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『ブラッドボーン』ってこんな話

拝 & 領 〜 THE STORY OF Y.H.A.R.N.A.M 〜

本来は別記事の一部だったのですが、個別記事として独立させるべきと判断したのでそうします。考察というか、『ブラッドボーン』はこんな話だったという、あらすじのようなものですね。もちろん「違くね?」と思う方もおられるでしょうが、当サイトでは以下のように把握しています。宜しくお願い致します。

では、この物語はおよそ三幕で構成されています。

第一幕 : 夜の目覚め

診療所で目覚めた異邦人は月の香りの狩人となり、獣狩りへと身を沈めることになります。「青ざめた血」というキーワードだけを携え、ギルバートに「大聖堂が怪しいんじゃね?」と導かれた先で、我々は教区長エミーリアと対峙することになります。ポイントとして挙げたいのは、このエミーリアを倒した時点で「獣狩り編」が終了しているところでしょう。教区長の名に偽りが無いのなら、彼女は教会を統括する立場であり、我々はそれを撃破してしまいました。以降寄道を除き、倒さなければならない獣ボスは存在しません。

話の流れとしては「街が獣であふれている」→「医療教会が怪しい」→「教会の本部まで辿り着く」→「ドヒェー! 教会の長が獣になってるーッ!?」というどんでん返しを喰らっている訳です。流れがさらっとしすぎていて実感が無いですが、要するに教区長エミーリアは、「獣狩り編」のラスボスだったのです。第一幕完。

第二幕 : 禁域

教会に答えが無いと知った我々は、アルフレートの話を元に禁域の森へと向かいます。医療教会の源流となったビルゲンワースって奴らが怪しいだろうと。アルフレートがわざわざ森へ向かう道中に移動してくれているのは、公式からの配慮、一応の「念押し」だったんじゃないでしょうか。ちなみにこの辺りで脳喰らいが出現するのも、禁域の森を境に獣狩りが別の何かにすり替わっていくことの前振りでしょう。

いざ森へ。そこには獣人こそ散見しますが、一定のラインを超えた辺りから蛇の化物たちが登場します。更には見るからに宇宙人っぽいキノコ人間も。そろそろ思うことでしょう。「何と戦ってるんだ」と。しかし進むしかないので、ヤーナムの影を超えてビルゲンワース。すわ敵の本拠地かと歩を進めた先で、しかし既にまともでは無くなっている学長ウィレームを発見します。教会の長に続き、学院の長もご覧の有様でした。ご丁寧に両組織のトップの末路を見せてくれたのは、「真相はこの場所には無い」と明らかにするためだと思います。もっとも教会に関してはミスリードでしたが。そしてウィレームが指し示す先に身を投じ、我々はついに上位者と見えることになります。そして月が赤く染まり、第二幕完。

第三幕 : ヤーナムの夜明け

ここからの状況はノンストップです。いきなりヤーナムに戻されたかと思えば、解放されたヤハグルでは獣がどうとかチャチなもんじゃあ断じてない地獄が広がっていました。道を塞ぐ再誕者を倒し、メンシスの悪夢へと導かれることになります。一応、メンシスの名前は初期にヤハグルへ拉致された際に黒フードのテキストなどから知ることが出来たはずです。オチは最初に仄めかすのが作劇の鉄則。あとはヤハグルで手に入る「上層の鍵」などで、医療教会には上位組織が存在することを知るのです。つまり医療教会への疑惑は教区長が獣化したことで晴らされたのだと思わせておいて、しかし教会の闇はもっと深かったことが明らかになる仕掛けでした。

教区長と上位学派のどちらが偉いかは定かではありませんが、とにかくメンシス学派が此度の元凶だったことが明らかになります。一番偉い奴が悪い奴。教区長、学長とスカされてきたその先に現れたミコラーシュこそ今宵の黒幕。狩人はこれを倒します。しかし一件落着とは行かないので、ついでに赤い月の原因である上位者の赤子、そしてそれを守護る乳母にご退場願いました。こうして獣狩りの夜に幕が下りるのです。『ブラッドボーン』、おしまい。

終幕 : 遺志を継ぐ者

実はもうちょっとだけ続きます。実際、ここで狩人の夢に帰ってゲールマンに介錯を頼めばエンディングを迎えられますが、その結末を拒否することもできます。いざ狩人狩り。ゲールマン戦でございます。不思議なのは戦闘によって殺害されても、介錯とは異なり夢からは覚めないこと。やはり心の強さこそ狩人の強さなのでしょうか。そんな訳で「最初の狩人」を下すのですが、突如夢の月が赤く染まり、上位者が降臨しちゃいました。

教室棟の手記曰く、これは月の魔物と呼ばれる上位者の一種であり、誰が呼んだか「青ざめた血」。そもヤーナムへ訪れた理由であり、朧げな記憶の中で追い求めたその名は、しかし主人公を夢の狩人たらしめていた要因そのものだったというオチなのでした。名を持たないはずの赤子が「青ざめた血」と呼ばれているのは、その言葉が、上位者という存在が宿す血そのものを指す言葉でもあるからでしょうか。名状しがたき故に、そう呼ぶしかないのです。つまるところ、自由意志で狩りへと身を投じていたはずの我々は、月の魔物が行う上位者狩りに利用されていたのでした。覚えのない、自筆の走り書き。

では、隷属か反逆か。「三本目のへその緒」を収集しているか否かで展開は分岐します。夢に囚われゲールマンの座を継ぐか、悪夢の抱擁を跳ねのけて人間の尊厳を取り戻すか。かくして最後の戦いは始まり、今度こそ『ブラッドボーン』の幕は下ります。そうして狩人は新しい月の魔物として夢に君臨し、新しいゲールマンをあつらえ、夢へ捕えた異邦人に狩りを全うさせるのでしょう。「青ざめた血を求めよ」と。

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