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第 28 話「マックスハートの世界」

香ばしい匂い。司は覚えのない車の中で目覚めた。知らない場所。……知らない世界。クイーンハーシュの指令を思い出す。「全てのプリキュアの力を手に入れろ」。そんな事を言われてもどうすれば? ブードゥーキングダムを倒したと思えば、次はプリキュアと戦わなければならないのか? これから一体どうすれば? みんなは無事なのだろうか。家族は……。……。……「家族」? 頭の中を様々な考えが巡り、何か思い出してはいけない事を思い出してしまいそうになった時、タコカフェのオーナーであるアカネが司の様子を見に来た。店の前で倒れた司を介抱してくれたのだという。「起きたばかりだけど、食べられる?」。その手にはたこ焼きがあった。食べる。美味しい。世界が違っても旨いものは旨い。涙が止めどなく溢れてくる。泣くんじゃない、私はお腹が減っているだけなんだ。

項垂れていても仕方がない。司が来ている制服は「ベローネ学園」という学校のものらしい。わざわざこの制服を着せられていたという事は、きっとその学園に向かえという意志なのだろう。今はやれる事をやるだけだ。その頃、ベローネ学園はすでに放課後。なぎさとほのかは今朝現れた女の子の話をしていた。倒れていたが、大丈夫なのだろうか。そして妖精が一緒にいたという事は、もしかして彼女は……。「もう戦いは終わった筈だよね」の問いかけに答えられないほのか。そこへやってきたひかりは言う。光の園の大臣達曰く、「何かが起きようとしているかもしれないが、良く分からない」。凄まじい頼りなさに呆れるなぎさ……だがその時、たまたま通りかかった藤 P 先輩が言った。「ラクロス部の新入部員、凄いね」

なぜこんな事に。クロスを振るって走り回りながら司は首を傾げていた。ベローネ学園に着いて、コートから飛んできたボールが通りがかりの生徒に当たりそうになったのを見かけて、近くにあったクロスでキャッチしてみせた……それだけだ。喋る間を与えぬ程の勧誘を受けて、気づけば仮入部させられていた。そもそも自分はこの学園の生徒ではないのだが。こんな事をしている場合なのか。では何をすればいい。分からない。でもこうやってただ汗を流すのは悪くないかもしれないなと思った矢先だ。周りの部員たちが倒れ始めた。そして昏倒被害はどんどん拡大していく。これは、まさか。

ラクロス部のコートへと向かう途中、周囲の異変に気付いたなぎさ達は、ひかりに誘導されるまま原因と思わしき場所へと走る。そこで目撃した驚愕の存在……ピーサード。ドツクゾーンの幹部、一番最初に出会った敵。とっくの昔に撃破した筈のピーサードがなぜ。ピーサードは言う。ジャアクキングのパワーによって蘇ったのだ、と。やはりドツクゾーンがまた……。ピーサードは嘲る。光と闇は表裏一体。光が存続する以上、闇もまた永遠に存在し続ける。お前達は未来永劫戦い続ける運命なのだ。衝撃を受けるなぎさ達の下に、ミップル達妖精が現れた。躊躇うなぎさ達だが、それでもやるしかない。変身し戦闘へ。だがそれはかつてのピーサードではなかった。ピーサードは邪悪のパワーによって強化されていたのだ。 3 人がかりで互角、もしもここにザケンナーを呼び出されてしまえば均衡が崩れてしまう。そうなる前に必殺技で決めるしかない。しかしピーサードは狡猾で、隙をついてザケンナーを呼び出してしまう。強力なザケンナーとピーサードの猛攻に追い詰められるプリキュア達。だがその時――「プリキュア・レッド・ライン 7.0!」。完全なる死角より放たれた赤色の極太レーザーによってザケンナーが蒸発する。これは一体? 何にせよ不意を突かれてピーサードに隙が生じる。すかさずルミナスの「ルミナス・ハーティエル・アンクション」で拘束。そして放たれる「プリキュア・マーブルスクリュー・マックス」をまともに喰らい、ピーサードは撃破された。プライドはその光景を見て呟く。「そういうのもあるのね」

戦いの後、会合するなぎさ達と司。助けられた事に礼を言うと共に、やはり司がプリキュアであった事に驚くなぎさ達。「あなたは一体……」。答えられない司。そこへ降って湧いてきたのはマニー。これまで一体どこで何を? マニーが訪ねる。「プライドであの 3 人を倒せそうマニか」。とんでも無い事を言い出すマニーを握りつぶそうとする司だが、痛みに苦しみながら、マニーはクイーンハーシュからの指令を思い出せと言う。指令を果たさない限り、自分たちは月虹の園を救うどころか帰る事もできない。でも、プリキュア同士で戦うなんて……。そんな時、なぎさが肩を落として言う。「わたしたち、これからもずっと戦い続けなきゃいけないのかな」。高校に入って、もしかして大人になってからも? 自分たちの今後を思い悩む彼女達を見ている内に、司の心が動いていく。かつての自分を思い出してしまう。ただ平凡でいたかったのに戦わなくてはならないなんて、心底嫌だった。世界は変わっても、そこに生きる者の心は同じ。プリキュアだって変わらない。みんな戦いたくて戦っている訳じゃない。彼女達からプリキュアの力を剥奪する事は、同時に彼女達を戦いの呪縛から救う事にも繋がるのではないか。もしかして私が果たすべき役割は、その意味は……。そんな考えが固まっていく。そして再びプライドへと変身する司。「……戦ってみるか」。なぎさ達は驚きながらも、防衛の為に変身する。そしてここに、禁断のプリキュア対プリキュアの戦いが開始されようとしていた。一方、その様子を眺めている謎めいた覆面の人物がひとり。傍らで浮かぶ妖精は、その人物の言葉を代弁するように言った。「プライド……お前はこの世界にあってはならないブラ」。対峙するプライドとブラック達の周囲の空間が歪み、現れたのは、バイザーで目元を覆う黒い出で立ちをした 5 人組の少女達。「ダークプリキュア 5」と名乗る彼女らは、一斉にプライドへと襲いかかるのだった。

次回予告

司「『ふたりはプリキュア』。そういうのもあるのね」

マニー「最後の所、お前完全に悪役だマニ」

司「……」

マニー「そ、そんな顔すんなよマニ」

司「次回、プリキュアセブン。『極光』」

司「すべての絆を明日へと繋げ!」

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