ACID BAKERY

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最初の火の、最初の日

この記事「火継ぎの傍ら、世界を描く」の続きというか捕捉です。

「灰の時代」の成り立ちについて書いておきながら、一番重要なことを忘れていました。なぜ「お嬢様」は火を見たがったのか。新たな世界をキャンパスに創造するだけならば、「暗い魂の血」の顔料だけで事足りたはずです。しかし「お嬢様」は火を欲しました。なぜか。描くためです。暗く冷たい灰の世界に、ただ一点の「火」を灯す。そのために「お嬢様」はアリアンデルから生じた英雄の火を見る必要があったのでしょう。『ダークソウル』は謎多きゲームです。しかし全ての大本となる謎として、なぜ何もない灰色の世界に突如火が起こったのか、というものがあります。

それは無から宇宙が生じたというビッグ・バンのメタファーであり、また太古の人類が火を見出して以降、急速な発展を遂げていったという歴史の比喩なんだろうと納得してきました。しかし真相はもっとシンプルでした。英雄の残り火を目にした少女が、火の無い灰の世界にそれを描き足した、それこそ「最初の火」の真相だったのです。ある意味で、それは外側の世界からもたらされた、「最初の火継ぎ」と言っていいのかもしれません。闇の円環の傍らには、常に火の円環があったという訳です。

つまり『ダークソウル』という絵画は、ゲールの血、そしてアリアンデルの火と、二人のおじいちゃんを素材としていたことになります。ジジイ・イズ・ワールド。ただ謎なのは、「お嬢様」は差異の無い「灰の世界」を望んでおきながら、その後「火」を描き足し、自ら差異を生じさせたことです。古竜は忌み人の成れ果てであり、迫害の対象であった彼らがようやく手にした安寧でした。しかし火が生じ、そこから見出された太陽の光は、彼らが持つ岩の鱗を貫く武器となります。ドラゴンが雷に弱いのは、その鱗が人間性の闇で構築されているからです。忌み人を思い、その居場所を作った張本人が、忌み人たちを新世界から一掃する役目をも担ってしまったのです。何たる皮肉。

最初からモチーフに火が組み込まれていた辺り、事故や第三者の陰謀などではないでしょう。何も知らなかったと考えようにも、灰と名乗った英雄に世界のループ構造を仄めかすような言動をしているんですよね。或いはこちらがそう受け取っただけで、彼女に自覚は無く、全て良かれと信じていたのかもしれません。だとすると、何とも哀しい。しかしどちらにせよ、火を描くことでしか絵画は完成しなかったのだと思います。だからお嬢様は火を求めた。「灰」という字が示す通り、火無くして灰は生じず、故にこそ灰は火を求めるのでしょう。

捕捉:王の帰還

勅使の小環旗
大王は、闇の魂を得た小人に 最果てに閉ざされた輪の都と 愛しい末娘を送ったという
いつか迎えをよこすと約して

奴隷が王で王が奴隷なのだとすれば、この約束は遠回りな形で守られたことになります。よ、よかったね……。

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