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緑花を君に

おはようございます。最近は葉物が高くて嫌になっちゃう。ということで今回は緑花草について。生でよし、炒めてよし、刻んで鰹節など和えてよし。醤油をひとかけご飯の上へ。スタミナもついて言うことなし。シリーズにそっと寄り添い続けたイケてるあいつは、しかし一方で謎の多い植物でもあります。そもそもどこ探しゃ生えてんのよ。

緑花草(『2』)
独特の苦味から敬遠されていたこの草は、
効果が明らかになると、商人に採取し尽くされた
今残るのはごくわずかな自生草のみである
緑花草(『3』)
大輪の花のような緑の草。
澄んだ水辺に自生するという一年草。
ファランの不死隊がこれを用い大剣を縦横に振るったことで知られている。

へー。澄んだ水辺に自生してんだ。そんで?

花付き緑花草
大輪の花のような緑の草。
小さな白い花が咲いている。
緑花草の花は、幻の花である。
それは冷たく、だが凍らぬ水辺にだけ咲くという。

澄みきって、かつ冷たい水辺では花まで付けると。

ちなみにこの花付きをゲーム「本編」中で唯一拾えるのが「冷たい」谷のイルシール道中、噴水近くの遺体だったと記憶しています。遺体が握っていたものですが、「冷たく」「水」のある場所に配置されていた辺り、ここに生えていたというよりテキストの内容を示唆するためでしょう。付け加えるなら DLC エリアを本編外として、アリアンデル絵画世界でも輪の都でも拾えますね。「冷たい」という意味では絵画世界はうってつけでしょうか。では輪の都は?

そこらへんは後述するとして、まずこのイルシールという場所ですが、実はやたら緑花草が拾える場所だったりします。おあつらえ向きにどれも水場か、その近くで。やはり遺体から拾えるものなので「緑花草は人の遺体から芽吹くのでは……?」という答えに飛びつきたいところですが、慌てず、ここの水場に住む「汚水ムカデ」のことなんぞを考えてみましょうや。

汚水ムカデ 汚水ムカデ

汚水ムカデ

いつみてもとんでもねえビジュアルですが、このムカデたちはイルシールと絵画世界のみ、ノーマル緑花草と花付きのそれをドロップするようです(他所では解呪石などを落とす)。なぜか。簡素にその冷たさと、何よりも水の影響ではないかと思います。緑花草が芽吹くのに適した水場での生活が、汚水ムカデに「澄んだ水辺でのみ育つ植物」を抱かせたのだと(食べてた?)。つまりイルシールの水がとても、とても澄んでいることの証明なんですね……という結論で終わりたいところなのですが、ただね、やはり「汚水」ムカデの名に偽りなしと言うべきか、この水場、たぶん下水なんですよ。屋内に入る階段手前に「糞塗れの遺灰」があったことからも、そう推察することが可能です。

関連記事 : 糞塗れの記事

緑花草を芽吹かせるほどに澄んだ水は、なんと下水と地続きでした。「澄んでいる」、とは? それが見た目の話でしかないのか、「人体に悪影響がない」という意味でしかないのなら、結論を導くのはいともたやすい。じゃあ言います。

緑花草とは下水に生える。人糞に由来する植物だった……可能性が、ある。シリーズ中ずっとプレイヤーを助けてくれたステータス上昇アイテムの正体が、シリーズ最後に明かされた、と言ったところでしょうか。

以前ツイッターでこのことを投げた際、面白いリプライを頂きました。「緑花草が澄んだ水辺に生えるのは、正確には緑花草が生えることで水が澄むのでは?」と。つまり糞便が溶け込んだ水を好んで芽吹く緑花草は浄化作用のようなものを持っていて、結果として水が澄むということ。面白い発想ですよね。ただ緑花草が自生していると思わしき場所に、フロムがわざわざ汚水ムカデを放ったことを思うと、やはり目に見えないだけでその水は……という気がしないでもない。或いはあの場に動かなくなった汚水ムカデがいたのは、緑花の浄化作用によって汚水ではなくなっていたからなのか。解釈の仕方は様々でしょう。

また併せて考えてみて欲しいんですが、この下水と地続きになった水場には不思議な光景があったはずです。

死んだ蛆人

死んだ蛆人

確か別記事で触れてはいたと思いますが、この蛆人なんでこんなところで死んでんのと、ずっと不思議だったんじゃないでしょうか。ここが下水だったことを考えると、シンプルな帰結として「水が合わなかったんじゃないか」と思ってます。もっとも近場に汚水ムカデがいるのでこいつらに殺されたとも言えますが、考えてみて欲しいのが、汚水ムカデも蛆人も、恐らく両者ともに「人間が変質したもの」ではないかという可能性です。環境や状況如何でどんな姿にも変質するのがこの世界の人間ですが、その結果として独自の弱みをも抱え、生存可能な環境すらも変わってしまった。これはそんな光景なんじゃないかなと。

ということで言いたいことは言ったんですが、実は緑花草について考えるなら必然的に触れておけなければならないものがもう一つあります。緑花の指輪です。

緑花の指輪
大輪の緑花を象った古い指輪
その意匠は独特で、由来は分かっていない

明言されてはいませんが、まあ同じ「緑花」に属するもの、もっとシンプルに緑花草を象った指輪だとしていいでしょう。注目したいのはただ一点。輪の都のこの光景です。

神から人へ 人へ神から

親愛なる「人」へ

大王グウィンが誰も知らぬ小人に王冠を授けている。そして向けられたもう一方の手からは「緑花の指輪 + 3」が入手できました。素晴らしいアイテム、美しい光景です。輪の都とはかつて神々が小人の王たち、そして古い人々に対して送ったもののようで、それは共に竜狩りに挑んだ者に対する、神からの敬愛と信頼の徴……ではなかったのでしょう。

小人
「崖下のフィリアノール教会に向かうがいい。そしてそこで、王女の眠りを壊すがいい。…その眠りはまやかし。糞溜めの蓋、お前から、暗い魂を遠ざけるものさ」

人。最初の火に触れた王たちの中で「闇」を手にしたが故に生まれた不死の存在。不死なのでどんな環境にも適応し、どのような怪物にも凶悪に変貌する。神々はこれを恐れ、幾重もの封印を施します。神の枷を、火の封を、そして輪の都もその一環でした。

関連記事 : 火の封と神の枷

当時のグウィンの真意それ自体は知りようもない。しかし石像として切り取られたこの場面は、神と人が心を通わせた徴などではなかった。贈られた都は、人という汚物に対する「蓋」に他ならない。輪の都で多くの緑花草が手に入るのは、あの場所が汚物の集積所だったと示すためのものだったのでしょう。それらが花付きだったのは、火が陰り、闇に塗れたこの都市から、既に熱が失せている示唆かもしれません。

つまるところ大王から小人へ差し伸べられた手に緑花の指輪が握らされていたのは、輪の都という場所に込められた最大級の皮肉を描き切る為だったと言えます。糞から育つ草を模した指輪を、糞溜まりの都の主へ贈る。この彫刻に名を与えるなら「親愛なる糞へ」と言ったところでしょうか。

最近疲れやすくありませんか? そんな貴方には緑花草がおすすめ。独特の苦味こそありますが、食べればスタミナアップ間違いなし。

澄んだ水辺に生えているそうです。

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