えは推測に過ぎないもので、本当は病なんて存在しないのかも……いや…それは無い…か?」 レナ「エルくん……エルくんの考え方じゃなくなってるよ。」 魅音「でも沙都子が知らなかったんだとすればもう確かめる術は無いんじゃない?」 梨花「いえ。」 詩音「?」 梨花「……入江診療所の背後に存在する組織『東京』……。ボクがお話するのです。」 □びっく梨花 L「……貴重な情報ありがとうございます。筋は通ります。……が、なぜそこまで知っているのかは『言えない』んですね? 梨花「はい……。説明のしようが無いのです。」 L「では、全ては神人たる梨花さんの予言、ということで納得します。」 沙都子「……。散々、オヤシロさまや祟りの仕組みを理論立てて説明しておいてそういうことを言うんですの?」 L「いえ。私の考えはあくまでもそう考えれば筋が通るというだけのことで、事象の説明になるとは思います。しかしそういった超常的、霊的な存在を否定しようとするものではありません。完全に信じる、と断言はできませんが、結果的に辻褄が合うのならば私は予言を優先します」 詩音「ひ、秘密結社みたいなのって本当にあったんですね…!」 L「秘密結社自体は沢山ありますよ。Wikipediaに載ってました」 レナ「でも、どうして梨花ちゃんを殺そうとするのかな、かな?」 梨花「目的やその他、ほとんどの事は分からないのです。構成メンバーも……。」 魅音「綿流しの夜に富竹は殺され、鷹野は自分の偽装死体を作り存在を抹消…。」 詩音「そして梨花ちゃまを……。」 レナ「『女王』を亡くした雛見沢の人間は、病状がL5まで進んで……。でも、そんなことする意味って何かな、かな?」 L「……。」 沙都子「そんな方々の考えることなんか分かりませんわ。」 梨花「そこまではボクも……。」 L「……鷹野三四は自らがオヤシロさまになる…そう言ったんですね?」 梨花「はい。歴史を作るのだと……。」 L「……大体分かってきました」 梨花「え…!」 レナ(エルくん……嬉しそう……?) □「みんなが将来、なりたいものはなにかなー?」 「神」 L「女王感染者の殺害による弊害の危険性……これこそが鷹野達の持つ切り札。この梨花さんのご指摘は、私も推測の一つとして持っていました。2つのルールを利用し、5年という歳月を経て、お膳立てが揃った。では『結局、何がしたいのか』? 考えられる一番大きなものを想定してみると……」 梨花「……。」 L「毎年起きる連続殺人事件、それがやはり今年も発生し、東京と入江機関のパイプラインである富竹と、お目付け役である鷹野が死亡。疑われるべき犯人は入江しかいない……しかしその入江は自殺。さらには女王感染者たる古手梨花がその被害にあうという最悪の結果に。何とも分かりやすい死に方をした女王感染者の影響で村人はもう間も無く暴徒と化す。そういう研究結果が出ている。ならば災害等、何らかの形を取って雛見沢住人及び、雛見沢に立ち入りした人間を出来うる限り抹消してしまうしかない。日本国政府の最高責任者の決断の下で……。この図式はガチです。雛見沢の滅亡という伝承の具現化。ここまでやれば人は神になれます」 魅音「ちょっ……話が大きくなりすぎなんじゃ……。」 詩音「こんな村とはいえ、丸ごと消してしまうなんて……。」 沙都子「ですけど実行が可能かどうかは置いておいて、実行しようとしているかどうかはそれこそ向こうの都合ですわよ!」 L「オヤシロさまになる。歴史を作る。そんなことを言ってしまう人間の考えることとしては妥当です。さらに如何ながら、絵空事のように思える雛見沢の滅亡計画……。事の運びようによっては決して不可能ではありません。……富竹氏を殺し、鷹野自身も消してしまうのなら、残った入江も死ななくてはならない。それは『東京』と診療所の双方の意思から独立してしまっている。あくまでも梨花さんの予言と推察の上での仮定ですが、この仮定が成り立てば……『全ての黒幕は鷹野三四であり、彼女が雛見沢も政府も利用している』で通ります」 レナ「……オヤシロさまになる……。……。」 梨花(あ……あ……。) 羽入「……。……。……。」 □複雑なのです 梨花(……これまで『鷹野が黒幕であること』を鷹野自身に突きつけても、その場は笑ってごまかされて、誰も信じなくて、でも結果的に綿流し前に拉致されて……みんなを巻き添えにしたこともあった…。でも竜崎なら? もしかして……突破できるの? ……みんなと7月にいけるの?  ……。……。……。ライトがエルに負けてるとは思えない……ライトに竜崎ほどの力があれば……。) 羽入「……。梨花。」 梨花(……。) □どうすんの L「先ほども言いましたが、全て仮説につぐ仮説です。梨花さんの予言が正しいという前提なので、立件なんて不可能ですよ。今更過去の事件を掘り返して証拠を探そうにも、綿流しには間に合いません。彼らの思惑通りに事が進んでしまい、もしも雛見沢消滅にGOサインが出てしまえば、私でさえそれを取り消すことは限りなく不可能に近くなります」 レナ「じゃあどうするの?」 L「そもそも私があの学校に編入し皆さんに近づいたのは、園崎家次期当主である魅音さんを始めとして、この村の重要人物が揃っていたからです。事件資料に目を通して、一連の連続怪死事件に直接的な繋がりが無いことは分かっていました。ですからあとは私のこの目で直に村の生活に触れ、推理の穴を埋めたかったんです。みなさんが私を友人として迎え入れてくれる傍ら、私は皆さんに僅かな疑惑を抱いてもいました。………申し訳ありません」 レナ「でもそれは解けたんでしょ?」 詩音「何を言ってるんですか、今になって。」 魅音「そんなんで謝られてもねー。おじさんたちは気にしないよ。」 沙都子「そうですわ。わたくしをあんな風に助けておいて、いまさら謝罪も何もありませんわ。」 梨花「……エルはボクたちの友達なのです。それが揺らぐことは無いのですよ。」 □どうすんのよ、俺! L「……。はい。ありがとうございます。…それで私は雛見沢に何らかの組織が暗躍しているという疑惑を抱きました。そう考えると情けないことに動けなくなってしまったんです。警察内部にもその組織が紛れ込んでいるのなら、いくら私が極秘の捜査を依頼しても駄々漏れです。綿流しまでは本当に時間が無い。今になって後悔しても仕方が無いのですが、私もここまで手間がかかる事件になるとは思いもよりませんでした。ですから、下手に動くよりも綿流しを待てばいい……それが私の考えです」 沙都子「……実際に犠牲者が出るのを待つ、ということですの?」 L「違います。違いますが、それに近いことではあります。富竹、鷹野、入江……彼らが背景に潜む組織の関係者だと読んでいましたから、祭りの夜に行われるであろう5年目の惨劇に彼らが何らかの形で動きを見せるだろうとヤマを張りました。そしてその地盤を固めるために、本日はみなさんをお呼びしたわけです。………大収穫でした。時間が足りないと嘆いていましたが、本日はその欠損を一挙に埋めることが出来たのですから。鷹野達からしてみればこちらが焦っていることはお見通しなはずです。しかし梨花さんの貴重なお話によって私はあちらが読んでいる以上の情報を得ました。これならいけると思います。これで彼らの行動はある程度……」 梨花「……ボクの言葉を本気で信じるつもりなのですか? さっきもエル自身が言っていた通り提示できる根拠なんてないのですよ」 L「そうかもしれません。……。……しかし、納得できるお話でした。あとはこれを基本に捜査を進め、疑惑の穴を埋めていけばいい。鷹野三四という人間の思考……私に一番何かを感じさせた。これで行きます」 魅音「最終的には梨花ちゃんを死なせなければそれでOKなわけだね。なら早速警察に保護を求めよう。警察内部に山狗はいないんでしょ?」 詩音「そうですね。というか園崎本家に匿って貰えばいいんじゃないですか?」   □ドラゴンとイーグル 鷹野「………。」 山狗「どうしたワン?」 鷹野「近日中に古手梨花の周りに警官がうろつくようになったり、園崎本家に出入りするようになったら『世界最高の探偵さん』に情報が漏れていると断定して動きなさい。」 山狗「は?」 L「……。いえ、それは止めて置きましょう」 梨花「!」 魅音「! なんで?」 レナ「………。そうだね。いきなりそんな警護をつけたりしたら、肝心の梨花ちゃんが山狗を警戒してるって言ってるようなものだもん。梨花ちゃんが自分の身の危険を察知しているなら、それこそ山狗に監視を求めればいい。ここで下手に向こうを刺激すると、実力行使に出られるかもしれない。綿流しの夜までは手出しできないはずなんだから、保護を求めたりするのは時期尚早じゃないかな、かな」 L「その通りです。………。………。」 山狗「大丈夫だワン。そんな動きは見られないのだワン。」 鷹野「なるほど、分かりました。……。……。」 (……。ボクは山狗を疑ってなんていないのですよ。そう言われている気がするのは考えすぎかしら…? ………。………。) □選ばれし者 L「正直な話、自分でも驚くほど強引な推理だったと思います。しかし鷹野が黒幕であるという直感は私の中ですんなりと腰を据えました。彼女は異質です。それくらいのものを抱いていて丁度良い。そんな気がするんです」 レナ「……鷹野さんに黒幕であって欲しかったってこと?」 L「そう…なのかもしれません。ああ、そうなのか…。言葉にしてみて実感した気がします。そしてこういう感覚は私の探偵人生の中でとても重要なものでした」 レナ「エルくんって……もしかして鷹野さんの事が好きなのかな、かな?」 L「……。………。なんですって…?」 レナ「なんていうか……エルくんはライバルみたいなものを求めてるんじゃないのかな、かな。レナ達は能力的な意味ではエルくんに応えてあげられないから……。」 L「……そんなことは……」 レナ「嘘だよ。ううん、エルくんがレナ達のことを友達だと思ってくれてるっていうのは分かってるつもりだよ。だけどエルくんは心の底で、友達なんかよりも、自分を打ち負かしてしまうかもしれない…強敵みたいな人を求めてる気がするよ。」 L「……。……」 レナ「ちょっとだけ寂しい……かな。」 L「……よく分かりません……が、レナさんの洞察力には驚かされます」 レナ「あはは。……エルくんには男の子の友達が必要なのかもね。エルくんと同じくらい頭が良くて、運動も出来て……。時には殴り合いの喧嘩をするほど意見がぶつかり合うような男の子。そういう人がいたら、私達とはちょっと違う…本当の友達になれるよ、きっと。」 L「私はレナさん達のことも好きですよ」 レナ「は、はぅ……。わ、分かってるよ〜!」 L「…………」 □捜査 大石「では、鷹野三四と富竹ジロウ、入江先生をいまマークするのは危険だと?」 L『いえ。むしろ調べて頂いて結構です。あまり疑いを持たない姿勢は逆に疑問を持たれると思いますし、もしもそれで何か出てくればラッキーと考えましょう。』 □撃退か逮捕か L(警察内部を疑ってはいた……それを看破するために色々と策は講じていた…。わざと情報を流し鷹野達の動きを見てはいたが、反応はなかった。そして古手梨花からの情報……。本当に警察内部は『東京』とやらの影は無い、と見ていいようだな…。だが本当に? 鷹野がそう思わせるために嘘をついているとは考えられないか? あの女ならやりそうなことだし、むしろ最も警戒しなくてはならない警察内部に『東京』の力が及んでいないと考えることの方が不自然では? ……重要なのは、今年の綿流しで被害を出さないこと。それで『東京』が作りつづけてきた連続怪死事件という神話は崩壊する。そうすれば全ては白紙に戻るだろう。……だが、それだけでは逮捕することは出来ない。何にせよ、鷹野、富竹の二人から目を離すことが無ければ……いける。『予言』が実在するものなのか、どこまで的中しているのか分からないままあまり強気に動くのも危険だ。しかし妙な説得力があったのも事実で、納得もできる。そんな方法でここまで読まれているとは奴らもまさか思わないだろう。どう動く? ………。………) 鷹野(世界最高の探偵が動いている……この情報だけは掴んだ。そして雛見沢分校に突如訪れた竜崎エル……。ふざけているのかしら? そのまま過ぎて嘘っぽいし、嘘っぽいというのをカモフラージュにした本物かもしれない。……それはどちらでもいいことか。問題はどこまで掴まれているのか、ということ。世界最高の探偵というのは伊達じゃないでしょう。『全てつかまれている』という前提で動かなければ……) □エアマスター 沙都子「……綿流し当日になってしまいましたわ。」 レナ「その後はどうなの?」 L「見事に尻尾をだしませんね。こちらの微妙な動きを察したのか…。しかしワタリの調べで、診療所の背後にあるものが少しずつ見えてきました。後はこの夜さえ乗り切ることが出来ればこちらの勝ちです」 梨花「……いつだって時間に余裕があるとは限らないのですよ。持てる時間で出来る限りのことをするしかないのです。」 L「……確かにそうですね」 魅音「それでどうするの?」 L「……綿流し…。……綿流し…わた……わたあめは売っていますか?」 詩音「お祭りですし。」 沙都子「……普通に遊びに参りましたが、これで宜しいんですの!?」 L「とりあえず鷹野らには監視をつけています。祭りを中止にすれば……なんて考えたりもしましたが、それで彼女達が止まるかどうかなんて分かりませんし、逆に動きが読めなくなります。祭りでの人の賑わいは監視に対する迷彩になりますからそれだけで鷹野達の思い切った行動を抑制できるでしょう。つまり、現状においてこれ以上は出来ることが無いんです」 詩音「お姉が園崎の人たちを動かせればいいんじゃないですか? なーんて…。」 レナ「詩音ちゃん。」 詩音「あ、あれれ?」 魅音「…………。」 L「……魅音さん?」 魅音「…ごめんなさい。」 詩音「ちょっ、う、嘘ですし! 冗談ですし!」 沙都子「人様の生き死にが絡んでいますのにそういう冗談はどうかと……。」 L「空気を読んでください……」 レナ「大丈夫だよ、魅音ちゃん。いまこうやって鷹野さん達の企みが分かったのは梨花ちゃんのおかげだけど、園崎の人たちを動かせる材料が無いのも事実なんだから。」 詩音「……こういうのはお姉の立ち位置なのに……。」 □ありがとう レナ「エルくん。」 L「はい」 レナ「エルくんは探偵さん…。」 L「……はい」 レナ「じゃあ、レナ達のこと知ってるの? 昔の事とか…。」 L「……何のことでしょうか」 レナ「嘘、だよね?」 L「……いえ、本当に何から何まで、というわけではありません。しかしレナさんの言う『昔の事』が私の考えている通りでしたら……答えは『はい』です。レナさんが当時かかったという病気のことも知りたかった…」 レナ「………。」 L「……申し訳ありません。仕事ですので」 レナ「ううん、違うの。レナもお父さんのことで悩んでいたことがあったんだけど、エルくんの言葉で…沙都子ちゃんが自分から助けを求めて…レナも自分で何とかしなくちゃって思えたの。正面から向き合って話し合えば、何とかなるものなんだね。悪い夢の中で変な人に怒られた所為もあるんだけど……。」 L「変なひと?」 レナ「うん。ことあるごとに自分の器用さを自慢する人だった気がする。」 L「何のことだか分かりませんが……おめでとうございます」 レナ「ふふ、エルくん何だか変だよ。いつものことだけど。」 L「……すみません」 L「…ワタリ」 ワタリ『はい』 L「……なんでもない」 ワタリ『……そうですか……』 □鷹野三ホーク L(鷹野達には尾行をつけてある……。こちらの動きを察知して逃げ出すか…? 向こうの出方が分からない以上は様子を見るしかない…。) レナ「エルくん、わたあめ美味しい? …何個食べてるの!?」 L「これで32わた目です。」 レナ「単位『わた』なんだ。」 L「……わたあめ…綿流し…ワタリ……! …ワタリ流し…!」 魅音「…エルちゃんが何かぶつぶつと言ってるよ。」 詩音「推理しているんですよ。エルちゃんは凄い人です。」 鷹野「こんばんわ。」 L「!」 魅音「わ!」 レナ「……!」 詩音「!」 沙都子「た、鷹…!」 梨花「……。……。」 鷹野「! ……。」 □対峙 L(こいつ……。) 鷹野「くすくす…。」 富竹「やぁみんな。楽しんでるかい?」 沙都子「あ、あの、その…!」 魅音「沙都子!」 L「どうもこんばんは。……お祭りに参加する経験は乏しいですが、やはり素晴らしいものですね。お二人も楽しんでますか?」 鷹野「ええ。とっても……くすくす。」 L「お二人はこれからどちらへ?」 レナ「!」 富竹「いやー……。それは……。」 鷹野「さぁてどこかしら? ……当ててみせて?」 L「いえ見当もつきません。分からないから聞きました」 鷹野「そう…でも教えてあげないわ。野暮なことは言わないのよ?」 L「そうですね…恋人の逢瀬に水を指すようなマネをして申し訳ありませんでした」 富竹「みんなから君の話を聞いてはいたけど、おもしろい人だね。」 L「ありがとうございます。こうして出会えたのも縁ですから、このわたあめをプレゼントしましょう。」 富竹「あ、ありがとう……。」 鷹野「あらあら……ジロウさんはさっきわたあめお腹いっぱい食べたのよね。」 富竹「う、うん……12わたくらい…。」 レナ「単位『わた』なんだ!?」 □富竹が仲間になった! 富竹「みんなは相変わらず仲がいいんだね。羨ましいよ。」 レナ「……はは。」 鷹野「あら、私という女がいるのにジロウさんったら…。」 富竹「い、いや…そうじゃないんだ! ……なんて言えばいいのか…。僕は色んな事情を抱えてこの村に来たけど、こうしてお祭りを楽しんだり村の人たちと会話を交わす度にそういった全てを忘れられるんだ。忘れちゃいけないこともあるんだけどね……はは。」 梨花「……。」 富竹「僕はこの村で過ごすこうした時間をとても大切に思う。綺麗な空気も、心洗われる風景も、その全てが、こんな僕をギリギリのところで真っ当な人間にしてくれている、そんな気がする。……はは。なんか重い話になっちゃったな。とにかく、僕は雛見沢が大好きなんだ。本当にね!」 魅音「……ふふん。当然でしょ? おじさんの誇る雛見沢なんだからさ!」 レナ「…魅音ちゃん……うん。そうだよ。当たり前だよ!」 富竹「はっはっは。」 鷹野「……くすくす。」 L「………。………」 □また今度 鷹野「じゃあね、Lくん……。」 L「はい、鷹野さん。」 □勃発 L「お疲れさまです。」 梨花「疲れたのです……。」 レナ「梨花ちゃんの演舞、かぁいかったなぁ〜。お持ち帰り〜☆」 L「窃盗罪ですよ。」 魅音「器物!?」 ワタリ『L』 L「! どうした?」 ワタリ『大石刑事からの連絡です。鷹野氏、富竹氏両名が姿を消しました』 □祭りの夜には人が死ぬ L「……梨花さんの情報にあった場所に向かってくれ。富竹氏の死体が発見される予定の場所だ。そして私の予測する『殺害現場』にもすぐに」 ワタリ『分かりました』 レナ「……どういうこと? 警察の人が見張ってたんじゃ……。」 L「……。……車に乗り込むのを発見し追跡していたそうですが、結局、車の中に鷹野らはいなかったそうです。……見間違えた…というよりは動きを読まれた…?」 詩音「まーったく。警察の奴らは何やってんでしょうかねー!」 魅音「……それじゃあ、どこに?」 L「監視されていたことを察知されるだけなら想定していました。向こうの人員はそういった事に長けたプロだそうですし。……問題はここからです」 沙都子「富竹さんが発見される場所が分かっているのなら最初から警察の人に見張っていていただければよかったんじゃないですの?」 梨花「…富竹の死体を置いておく場所に警察がいたりしたら、それこそ自分達の動きが全て読まれている、と思われてしまうのです。」 L「綿流しの夜に人が死ぬ。このシステムは何がなんでも崩さなくてはなりません。この土壌が生きている限り、同じことがまた繰り返されてしまいます」 レナ「富竹さん……。」 ワタリ『L』 L「!」 ワタリ『……鷹野三四と思わしき死体が発見されました』 L「……。……なんだと?」 □トミーどこ行った 梨花「……おかしいのです。こんなのは知らない……。」 レナ「梨花ちゃん……。」 魅音「でも梨花ちゃんの『予言』通りになったね。発見される場所は違ったけど……。」 詩音「予言って言われかたをされると少し疑っちゃう気持ちがありましたけど、これで信憑性が出てきましたね。警察の人もやる気だしてくれるんじゃないですか?」 沙都子「警察のやる気の問題ですの…?」 詩音「そうでしょ? 尾行してた相手にまんまと逃げられて……なにやってんだか。」 魅音「……それで結局、どういうことなの? 殺されるべき富竹は死体で発見されず、代わりに鷹野が焼かれて見つかった。梨花ちゃんの予言にズレがあった…とかそういうこと?」 梨花「…あんまり予言予言って言わないで欲しいのです。」 魅音「予言って解釈をしてるだけで、梨花ちゃんが鷹野達の情報を掴んでいるのは別の理由…でしょ?」 レナ「……。……。」 沙都子「こちらが向こうの動きを掴んでいたことを、向こうも掴んでいたのでは?」 魅音「…それで?」 沙都子「ですから…こちらは鷹野の死体が偽装であることを知っていたわけですし、そのことを向こうが知って……あれれ? こんがらがってきましたわ?」 詩音「つまり、こっちが向こうの動きを知っていることを見越した上で鷹野の死体を作った、と?」 沙都子「そうですわ。だからなんていうか……鷹野さん達からの撤退表明…とか?」 魅音「……だったら普通に計画中止して逃げればいいんじゃない?」 沙都子「あ…うーん。毎年の怪死事件を崩したくなかったから、来年また再チャレンジする余地を作ったんじゃないですの?」 梨花「鷹野の死体が偽装であることはすぐにでも証明できることなのです。もし来年に繋ぐための怪死事件を起こしたいのであればそれこそ適当なのを見繕って殺して、誰か鬼隠しさせればいいことなのです。」 詩音「……というか、来年に続くのであれば富竹さんは残しておかなければならないんじゃないですか? 富竹さんが死んだのなら鷹野さんも死ななければならない。この流れが彼女の計画に必須なら、既に計画は破綻しているんじゃ…?」 □ハイスペック少女、レナ レナ「……どうして今年じゃないといけないのかな、かな。」 魅音「え?」 レナ「梨花ちゃんは今年の6月21日…つまり明日『絶対に』殺される。……どうして?」 梨花「それは……。」 レナ「女王感染者をころ……えーと…。」 梨花「いいのです。構わないで下さい。」 レナ「うん……。あんまり『殺す』とか言ったことないから……。女王感染者を殺すことで雛見沢は大変なことになる。これを利用して鷹野さんはこの村消して、オヤシロさまになりたがってる…んだよね?」 L「はい。……あくまでも私の考えでは、ですが。」 レナ「……。……。だったら、どうして今年なの? 女王感染者を殺す過程が大事なら、それは別に去年でも良かったんじゃないのかな、かな? 単純に、監督さんの研究成果を待ったからなのかもしれない。『五年目』っていうのが鷹野さんにとって特別だったからとも考えられるよね。そして梨花ちゃんは、『絶対』に…って言ってる。今年じゃないといけない理由があるんだよ。そうでしょ?」 L「……。……首相を説得するにたる理由を作り、自衛隊で村を一つ消す……。言ってみればこれだけのことですが、よほど準備をしておかないと不可能でしょうね。恐らくはそんな都合と『東京』の上層部を動かす為に必要なスケジュールなんでしょう」 レナ「だったらまた来年、なんて都合よくいくわけがないし、ここにLくんっていう強力な敵がいて、これまで必死で作り上げた4年間の連続怪死事件が解明されようとしているかもしれない。それで次に都合がよくなる時まで連続怪死事件を続けていくなんて出来る?」 魅音「無理だね……。鷹野の死体を偽装して白旗を揚げる……なんて撤退表明にしては意味不明だよ。」 詩音「では……つまり?」 レナ「向こうは計画通りに全てを進める気なんだよ。」 □イーグルからドラゴンへ 沙都子「……どういうことですの?」 レナ「沙都子ちゃんが言ったとおり、鷹野さんは自分達の情報が漏れてると判断したんだよ。あるいは山狗の中にスパイがいる。そう仮定して、全情報が漏れているって前提で動いてる気がする。考えてもみて。当初の計画では『綿流しの夜に富竹さんと鷹野さんが死ぬ』んだよね。……その状況は、もう成立してるんだよ。これは鷹野さんからエルくんへのメッセージなんじゃないかな。」 沙都子「…メッセージ…ですの?」 詩音「……なるほど……なんとなく読めてきました…。」 L(……まさか……これは……) レナ「あくまでも計画通りに鷹野さんは自分の偽装死体を用意した。なら、富竹さんは?」 魅音「! ……このまま計画通りにことを進めるなら……富竹さんも殺すはず。つまり…。」 レナ「鷹野さん達からしてみれば、富竹さんを人質に取ってるんだよ。」 L(……そういうことか……鷹野三四……) 沙都子「……でも、こちらが富竹さんを見捨てるかもしれませんわ。」 レナ「……見捨てるの?」 沙都子「それは……。」 魅音「………出来ない…ね。」 レナ「向こうは想像以上にLくんっていう存在を警戒してるんだと思うよ。だって明日実行できなければ、全て駄目になってしまうんだから。」 詩音「…そりゃ賭けにもでますね。」 レナ「うん。なんとしてでも絶対に……って意志が透けて見えるよ。」 □心疑う暗がりの鬼 レナ「ねぇ梨花ちゃん。…本当に山狗は警察内部とは繋がってないの?」 梨花「はい。…ですが、それもまた山狗を通して教えられたことなのです。事実、警察は鷹野達を取り逃がした……。」 詩音「もはや警察に情報を流すのは得策ではない…ですか。」 魅音「私は警察は完全にシロだと思うけどね。もし警察と繋がりがあるんなら、向こうはもっと上手いやりようがあったと思う。でも、もしかしたら、って考えなきゃいけない。……ここでも疑心暗鬼が出てくるのか。」 レナ「ここにいる私達以外に情報を流すことはできない。そういう行動の全てが富竹さんの命を摘み取ってしまう。そして鷹野さん達はそんな私達の疑心暗鬼も読んでるはず。……ねぇエルくん。さっきから何も言わないけど……。このくらいの事は最初から気づいてたんだよね?」 L「……いえ。」 レナ「嘘だよ。」 L「……はい。」 □K レナ「現時点で山狗を逮捕することは出来ないんだよ。よくて偽装死体を作ったことで立件できそうだけど、それだけ。証拠が出るかも分からない。もちろん時間をかければ不可能じゃない。ここから過去の事件を洗い直して『東京』や入江機関も明らかにして……。だけどその全てには富竹さんの犠牲が前提なの。」 魅音「今夜中に鷹野達を捕まえる方法……。」 梨花「鷹野さん達からしてみれば、自宅で寝静まった梨花ちゃんを襲う……。っていうのが本当にやりたかったことなんじゃないかな、かな? だから向こうは暗に『そうさせろ』って言ってるんじゃない? さすがにこれは無理がある?」 L「……いえ、そういうことなんだと思います。古手神社は立地的にも暗殺に適していますし、元々そういうつもりだったのでしょう。……。……」 梨花「………そうしなければ富竹は殺される、今はそういう状況なのですね。」 詩音「古手宅にこの五人を集合させ、殺す。そうしなければ富竹さんを殺す。これが鷹野さん達の無言の要求。……向こうも無茶苦茶やりますね。」 レナ「私達だけじゃない、ワタリさんも……だよ。」 魅音「対して私達は、私達を殺しにくる現場を抑えることが出来れば鷹野達を逮捕できる。」 梨花「お互いが合意の上での決戦……。それにしては随分と分が悪いように思えるのです。」 レナ「そうだね……。……。あのね。私は、ここで富竹さんを見捨てるって手もあると思うの。」 L「……!」 魅音「え!?」 レナ「人間の命に重さは無いって言うのは簡単だよ。けど実際に梨花ちゃんや、自分達の命を天秤に乗せてしまったら……どう?」 魅音「……。」 詩音「……。」 沙都子「……。」 梨花「……。」 L「……。」 □オーガ 魅音「だけど。」 レナ「! ……。」 魅音「富竹の命は、確かに仲間と比べて軽いかもしれない。それが正直な本音だと思う。けど……ここで誰かを犠牲にして助かったら、私達はきっと……笑えないよ。雛見沢のことが好き、だなんてあんな顔で言い放った富竹を、助けられなかったって嫌な感じがずっと残ると思う。……困難に立ち向かってこそ部活メンバーでしょ? 手が届くかもしれないものに手を伸ばさないなら、普段、部活で命をかけてるなんて口だけになっちゃう……。って……あれ? 仲間の誰かが言うようなセリフを言ったつもりなんだけど……。この中の誰もそんなこと言いそうにないや。……あれれー?」 □KOOL! KOOL! KOOL! KOOL! KOOL! KOOL! 詩音「……そうですね。そうかもしれません。」 沙都子「集合するのはわたくし達の家なんでございましょう? だったら安心ですわね。護身用トラップの巣窟ですから。山狗だかなんだか知りませんけれど、今日がその命日ですわ!」 詩音「頼りになりますねー。ブロッコリーとカリフラワー。どっちが緑色?」 沙都子「ふふん、カリフラワーですわ!」 梨花「……一気に不安になったのです。」 レナ「ね、エルくん。これが私達なんだよ。エルくんが全部分かってて何も言わなかったのは、私達を危険な目に会わせたくなかったからなんでしょ?」 L(竜宮礼奈……レナさん……この娘は……) 魅音「見くびってもらっちゃ困るねー。」 詩音「まだ出会って日が浅いとはいえ、私達を甘く見すぎですよ。」 梨花「……もう終わらせたいのです。もう何も失いたくないのです。エル。」 L「……分かりました。私も、普段の私らしさというものを見失っていたようです。やるからには完璧に。証明しましょう。正義は必ず勝つのだと」 沙都子「……ブロッコリー…カリフラワー…ブロフラワー…。! ブロリー!」 梨花「………。」 山狗「竜崎エルを含め、古手梨花ちゃんら五人が古手宅に帰宅とのことだワン。」 鷹野(読 み 通 り ! !) □ずるい女 L(鷹野三四……綿流しで私達の前に姿を現したのは、富竹にあの台詞を言わせたかったからか……。さらに私が事件当日に誰と行動を共にしているか、を見ておきたかったのだろう。そして鷹野の姿を見た皆の反応……あれで何か察したな。私が警察の動きを警戒し、捜査を上手く進められないこと、古手梨花たちに情報提供を求めることまで読んだ。もしも私一人で全てを行っているようであれば鷹野に王手を突きつけることが出来ただろう。しかしそうはならなかった。私が鷹野からのメッセージに対して無視を決め込んでも、竜宮レナがそこに行き着く。富竹を犠牲にして証拠を掴む、というやり方には絶対に賛同しない部活メンバー……。奴らが想定する以上の情報を得て勝機が見えた気がしたが……。甘かったか。読んでいた……完璧に……この土壇場で……なんて奴だ。仮に私とワタリが死ねば、探偵Lの保有する全ての捜査資料等は自動で消去される……。……そこまで予測しているのか……? それは無い…無いとは思うが…。つまりここまでくれば『私は本物のLではないかもしれない』というブラフも役に立たない……。古手宅にいくことも鷹野の誘導なら……一体、何手先まで読んである? ………くそっ……。……。……) 魅音「よーし、そうと決まれば早速、梨花ちゃんの家に……。」 L「あ、魅音さんは来なくていいです。」 魅音「うぉい!」 □神になりたい人たちの賛歌 山狗「奴らの帰宅の状況としては、初老の男が運転する車で、だそうだワン。車の中には誰かが潜んだ形跡も無し。特に仕掛けもなさそうだワン。車の陰に隠れて何人が古手宅に入ったかは分からなかったそうだワンが、少なくとも竜崎エルと繋がりのある人間全てがあそこへ集っていることを確認しているワン。ご丁寧にも一人ずつ家の中から外に手を振ってくれたそうだワン。親切だワンつまり、予定外の人員が入り込んでいる可能性もあるワンが、状況から見て一人か二人だワンし、こっちの戦力から見ればそう大したことにはならないワン。鷹野三佐の予想通り、警察をどこにも見かけない。完全に沈静化しているようだワン。入江の耳にもまだ何も入ってないみたいワン。Lが警察に口止めしてるみたいだワン。」 鷹野「友情って素敵よねぇ……同時に無慈悲でもあるけれど……くすくす。」 山狗「これでこちらの勝ちだワン。」 鷹野「くれぐれも油断はしないでね。子供達ばかりだけれど、一筋縄じゃいかないはずだから。」 山狗「富竹はまだ殺さないワンか?」 鷹野「まだよ。だって彼らはいつだって通報しようと思えば出来るのよ? もし顔見せした後で、ジロウさんはもう殺した、あるいはここにはいない、なんてことになったら何をされるか分からない。ジロウさんを殺すのは、梨花ちゃんを殺す直前、他の仲間が死んだあと……くすくす。そしてただ彼らを殺せばいいといっても、ここで無策に山狗を飛び込ませることも出来ない。古手宅内の状況も分からないのにそんな危険なマネは、だめ。」 山狗「悪女やー悪女がおるー。」 鷹野「にゃあ! だからジロウさんも決着の場に連れて行く。お互いに全ての札を出して……それでも依然こちらが圧倒的……素敵…。」 山狗「悪女やー。」 鷹野「にゃあにゃあ! ……くすくす。必ず古手梨花を殺してみせるわ。そして世界最高の探偵を知略の下に打ち倒す。さらには雛見沢の人間は、私の手でこの世から消えるの。伝承の筋書きを私が具現する。私が歴史を作る。オヤシロさまになる。―――神になる!」 □ドラゴンターン 詩音「鷹野本人は来るでしょうか。」 L「来ます。それも一人で。あくまでもここに入ってくるまでは、ですが。来なければそもそも勝負になりません。鷹野が来ないと分かればその瞬間に彼らも終わりです。富竹さんも同様に。事態は切迫しています。しかし鷹野もそれは同じはず。鷹野の思い描く自己の神格化には、鷹野自身の存在が絶対に欠かせない。裏を返すと、鷹野の野望を挫くという結果だけを優先するのであれば、我々は鷹野を殺すことだけに専念すればいいのです。もちろんそんな結果を我々が望んでいないということは鷹野も良く理解しています。しかし、もしかしたらそういうこともありえるかもしれない……。そういったほんの少しだけの可能性が彼女の思い切った行動を抑制します」 梨花「……ここにいきなり踏み込んできたりはしないのですか?」 L「無い、ですね。彼らからしてみても私という存在は得体が知れない、どんな手を使うか分からない、というのもありますし、何よりも鷹野がそれを望まない。死ぬわけにはいかない。かといって自らの手で決着をつけなくては気が済まない。神になるとまで豪語したのなら、それくらいの気概が無くては駄目ですよ」 詩音「鷹野は梨花ちゃまの姿を、こっちは富竹さんの無事を確認して、そこから私達が警察をここに呼ぶまでにいかに相手を無力化するか。勝負の決め手はそこなんですね。」 沙都子「万が一の場合に備えてトラップは確保してありますわ。」 梨花「……全てが決まる。」 ワタリ「はぅ〜。緊張するよ〜。」 レナ「レ、レナのセリフ取っちゃ駄目だよ!」 □イーグルターン 山狗「午前1時……そろそろ頃合だワン。状況に変化なし。古手宅から出入りする人間もいないワン。……本当にL達はカメラか何かで警察に状況を伝えていないワンか?」 鷹野「警察に『東京』が潜んでいるかもしれない、っていう疑念があっちにあるんだから、そんな危ないことは出来ないわね。それがこちらに伝わった瞬間にジロウさんは死ぬ。お互いに何も小細工をしていないからこそ……出来ないからこそ、この状況は成立しているのよ。……山狗は全員この場所に集合しているわね。綿流しの警察の動き、そして梨花ちゃん達の顔を見て核心したわ。今回、Lは明らかにこちらの動きを読みすぎている。こっちとしても内通者の疑いは消えないわ……だから、みんなお互いを監視してね。じゃあ行ってくるわ。手筈通りに。」 山狗「ワン!」 鷹野「にゃあ!」 ■終幕へ向けて 梨花「これで……私ひとり。どうしてなの? ライトのいる雛見沢では、今まで見えていた筈の『選択肢』が見えない…。最悪の展開を回避するために行動しても、どうしてか人が死んでいく……。まるで『死』に引っ張られてしまうような…。なぜライトの世界に限ってそうなのか、原因も分からない。見当もつかない。竜崎の世界で色々な対抗策を学べたと思ったのに……。」 羽入「……。恐らく山狗に踏み込まれるまでにそう時間はかからないのです。」 梨花「隠れても見つけられる。警察に保護を求めても無意味。……いっそ自殺してみればいいのかしら。そうすればライトだけでも……。もしかしたら……もしかしたら……。」 羽入「梨花。」 梨花「……分かってる…打開策を得ないまま死んでも、また繰り返すだけ…。だけど! ……彼に死なれるのは……もう嫌ぁ……。」 羽入「梨花……前回、私たちはライトより先に殺されましたのです。だけど竜崎の明かした滅菌作戦が実行されたとすると、あの後ライトも同様に、雛見沢村ごと消されていた可能性が高い……。結局はそれだけのこと。私たちはライトが死ぬ場面を見たわけではないのですよ。ライトはもしかしたら…死んでいないのかもしれないのです。」 梨花「……。前回、ライト以外がみんな死んで、私は半ば自暴自棄になっていた。その上で護衛につけた警察を死なせるのは絶対に嫌だった。だから警察にも知らせず、ライトに『東京』のことを話しもせず、ただ、逃げた。……結局はすぐに捕まったけど。……最低の展開だったわ。沙都子を助けた時の手並みを考えれば、ライトは決して竜崎に負けてない、と思う。ライトに竜崎のように、警察を動かす力があれば……。」 羽入「……前にも同じようなことを考えていたのです…。でも、それは梨花の願望なのではないですか?」 梨花「………。」 ■き、ききき来たあ! ライト「おじゃましまーす」 梨花「! ライト!?」 ライト「家に閉じこもったままって聞いたからさ。……元気だせ、なんて言えないけど」 梨花(しまった……。私が家に残っているとライトが来るのか…。……そうよね。前にも仲間達がここに来てくれたことがあった…。ありがとう、ライト……。でも…) 「……巻き込みたくなかったのです。」 ライト「……僕たちだけになっちゃったね。」 梨花「……はい。」 ライト「ここに来て……本当の意味での『友達』っていうのが出来た気がする。なんて、言ったら臭すぎるのかもしれないけどさ。……。…だから……そんなこと……言うなよ…。力になれるかどうかは知らない。でも……。」 梨花「……はい。」 リューク『自分で殺っといてすげーな』 羽入「……。梨花……ライトに話すのです。やれることは全てやる……ではなかったのですか?」 梨花(……話したからどうにかなる? ……ううん、そうね。出来ることはなんでもやる。ライトなら、もしかしたら…!) リューク(……この村の人間の寿命はみんな共通して異常に短い……。 最初から気になってはいたが……。そしてその期限は近い。もうすぐ何かが起きるのか……? ………面白ェー!) 梨花「話せる範囲で……話すのです。」 ■最愛の神 梨花「これが…『東京』と私の関わりなのです。そして奴らの予定では、恐らくは今日、ボクは…。」 ライト「……そんな組織があったのか……」 リューク『白々しいなー』 ライト「梨花ちゃんはずっと自分が殺される恐怖に怯えていたのか……」 梨花「あっ! ……ライト……苦しいのです……。」 ライト「ちくしょう! ふざけやがって! なんで梨花ちゃんがそんな目に……! どうなってるんだ!? 大切な人が、みんな僕を残して死んでいく…! 僕の所為だ、僕にもっと力があったら……!」 梨花(……。……。ライトは……優しいなぁ……。そう……私はこの人が好き。大好き。繰り返す生と死の中で嘆くことしか出来なかった私が、こんな気持ちを抱けた。こんなにも矮小な私だけど、ようやく生まれてきて良かったと思えた。この人の為なら何度だって死んでもいい。永劫の苦痛だって耐えられる。だけどもしも願いが叶うなら、私はこの人と一緒に生きていきたいです。ライトやみんなと部活やって勉強して、将来の事を悩んでみたり…。見たことのない未来を、この人の隣で見たいです。普通の女の子みたいに、好きな人の事だけを考えて眠りたいです。駄目でしょうか……神さま) ライト(あっ…これはこれで気持ちいいな……) ■とりあえず話を合わせとこう。 ライト「……警察に保護を求めようとは思わなかったのか?」 梨花「………警察を信じさせるだけの材料が無いのです。警護を頼むくらいは出来るかもしれなかったのですが、……少数の警察官なんて、いないのと同じなのです。……山中に身を隠しても見つかります。どこにいても同じなら、少しでも居慣れた場所の方が考えが纏まるのです。………ライトが来てしまうとは思いもよらなかった。」 ライト「……。なるほど」 梨花「彼らは皆、自分達の経歴を偽ってこの村に来ていたのです。」 ライト「……。…!…。……経歴を偽って…?」 梨花「はい。彼らは全員、この世には存在しない人間の筈なのです。ライト、出来るなら今からでも逃げてほしいのです。最初からそう伝えればよかったのですが……全てはボクのわがままなのです。」 ライト「梨花ちゃんの話では……鷹野三四も『東京』の一員…山狗のまとめ役らしいけど…。」 梨花「え? はい……当然、鷹野三四なんて人間は存在しないのです。だからこそ自分の死体を偽装する、なんてことが出来たのだと思うのです。」 ■無様、月! ライト「死体を偽装…だと…?」 (……どういうことだ? 確かに鷹野は僕が指定した死に方をしたはずだ。全てが梨花の妄想……いや、筋は通っている。……。待て……。待てよ……。まさか……?) リューク『くっくっくっくっくっく……』 ライト(! ……リューク……知っていたな!?) 梨花「……ライト?」 ライト「………。……彼らの本当の名前を……いや…それは無理か…。奴らからしてみればいくら梨花ちゃん達が自分達と関わりがあるとしても、そこまで教える意味がない」 (まずい、まずい…どうする。仮に『東京』が梨花を狙っているのだとすれば、もう包囲されている可能性が高い。僕ならそうする。そして機密保持を謳うのなら、梨花が僕に『東京』の詳細を話した可能性を考慮され、僕を消しにかかってくるかもしれないじゃないか。……このクソガキ、余計なことを…! どうする……くそ! まずい状況だ…! 鷹野の偽装方法と僕の指定した死に方が一致していたなんて…そんな偶然……。せめて鷹野の本名だけでも分かれば、現場指揮が機能しなくなったことで山狗は撤退するだろう。ここを乗り切ることさえ出来れば後はどうにでも出来る……ちくしょう……どうすれば……! この村があまりにもぬる過ぎて油断した! ……どうする…!? 逃げることは出来る! どうとでも! だが、僕は神だぞ!? 新世界の神に逃げろというのか! ふざけるな!! ……! リュークに頼めばいい! リュークなら簡単に殺せる! 馬鹿が! リュークの性格を考えろ! そんなつまらない展開に乗るわけがない! そんなことを頼めば、それこそ僕がノートに名前をかかれる! 分かりきってるだろう! ……そうだ、レナは? レナの戦闘力なら切り抜けられる! そうだね、死んだね。沙都子! 沙都子はどうした! ご自慢のトラップを仕掛けろ! そうだね、死んだね。魅音……詩音は!? こんな時になにやってる!? 今こそ園崎家の力をそうだね、死んだね。うぐうううううううううううううううう!!!!) □当方に迎撃の用意あり 鷹野「……何をしているのかしら。パソコン抱えて。」 L「ちょっと動画を落とそうかな、と。こう見えても私…蒼井そらのファンでして」 ワタリ「私は荻原舞の方が……。」 鷹野「梨花ちゃんはどこ?」 L「富竹さんはどこですか?」 鷹野「ここよ。もうすっごい重かったのよ。引きずっちゃったわ。許してねジロウさん。」 L「ところで……生きていたんですね。」 鷹野「何の話かしら?」 L「……。富竹さんは生きているんでしょうね。」 鷹野「何を言ってるの? もちろんよ。確かめてもいいわ。」 レナ「レナがいくよ。」 沙都子「レナさん……。」 ワタリ「いえ、私が…。」 詩音「………。」 ワタリ「……確かに富竹氏の生存を確認しました。」 鷹野「ね? 分かったでしょ? 梨花ちゃんは? 演舞がとてもかわいかったから、会いたいわ…くすくす。」 梨花「……ここなのです。」 鷹野「こんばんは…くすくす。さて、それでどうするのかしら?」 L「……本当に富竹さんをここに連れてきましたか。これで沙都子さんのスグカケツケールは役に立たなくなりました」 鷹野(思 い 通 り !!) □当方に迎撃の用意に対する迎撃の用意あり 鷹野(お祭りの時……竜崎エルはジロウさんにわたあめをプレゼントしたわね。その時にこっそりとジロウさんに何かを取り付けていたのを私は見逃さなかった。沙都子ちゃんの事件は山狗の監視下にあったから、あの時に何があったのかも大体は掴んでいる……。だからその際にしようした発信機を今回も使うことは『伏線』として読んでいたわ。ここにジロウさんが来なかった場合の予備策だったんでしょうけど……はい、これで一個潰したわ。でもそれだけじゃないでしょう? ……くすくす。抱えているパソコン……ここの状況や私との会話、もしくは映像を入手し、P2Pにでも流そうとしていたのかしら? 残念だけど、それも読んでいる。対応策は既に完了している。他にも、この場で出来ることは沢山ある……。あなたのギミックは読みに読んでいるのよ。私の提示した罠にあなたは乗り、そしてそれを上回ってくる。なら、こちらはそれすらも想定して動けばいい。……ゾクゾクするわ。たまらない! でも……) 「そろそろいいかしら? 私のワンちゃん達が今か今かと待ち構えているのよ。出来ることは可能な限りやって御覧なさい。私は既に策を講じ終わっているけどね……くすくす。あはは!」 L「……。……。」 鷹野「さぁ、ワンちゃん達。……皆殺しにしなさい。」 L「!」 □一人に二人で石を投げ -数時間前- L「魅音さん、リンゴ飴を買ったのですが、一ついかがですか?」 魅音「あ……ありがとう。」 L「……詩音さんに言われたことを気にしているのですか?」 魅音「………。」 L「……私は貴方の立場も気持ちも知り得ません。全世界の警察を動かせる権限を持ってはいますが、基本的には独断専行の人間です。魅音さんのように帝王学を学んだわけでもありませんし、必要なわけでもない。ですから全ては私個人の勝手な意見なので大変恐縮なのですが……」 魅音「……?」 L「魅音さんは、唯一部活メンバーの中で完成している、ということです」 魅音「え……」 L「人格的なことや能力的なことを言っているのではなく、貴方の在り方、というのでしょうか」 魅音「在り方…。」 L「魅音さんは部活ではとても意気揚揚としていて頼もしい風貌ですが、肝心な時に打たれ弱い」 魅音「あれ?」 L「固めた地盤が崩されると途端に力尽きてしまう」 魅音「あれれ?」 L「ヘタレ」 魅音「うぉい!」 L「空気が読めない」 魅音「…おーい…。」 L「これは全部魅音さんの弱点と呼べるものですが……。私に言わせればこんなものは些細な問題でしかない。魅音さんは身の安全が保障された温室でこそ、その真価を発揮するのですから」 魅音「それはおじさん……誉められてるのかな?」 L「もちろん。いいですか。貴方は命令を下す側の人間であり、下々の頂点に立つものです。こういう言い方をすると魅音さんはいい気がしないでしょうが……。安全な場所で、圧倒的な配下を従え、戦に勝利する。この在り方は『王』たる貴方にのみ許された特権なんです」 魅音「……『王』。」 L「続きます」 □みんなで一緒に仕返しだ L「……レナさんらの気質や才能や持ち物に憧れ、嫉妬することもあるかもしれません。しかし精神的な成長だとか、意志だとか、そういった内面的なものでは勝ち取りえないものを、あなたは既に所持しています」 魅音「……園崎家。」 L「はい。確かに他の部活メンバーは美しく素晴らしいものを有している。それらは魅音さんの目にとても輝かしいものとして映っていて、対して自分の持つ家柄や技能はひどく即物的なものに見えてしまうかもしれない。……本来は、自分のものでは無かったはず、というのも加えて」 魅音「! エルちゃん…!」 L「貴方が人生の殆どをかけて自分に叩き込んできた知識、予め用意された財産、そしてそれを得る機会を持ちえた偶然……これらは全て魅音さんの『王者の才覚』です。部活メンバーは各々が自分の未来を模索する時期であり、言うなれば不安定と言えます。しかし魅音さんは違う。先に述べたように、そういう意味で貴方は完成している」 魅音「……他の生き方が出来ない、みたいに聞こえるなぁ〜。」 L「そうですか? 欠けているものは認識です。己が如何なる存在か、という認識。自分が本物か偽物かなんて、本当に大切なことですか? そもそも貴方は、この地球上で最も長く『園崎魅音』を続けてきた唯一の存在なんですよ」 魅音「……!」 L「継続は力、なんて言い方をすれば陳腐に聞こえてしまいますが、魅音さんが背負い続けてきた鬼や、架せられた努力は誰にも真似できることじゃありません。もちろん、魅音さんが他人と自分を比べてショボーンとしたりするのはご自由です。しかし園崎魅音という存在は、そんなものでは揺るぎようのないものをその骨子に据えている。私の個人的且つ勝手な見解ですが、つまりはそういうことです」 魅音「続くの?」 L「はい」 □五臓六腑を七里にばら撒き 魅音「つまり……自信を持てってこと?」 L「まあ……要約してしまえば。ただ、自信を持とうが持つまいが貴方は変わりません。逆を言えば魅音さんはどう足掻いても園崎魅音でしかないのですから。時間さえ経過すれば魅音さんの立場はさらに強化されるわけですし。……それを生涯の苦悩とするか、それこそ私がどうこう言えることではないです。しかし」 魅音「私が何者であるかって認識を常に念頭に置いておかないと、いざという時に動けなくなる。」 L「……そうです。園崎家を全てひっくるめて魅音さんなんですから。それに引け目を感じたり、個人としての自身と分離させてしまうと、そのハツラツとした性格や頼りがいのある行動力やその他諸々の魅力が、半減してしまいます」 魅音「……うん。」 L「魅音さんの『魅』は、魅力の『魅』です。 魅音「……。…誉められたってことでいいんだよね?」 L「そうなんですか?」 魅音「うぉい!」 □八つ裂き園崎、はらわた喰い 鷹野「……。……。……?」 L「……。」 詩音「皆殺しだなんて、おっかないですねー。」 沙都子「恐いですわー!」 梨花「……。……」 レナ「ワンちゃん……その響きだけでかぁいいんだよ〜☆」 ワタリ「お持ち帰りィィィヤァァッ! すみません、レナ様の台詞を……。」 レナ「レ、レナそんなこと言わないよ!」 鷹野「なによ、これ…! どうしたって言うのよ……! ………。………。………。ちょっと待って……。園崎魅音は、どこ?」 L「……聞こえませんか? 狂犬駆除の騒音が」 鷹野「!」 イヌA「園崎組だワン! すっげぇ数! 周囲を完全に囲まれ……アッー!」 鷹野「どういうこと!? どうして!」 イヌB「アッー!」 鷹野「それどうやって発音してんの!?」 L「残念でしたね」 鷹野「……! ぐっ……!」 □十里に知らぬ者は無し 鷹野「そんな……ありえない…。園崎魅音がここにいることは確認されていたはずよ……!」 L「そうなんですか?」 詩音「あー…ごめんなさい。それ私です。」 鷹野「……嘘よ……!」 沙都子「つまらない入れ替わりトリックに引っかかっちゃいましたわねー。」 レナ「一人ずつ外に手をふったとことで気づくべきだったんだよ。」 L「罠? 策? なんのことです? こちらはこういう状況さえ作れれば良かった。内通者の疑いを捨てきれないあなたがここに山狗を全員集めることは読んでいましたから。もっと高度な対応でも期待していましたか? ……でしょうね。だからこんな古典的な手に引っかかった。…大石警部ですか? ……はい。全て終わりました。古手宅にお願いします。」 鷹野「……園崎魅音がこれだけの人数を集めたっていうの……? 当主でもないのに…? それだけの根拠も無いのに…? あの、土壇場で力が出せない、甘えん坊の園崎魅音が…? 私の認識違いだったっていうの?」 詩音「いえ、それで合ってますよ。」 鷹野「え?」 詩音「この状況も、全ては憶測にしか過ぎない。あの鬼婆がこれほど迅速に、これだけの園崎組を動かすとはとても思えません。どうせまた、おっかなびっくり婆さまの顔色伺いながら、心臓バックバクいわせてお願いしたんじゃないですか? 泣き喚いて叫び散らして…怒られて怒鳴られて、もしかして爪剥がされたりしちゃったかもしれないですね〜」 レナ「……詩ぃちゃん……。」 詩音「でも。」 レナ「?」 詩音「泣き喚いたり叫び散らしたり、怒られて怒鳴られて、最悪、爪を剥がされる。言ってしまえばたったそれっぽっちのことですよ?たったそれっぽっちのことで、ここまでのことが出来てしまうんです。園崎魅音は……これほどまでの存在だったってことなんですよ。……すごいじゃん、魅音。」 □範馬魅音 L「いくら次期党首と言っても、魅音さんにここまでの人員を動かすのは不可能です。ですから、それが出来る方に『お願い』しに行って貰いました。それが叶わないならこちらの負け。ここまでスマートに決まったから良かったものの、神頼み……この場合は鬼頼みですか? とてもハイリスクな賭けでした。……勝ちましたけどね。……今でこそ白状しますけど、本当にピンチでした。ここで死ぬのかと思いましたよ。必死で策を考えました。こちらの策に対してあなたが先読みしていることも込みで、なんとかしてその上を行くために頭をフルに働かせました」 沙都子「……角砂糖をそのままガリガリ食べるくらい頭を使ってましたわね。」 L「はい。……しかし幾重の策を講じようとも、不安は拭えませんでした。  それもそのはず、そもそも鷹野さんが作り出した状況が前提にあるのですから、どれほど思考を構築しようとも全て想定されている……という不安です。そこで砂糖が無くなったんです。ワタリに補充させようと思い……気づきました。ここで考えるのを止めてみるのも一つの手なのではないのかと。私が考えることそのものが鷹野さんの策の内であるのなら、考えることを放棄してしまえば勝機が見えてくるのではないか、と。そこで魅音さんに全てを委ねることを思いついたわけです」 鷹野「……ッッッ!」 L「策と策をぶつけ合うという決戦場で人頼みですよ? そんなこと、高度な頭脳戦を望む鷹野さんは真っ先に捨てる選択肢でしょう。そう考えたらあとは簡単でした。頼まなくても仕組まなくても、貴方は勝手に脳内知略戦を複雑化してくれたんですから。読み過ぎましたね、鷹野三四。いえ、自分の人生に物語性を求めすぎたんです。神になる。しかしその直前に、世界最高の探偵なる敵が現れた。これは試練だ。神になる者には相応しい物語だ。……そんなところでしょう。残念ですが、あなたは神なんかじゃありません。ただの夢見がちな殺人鬼です」 鷹野「……!」 L「現実を飲み込めましたか? あなたの負けです。鷹野三四」 鷹野「……にゃ……。にゃああああああああああああああああ!!」 L「終わりましたね」 梨花「……はい…なのです。」 □大団円 鷹野「そうそう……私がこんなことを企む原因になった、凄く泣ける過去話があるんだけど、聞きたいかしら?」 L「結構です」 鷹野「それは残念……くすくす。」 L「鷹野さん」 鷹野「……?」 L「……いえ、なんでもありません」 鷹野「……ジロウさんが起きたら…。」 L「はい」 鷹野「コーヒーを入れてあげて。彼、寝起きに絶対飲むのよ。」 L「……はい。」 赤坂「久しぶりだね梨花ちゃん。ところでこの騒ぎはなに?」 梨花「……温泉は楽しかったのですか?」 赤坂「もう最高だネ! 梨花ちゃんも今度行こうね。」 梨花「遠慮しておくのです。」 赤坂「えー行こうよ!」 梨花「遠慮しておくのです。」 赤坂「行くんだよッ!!」 梨花「うるっせーよなのです。」 L「詩音さん。突然ですがお電話です。」 詩音「? 私に? もしもし……。……嘘……。」 L「ワタリに探させました」 沙都子「え? え? なんですの?」 詩音「悟史くん……!」 沙都子「に、…にーにー!?」 レナ「…! なに、この取ってつけたようなハッピーエンドは!?」 魅音「みんなー! みんなー。みんなー……。あっれー? どこー? うわーん。」 □冥土への土産 梨花「偽名…ですか?」 L「ええ。まあ『東京』なんて場所に身を置いているくらいですから、名前など無いに等しいというのは分かっていました。鷹野三四という名前は偽名でした。本人が先程吐いたようですよ。何でしょうかね。全てがどうでも良くなったようです」 梨花「そうなのですか……。」 L「これが鷹野三四を始めとする、山狗と呼ばれる組織、そして『東京』の主なメンバーの詳細だそうです」 梨花「見せてくれるのですか?」 L「はい。ついでに参考ばかりにお話だけ聞かせて頂きたいと思っています。ケーキ食べますか?」 梨花「いえ、遠慮するのです。どれが鷹野の名前なのですか?」 L「これです。では、梨花さんの分のケーキは頂きますね」 梨花「あの…。」 L「はい?」 梨花「色々とありがとうなのです。」 L「? 友達ですから」 □さようなら L「それじゃあ、またどこかで、なんていうのは無責任な言葉でしょうか。富竹さんには事の真相を抱えて『東京』に戻って貰いましたし、雛見沢症候群などへのその後の処置は魅音さんに伝えてあります。私が雛見沢ですることはもう何もなくなってしまいました」 魅音「うん……。誰も不安にならないように……。みんなで力を合わせて……。それは園崎だから出来ること。古い確執も全部、園崎なら壊せる。……私の当主としてのやり方が、分かった気がする。」 レナ「エルくん…! じゃあね、じゃあね……!」 L「…泣かないでください。」 詩音「寂しくなりますよ。」 沙都子「エルさんからは得たものが大きすぎて、一生かかっても返せそうにありませんわね。」 L「気にしないでください……と、言いたいところですが、じゃあ一つだけ」 梨花「…なんでも言うのですよ。」 L「私と一生友達でいてください。それでもう、本当に十分です」 魅音「……なんかそんなこといまさら言われてもねぇ。」 詩音「そうですよ。なに言っちゃってんですか?」 レナ「エルくん…! エルくん…!」 L「…泣かないでください…。……。」 沙都子「? どうしましたの?」 L「……こんな気分は初めてです。余計なことまで口走ってしまいそうな……。  ……。……。………教えておきたいことがあります。」 詩音「?」 L「……私の……私の、本当の名前は……。」 □さてと……。 梨花「終わったのですね。……。」 羽入「………………。」 梨花「終わってしまったのです。……。」 羽入「…………。………………。」 梨花「……羽入?」 羽入「……………………………………………………………………。 ……………………………………………………………………。……………………………………………………………………。……………………………………………………………………。……………………………………………………………………。」 梨花「どうしたの?」 羽入「なんでもないのですよ。本当に良かった……正直、ボクには今でも信じられないのですよ。」 梨花「あはは……そうかもね。」 羽入「……。でも不思議なのです。梨花はあまり嬉しそうじゃないのです。」 梨花「! ……。な、なにを……。」 羽入「もしかして……彼のことなのですか?」 梨花「!」 羽入「まさか、ここでもう一度やり直したいなんて言わないのですよね?」 梨花「……出来るの?」 羽入「! ……。出来るのですよ。けど、馬鹿なことを考えるのは止めるのです。梨花が死んでもこの世界は続いていくのです。残された人たちはきっと悲しむのです。……。……。」 □ひぐらしが 梨花「そうよね……。」 羽入「でも、彼のいないこの世界で生きていくというのは残酷なことかもしれないのですね……。」 梨花「……。」 羽入「……結局は梨花が決めることなのです。今回が上手くいったのですから、今度も上手くいかもしれないと思うのも普通のことなのです。」 梨花「そう……そうなのよ! ……だけど……。」 羽入「私は本心で梨花とずっと一緒にいることを望んでいるのです。そんな私が言うのはおかしいのですが……。梨花のしたいようにするといいのですよ。もしかしたら梨花がやり直した分だけ、その世界は改善されるかもしれないのです。助からなかった人を助けられるかも。だって梨花には、もう『一度突破した』という前例があるのですから。諦めるなんて梨花らしくないのですよ。諦めなけば掴めるのです。それを今回、証明して見せたではないのですか? 失敗することを恐れては駄目なのです。………………やり直しは無限に出来るのですから。」 梨花「ぅ……ぅぅ……。」 ■打開 梨花「……名前なら、わかっているのです。」 ライト「! ……。……本当に?」 梨花「はい……でも、彼らに対する対策等は全く思いつかないのです……。申し訳ないのです…名前だけ分かっていてもボクには使い道が思いつかなかったのです。書類化されているわけでもないですし……。」 ライト「それはどの程度なんだ? 名前と顔が一致しているのは鷹野三四だけなのか?」 梨花「……理由は上手く説明できないのですけど、鷹野を含め、今回の実動隊のメンバー全員と顔はほぼ頭に叩き込んだのです。完璧とは言えないかもしれないのですが、何かの役に立つかと思いましたのです。でも…。」 ライト「……いや。十分だよ」 梨花「え…?」 ライト「言ったはずだ。僕の父は警察だと。そして梨花ちゃんが知る、山狗の情報があるのであれば、それは大きな手がかりになる」 梨花「手がかり…ですか。」 ライト「そうだ。僕なら父達を信用させることなんて容易いし、仮にこの瞬間に踏み込まれても取引することが出来る。だってこっちは向こうの機密を握っているんだから。僕に任せておけば何も心配はない」 梨花「ライト…。」 (すごい……ちゃんと道を示してくれた…! ほら羽入、見なさい! ライトは決して竜崎に負けてない! それどころか、自信に溢れている! あは、あはははは!) 羽入(………。………。) ライト「梨花ちゃんは絶対に僕が助ける。でも、万が一ってこともあるかもしれない……。……この紙に、梨花ちゃんが、知っている限りの名前を記して欲しい」 ■ノートに関わった者は。 ライト「絶対にそんなことはさせないが、もし僕たちが倒れた後に誰かが発見してくれれば、僕たちの意志は受け継がれるかもしれない。さらに言えば、形にした情報は分かりやすい取引の材料になる」 梨花「分かったのです。」 ライト「僕は下に降りて電話をかけてみるよ。警察を動かす。…封筒はあるかな?」 梨花「? あるです。……これです」 ライト「書き終わった後、用紙はこうやって……中に入れておいてくれ。そうだな…。あの時計の裏にでも隠しておこうか。警察が見つけてくれるかどうか不安だけど、山狗達には絶対に発見されたくないからね」 梨花「……わざわざ封筒に入れてくれなくても、そのくらい分かるのです。ライトはボクを馬鹿にしすぎなのです。」 ライト「ははっ。ごめんごめん」 梨花「……ふふ」 ライト「梨花ちゃん」 梨花「はい?」 ライト「名前を書く時にその人の顔を思い浮かべながら書いてね。効果があるかどうかは分からない。けど、そういう行為に厄払いの効果があるって聞いたことがあるんだ」 ■盲目 ライト「こんな時に神頼みだなんて情けなくて涙が出るけど、こんな状況だからね。それに梨花ちゃんみたいな可愛い巫女さんなら神様も……オヤシロさまも味方してくれるかもしれない。もし神が無力でも、死んでいった皆が力を貸してくれるかもしれない。……ごめん、変だよね、こんなこと……」 梨花「…そんなことないのです。分かったのです。出来る限りやってみるのです。」 ライト「ああ…ありがとう」 梨花(……ライト…ありがとう…。) 羽入「ライトは頼りになるのです……。」 梨花(ええ、そうね。今回も沙都子たちを助けられなかったけど、だからといって自暴自棄になることは出来ない。ライトならきっとなんとかしてくれる。もしも次の世界に行ったら、まずライトに助けを求めましょう。今までは行動が遅すぎたのよ。) 羽入(……。……。) 梨花「……? ライトの用意してくれたこの紙、端っこの方に文章が書いてある。『大きな声でおっぱいと叫んで静かに自殺』? ……なにこれ。」 羽入「……さっき封筒に入れる前に書いていたのです……。おまじないではないですか? さぁ、今は時間が無いのです。出来ることをするのです。」 梨花「……ええ。まずは……。」 羽入「ボクも協力するのです。……梨花。」 梨花「なに?」 羽入「……なんでもないのです。」 ■月、明かりの中で リューク『……なぁ』 ライト「なんだよ」 リューク『お、会話してくれるんだな』 ライト「……ノートを触った瞬間に梨花にリュークの姿が見えるだろ。騒がれたら台無しだ。封筒からページを取り出してる間に僕は退散する時間を稼いだってわけだよ」 リューク『よく俺の聞きたいことが分かったな』 ライト「僕は器用だからね」 リューク『……。お、電話か?』 ライト「父さん、あるいは大石を言いくるめて警護を求めよう。無論、大人数だ。梨花の話が本当であればこの場はで全て終わるはずだが、この村の人間は総じて頭がおかしいからな。全く信用できない。………。………」 リューク『……くっくっく……話し中か?』 ライト「くっ……! 携帯は…!? ……。……くそっ!」 (まずい! ……電話線を切り、その上、妨害電波か? 妄想じゃなかったのか! ……既に行動を起こされているとは……。だが……もうすぐ……) ??「おっぱい!!」 ライト「!」 ??「おっぱい!!」 ??「おっぱい!!」 リューク『……』 ライト(やった! 梨花の情報が正しいかどうか不安だったが……) リューク(おっぱい好きだなー、こいつ) ライト「さて、作戦変更。まずは余分なものを処分処分」 ■月明かりの中で 梨花「ライト…終わったのです。…ライト? どこですか?」 (部屋が……暗い……まさか…なにかあったの…? 電気を落とされた? ……でも2階は……。) ライト「お。早いねー。おつかれさま」 梨花「! …ライト? どこに…。……ふざけないで欲しいのです。…ライト。」 ライト「待って。いま書き終わるから」 梨花「…何をですか? …ライト…恐いのです。…ライト。」 (なんだろう……なんで私はこんなに震えて…。) ライト「封筒はちゃんと隠した?」 梨花「はい…。時計の裏に…。」 ライト「偉いぞ梨花ちゃん。ここまで暗いとさすがに書き辛いや。」 梨花「明かりをつけて書けばいいのです……。…ライトはお馬鹿さんなのです。」 ライト「あははあと5秒」 梨花「ライト…ライト……。ぅ…恐い…ライト…恐いよ…。」 (恐い…死ぬのが、じゃない…ライトが殺されてしまうのが、恐い…でも! 恐がっている場合じゃない! 早く逃げないと……。ライトを…助けないと……!) ライト「ゼロ。あーお腹減った」 梨花「ライト…ライト…ぁっ…ごほっ…」 ライト「おやおや? 風邪?」 梨花「分からないのです……ごほっ…ごほっ…。ライト…。」 (この症状は……。ライト…逃げて…!) ライト「『明かり』だけに『ライト』なんちゃって」 リューク『最高につまんねーよ』 梨花「! だれ…!? うぅ! あっ…がっ…ごほっ! ライト…逃げ…ぐぅっ…あぐっ……。」 (ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい) ライト「持つべきものは友達だ」 梨花「―――。」  助けてあげられなくて、ごめんなさい。 ■青の1号 羽入「ただいまなのです。」 梨花「おかえりなのです。」 羽入「……なんだか梨花の機嫌がえらく良いのです……。」 梨花「今日ライトがね…。」 羽入「またライトの話ですか。梨花はライトが大好きなのですねー。」 梨花「…そ」 羽入「そ?」 梨花「そー」 羽入「そー?」 梨花「そんなんじゃないわ。…………多分。」 羽入「……多分…ですか。ライトは圭一のように飛び抜けた『運命への対抗心』はありませんが、圭一には無い冷静さと知性があるのです。それを言えば竜崎もそうなのですが……意外とイケメン顔が好みなのですか?」 梨花「恋愛云々は魅音とかレナとか…とにかく自分の事としては考えたことないし……。そー、なのかなー…。よくわからない。みー。」 羽入「……ああいうのが好きなのですか…へぇー…ふーん…。」 梨花「……なんだか生意気ね。今は沙都子が留守だから、なんでも出来るのよ?」 羽入「な、なんですか?」 梨花「キムチ食べるわよ!」 羽入「あぅあぅあぅ……い、いつまでもそんな圧力には屈しないのです!」 梨花「ポーション飲むわよ!」 羽入「こ、殺される!!」 ■ 富田「あれ? ライトさん、こんばんわ……え? はい、今までこいつと二人で遊んでました。いや……2時間くらいは誰とも会ってないし、誰も見かけてないですね。どうかしたんですか?」 岡村「俺らはこれから帰るところです。ライトさんもですか?」 ■どうも、ココリコの岡村です。 岡村「はい……。僕はライトさんに誘われて梨花ちゃんのお見舞いに行きました。元気を出して貰おうって……。はい…。ライトさんは僕を電話で呼び出した後、『他の子も呼ぶから先に行っててくれ』って……。そうです。それで僕、梨花ちゃんの家に言って……はい、梨花ちゃんと色々お話しました。ライトさんは富田くんと一緒でした。一緒に他の子の家に……。あの、その、僕、梨花ちゃんのこと好きだったから……気を使ってくれたんだと思います。それでしばらくお話して……ライトさんが遅かったので電話しようと思ったんですけど……そうです、梨花ちゃんの家の電話が……。その後は……急に電気が消えたり、周りから変な叫び声が聞こえたり……。僕、恐くなって…梨花ちゃんは大丈夫かなと思って2階に上がったら……。」 富田「はい。ライトさんと一緒に他の友達を呼びに行きました。ライトさんは『岡村くんと梨花ちゃんの邪魔しちゃ悪いから』って、ちょっとゆっくりめに友達の家を周ることにしたんです。そんで他の友達も結構集まって、夜遅くだからってことで大人のひと2人にも同行して貰ったんですけど……。その後は……はい、梨花ちゃんの家の周りには沢山の……。」 ■こだわりすぎず! かんがえすぎず! 総一郎「証言にあった『変な叫び声』は周囲の住民からも裏が取れている。内容までは分からなかったそうだが…。近くで誰かが騒いでいるんだと思い、大したこととは考えなかったそうだ。一方、ライトは富田くんと共に友達の家を周り、その中の一人の保護者の方に同行して貰っている。そして古手宅の周りで6名の死体を確認。ライトは1人の保護者に子供達を預け、もう1人の保護者と古手家に入った。電気は大本から断ち切られているようで点かない。暗闇の中……月明かりを頼りに二人は屋内を進み……。携帯電話の微弱な液晶ライトに照らされ、気を失う岡村くんと、自ら喉を掻き毟って死亡したとみられる古手梨花くんを発見した。……」 刑事C「そしてすぐにライトくんは警察へと通報。その頃には古手家一帯の電波異常は消失していたそうですね。後の捜査で計20余人分さらに鷹野三四の死体も発見されている、と。そして余りにも不可解なのが、その全員が統一性の無い自殺者だということ。銃を所持していた者もそれを使わずに死んでおり、各々が『音を立てずに』自殺したという共通点があるにはありますが…。まるで騒ぎを起こすことで警察に駆けつかれることを嫌がったかのように。警察内部に潜り込んでいたと思われる山狗も同じように死んでいます。そして何よりも不気味なのは、岡村くんと富田くん両名が、事情聴取を終えた直後に……交通事故で死亡しているということですね。これは…敬虔な信者じゃなくても、オヤシロさまを信じたくなりますな。」 ■一度はおいでよ雛見沢 ライト「『東京』の連中が乗ってた車からはわんさかと情報が手に入った。入江診療所からも重要な資料が大量。入江も重要参考人として引っぱった。ついでに言えば、村人はともかくとして古手梨花の死は雛見沢症候群感染者や、古くから雛見沢に住む人々に絶大なる悪影響を与える可能性がある。だから出来る限り隠蔽する方向に僕も進言した。まあ、これだけの手柄を立てたんだ。父も本庁に返り咲けるだろう」 リューク(村の連中……急激に寿命が長くなったな) ライト(しかし大勢の死者を出してしまった。犯罪者を殺すという、神としての行動に矛盾は無いが、すこし身近な場所で人が死にすぎた……。もっと慎重にやらなければ……) リューク『ライトの検査はいつ終わるんだ?』 ライト「異常なんて出るわけないからすぐに終わるよ。そりゃあ雛見沢症候群なんてものが公になれば検査もされる」 リューク『なかなか面白な村だったな』 ライト「そう? 食べ物は美味しかったかな。ああ、それと証明も出来た」 リューク『証明?』 ライト「僕の行動が『東京』を打ち倒し、雛見沢を救った…。リュークはデスノートで人を殺すことしか出来ないと思ってるだろう? 僕はそうじゃないことを証明したんだ。僕は大勢の人の生命を救済した。まさに神の行い。神の力! ああ……僕は神になる……!」 ■そうだ、東京に行こう 総一郎「ライト」 ライト「……なんだい父さん」 総一郎「やはりお前の言う通りだった。心臓麻痺による死亡者が複数発見された車から『東京』とやらの有力な情報がつかめた。何らかの圧力がかかると思っていたが……。私も『東京』の捜査の為に本庁に呼び戻された。……こう言ってはなんだが、沢山の犠牲を代償にしての復帰だ。素直には喜べんが、やはり彼らの死を無駄にしてはならない」 ライト「………理性では理解してる。でも……!」 総一郎「ライト……雛見沢には辛い思い出が多い。忘れたいこともあるとは思う。だが、それだけではないだろう?」 ライト「ああ……僕はここでのことを忘れない。それが、彼女達への手向けだと思うから。忘れない……僕は忘れない!」 総一郎「…粧裕や母さんは身近な人たちの死で傷ついている。二人で支えてやろう」 ライト「……そうだね。それは僕たちの役目だ」 (思っていたよりも簡単に事が進んだな……。つまらない…やはり、新世界の神の前では何人も平等に無能なのか……) ■エピローグ1 リューク『どうしたんだ、ライト。退屈そうな顔をして』 ライト「事実、退屈だからね……仮にも旧世界をぶち壊して新世界を創世しようというのに、それに対抗する存在があまりにも馬鹿揃いで…少しでも強敵がいないと張り合いが無さ過ぎる。最終的に僕が勝つにしても、何か刺激というか、手ごたえが無ければつまらない……。新しい世界が生まれるのであれば、やはり相応の演出が必要になると思うんだよ」 リューク『俺は十分に面白だけどな……』 ライト「まぁ、もうすぐ僕の撒いた種が発芽すると思うんだけどね」 リューク『? 種?』 ライト「ああ。神の存在を世界に認めさせるための種……。不自然過ぎる心臓麻痺の連続……もうすぐ気づく…誰かが…」 □エピローグ2 ワタリ『L……。……』 L「言うなワタリ……世界最高の探偵を謳っていても、所詮は友人も助けられない無能、それが私だ」 ワタリ『………しかし、貴方が残したものは決して嘘ではないはずです』 L「…ワタリ…」 ワタリ『貴方が自分を否定してしまうということは、そんな貴方を信じた友人達をも否定してしまうことになるのではないですか?」 L「……そうだな……済まなかった……私に休んでいる暇など無い……」 ワタリ『早速ですが、興味深いデータがあります』 L「なんだ? ……これは……」 ワタリ「全世界の、最近の心臓麻痺によって死んだ人間をグラフにしたものです」 L「……犯罪者に随分と偏っているな……それも短期間でこんなに……」 ■ 完 □ ライト「わざと理解できるように示してやったんだ……退屈させてくれるなよ……」 L「……どこの誰かは知らないが、やってくれる……これは明らかな挑戦だ」 ライト「最後には」 L「私が勝つ」 「勝負だ!」 ひぐらしがなくですの ■蛇足 ライト「なんだ。じゃあ本当にこの村には死神はいないってわけだな」 リューク『ああ……俺以外はな』 ライト「安心したよ。さて、今日は虐待少女を救出するために色々と疲れたから、早めに寝よう」 リューク『なんだ。ゲームはやらないのか?』 ライト「また明日ね」 リューク『寝たか……退屈だな…俺も寝るか?』 羽入「こんばんは、なのです。」 リューク『…………お前か』 羽入「お話は聞かせていただいたのです。」 リューク『な? 面白だろ? 俺は当たりを引いた』 羽入「確かに…見事な人間なのです。竜崎エル以上かも…。」 リューク『リューザキ?』 羽入「こっちの話なのです。……夜神ライトは私にとっても当たりのうちの一本ですよ。この人間のおかげで、梨花は諦めることを止めたのですから。……当分は。」 リューク『お互い退屈しのぎに精が出るな』 羽入「私にしてみればその対象は梨花しかいないわけですし、機会さえあれば何度でも違う人間で試せる貴方が羨ましいのです。」 リューク『そうかもな。俺は死神以外の神に詳しくはないが……。お前を見てると死神に生まれて良かった気もするな』 羽入「あぅあぅあぅ……。」 リューク『うぜー。まあ、何にせよ…』 羽入「何にせよ…。」 リューク『人間は』 羽入「面白い。」 ひぐらしがなくのです