ACID BAKERY

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グウィンドリンのつくりかた

……え?

なんですって?

「グウィンドリンが作りたい」?

突然どうしたんですか……そんなもん……わかる〜

というわけでグウィンドリンを作っていきましょう。

グウィンドリンを復習する

無印の時点でわかっていること
『3』でわかったこと

以上、ソースとなるテキストは省きます。書き連ねてみたものの、これらは今回あまり重要でなく、無駄に長くなるので。

喰った方が早インパラ

なんか暗月でかわいい神

つくるか グウィンドリン

さて今回したい話は、グウィンドリンの血筋について。ちなみにここら辺、ググッたら似たテーマを掘り下げておられるサイトが幾つか出てきますが、どれも面白いのでオススメ。

改めてやるなら、最低限抑えておきたいポイントは以下でしょうか。

長子
太陽の光を継いだグウィン王の長子 / (太陽の光の長子の指輪 - 『1』)
グウィネヴィア
グウィン王の長女にして、太陽の光の王女 / (太陽の王女の指輪 - 『1』)
後に火の神フランの妻となった / (太陽の王女の指輪 - 『1』)
グウィンドリン
グウィン王の末子 / (暗月の司祭の指輪 - 『1』)
フィリアノール
愛しい末娘 / (勅使の小輪旗 - 『3』)
シース
シースはグウィンに与して古竜を裏切り、後に公爵として王の外戚になった / (分け与えられた王のソウル - 『1』)
プリシラ
不義の子にして生命の天敵である半竜 / (半竜プリシラのソウル - 『1』)
シラ
「私も神の末、公爵の娘、シラ」 / (本人セリフ - 『3』)

家系図を作るならこんな感じでしょうか。みんなも考えてみよう!

アノロン家系図

アノロン家系図

作成にはこちらのフリーソフトの力をお借りしました。

「公爵の娘」シラは不要だったかもしれませんが、プリ「シラ」の横に並べたかったんですよね。埋まっていない項目については、全てではありませんが後述。

グウィンドリン周りについてですが、もちろん彼とプリシラの血の繋がりなどは示唆もされていないはずですし、あったとしても姉と弟かもしれず、兄と妹かもしれない。逆に父と娘と考える方もおられるでしょう。どこにも明確な記述が無いので、何とでも言えます。なら、当サイトが二人を母と息子と主張するのはなぜか。

重要になってくるのが「外戚」である白竜です。外戚とは妃の出身一族……つまりグウィンの嫁の、親戚といった意味になります。つまりシースが自分の娘をグウィンに嫁がせれば外戚として成立します。そして大王と半竜の間にグウィンドリンが生まれたと見れば、収まりは良いでしょう。

ちなみに長子たちの母親とプリシラを別人としてるのはなんで? と思うかもしれませんが、多分プリシラは正妻の位置には無かったんじゃないかと思います。裏切ったとは言え古竜の娘、しかも不義とさえ称され隠されもしたプリシラではさすがに不適当ではないかと思いますし、竜の血を引いているにしては長子やグウィネヴィアたちにその特徴が無さすぎるのも気になり、図のようになりました。絵画に押し込められていた彼女を、周囲はどれほど認知していたのか。

もちろん他に解釈の仕方はあるでしょうが、取りあえず今は図に従って頂くとして、ともかくなぜグウィンドリンとプリシラの間に母子の繋がりがあると考えるか、そのポイントになるのが以下のテキスト。

生命狩りの鎌 - 『3』
神喰らいとなったエルドリッチの奇跡
幻の鎌で、敵のHPを奪い取る
エルドリッチは暗月の神を喰らい 遅々としたその中に夢を見た
密かに隠した、白い娘の夢を

エルドリッチのソウルから練成できる奇跡ですが、どうも彼はグウィンドリンをモグモグしている最中にこれを見出したようです。プリシラを食べたのではなく、グウィンドリンを、です。なぜか。ソウルとは元来血に宿るものでした。我々が落としたソウルや人間性がそうであったように、狼血に宿った王のソウルが監視者たちに継承されたように、暗い魂が奴隷騎士の血に宿ったように、ソウルは血に宿るもの。ならば親子の血の繋がりが受け継ぐものは如何ほどでしょうか。

つまりこういうことなのだと思います。エルドリッチはグウィンドリンの血肉を通して、その母のソウルに触れたのだと。半竜と暗月の神との間に母子の繋がりがあると考える理由がこれです。

(追記) : ソウルが持ち主の「記憶」を宿すなら、あくまでもグウィンドリンの記憶を辿ってプリシラに行き着いたのであって血の繋がりとは限らないのでは、という意見もあるでしょう。同意する部分もあるのですが、だったらソウル練成がプリシラ以外の人物に及んでもいいのではないか、なぜプリシラだけが……となると、最も濃い繋がりが両者の間にあったからだと見るのが個人的に納得がいくんですね。追記終わり。

そしてこの考えを軸にして、もう一点。エルドリッチ戦において気になるのはやはりこれでしょう。

墓王の剣?
墓王の剣

墓王の剣

グウィンドリン(エルドリッチ)が持つ武器が、よく見れば墓王の剣であること。

これも多くの解釈が生まれた描写かと思います。見かけた範囲では、「何らかの形で残っていたニトをエルドリッチが食べた」「ニトの後継者か、それこそ子供、或いは眷属をエルドリッチが食べた」など。しかし過去と矛盾せず、また新たな登場人物を増やさない方向で、この「なぜエルドリッチ(グウィンドリン)が墓王の剣を持っていたのか」を説明することができます。単純です。

つまり、

アノロン家系図 - 2

アノロン家系図 - Ver.2

こう。

生命狩りの鎌と理屈は同じ。「血(ソウル)を辿った」のです。そもそも論として思い返してみれば、プリシラの振るっていた「生命狩りの鎌」ってどことなく死神の鎌を思わせるものじゃないですか。最初の死者ニトが、遍く「死」を司る神であったなら、その繋がりを示唆するためにプリシラは死神を想起する鎌を持たされていたのかなとは常々思っていたんですが、どうでしょうね。

離反者とは言えかつての大敵であった古竜と、あらゆる生の、それこそ神の死さえも司る墓王ニトの子。「不義の子にして生命の天敵」と称するには相応しい……かもしれない。

墓王の剣 - 『1』
最初の死者、墓王ニトの眷属のみ持つ 死者どもの骨でできた剣
剣のまとう濃い死の瘴気は あらゆる生命にとっての猛毒となる
生命狩りの鎌 - 『1』
エレーミアス絵画世界に閉じ込められた 純白の半竜プリシラのソウルから生まれた鎌
神々さえ恐怖した生命狩りの力を持つが 半竜ならざる者がその力を振るえば その力は使用者にも跳ね返ってしまう

もっとも対象の生命にとって猛毒となる「死の瘴気」と、対象の HP を奪い使用者を回復させる「生命狩り」は似て非なるものなので迂闊に類似だ類似だと飛びつくのは危険なのですが、それが墓王と白竜が掛け合わさった結果生まれたものだと考えても面白いと思います。あのニトが子供を作れるのか、そもそもどっちが男で女だ、なんて疑問には答えようがありませんが、事が神々の営みですし、相手がシースならどうとでもなりそうじゃないですか。ソウルシリーズの考察はシースへの信頼で成り立っている。

この説の弱点をあえて探すなら、こんな重要なことテキストで匂わせもしないなんてことある? ってところですが、まあだからこそ考察って好きにやれてる部分はあるので……。

というわけで、以上。「グウィンドリンのつくりかた」でした。さようなら。

グウィンドリンができちゃった

終わろうとも思ったんですけど、思ったより短くなってしまったのでもう少し続けますか。

関連記事 : 天使にふれたよ! #1 月光!

上の記事は読まなくていいです。ただここから先はそちらで触れた部分を多く含むので、覚えている方は復習くらいの意味合いで読んでくだされ。

妖王オスロエスのソウル
王はロスリックの血の営みに発狂し 大書庫の異端と繋がったという
それは白竜シースの歪んだ信仰だった
王の薪(王子ロスリック)
資格者を求めたロスリックの血の営みは やがて人を外れ、おぞましい所業と堕した
正に火継ぎとは呪いの道であろう

ロスリックには「血の営み」がありました。王たるオスロエスを狂わせたそれは、果たしてどんな内容だったのか。

一度やった内容なのでサクリと言ってしまいますが、要は強めの近親相姦です。

話が前後しますが、まず名が明かされていないロスリック王妃は「豊穣と恵みの女神にすら例えられた」そうです。

女神の祝福 - 『3』
ロスリックの王妃が祝福したとされる聖水
彼女は先王オスロエスの妻であり 豊穣と恵みの女神にすら例えられたが 末子オセロットを産んで後、姿を消したという
女神の祝福 - 『1』
太陽の光の女神として知られるグウィネヴィアは偉大なる太陽の光の王グウィンの娘であり豊穣と恵みの象徴として、ひろく人々に愛されている

女神の祝福に共通する太字の一文があるから、ロスリック王妃の正体がそのままグウィネヴィアなのだという説もありますが、まあそっちでも良いと思います。当サイトではロザリアはグウィネヴィアの娘説を推しますが、これは別記事でやります。

太陽の光の恵み - 『3』
太陽の光の王女が与えたという特別な奇跡
母であり妻であったグウィネヴィアの奇跡は その恩恵をひろく戦士たちに分け与えた

グウィネヴィアの奇跡を持つロザリアは、グウィネヴィア本人なのか、それを与えられた側なのか。前述した通りどちらでも良し。今回重要になるのはロザリアがつまりグウィンの血を引いているだろう点です。そしてこの奇跡に記述された通り、ロザリアが「母であり妻であった」とするなら。

ロスリック家系図

ロスリックの血の営み

こう。

オスロエスはなぜ狂ったのか。ロスリック国には長らくただ一人の王妃しかおらず、自分が妻だと思っていた、あるいは妻としなければならない女性は、自分の母であり、祖母であり、歴代の王の妻であり、ずっとずっとそれが繰り返されてきたことを、知ってしまったからだと考えます。

これが「やがて人を外れ、おぞましい所業と堕した」とまで言われることなのか、というのは個人の捉え方でしょう。

とにかくロスリック国はなぜこんなことを続けてきたのか。王妃が神、つまりグウィンの血を引くなら、彼女と彼女の子を掛け合わせ続ければ、代を重ねる毎にグウィンの血が色濃くなっていくと考えたのだと思います。これによって火継ぎの国ロスリックは、最古の薪の王、グウィンの再来を目論んだのです。最古の薪の王、その再現を。

果たしてそれは成功しました。生まれながらにして王のソウルを宿した、王子ロスリックの誕生です。ハッピーエンド! とはなりません。火にくべられるために産み出されたと知った彼は、その使命を投げ出しました。

ロスリック

「ほう、懲りずにまたやってきたか。ようこそ、火の無き灰、薪の調達者よ。だが、私は王とはならぬ。火継ぎの使命も、王の血統も、もうたくさんだ。…だから貴公も、もう休むがよい」

かくしてロスリックは薪を失い、ここから『DARK SOULS 3』の物語は始まります。王が玉座に戻らぬならば、その薪を戻せばよい。ロスリックが火を継がないなら、ソウルの器である灰に王のソウルを注ぎ、代わりに火にくべれば良いのです。

さてロスリックが火継ぎを拒否した理由は、彼自身の自由意志と懐疑によるものだったのでしょうが、それ以前の段階で「計算外」があったからではないかとも思います。

グウィンの再現など、そもそも成功していなかったんです。

白竜の息
妖王オスロエスの妄執の果ての魔術
白竜シースの結晶のブレスを放つ
かつて「ビッグハット」は白竜に共鳴し 裸の探求の末、その神の業を己のものとしたという
オスロエスはそれを知り、また啓蒙を得たのだろう
月光の大剣
妖王オスロエスは妄執の先に月光を追い だが、それに見えることすらできなかった

オスロエスは自国の血の営みに発狂し、 「大書庫の異端と繋がった」そうです。そして共鳴し、啓蒙を得た。まさか生まれた頃からあんなシースの出来損ないのような姿ではなかったでしょう。推測するに、大書庫の異端とやらと繋がったことで、あの姿になったのだと考えます。妖王が見えることすらできなかったと言いながら、それでもそのソウルに月光を秘めていたのは、内なるものを自覚できなかった彼の滑稽さを現わすのでしょうか。

ともかく、だとすればロスリックの家系図にはこう書き足したい。

ロスリック家系図

ロスリックの血の営み - Ver.2

オスロエスを切欠として、長らく続いた神と人による血の営みに、異物が混ざったわけです。

オスロエスがいつどのように外形を変態させたのかは不明ですが、彼が白竜に共鳴したことで彼のソウルもまた変質したものと考えます。ソウルは血に宿る。ならば彼が変わってしまって以降、彼の血を引いた子供にもまた、彼が共鳴したものが継承されても不自然はないでしょう。オスロエスの変態、仮に「白竜化」と名づけるなら、これが進行するに比例して、受け継がれるものも色濃くなる、はず。「竜の御子」だというオセロットは、その影響の最も濃い部分を継承してしまったのでしょう。ゲルトルードが見えたという「天使」なる存在もまた、無関係ではなさそう。そして、王子ロスリックもまた、白竜への共鳴が混じった形で生まれてきたとすれば……その有り様はもうグウィンなどでは無い。

神と竜の血を引き、その内に月の力を宿す者。

そう、ロスリック国は血の営みの果てに、グウィンではなくグウィンドリンを作り出してしまったのでした。

グウィンドリン
「これより先は、大王グウィンの墓所。何人であれ、これを穢すことは許されない」
「暗月の剣となりながら、大王の墓所を穢すとは…」
ロスリック
「ここもやがて、我らの墓所。貴公も、ゆっくりと休むがよい…」
暗月の神
ロスリックの王子

小型弾

暗月の神
ロスリックの王子

大型弾

暗月の神
ロスリックの王子

ワープ

セリフや能力にある共通点も、両者の声優が同じであることも、グウィンドリンとロスリック王子が似た経緯で生まれてきたことの、全て示唆なのだと考えます。

暗月の光の剣
暗い月の奇跡は、即ち復讐の物語である
だが騎士団総長ヨルシカはその意味を知らず ただ兄の面影に、彼の物語を語るだろう
復讐の意味は剣だけが知ればよい

火にくべる薪としての運命を望まれ、王子はそれを拒否しました。境遇を考えれば「そりゃそうだろ」って話なんですが、もしかすればその血に宿る生来の暗い月が関係していたのかもしれません。暗月とは復讐の物語。ロスリックが行ってきた血の営みは、挙句の果て、練り上げた血そのものに復讐される皮肉で幕を閉じたのです。

『DARK SOULS 3』。復讐の物語でした。

グウィンドリンの復讐

ちょっと待って待って。もうちょっとだけやらして。

ロスリック王子とは何者だったのか。それをグウィンドリンとその血筋から読み解いたわけですが、逆も可能ではないかと。つまりロスリック王子からグウィンドリンを読み解いてみるわけです。

はじまりの火に王のソウルをくべる為にロスリック王子は産み出されました。結果としてグウィンドリンが再現されてしまったわけですが、この仮説が正しく、これが一種の運命であるなら、グウィンドリンもまた、同様の理由で産み出されたのではないか、そんな可能性は如何でしょう。

グウィンドリンがグウィン、シース、ニトの血を引いているとするなら、考えてみると彼は王のソウルの大部分を引き継いでいることになります。そもそもグウィンドリンとは何だったのか。陰の太陽、暗月の神。何のために生まれてきたのか。何の作為も無い、愛の結果でしょうか。或いは政治的な駆け引き、或いはシースによる唯の実験だったのかもしれない。

そうでないのなら、後々のロスリック王子がそうであったように、グウィンドリンとは火継ぎに備えての薪として産み出されていたのかもしれません。いずれ火に還さなければならなかった王のソウルの宿命を、王たちを損なうことなく、陰の太陽へと代わりに背負わせるために。グウィンドリンが彼自身しか知らない復讐を抱いていたとするなら、それはロスリック王子と同じところに根ざしていたとは、十分に考えられることです。

ただまあ、そうはならなかったわけです。結果として火継ぎは、父である大王グウィンが果たしました。

なぜでしょうか。もちろん分かりません。ロスリック王子のように拒否したからかもしれませんし、王の器としてグウィンドリンは不完全だったのかもしれない。元が想像に想像を重ねた仮説ですし、手がかりもない。これ以上の深読みはやり過ぎかなと個人的には思います。

それとも、もっと単純な話だったのでしょうか。我が子を火にくべる親などいない、唯それだけの話だったのかもしれません。

暗月剣の誓約指輪 - 『1』
自らの醜くひ弱な姿を知るグウィンドリンは 姉グウィネヴィアの幻を作り 棄てられたアノール・ロンドを守っている
その偽りを破るものは、神の大敵に他ならない

大王の墓所、その空の棺の横にずっと佇み続けたグウィンドリン。少なくともその刃は、自らを作り出した神々へ向けたものではなかったようです。

以上となります。みなさんもつくってみてください、グウィンドリン。

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