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天使にふれたよ! #1 月光!

はじめに

「天使の光柱」。『ダークソウル 3』で導入された新時代の奇跡。もちろん皆さまは常用しておられることでしょう。空より光の柱を招来するその荘厳な様相は観るものを徹底的に圧倒し、故に全てのプレイヤーが記憶スロットにセットしていること疑いようなし。え? お前はどうなんだって? まあ、いいじゃないですかそんなことは。

ところでこの奇跡なんですが、色々とおかしな点が目立ちます。攻略 wiki の結晶の聖鈴の項、特にこの部分をお読みください。

大書庫の賢者たちが弄んだ聖鈴 元は「天使の娘」ゲルトルードのもの

賢者によって変質したためか、信仰補正ランクが最も低い触媒であり、物理の奇跡との相性は最悪。余談だが、「天使の光柱」はゲルトルードの奇跡であり、彼女はこの聖鈴の元の持ち主でもある。加えて、羽の騎士 ver.が魔力属性であるのに対し、プレイヤー ver.は物理属性。相性が悪いのは悲しいものである。

どうも肝心な部分が噛み合っていないご様子。仮に羽の騎士が使うように「光柱」が魔力属性であったなら、聖鈴の補正により更に強力な奇跡になっていたことでしょう。なぜこのような酷な仕様に……。強すぎるが故のナーフでしょうか。

いやいや、どう考えても奇妙です。なぜプレイヤーが扱う「光柱」と羽の騎士のそれは属性が異なるのか。理由があるはずなんです。考えてみて、ひょっとしたらそれは、天使信仰並びにロスリックという国全体を貫く秘密に繋がるのではないかという仮説に行き着きました。劇中の齟齬はフレーバーと見つけたり。

「属性」について

そも「属性」とはなんぞや。難しいことではなく、火は熱くて燃えるし、雷はビリビリで金属によく伝わるよ、程度のことで良いと思います。最初の王たちはそんな、火が灰の世界より切り分けた様々な差異からお気に入りの「属性」を選び、それを司ることに決めたのでしょう。王が王のソウルを見出したから属性が生まれたのではなく、「差異(属性)」をソウルの力を以て再現する「仕組み」を創造した、これこそ王たちの偉業なのです。細かいことではありますが、ちょいとこの「仕組み」の話をしていきます。

炎と氷 イザリスとエス・ロイエス

火が燃えて雷が痺れて……じゃあ「魔法属性」ってなんでしょう。よく分からないしイメージもし難いですが、一つ興味深いエピソードがあります。はじまりの火より各属性を見出した王たちではありますが、実は「炎」だけは存在していませんでした。たぶん火こそ万象の始まりであったが故、「始まり」である火そのものを得ようとする試みは高望みに過ぎたのでしょうね。しかしイザリスは成し遂げ、やがて混沌、或いは呪術としての「炎属性」を再現します。何があったかは分かりませんが、きっと篝火に人間性をくべることで火が大きくなること、そして懐かしき混沌武器が人間性の量により火力を増減させることは同源の理由であり、それはつまりイザリスの産んだ「炎」が「闇」と不可分であることを意味します。彼女たちは闇に手を出した。それ故にデーモンという歪んだ獣が生まれ、果てはイザリス自身が混沌の苗床と化してしまった訳です。火の業が呪術、「呪い」の名を冠するのはそういったところに理由を持つのかもしれません。

とまあこの辺はともかく、確かなことの一つとして、王の一人たる魔女イザリスがかつて見出した原初の「炎」とは、炎であって炎ではありませんでした。

デーモンの杖
デーモンの炎司祭は、最初のデーモンであり イザリスの魔女が混沌に飲まれる前の呪術でない、炎の魔術の最後の使い手だった

炎司祭(『1』)の攻撃は炎属性ではなく魔法属性だったりします。では炎の魔術(魔法属性の炎)とは何なのかという話です。それは「魔法属性とは?」という疑問にも通じるでしょう。

さて『ダークソウル 2』の DLC には「凍てついたエス・ロイエス」なるエリアが存在します。名の通り凍てついたそこは、まさしく閉ざされた凍土。何を閉ざしていたのか。それは「暴走の火」、即ち古く「混沌」と呼ばれた炎であり、エス・ロイエスはその直上に建国されていたようです。古くこの地を統べたという白王は火の暴走を諫めるべくその身を混沌へ投じたのでした。

で、肝心なのは「氷」です。エス・ロイエスによって生み出された「氷」。そして世界を構成する差異の中には当然「氷」も存在します。しかし……。

氷の刺剣
エス・ロイエスの術師が用いる刺剣
魔力を帯びており、強攻撃でその力を解放する

これは魔力によって再現された氷であり、「氷属性」ではないのでした。イザリスが産んだ原初の炎が魔術による疑似的なものであったように、エス・ロイエスのそれもまた同じでした。原始、火が灰の世界より切り分けた「差異」を完全に再現するという「仕組み」の創造、それはやはり王のソウルが成せる偉業であり、後年新しく「仕組み」を作り出すことは不可能であったと、そういうことなのかもしれません。

本物の炎や雷と、そして魔法によって再現された疑似的なそれらとの差異は果たして何なのか。この辺は考えだすと訳わかんなくなるので、代わりに誰かお願いします。

魔力とは

氷と炎の話を前振りとして、ともかく本項において重要なのは「魔力とは何か」です。単純な解として、炎の魔術やロイエスの氷、そのどちらも魔術の力、即ち魔力属性だったということは、「魔力」というものが世界の差異をある程度再現できるベーシックな性質を持つものだということ。限りなく純粋であらゆるものの源と呼べる「ソウルそのもの」、もしくはそれに近い性質を有するのだと。魔術の大抵に「ソウルの――」という名がつけられていることが根拠と言えるでしょうか。だから魔術を操るためには「理力」、「理(ことわり)」即ち「差異」への知識、そしてそれらに働きかける力が必要になるのではないかと考えられます。

代々のシリーズでは理力が足りないと魔術の師匠方に教えを授けて貰えません。智慧が無ければ魔術は扱えぬ。『2』以降の呪術に理力が求められるのも、由来に炎の魔術があり、言い換えれば炎への理解が肝要ということなのでしょう。何てことだ。ゲームの世界でも学歴に左右されるというのか。

しかしながら世の中学歴だけが全てじゃない。理力を持たない者でも魔力を扱う方法が存在します。例えば上記の「氷の刺剣」のように魔力攻撃が付与された道具を使う方法。そしてもう一つが「月」にお願いすること。ということで、ロスリックに視点を移します。

「魔力」とはソウルそのものだという事、そして「月」というキーワードだけ覚えておいてください。

白竜とロスリックと天使

アノールの再来、ロスリック

ではロスリックの話をしていきます。そもロスリックとは如何なる国かというと、「王の探索者」フラムトがルーツに関わる「第二のアノール・ロンド」です。劇中の言葉を借りるなら「最古の火継ぎ」、即ち王のソウルを火へくべる儀の為、そしてその王たる器を製造すべく興された継ぎ火の為の国と言えます。ロスリック王妃については後述しますが、恐らくアノール・ロンド、その太陽の神の血族です。そうして神の血を取り込むことで「アノール・ロンドの再現」を試みたのでしょう。かつてアノール・ロンドの試練を超えた不死が王のソウルをかき集める旅へと放たれた『1』の終盤と同じ、『3』本編は「第二のアノール」ロスリックより、王狩りの旅路が開かることになります。

ロスリックの行った、やがて人を外れた「血の営み」とやらが何かは、正確なところ良く分かりません。ですがその目的は資格者、つまり王の器たる聖王ロスリックを望むものであり、終にその悲願は果たされ、しかし彼は全て投げ出しました。

ロスリックを建国した者たちの目論見はどこまで果たされたのか。しかし肝心の王子が火継ぎを放り出すことなど予定の外側であったことだけは確かです。どうしてこんなことに。

ソウルの奔流
ロスリックと大書庫のはじまりにおいて 最初の賢者が伝えたとされる魔術
最初の賢者は火継ぎの懐疑者であり また密かに、王子の師でもあったという

火継ぎの懐疑者についてはこっちでチラリと書いているので、お時間とご都合よろしければ読んでいただきたい。「最初の賢者」という言葉がややこしいですが、「最初」がロスリック建国を指すのか、建国後一定の時間を経てから「賢者」なる役職が導入されたのかは不明です。しかしながら賢者の懐疑が弟子たる王子に継承されてしまったのではないかという予想は可能です。

しかしもう一つ、本当に重要なのは、きっとこっちのほう。狂った書と狂った叡智は、触れた者を狂わせるようです。

大書庫と白竜信仰
武器の祝福
騎士はロスリック三柱のひとつであり 賢者が大書庫を得て後 祭儀長との結びつきを強めたという
賢者の指輪
古くよりロスリックでは 賢者は王を支える三柱のひとつとされ 故に大書庫の領主たるを許されたという

まずロスリックには「賢者」「騎士」「祭儀長」の三柱がおり、それらは共に王の支えとなってたそうです。しかし「賢者」が大書庫を得た後に「騎士」と「祭儀長」は結びつきを強めた、つまり三柱の内「賢者」はある種独立してしまったのでしょうか。まあ書いてあることそのまま読んだだけなんですけど。で、この関係性も気になりますが今は重要ではなく、「大書庫」です。ここが何なのかと言えば、かつて白竜シースが狂気の研究に興じた「公爵の書庫」、その末でしょう。

場所までが同じとは言いません。公爵の書庫にあった膨大な書物をそのまま移転したのか、はたまた何者かが写本したか、或いは別の手段を講じたのか。ともかくロスリックは大書庫という形で白竜の叡智の結晶を現出せしめ、そして呪いをも呼び込むことになります。

賢者のローブ
大書庫の賢者のローブ
ロウの汚れは、彼らがそれを被るためだ
大書庫の賢者は魔術師であり また灯火に傅く敬虔な者でもあるという
つまり彼らは、知ることを恐れているのだ

ちなみに『1』にも「賢者のローブ」は存在しました。それは「ビッグハット」ローガンのものでしたが、共に書庫に関わる賢者としての繋がりを想起させるネーミングでしょう。

さて大書庫は呪いで溢れています。本棚、またはそこらに散らばる書籍から青ざめた手が何本も伸び、触れられることで呪いゲージがモリモリと蓄積します。そして呪いと言えばやはり白竜。これは書庫に憑く白竜の残留思念、というより、白竜の蓄えた叡智そのものが人間にとって呪いとして作用するのかもしれません。かのローガンも、祭祀場を飛び出し大書庫で動かなくなっていたオーベックも、同じものに侵されてしまったのでしょう。

しかし狂った智慧で穢れきった場所だからこそ、予防の手立てもあります。大書庫各所に設置されたロウを頭から被ることで、それは呪いを祓うようです。思うに、これが「賢者のローブ」のテキストの意味ではないかと。呪いとは白竜の叡智そのものであり、賢者たちはそれを知らんと欲する立場にありながら、同時に恐れてもいた。呪いこそ白竜の叡智、その根源であるなら、結局賢者たちは何も解き明かせていなかったのかもしれません。病に触れることでしか開けない知見があるというのに。

では仮に叡智(呪い)を受け入れることに成功するものがいたとすれば、それは如何なる者で、どういった結果を招くのか。

妖王オスロエスのソウル
王はロスリックの血の営みに発狂し 大書庫の異端と繋がったという
それは白竜シースの歪んだ信仰だった

白竜信仰と繋がったオスロエス。我々が対峙したその姿はまさにシースの似姿でした。「白竜を信仰したから白竜みたいになっちゃった」というのは安直かもしれませんが、実際馬鹿にはできません。賢者たちは呪われた叡智を恐れ、対して崇拝した妖王だけが、もしかすれば真理の水底と繋がったのでしょう。

白竜シース 妖王オスロエス

まるでシースに至ろうとした者が、しかしなりそこなったかのように、どうだろう、見えるだろうか。

付け加えるなら『1』のローガン、その末路を覚えておられるでしょうか。彼は白竜の啓蒙を得て狂いました。そしてその果て、打倒したはずのシースが鎮座していた場所に彼は現れます。帽子と、ふんどし一丁で。これ笑いどころのように思われるかもしれませんが、要するにローガンは白竜の叡智を取り込むことで「ピコーン!」と蒙が啓け、自身の肉体で白竜を体現すべく、或いは自身を白竜と思い込み、「ウロコを持たない」ことを「服を脱ぐ」形で表現したんです。真実とは知らぬ者の瞳には愚行と映るもの。一見した狂気こそ、或いは真実に触れているのではないでしょうか。

結晶のスクロール
それはウロコのない白竜シースの力であり それに見え啓蒙を得たローガンの魔術である

「ビッグハット」ローガン

笑ってはいけない。シースー白光り公爵の書庫。

とはいえ、それらがおよそ人の道理でないことは確かでしょう。かつて火継ぎを夢見た第二のアノール・ロンド「ロスリック」も、今や穢れた膿、気色悪い蝶、頭のイカれた賢者どもで溢れかえっています。もう世界はおしまいなのでしょうか。

次代への軌跡、天使信仰

いえ、諦めるのはまだ早い。火が陰り、暗夜を迎えつつある世界に一筋の光明が。空を見ろ! 鳥だ! 竜だ! たこやきだ! いや、天使だ! 

羽の騎士シリーズ
天使に忠誠を誓う騎士の〇〇
彼らは羽の騎士と呼ばれる
ロスリックでは、天使信仰は異端であり 三柱の何れもがそれを公認していない
故に「天使の娘」ゲルトルードは 大書庫の天井牢に幽閉されたという
天使の光柱
王妃の聖女であったゲルトルードは 彼女のいう天使に見え、その物語を知ったという
彼女は光と声を失い、だが物語を記し続けた
常人には理解できぬ、破綻した書付の由が ロスリック天使信仰の源流となったのだ

天使。ファンタジーではありふれたキーワードかもしれませんが、改めてこのシリーズで取り上げられると奇妙な違和感を覚えます。「らしくない」というか。天の使い? 天界の使者? 「デーモン(悪魔)」の対になると考えるなら「ようやく」と言うべきなのか。何やら分かりませんが、神々とデーモンの滅びと入れ替わるように、天使信仰は突如台頭しました。

ソウルシリーズ史上影も形も無かった「天使」の物語。それはゲルトルードを起点としてロスリックに蔓延したようです。しかし意味深すぎる存在感とは裏腹、天使なるものどもは本編に終ぞ現れませんでした。いや、天使ってなんだよ。竜狩りの鎧を操っていたグロい奴らでしょうか。

竜狩りの鎧のソウル
巡礼の蝶に操られた竜狩りの鎧は 遥か昔に主を失い、だがその狩りを記憶していた

残念ながらあれらは天使ではなく、「巡礼の蝶」なのだそうです。

巡礼の蝶

ガッデム!

いや巡礼の蝶ってなんだよ。次から次へとよ。

しかしそんな我らの祈りが聞こえたのか、 DLC 第二弾、『ダークソウル』シリーズ最終最後の舞台への入口となる「吹き溜まり」において、遂に天使は現出しました

天使

でもね 会えたよ! 素敵な天使に

光の粉を纏い、空に浮かぶ翼ある人型の何か

まるで祈るかのように、枯れた手を合わせている

それは、巡礼の蛹により幻視された、天使であるという

文はファミ通信 .comからの引用。

人型の何かって。以前こんな話をしました。「巡礼の蝶」と「天使」は共通した特徴を持っていると。互いに人に似て、有翼であり、何よりも下半身の代わりに樹の根のようなものが垂れ下がっている。そして天使を幻視するのは「巡礼の蛹(さなぎ)」だと言います。「蝶」と「蛹」。無関係ではないでしょう。「吹き溜まり」が本編より未来に位置する点を加味するなら、とどのつまり「天使」とは「巡礼の蝶」の先にある形態なのだと思われます。

巡礼の蝶 天使!

君は僕に似ている

チョウの後にサナギが来るというのも奇妙ですが、ここで重要になるのは、巡礼の蝶が巡礼の蛹(天使)へ変化すると共に、属性もまた変化しているという点です。天使は魔力属性の攻撃(ビーム)を放ってきますが、変身前の蝶が放つそれは、魔力属性ではないんですね。

諸々回り道をしたので既に忘れている方もおられるかもしれませんが、本項は「なぜプレイヤーが扱う『光柱』と羽の騎士のそれは属性が異なるのか」という疑問から始まっています。天使信仰の奇跡に属性の変異が起こったように、天使そのものにも類似の現象が確認された。これをヒントとしましょう。

アノールの再現たるロスリックは、元はかの地の神を崇める白教の国だったと思われます。そこにいつしか白竜信仰と天使信仰なる異物が紛れ込んだ訳ですが、恐らくこの二つは無関係ではありません。先に言ってしまうと、天使信仰は白竜をその根源とするようなのです。

「月」

白竜がもたらしたもの

公爵さんちのハゲドラゴン。ウロコを持たぬ故に「白竜」と呼ばれた、裏切りの古竜シース。岩の鱗を求め、やがては妄執に憑かれた白竜ですが、その功績は余りに大きい。

月光の大剣(『1』)
魔術の租たるシースの魔力の結晶

グウィンたちやイザリスが奇跡・呪術という「仕組み」を開発したように、シースは魔術という「仕組み」を開発したのだそうです。そんな魔術の祖たるシースですが、「ハゲ」の他に「月光」という代名詞も持っています。

『ダークソウル』において初めて「月光」の名が出たのは、「暗い森の庭」のボス・月光蝶でしょうか。そのソウルには月光蝶がシースの被造物である旨が記されているので、そこで我々はシースと月光を結びつけることになります。

じゃあそもそも「月光」とは何でしょう。フロムソフトの伝統ということで今や当たり前に受け入れていますが、具体的に説明しろと言われても困る。思い返せば月光蝶のビーム(魔力)、月光の大剣の光波(魔力)、そして白竜自身が魔術の祖であることなどからも、「月光」とは魔力と関りの深い概念である事が伺えます。言葉の意味から探るのであれば当然ながら大王グウィンの象徴たる「太陽」との対義になりますが、だとすれば、太陽に対する月、雷に対する魔力……ただ属性の違いや勢力図を表現する、その程度の意味と捉えるべきなのでしょうか。

では一端白竜から離れ、別の「月」へと視点を移してみましょう。

暗い太陽の光

暗月の神グウィンドリン。彼もまた「月」の名を冠する者の一人でした。グウィンドリンはアノール・ロンドに残る数少ない古い神の一人であり、暗月の神であり、月の魔術師であり、だが男であり、姉グウィネヴィアの幻影を作り出した張本人であり、恐らくグウィン王と半竜プリシラの子であり、つまりは白竜シースの血を引いています。この設定の盛り方よ。

月光の長衣
棄てられたアノールロンドを守る 陰の太陽グウィンドリンの長衣
その月の力から、娘として育てられた彼の衣装は 極めて薄い魔力の衣であり、物理的な防御力はまったく期待できない
化生の指輪
彼はその月の力から、娘として育てられ 暗く儚い女神のごとく振る舞ったという

陰の太陽グウィンドリン

極めて薄い魔力の衣であり、物理的な防御力はまったく期待できないが、胸にパッドは詰めている

気になるのは「月の力から、娘として育てられた」というくだり。文脈から判断すると、本来であれば月の力なるものは女性にのみ備わるものと捉えるべきでしょうか。なるほど「月」を女性特有の「月経」になぞらえることは容易ですし、よって古来より女性と月は結び付けられることが多い。それが男性であるグウィンドリンになぜか備わっていたようです。なぜ、という話をすると彼がシース(月)とグウィン(太陽)の血、その両方を引いているというのが大きな理由かもしれませんが、この辺は割愛(よくわかってないから)。とにかく「月」というキーワードにもう少し迫ってみましょう。

暗月の光の剣(『1』)
グウィン王の末子にして、暗月の神 グウィンドリンの誓約者に伝えられる奇跡
右手の武器を暗月の光の力で強化する
暗月の錫杖
グウィン王の末子として歴とした神でありながら 月の魔術師でもあったグウィンドリンの錫杖は 理力ではなく信仰により魔術を強化する
陰の太陽の王冠
神の王冠はとてつもない信仰を要求するが 暗月の魔法の力を帯び、すべての魔法を強化する

誓約やマルチプレイに興味の無い方には馴染みの無い奇跡かもしれませんが、例えば「暗月の光の剣」、簡単に言えば「武器に魔力属性をエンチャントする奇跡」です。そう、暗月とは魔術的効果を持った奇跡、言い換えるなら理力に依らず信仰から魔力を生み出す手段だと解釈して良さそうです。

言葉の意味の話ですが、太陽光を月が反射したもの、それが「月光」です。劇中の「月光」をその通りに捉えていいのなら、「暗月の光の剣」がそうであるように、やはり「月」とは信仰を魔力(ソウル)へと転じる業なんですね。

ちなみに。

結晶輪の盾 白教の輪

「輪」と「輪」

左は『1』の月光蝶のソウルから作れる「結晶輪の盾」の戦技(のようなもの)で、右は『3』DLC1 から登場する奇跡「白教の輪」です。興味深いのは「白教の輪」が「結晶輪の盾」の再来を思わせる奇跡であること。この類似性、そしてわざわざあのような古い盾を掘り起こしてくる辺り、やはり月光とは魔術以上に奇跡(信仰)との関わりが深いものであり、その関わり自体に着目すべきというメッセージ……だといいなあと思いながら読み解いていくので、皆さまも付き合ってやってください。

そんな訳で諸々出揃ってきました。そろそろ光柱について仮説の一つでも立ててみましょう。

補足 : 神の名は。

次に進む前に触れておきたいことがあります。シリーズを代表する奇跡「神の怒り」。こいつの属性に関してなんですが、『1』では魔法属性だったりします。「太陽の光の槍」などに代表されるように、基本的にこの世界、特に『1』においては「奇跡」とは太陽の力です。しかし「神」と名の付く「神の怒り」は魔法属性。

振り返ってみると、これは神の正体に触れるフレーバーだったのではないかと思います。太陽の神の都アノール・ロンド。太陽に属す神々が住まうこの地は、しかし既にもぬけの殻になっており、今や「陰の太陽」グウィンドリンが治めているようです。特定の条件を満たす事でその光景は月光照らす闇夜へと移り変わります。これこそ太陽の都の真の姿。「神の怒り」が雷属性ではなく魔法属性だったのは、即ち「お前らが祈っているのは、実は太陽じゃなくて月だったんだよ」という真相に触れる為のものだったのかもしれません。

そして『3』の「神の怒り」は、なんと物理属性でした。これってもしかして……属性が、すり替わってる〜!? そりゃそうです。だって火は陰り、神々は既に黄昏。更には月(グウィンドリン)ですらもう半ばエルドリッチの腹の中。「怒る神」は既にいないのです。

補足 : 神無き怒り

補足の補足、『2』の話。いつの頃からか、「神の怒り」はちゃんと(?)雷属性になっていました。しかしあの辺やや特殊というべきか、変な話ですが人々はその信仰の矛先を神に向けていなかったのかもしれません。

司祭シリーズ(女性)
この地の聖職は古くから受け継がれたものだが 王家とは一定の距離があった
いわば蔑ろにされていたのである

幾つもの国々の盛衰の中、少なくともドラングレイグ期において信仰は形こそ残っていたものの、あえて捨て置かれていたようです。反面「ソウルを極めた」と称されるヴァンクラッドがそうであったように、人間たちによるソウルの業は結構行き着くところまで行き着いていたんじゃないかなと思っています。かつて禁忌中の禁忌として存在していた闇魔法ですら、「闇術」という形で流通していた『2』時代。人間性(闇)を含め、人々は最初の王たちが作り出した「仕組み」を解明しかけていたのかもしれません。だからこそ「神の怒り」が雷属性であるのは、たぶんその信仰の先に神などおらず、「信仰の力で雷(光)を発生させるメカニズム」が正しく理解された結果だったのではないでしょうか。『1』の時代とは打って変わり、登場 NPC の殆どが人間であった『2』。神と人の距離が絶望的なまでに開いていたあの時代において、奇跡は神を通さずただ人の業として落ち延びていた。そういう背景を想像して、一人納得する夜。

他にも考えられるんです。シンプルに『2』時代には、「神の怒り」の向こう側にいたのがグウィンドリンではなく、太陽に属する別の神で、だからこの奇跡は雷属性を持つに至ったと。こっちの方が飲み込みやすいかもしれませんね。皆さんも色々考えてみてください。

さて、そんな時代が嘘であったかのように『3』では古い神々の名が復活していました。ドラングレイグという国だけが特殊だったのか、それとも遂に火の時代が終わろうとする中で、そうはさせまいとする何者かが古く埋もれた物語を復元したのでしょうか。

月は出ているか

では、羽の騎士が扱う「天使の光柱」が魔力属性であるのに対し、プレイヤーが扱う同奇跡はなぜ無属性なのか。

結論を言います。羽の騎士が扱うそれと違い、プレイヤーのそれは、「月」を経由していないからだと思われます。

「月」とは信仰を魔力へと変換する仕組みなのだと前述しました。故にプレイヤーの「光柱」は同じ奇跡ではありながらも、「月」を経ていないから魔力属性を帯びず、単なる物理属性として発現してしまった……これで一応筋は通ると思うのですが如何でしょう。

言い換えるのならプレイヤーキャラクターが天使信奉者ではないから、天使の光柱は正しく性能を発揮できない訳です。思えば「暗月の光の剣」は誓約「暗月の剣」を結んでいることが使用条件でした。天使の光柱も似たようなものだったのでしょう。ロスリック天使信仰に心から傾倒する者たち、そこには誓約に似た力が働き、或いは実際にそれを結ぶ手段があって、故に彼らの奇跡には「月」の力が働くのだと、そんな想像をしています。

天使誓約時限定の、魔力属性を持つ奇跡「真・天使の光柱」。全く想像に過ぎませんが、そんなものがあれば無双も良いところだったはず。そこに結晶の聖鈴の補正が加わればどれほどの……きっと強力過ぎて削除されたに違いありませんね。

「結晶の聖鈴」についても推測してみます。元々はゲルトルードのものだったというこの聖鈴。賢者に弄られることで結晶を帯びたのか、結晶を帯びていたから賢者たちの好奇を寄せたのか、その結果何が変質したのかしていないのか。どうとも取れるのですが、魔術・奇跡の双方を跨ぐというのはまさに「月」に関与する力と言えます。大書庫の賢者達が惹かれた部分は、もしかすればこの部分なのかもしれません。

じゃあ「月」なんてどこから出てきたんだ? という話なのですが、出所は当然ながら「大書庫」。シースの叡智と呪いが復元されると共に、白竜とは切って切り離せない「月」の力もまた、ぬるりとロスリック全体へ蔓延したんじゃないかと考えています。面白いのは、白竜信仰と天使信仰は「大書庫」という共通の源泉を持つにも関わらず、その結果を分かったという点。

月光の大剣
妖王オスロエスは妄執の先に月光を追い だが、それに見えることすらできなかった

シースを信仰し、シースに似た何かに変身しながらも、妖王自身は月光を手にできなかったのだそうです。ゲルトルードの天使信仰の源が「月」なのだとして、じゃあ両者を分けたものは何か。

シンプル過ぎて拍子抜けかもしれませんが、やはり「性別」なのだと思います。であれば、なんとも滑稽で、哀れな話ではないですか。月が女性の力だからこそ、直接に白竜を追った訳でもないゲルトルードは、しかし「月」に見え、一方で白竜そのものに共鳴してみせたオスロエスは、男性であるが故に終ぞ何も手に入れられなかったのです。「月」は白竜信仰にではなく、天使信仰をこそ照らしたのでした。

ちなみに『3』月光の大剣は『1』とほぼ同じ形状でありながら、従来のように純粋な魔力武器ではなく、筋力補正と物理攻撃力が追加されています。オスロエスのソウルからでは完全な練成が出来なかったのではないかと読んでいるのですが、どうでしょうか。

ということで天使の光柱についての読み解き、おしまい……なのですが、まだまだ話は続きます。

ロスリック

王の探索者

「ダークソウル」というシリーズは火継ぎの物語でした。ベースのプロットは三作総じて同じ。誘われるように辿り着いた不死人が、強大なソウルを求めて旅路を行き、集めたそれらを火にくべる。しかし特に『3』は『1』を強く想起させる作りになっているのは言うまでもないでしょうか。

火継ぎの祭祀場はそのままに、主人公はアノール・ロンド(ロスリック)にて王狩りの使命を受ける……『3』冒頭は『1』の流れを凝縮したものとなっている訳です。それを強く暗示していると思わしきものが、祭祀場からロスリックの高壁へ転送した際のこちら。

王の器のレプリカ

王狩りの使命はその器を前に始まる。

恐らく『1』の「王の器」のレプリカだと思うのですが、螺旋の剣が倒れている辺り、朽ちる以前は篝火の機能を有していたのでしょうか。想像するに、それはまさにかつて『1』で我々が見えた王の器そのものであり、このような形で供えられている辺り、火継ぎの国たるロスリックの祭壇めいた場所だったのかもしれません。しかし今やそこは朽ち果て、誰から見向きもされない。火の陰りを象徴するようなシーンでしょう。

しかし実のところ『3』は過去作と決定的に異なる点があります。それぞれ里帰りした王たちを探す主人公はただそれだけの存在であり、火継ぎなどという大役を仰せつかってはいないのです。

「貴方は王の探索者。高壁の下に、薪の王たちを追うのです。古くから決まった、それが貴方の使命でしょう?」

ロスリックの祭儀長、エンマ婆の台詞ですが、「王の探索者」という言葉に聞き覚えはあるでしょうか。懐かしき世界蛇フラムト、彼の二つ名こそ「王の探索者」でした。フラムトは火の時代を存続させるべく、次代を担う薪の王を探していました。つまり『3』における我々「灰」とは、従来通りの火継ぎの英雄と見せかけて、実は英雄の為に奔走する脇役、言わばフラムトの立場で旅に出る訳です。

そして、火の無き灰たちがやってくる。名も無く、薪にもなれなんだ、呪われた不死。けれど、だからこそ 灰は残り火を求めるのさね。

何やら難しいですが、火を求めるという習性を持つ灰たちは、その嗅覚によって薪の王、その残り火の元へ辿り着くだろうと。では灰に火継ぎが求められていないとするなら、本作の真の主役と定められた薪の王とは誰だったのでしょうか。それこそ王子ロスリックなのだと、以前は考えていました。

王の器と血の営み

上の記述と合わせて繰り返しになってしまうのですが、『ダークソウル』の一億個くらいある謎の一つとして、「なんでロスリック王子まで殺す必要があったの?」というものがあります。王の薪を玉座に戻したのなら、それを最初の火にくべちゃえば済むのでは? ここに納得のいく説明をつけるのなら、火継ぎには王のソウルの他に必要なものがあったから、となります。それが「王の器」であり、王子ロスリックとは王のソウルを正しく引き継ぐ「容器」として生み出されたのではないかと。だから彼抜きでは火継ぎは成されず、故に彼を殺すことで器たる機能を灰に引き継がせ、そこで初めて「ソウルの器」であるという火の無き灰は、「王のソウルの器」と成り得たんじゃないでしょうか。

『1』でフラムトは言いました。

「では、わしフラムトが 王の器であるお主に、探索者として次の使命を伝えよう。お主が、大王グウィンを継ぐには偉大なソウルでその器を満たさねばならぬ」

「王の器」とはあの巨大な容器そのものではなく、そのソウルを宿す「薪」の資格者を意味する言葉でもあったと。だから王子ロスリックとは、かつての「王の器」を人工的に再現した存在であったんじゃないかと思……っていたんですが、今はちょっと違う考えもあるんですね。この部分、本項の読み解きを踏まえてもう少し異なる見解を述べさせて頂きたい。

諸々の前に、具体的に火継ぎの国ロスリックは「王の器」ロスリックをどのようにして作ったのか。

まず前提条件として、この世界の者達はソウルを介し、そこに宿る力、記憶や業を継承するといった事が可能であるようです。

嵐の曲剣
古竜の同盟者たる無名の王は、生涯、嵐の竜を戦場の友とし 竜が倒れた時、そのソウルを己のものとした

適当にピックアップしたテキストですが、「ソウルを己のものとする」というのは敵を倒して得たソウルでレベルを上げたりと言った、シリーズおなじみの行動となります。無名の王が竜より得たソウルで嵐の力を繰り出していましたが、同じ事をオーンスタイン・スモウも互いにやってましたよね。この性質を利用し、我々はソウルを使ってユニーク武器なんかも作ってきました。『2』以降では武器の他にも魔法や指輪などと言ったものも生み出せるので、ソウルが持つ性質がより顕著に描写されていたように思えます。

とても重要な事として、我々は死亡時に血痕を落とします。そしてその血痕に触れることで、失われたソウルや人間性を回収してきた訳ですが、つまり血はソウルを宿すと考えていいでしょう。魂は血に溶ける。

「狼血」なんてものもありました。深淵の監視者たちは彼らそのものが王の資格を得たのではなく、彼らに流れる「アルトリウスの血」こそ資格者だったのだと。

王の薪(深淵の監視者)
血を分け誓った深淵の監視者たちの 王の資格は、その狼血にこそあった
狼騎士の大剣
ファランの狼血の主 深淵の闇に汚れた騎士の大剣
狼の騎士は、最初の深淵の監視者であり その剣もまた闇の眷属に大きな威力を発揮する

血がソウルを宿すなら、血には力や記憶、王の資格でさえも宿るようです。思い返せば妖王オスロエスのソウルからは、彼自身が見えること叶わなかった「月光」の力を宿す大剣を練成できました。ただオスロエスがそれを扱う器足りえなかったが為に発現しなかっただけで、彼自身の血は、しかし確かに月光を宿していた証左ではないでしょうか。

ロスリックが行ったという「血の営み」とは、恐らくこの、血が有する機能を利用したものでしょう。種の交配によって強い個体を作るというのは現実でありふれていますが、ロスリックは血の掛け合わせによって、王のソウルの宿主を製造したかったのだと推測します。

先王オスロエスが知り、狂ったというおぞましき血の営みとは具体的に何だったのか。前置きが長くなりましたが、こちらをご覧ください。

女神の祝福(『1』)
太陽の光の女神として知られるグウィネヴィアは、偉大なる太陽の光の王グウィンの娘であり、豊穣と恵みの象徴として、広く愛されている
女神の祝福(『3』)
彼女は先王オスロエスの妻であり、豊穣と恵みの女神にすら例えられたが、末子オセロットを生んで後、姿を消したという
太陽の光の恵み(『3』)
太陽の光の王女が与えたという特別な奇跡
母であり妻であったグウィネヴィアの奇跡は その恩恵をひろく戦士たちに分け与えた
太陽の王女の指輪(『3』)
多くの神と共に故郷を去った彼女は やがて妻となり、母となった
そして貴い子たちをもうけたという

なつかしきグウィネヴィアに例えられたロスリック王妃はオセロットを生んで失踪したといいます。そして深みの聖堂に鎮座する「生まれ変わりの母、ロザリア」は、そのソウルから練成できる「太陽の光の恵み」と関連イベントより、グウィネヴィアの娘である可能性があります。では単純な話、失踪した王妃とロザリアが同一人物だと仮定するなら、ロスリック王妃(ロザリア)自身は勿論の事、彼女が産んだロスリック国の子らは、グウィンの血を引いていることになります。

ここもロスリックという国がアノールの再現であると主張できる根拠の一つで、後の時代、潰えた神の国を再建する為に、人々は神の血を招いたのでしょう。という事で血がソウルを宿し継承するのなら、これでロスリック国は王のソウル(血)を得た訳です。それはもしかすると、ほんの小さな断片であったのかもしれませんが。

ただ、これが「血の営み」の一環であると見ていいのでしょうが、これを全てと考えてしまうと「おぞましい」と称するには足りない気がします。そもそもロスリック国がどれほど続いた国なのかよく分からないので何とも言えないのですが、「ロスリック騎士の大剣」に『ロスリック騎士の長い歴史においても』と記載されているので、ロスリック国は先王オスロエスが建てたとするには不自然でしょう。だから「血の営み」はオスロエスに至るまで、もうずっと延々続けられてきたものだと考えるべきかもしれません。最もオスロエスが長い時を生きた不死であるなら、時間の制約は取り払われますが、取り合えず除外しましょう。

では仮説を一つ。「血の営み」とは何か。王妃ロザリアはオスロエスの母でもあったのではないか、というのはどうでしょう。

もしかすれば、祖母でもあったかもしれないし、曾祖母でもあった可能性があります。或いはそのずっと前から。即ちロスリック王家には建国以来ロザリアという唯一人の王妃しか存在せず、彼女の子と、母ロザリア自身の血をひたすらに掛け合わせ続ける、「近親交配」により代を重ねてきた家系だったのだと思われます。グウィネヴィアの子たるロザリアもまた、ある意味で妻であり母だった訳です。

それにより何が起きるのかといえば、人の中の神血が濃くなるのだと、少なくともロスリック国は信じてきたのだと思います。血と共に、そこに宿る「王のソウル」もまたオリジナルに近づくのではないかと考えたのかもしれません。「血の営み」においてこの程度のことをやっていてくれているなら、まあおぞましいと称するに相応しい所業でしょう。ならば狂うに値する。

王の薪(ロスリック)
資格者を求めたロスリックの血の営みは やがて人を離れおぞましい所業と堕した
まさに火継ぎとは呪いの道であろう
祈祷のフード
王家の悲願、薪の王たる運命に生まれた彼は しかし病を抱え萎びた赤子であった

そんなこと繰り返してたら、そりゃ病気の子供も生まれるでしょう。ですが健やかであるかはどうでもよい。諦めなければ夢は叶う! 継続された禁忌はやがて、めでたく「器」を整えた……のでしょうか。

大王の再来

いや、そんなめんどくせえことしなくても、最初から神族に火継ぎさせりゃ良かったのでは? そんな疑問もありますが、しかしどうやら火継ぎの勇者とは人でなければならない理由があるようです。『3』の暗月誓約担当ヨルシカ嬢曰く。

「かつて我らの父グウィンは、火の陰りを憂い自ら薪の王となり 以来人の子ら、その英雄たちが、火を継いでいきました」

人である必要があったのか、はたたま「人にでもやらせときゃいいだろ」なのか、どちらとも取れますが、思うに前者としての意味が強かったんじゃないかと思います。『1』において篝火に人間性を捧げることで火の勢いは増しました。それを指して「注ぎ火」と呼んだ訳ですが、これは「そそぎ火」ではなく「つぎ火」と読みます。なぜなら「注ぎ火」は「継ぎ火(火継ぎ)」の縮小版であるからです。

「闇」もまた小人が見出した王のソウルが一つであり、その欠片だからなのか、人間性には篝火を育てる力があるようです。人のみが持つその暗いソウルの性質を以て、陰りゆく「はじまりの火」を再び大きくする為、薪の王には代々人間が座してきたのではないでしょうか。人(闇)こそが燃料には相応しいと。

余談ですが『1』でソルロンドの聖女レア一行が使命を果たしに地下墓地へと向かいました。それは「注ぎ火の秘儀」を行う為のものだそうで。

注ぎ火の秘儀
注ぎ火にて、さらに大きく篝火を育て より多くのエストを得るための秘儀
聖職の伝承に秘密として伝わるが 儀式自体はすべての不死人が行える
しかし人は、不死となりはじめて 人間性の「使い途」を得るものなのか

この不死であれば誰でも行える「篝火をより大きく育てる秘儀」ですが、何の為のものだったのか。前述の通り注ぎ火とは継ぎ火の縮図である訳ですが、それが「人間性を多く持つ傾向がある聖職者」の使命と伝えられていたというのは何とも意味が深い。或いはそれは本来であれば「火継ぎ」の使命が断片化して伝わった「誤解」なのか、もしくは火に聖職(多くの人間性)をくべ、いずれ来る薪の王の旅路の助けとなれという意味だったのかもしれません。ソウルシリーズは聖職に厳しいと思ってましたが、なるほど、遂に聖職者をコスパの良い燃料扱いしちゃいますか。ダイソーのパック燃料じゃねえんだぞ。

はい、話が逸れたので、薪の王ルドレスの言葉を聞いてやってください。

「なあ君、使命の意味を知っているかね。 5 つの玉座に 5 人の王を。それは火継ぎの準備なのだよ。いよいよ陰り、今にも消えんとする火を継ぎ、再び世界を繋ぐため。最古の火継ぎを再現するために」

「最古の火継ぎ」とは何のことでしょう。

王たちのソウル
最古の薪の王グウィン以来 はじまりの火を継いだ偉大な王たちのソウルが いつか火を守る化身を生んだのだろう

言葉通りに捉えるなら、最も古い火継ぎは大王グウィンが行ったそれでしょうが、グウィンは自身に宿る王のソウル唯一つを以て火を継いだのであって、 他の王たちは関与していません。ならばグウィンの次代、『1』の主人公が集めたイザリス、ニト、シース、公王らが持つ 4 つにグウィンのソウルを加えた「5 つの王のソウル」を用いて行われた火継ぎを指して「最古」と言っているのでしょう。数も合います。

ならばここで浮かんでくる一つの疑念として、王子ロスリックは、本当は何を期待されていたのかということです。

エンマ(台詞)
「王子を、ロスリック様を、どうか…どうか、お救いください。王に、おなりくださいと…」

王子の誕生は王家の悲願ではありましたが、「薪の王」になることを求められはしても、彼自身に火を継いで欲しいというような事は誰も言っていないはず(間違っていたら申し訳ありません)。では彼は、本当は何を求められていたのか。

近親交配により、グウィンの直系たるを代々重ねてきたロスリック王子が期待されていたこと。それは、いわば大王グウィンの再来なのだと思います。

なぜならば「最古の火継ぎ」には王のソウルが必須であり、その為に「王」の血を重ねて「王」を造り出すというのが、最も現実的な手段だとロスリック王家は考えたからです。要するにロスリック王子は「薪の資格者」であることを望まれはしましたが、それは多分実際に火を継ぐ「王の器」などではなく、ただ他の薪と同じく王のソウルの依り代として、かつて薪となったグウィンの再来として、つまるところ彼はただ燃料となるために生まれてきた訳です。

結果として王子ロスリックは、何と、意外な事に、薪の王たるを拒否しました。

「火継ぎの使命も、王の血統も、もうたくさんだ」

いや、そりゃそうだろ。

補足 : 二人で一人の王として

さて補足ですが、『1』には「人間性の双子」というアイテムがありました。何とも意味深なこのアイテムですが、どうやら『3』でやや回収されたようです。

人間性の双子 双王子のソウル

人間性の「双子」 / 「双王子」のソウル

あまり、あくまで「あまり」没データを元には考察しない方針なのですが、『1』で没になった展開では、オスカー(エスト瓶をくれた上級騎士)と主人公は光と影のように「対」としての役目を果たしあう関係だったようです。恐らく「人間性の双子」はオスカーと主人公二人の不死を暗示するアイテムだったんじゃないかなと考えているのですが、それが人間性の「双子」に似た「双王子」のソウルとして再び浮上してきたということは、ロスリック王子とローリアンはまさに付かず離れず、二人で一人の関係だったことを示しているのかなと思います。

病を抱え萎びた赤子だったというロスリックは薪の資格者ではあったものの、何か重大なものが欠けていたのかもしれません。その欠けたものを兄王子ローリアンが補うことで、王子ロスリックは初めて薪足り得たのではないかと思うのですね。しかしその結びつきを、王子は「呪い」と呼びました。

双王子のソウル
薪の王たるを拒否した二人の王子は 全てを遠ざけ、火の終わりを待っていた
そのソウルは、呪いにより分かち難い
双王子の大剣
ロスリックとローリアン
双王子のソウルから生まれた二つの剣が 再び分かち難く結びついたもの
れは本来呪いであり、今は弔いでもあろう
ローリアン・シリーズ
王子ロスリックの兄、ローリアンの〇〇
炎を模した真鍮の兜は、黒く染まっている
騎士として育てられたローリアンは 弟の呪いにより声と歩みを失ったという
そしてそれは、彼の望みであったとも
ロスリック王子(台詞)
「兄上は私の、王子ロスリックの剣。だから、どうぞ立ってください。…それが、私たちの呪いです」

具体的に何が欠けていて、どう補い合ったのかは分かりません。しかし兄王子ローリアンの在り方は、さながらかつて太陽の光の王に付き従った黒騎士に似ます。

黒騎士の盾
かつて混沌のデーモンと対峙した彼らの盾は 全体に黒ずみ、炎に対するカット率が高い
ローリアンの大剣
王子ロスリックの兄、ローリアンの特大剣
燻りを宿した溶鉄は、黒く染まっている
それは弟の呪いを受ける前 騎士ローリアンは唯一人でデーモンの王子を殺し 以来その大剣は、炎に焼かれ続けているという

デーモンと戦った逸話まで一致。まるで兄王子が、「ロスリック王子の黒騎士」となる為にデーモンの王子を殺し燻りを自身へ宿したのではないかと思うほどに。そうまでしてグウィンという存在をなぞり、その再来を望んだのでしょうか。或いは「呪い」が逸話をなぞらせたのか。かくして使命は兄王子から声と歩みを奪い、遂に双王子はそのソウルが示すように一個の存在となりました。

薪の王 W(ダブル)

二人で一人の薪の王だ!

薪の王たちは総じて、 HP バーを半分削った後半戦にようやく薪の王たる残り火を放射しました。王子ロスリック単体での戦闘が無いので不確かではありますが、彼だけが少し異なり、兄王子と一体となることで薪の燻りを発します。もしかすればこのように結びく事で、初めて彼らは薪の王として火(王のソウル)の力を得る事が叶うのかもしれません。

グウィンと共に最初の火に焼かれ、それでもなお忠義を捨てなかった黒騎士それ自体がグウィンの剣と言えるのなら、重なり、炎の剣を振るう双王子の姿は正しく、「大王グウィンの再来」と呼ぶに相応しいでしょう。

相応しいはずだったんです。

太陽はもう昇らない

言いにくいことがあるんですが、言わなくてはならないので言います。ここからが本題です

繰り返しますが「ロスリック」とは「アノール・ロンド」の再現です。思い返せばかつてアノール・ロンドは、太陽の都とは見せかけで、その実、グウィネヴィアに弓引き、国全体にかけられた幻惑を解けば夜の都たる本性を露にしました。太陽(白教)は去り、いつからか月(天使)が支配していた。きっと望まず、こんなところまでロスリックは再現してしまっていたんでしょう。

太陽の都 月光の都

神の都の正体みたり

先述したようにロスリック王子はグウィンの再来として仕立てられたようなのですが、彼に重大な何かが欠けていたという観点を差し引いても、恐らく王子はグウィンにはなれなかったと思います。彼は確かに薪の資格者だったかもしれない。ですが産み落とされていたのは、もっと異質な何かであった事に、王家はたぶん気づいていなかった。

女神の祝福
彼女は先王オスロエスの妻であり 豊穣と恵みの女神にすら例えられたが 末子オセロットを産んだ後、姿を消したという。
オスロエス(台詞)
「ああ、愚者どもめ。ようやく気付いたのだろう。愛しいオセロット、竜の御子の力に」

推測でしかありませんが、オセロットもまた、王子のように正常な生まれ方をしていなかったと思われます。シンプルな発想として、大書庫の異端と繋がったオスロエスが、やがてはその啓蒙と妄執によって自身を「シースのように」変身させてしまったのなら、その因子は血(ソウル)を介して子供たちに受け継がれてもおかしくない、はず。

だからこそオセロットは「竜の御子」とも呼ぶべき姿で生まれてしまったのかもしれないのですが、ここで問題になるのはオセロット以前の子供たちはどうだったのかという点です。はっきり言ってしまうと、それはきっとゲルトルードやロスリック王子にも継承されたんじゃないかと思うのです。

上述したように、大書庫との繋がりによってオスロエスの中にも確かに芽生えた「月」が、しかし男性である彼には発現しなかった一方で、女性であるゲルトルードは明確にそれを得ました。白竜信仰という種子が、「天使の娘」ゲルトルードを苗床に、天使信仰という形で歪に芽吹いたと表現すべきでしょうか。

そして「月」はロスリック王子にも継がれたはず。ですがロスリック王子は男性である為に「月」の力を手にできないはずです。しかし彼は薪としての器足りえるほど、大王グウィンの血を濃厚に引いていた。それが何を結実せしめたか。

どうでしょう、既視感はありませんか。その背後に「竜」があり、「太陽」と「月」の交わりによって生まれた「男性」の存在に。

暗月の神

太陽と月の子

大王グウィンたるを望まれたロスリックは、その実、暗月の神グウィンドリンを再現する形で生まれてきてしまったのです。

きっと意図したものではなかったと思います。狂った王が白竜に憑かれたばかりに、誠実なる血の営みに異物が混入してしまった。そうして生まれたものこそ、「人造の暗月」ロスリック王子でした。

そういう視点で見渡してみると、王子ロスリックとグウィンドリンには幾つかの共通点が見出せます。

まず挙げられるのが能力。弾速の遅い追尾性の小型弾を複数バラまく攻撃に、高速の大型弾。次にワープ能力。歩けないローリアンはワープを駆使し移動しますが、これはロスリック王子の能力でしょう。思い返せば、あの引き延ばされた回廊でグウィンドリンもまたワープを用いて移動していました。

そして台詞

グウィンドリン
「これより先は、大王グウィンの墓所。何人であれ、これを穢すことは許されない」
ロスリック
「ここもやがて、我らの墓所。貴公も、ゆっくりと休むがよい…」

ほら二人とも「墓所」って言ってるでしょ! などとこの程度の事を強く主張する気はないのですが、似ている二人が似たキーワードを口にするというのは個人的に重要。

最後の共通点として、グウィンドリンとロスリック王子は声優が同じ(Harry Lister Smith 氏)なんです。ただソウルシリーズは一人の声優が多くのキャラを演じる事が多いので、これを根拠としてしまうとペトルスとアンドレイに深い関わりを求めることになってしまうのですが、しかし「面白い」材料だと考えています。

さて似た能力、同じ台詞に同じ声。付け加えるなら両者は共に白髪。他にもあるかもしれませんが、とにかく当サイトではこれらをロスリック王子がグウィンドリンの似姿として生まれた事を示唆する描写だと主張するところ。しかしだとして、それが何なのかというのがここでの本題。

ロスリックの聖剣
王子ロスリックの直剣
エンマの祝福により強い魔力を帯びている

「強い魔力を帯びている」とありますが、どうやらこの剣は純物理属性剣であり、戦技の光波も物理。「魔力」という言葉が単なる比喩表現でないのだとすれば、強い既視感を覚えますね。ということでもう一度。

なぜプレイヤーが扱う光柱と羽の騎士のそれは属性が異なるのか

それはプレイヤーの光柱が「月」を経由していないからでした。オスロエスが終に見えられなかった「月」が、しかし彼の血により子供たちへと継承され、それが「天使の娘」ゲルトルード、「暗月の神の再来(仮称)」ロスリック王子と、「竜の御子」オセロットを産み落としました。だから最後までロスリック自身が振るわなかったという聖剣を、仮に彼が手にしていたならば、「月」の作用によって正しい性能を発揮していたのではないかと思います。魔力を帯びると言いながら「ロスリックの聖剣」が後のアップデートにより信仰補正を付け加えられたのも、その背景にある「月」を示唆するものではないでしょうか。

ところで双王子戦の大部屋には羽が降り積もっていますが、あれは天使のものでしょうか。そういえばグウィンドリンの再現と言いつつ、彼の魔法とは異なり、ロスリックのそれは「光柱」の輝きのように純白でした。素直に考えればロスリックが扱う「月」の魔力が「天使」に寄ったものだという証左なのでしょうが、では彼も天使信仰者と考えるべきでしょうか。その解釈でもいいのですが、どのテキストにもそのような記述はありません。思うにオスロエスの追った「月」がゲルトルードによって「天使」という存在へと変質したように、ロスリックという地に蔓延したそれは図らずも王子が持つ「月」そのものへ影響を与えてしまったのではないでしょうか。さながらかつてのアノール・ロンドでガーゴイルとレッサーデーモンが雷の力を得ていたように。

火は陰り、太陽の光も潰えようとしています。月が祈りを転嫁するものであるなら、太陽と共に信仰の矛先が喪失した事で、月の在り方もまた変わってしまったのかもしれませんね。

ということで「なぜプレイヤーが扱う光柱と羽の騎士のそれは属性が異なるのか」という疑問に対する「月」という解答、その補強となったでしょうか。

月の真価

さて長らくお付き合い頂きありがとうございました。「天使の光柱」を巡る属性問題については一応の読み解きが出来たかなあと思うのですが、話がややこしくなるので黙っていたことがあります。

当の「天使」という人に似た何か。その前身となるのがロスリック上空を飛ぶ「巡礼の蝶」だと申し上げました。「蝶」から「蛹(天使)」へ変わる際に魔力属性を獲得していることからそこには「月」が関わっているのだという論法だった訳ですが、実は光柱のように「物理」から「魔力」へ変化している訳ではないんです。

「巡礼の蝶」の攻撃は闇属性です。これはただ事ではない可能性を示します。随分上の方で申し上げましたが、魔力とは「ソウルそのもの」としての属性です。つまり巡礼の蝶から蛹(天使)への変態は、闇のソウルが火のソウルへと転じていることになる。

天使の光柱から端を発した本記事ですが、そうして得た「月」という解答から、事はもっと根深い所へ続いている予感がしてきました。ということで、大変言いにくいのですがここまでが序文です。次回からが本当の本題となります。「天使とは結局何なのか」。そして空の深みを見上げて生じたその疑問は、或いはさる聖者が見た「深海」へと続くものなのかもしれません。

まとめ

  • プレイヤーが扱う光柱と羽の騎士のそれの属性が異なるのは「月」の作用によるもの。
  • ロスリックとはグウィンドリンの似姿である
  • 月は闇のソウルを火のソウルへと転化できる可能性を持つ。

続きます

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