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折れた剣の物語

『DARK SOULS』を象徴するアイテムとは何かと言えば、それは「折れた直剣」でしょうか。

折れた直剣
刃の半ばから先が、折れて失われた直剣
武器として見るべきところはなにもなく 正気をなくした亡者でもなければ 使う者などないだろう

『Demon's Souls』から登場するこの武器ですが、共通項として正気を失った亡者が持たされていました。武器にもなっていないそれを(敵が持つと痛いんだけど)、振るう相手もいない空中に向かいブンブンと振り回すその様は、まさしく「亡者」と言うべきでしょう。

『DARK SOULS』は北の不死院から物語が始まるわけですが、全素性共通しての最初の武器が「直剣の柄」でした。折れた直剣が刃半ばを失っているのに対し、こちらは更に根本に近い部分から折れています。平均的亡者より扱いが悪い。

直剣の柄
根元から刃が折れ、失われた直剣
不死院の牢に打ち捨てられていた
素手よりはまし、という程度の武器であり はやく別の武器を手に入れたほうがよいだろう
これを使い続ける意味は無い

さて話は飛んで『DARK SOULS 3』、その DLC には奴隷騎士ゲールというボスが登場します。なぜ戦う羽目になったかと言えば、自身に宿した「暗い魂」を主人公に託すためでした。

暗い魂の血
ゲールが小人の王たちに見えたとき 彼らの血は、とうの昔に枯れ果てていた
そして彼は、暗い魂を喰らった
奴隷騎士ゲールのソウル
彷徨える奴隷戦士、赤頭巾のゲールは絵画世界の顔料のため、暗い魂の血を求めた
だがゲールは、自らが英雄でないと知っていた
暗い魂は彼を侵し、帰ることはないだろうと

お気づきでしょうか。血に宿った「暗い魂」を得る戦いは、かつてそのまま、血に宿った「人間性」を得ようとする有り様の「なぞり」になっていることに。そして理性を失い、折れた剣を手に暴れまわるゲールの姿は、「魂(ソウル)」を求める亡者そのものだということに。

シリーズの終わりに、物語は「はじまり」へと回帰しました。かつて折れた剣と亡者から始まった物語は、このように、折れた剣と亡者によって幕が引かれることとなります。輪の都にて、輪は閉じたのです。

折れた直剣 ゲールの大剣

ちなみに折れた直剣とゲールの大剣は折れ方が同じだったりします。

思うにゲール爺とはきっとそこまで強い不死ではなかったのだと思います。少なくとも英雄の器ではないと自身を理解する程度には。だから勝てない敵には勝てるまで挑み続け、きっと幾度も死に続けることになった。まるで「我々」ではありませんか。以前にも王たちの化身と奴隷騎士ゲールを対比させて語ったことがありましたが、化身が王たる栄光の「我々」だとすれば、奴隷騎士はその陰で無様に死に続け、しかし決して諦めなかった「我々」なんです。

『ベルセルク』という漫画があります。とても有名な漫画なので、読んだことがなくともご存じの方は多いでしょう。ソウルシリーズのディレクションを行った宮崎社長も公言している通り、あの作品がシリーズに与えた影響は図り知れません。元ネタを探してみるのも楽しいと思います。

例えばこんな一幕があります。主人公ガッツのもとを訪れた髑髏の騎士が、一年後に迫る「蝕」なる地獄を予見し、そしてガッツもまたその渦中に放り込まれると言い放ちます。嵐のような死に対する方法は一つ、「もがくこと」だと。そしてこんな言葉を残して去っていきます。

「絶望の淵で…折れた剣を手に立ち上がる者のみが…あるいは…」

そしてこの言葉の通り、ガッツは折れた剣を以て蝕へと挑みました。多くのオマージュはあれど、ソウルシリーズの根幹、宮崎社長が込めた最も強い思想はこの部分ではないのかと、勝手ながら愚考しております。

即ち「折れた剣」とは「諦めなかった者」の象徴なのだと。

また『Demon's Souls』の「ブルーブラッドソード」や『DARK SOULS』の「アルトリウスの大剣」は、それぞれ「折れた直剣(直剣の柄)」を鍛えきった先に見える進化でした。単純なロマンを感じさせますが、やはり根本には、この「折れた剣」と、それを振るう者に対するある種の憧憬を感じずにはいられません。

最後まで挑み続けた者のみが到達し得る境地がある。ソウルシリーズとは、常にそのようなお話だったと思っています。

『DARK SOULS』。折れた剣の物語でした。

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