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北の国から - 楔 -

はじめに

今まで『ダークソウル』と『ブラッドボーン』の記事は書いてきましたが、奇妙なことに『デモンズソウル』については全く筆が進みませんでした。単純に後続作品と比較して情報量が少ないというのもあるのですが、如何せん色々な意味で原点であるため、もはや当サイトで考察できる余地など存在しないのではないかという懸念があったんですね。しかしそのように断じてしまうのも手前勝手かと思い直しましたので、量は多く取れないと思いますが、ちょろちょろ書いていこうかなと考えた次第でございます。

ということで、じゃあ最初は「『デモンズソウル』ってどんな話だったの?」ってなことを書きます。基本的な世界観の部分ですね。恐らく大半の方にとっては「今更なに言い出したの?」というような内容になるかもしれませんが、ご容赦ください。

『デモンズソウル』ってどんな話?

では早速以下、本編の OP を引用。 web 上で読めるかなあと思ったのですが、観測範囲内では見つからなかったので。

12代オーラント王の治世。ソウルの業により栄えた、北の大国ボーレタリアは 突如として、尋常ならぬ色のない濃霧に飲み込まれた。以来、ボーレタリタとの連絡は途絶え その濃霧に踏み込んで戻る者は、誰もなかった。ただ、オーラントの双剣の一、ヴァルファクスだけが 裂け目から濃霧を逃れ、ボーレタリアの滅亡を伝えた。

楔の深奥に眠る巨大な獣。老王オーラントはその獣を目覚めさせ 色のない濃霧と、恐ろしいデーモンたちが生じた。デーモンたちは、人々からソウルを奪い 奪われた者たちは、ソウルに飢え 正気を失い、他の者たちを襲った。ヴァラルファクスもまた、ソウルに酔っていた。デーモンたちは、自らの内に奪ったソウルを溜め込んでいる それは、尋常のソウルとは比べ物にならず 人外の、無謬の力をもたらすだろう。

ボーレタリアと、デモンズソウルの伝説。多くの英雄が、その力に惹かれ、裂け目から呪われた地に入り込み そして、誰一人として戻らなかった。

もう一つの双剣ビヨール。沈黙の長ユルト。聖者ウルベイン。放浪者スキルヴィル。第六聖女アストラエアと騎士ガル・ヴィンランド。そして「拓くもの」賢者フレーキ。

色のない濃霧は、静かにボーレタリアから滲み出しつつあり 人々は、穏やかな滅びの予感に絶望していた。やがて濃霧が、世界のすべてを覆うだろう。そして、最後の希望がまた、裂け目からボーレタリアに入った。滅びを留めるか、あるいはデーモンの僕となるか……。

なんて面白そうなゲームなんだ。で、立て続けになってしまうのですが、公式サイトなどで確認できるプロローグを引用します。重複箇所も多いのですが、比較材料としてどうぞ。

北の国、ボーレタリアの王、オーラントは人跡地の限界、氷山脈の奥地で、巨大な楔の神殿を見出し、ソウルの業を手にした。ソウルとは、人に隠された、新たな力であるようだった。だが、ボーレタリアの繁栄は長くは続かなかった。老境に至ったオーラントは、更なる力を求め楔の深奥に入り込み そこに眠る古の獣を目覚めさせ、色の無い濃霧と、デーモンたちが生じた。

色の無い濃霧はボーレタリアを覆い、デーモンたちは人々からソウルを奪い、喰らった。ボーレタリアは、瞬く間に、ソウルに飢えた亡者だけが彷徨う亡国と成り果て 霧の避け目から、多くの英雄たちを飲み込み、そして、誰も戻らなかった。

濃霧は、静かにボーレタリアから滲み出しつつあり 既に北の地の大半が、濃霧の中に消失していた。人々は、緩やかな滅びの予感に絶望していた。やがて濃霧が、世界のすべてを覆うだろう。そんな中、最後の希望が 霧の裂け目からボーレタリアに入り込む……

なんて面白そうなゲームなんだ。 OP ムービーだけで把握に努めていた方にとって、楔の神殿が氷山地帯にあったという部分は初耳なのではないでしょうか。劇中にこの情報は出てきていないはず。……たぶん。ただ「北騎士の剣」「北のレガリア」という名からも伺えるように、ボーレタリア国が北部にあるというのは何となく伝わるようになっているのかなと。そしてボーレタリアの王様、オーラントは少なくとも二度に渡って楔の神殿へと踏み込んでいたようです。一度目で見出したソウルの業でボーレタリアは栄え、しかし更なる繁栄への渇望か、或いは年老いた自らの姿にやる気スイッチが押されてしまったのか、それともそれ以外の理由か、オーラント王は更なる深みへと踏み込んでいきます。それが古き獣を呼び覚まし、濃霧を発生させることになりました。

続きまして、要人の言葉を引用します。長文の引用ばかりで申し訳ありません。

はるか昔 私たちは、ソウルの業により、世界を統べていました。そして、飽くなき探求により古い獣を目覚めさせ それから生じた、色のない濃霧と、デーモンたちにより 世界は滅びの危機に瀕しました。わたしたちは、なんとか、古い獣をまどろみに導きました

ですが、その時には、多くのソウルが失われ 世界の大半は濃霧に飲まれ、世界は消失していました。私たちは、僅かに残った世界を繋ぎ留めるために 六つの要石を小人の長たちに託しました。

野心ある小国の王と 地下に潜る穴掘りたちの王と 知性ある象牙の塔の女王と さまよえる貧者たちの長と 死と嵐を祀る影人の司祭と 北の巨人たちに。

要石は、消失を免れた辺境の地面に根付きました。私たちは、まどろむ獣をこの楔に封じ、ソウルの業を禁忌とし、自らが要人として、拡散する世界を取り戻すための人柱となりました。今は、要人の大半が失われ、ただ私だけが残っています。

面白。要するに歴史は繰り返していた訳です。ソウルの業によって繁栄していた奴らが古い獣を目覚めさせてしまい、世界は濃霧に包まれたと。「世界の大半」と述べているので、規模は今回の比ではなかったのでしょう。そして要人たちはデーモンと戦い、今回と同じように獣への栄養源を断ち切ったのだと思われます。その後、三つのことが行われます。まず獣の封印。そして濃霧から逃れた僅かな世界を繋ぎとめること。そして消えてしまった世界を取り戻すこと。こうして舞台設定は整ったのでした。

はじまりの北方

解釈の幅が広い言い回しだと思うのですが、「消失を免れた辺境」というのが、本編の舞台となる「北」、中でも神殿が建てられた氷山脈、そして各々の長たちが治めていた領地になると思われます。そして濃霧の範囲にデーモンと滅びがもたらされているのなら、ゲーム中に要石から飛んでいける先の各エリアとボーレタリアは、全て「北」に存在していたということになるでしょう。ちなみに各要石の上部に植物のようなものが描かれていますが、まさしく「根付かせた」のだと思われます。

特に要石には「ボーレタリア」が、そして「北騎士の剣」のテキストには「ストーンファング」の名が出てくるので、ボーレタリアと坑道に関しては、同じ「北」でもさほど距離が離れておらず、また交流もあったであろうことが推察できます。「象牙の塔の国」ラトリアなどは、同じ北にあっても離れた場所にあったということなのでしょう。祭祀場なんかは島だし。

北のレガリア
古いボーレタリア王の証 この剣の影がソウルブランドであり、またデモンブランドである
ボーレタリア王家の伝承にも、その由来は多く語られないが 古い獣と共に、悪意により世界に残されたとされている

古い獣とともに現出した剣が、伝承と共にボーレタリアへと伝えられている。このことから、小人の長の一人である「野心ある小国の王」は幾代も前のボーレタリア王だと推察できます。この王をボーレタリア始祖だと仮定すると、オーラントが 12 代目の王らしいので、前回の古い獣の封印は凡そ 600 年前くらいの話なんだろうか、なんてことが想像できますね。またそうなると、オストラヴァ曰く、古き王ドランこそ「建国の英雄」とのことなので、「野心ある小国の王」とはドランのことだったのだ、ということまで理解が進みます。もっとも「小国」とボーレタリアは別の国かもしれないので、この封印期間はもっと長くなるかもしれませんし、短くなるかもしれません。

そしてオーラントは偶然か、はたまた伝承に導かれたのか、氷の山脈に分け入って楔の神殿を発見した訳です。重要なのはそれまで要人たちはソウルの業を禁忌としていたこと。つまりその時点までソウルやら魔法なんてものは、表向きにはおとぎ話の類として扱われていた可能性があります。なんせ 600 年(たぶん)。だからこそ、ソウルという独自技術によってボーレタリアは繁栄を許されたのではないでしょうか。

粗製ソウル史観

啓蒙者フレーキ

さて、ソウルの再発見を皮切りに神秘の探求が解禁される流れが生まれたようです。「銀の触媒」や「銀のコロネット」には魔術の名門と思わしきヨルメダールなる探求機関が仄めかされていますが、しかし彼らがボーレタリア以前からソウルを理解していたかというとちょっと怪しい。公式サイトのキャラクター紹介を引用します。

「(蒙を)拓くもの」として知られる、高名な魔術師。ソウルの業=魔法に精通し、これを学問体系としてまとめあげた。ヨルメダールの賢者はまた探求者でもあり、初老となってなお、単身ボーレタリアに入り込んでいる。かつては神職の高位にあったとも言われるが、詳細は不明。魔術的工芸品で知られるゲリの友。

賢者フレーキがソウル技術を構築したそうなので、ヨルメダールが探求機関となれたのは、そもそもその知識体系があったればこそでしょう。彼には高位聖職者としてのキャリアもあるようなので、たぶん彼が 30 才前後のタイミングでソウルの発見及びボーレタリアの繁栄が始まり、またフレーキは魔術師に転向したのだと思われます。ウルベイン曰く「魔術とともに奇跡も見出された」ようなので、当時信仰者であったフレーキは、二つの神秘の中に神の正体を見たのでしょうか。ともかくボーレタリアの繁栄も長くは続かなかったとあるので、この間にフレーキが体系化を完成させたと考えると、 10 - 20 年程度の出来事としましょうか。そして更なる奥義を求めて、賢者は単身ボーレタリアに入り込んだとします。この時点で 40 - 50 才くらい? 老境を迎えたというオーラントは 60 - 70 才くらいでしょうか。「ボーレタリアとデモンズソウルの伝説」などという言説が生まれるくらいですから、濃霧が発生してから劇中の「現在」に至るまで、数年から 10 年程度と考えると、フレーキは登場時御年 50 - 60 才くらいですかね。諸々の時系列が何となく理解できた気がします。「なんとなく」「気がします」とか言ってる時点でどんぶり勘定っぷりがヤバイですが、まあ何かの参考になればいいです。エンディングなどで覗くフレーキの表情はもっと若く見えますよね。それともソウルにはアンチエイジングの効果が?

(追記 : そういえばトマスさんは火防女を見て、「娘が生きていればあの子と同い年くらい」と言っていました。火防女がいくつに見えているかは定かではないですが、まあ十台後半からせいぜい二十代前半と言った感じでしょう。そのくらいの年齢の女性が数年で目に見えて変化するとも思えないので、「トマスの娘が火防女と同じくらいの年齢に到達するまで」、つまりやはりボーレタリアが霧に包まれてから 10 年程度経過したのではないかと考えるのが妥当と思われます)

あと関係ないんですが、フレーキが黄衣の翁を語る際のフレーズにいちいち喜んでしまう。「暗いソウル(darks souls)を、偏執と狂気で使役する」

秘匿者

しかし禁じられていたソウルの業が、再発見されるまで世界に影も形も存在しなかったかと言えば恐らくそれは無いです。「エペ・ラピエル」や「金仮面」にあるように、ソウルの業を奉じる「秘匿者」と呼ばれる者たちがいます。メフィストフェレスがその一人でした。暗殺依頼でおなじみのメフィストですが、その発言から、彼女はソウルの秘密を守るために、濃霧に入り込んだ者たちを消し去りたかったようです。そして彼女が「獣のタリスマン」を所持し、「吸魂」までも用いていたことを考えると、秘匿者という組織は、昨日今日ソウルを弄りだしたようなヨルメダールより、よほど神秘との付き合いが長いことが推測できます。

王の公使
公使の帽子
ボーレタリアにデーモンが蔓延る直前に現れ オーラント王に取り入った、太った公使たちは 薄笑いと共に民衆を虐げた

要するにオーラント王はブヨ虫に誑かされて、あのような凶行に及んだのでしょう。公使たちにとって、獣の覚醒とデーモンの現出は、益のある事変であった訳です。世界を滅ぼしたかったのか、濃霧とともに到来する多くのソウルを手にしたかったのか、或いは古き獣への信仰心からか。公使たちが秘匿者と繋がっている、なんて想像も可能ですね。『デモンズソウル』からはクトゥルフ神話へのオマージュが散見しますが、クトゥルフなどの邪神を崇める狂信者を意識して生み出されたのが、彼らなのかもしれません。

ユーリア

かわいい。白べた。ユーリアよう……。海外のデザインワークを参照するとちょっとイメージ変わりますが、それでもかわいい。公使がこの魔女の構造解析に励んでいた辺り、たぶんこの人も古いソウルの智慧を継承していた者の一人だったのではないでしょうか。フレーキも勘づいていた通り、魔術と奇跡は同郷の概念だったようですが、ユリアが扱う魔術がフレーキ曰く「奇跡に近い」ことを考えると、彼女自身その真理を把握していたのかと思われます。それはフレーキの拓いた技術体系に依らない業を行使していたことも意味します。ちなみに断罪者ミラルダにとっ捕まったらしいです。見てみたい、そのキャット・ファイト。

各エリアとデーモンについて

一つ抑えておきたいのが、各エリアが百鬼夜行みたいなことになっているのは、全部オーラントって奴の仕業なんだってことです。各地に古い智慧の残滓が息づいていた可能性は大いにありますが、少なくともデーモンは存在していなかったことでしょう。従って、デーモンにソウルを奪われ理性を無くした被害者も存在しなかったことになります。

ボーレタリア王城

飛竜もデーモンの一種だとすると、やはり獣の覚醒とともに産み落とされたことになります。また「塔の騎士」「つらぬきの騎士」は、大ボーレタリアにおける英雄たちをモデルに練り上げられたデーモンなので、本人がデーモン化したものではありません。ビヨールの慧眼よ。ちなみにボーレタリア最終ステージ(通称 : 城 ‐ 4)の冒頭で襲ってくる三人の黒霊。あいつらが「塔」や「つらぬき」のオリジナルだそうです(塔の騎士アルフレッド、つらぬきの騎士メタス、長弓のウーラン)。濃霧に飲まれ、まともではなくなってしまったのでしょう。騎士たちに救いなし。

ちなみにビヨールが冠する「双剣」の名ですが、オーラントお抱えの二大騎士みたいなニュアンスです。双剣使いのビヨールみたいに思っている方を偶にお見掛けするのですが、ちょっと違いますね。そして双剣のもう一振りたるヴァラルファクスは OP で登場していて、ボーレタリアの滅亡を濃霧の外に報告してくれました。その後の安否は不明ですが、彼も「ソウルに酔っていた」そうなので、再び濃霧の中に戻った可能性があります。ちなみに城 ‐ 1 の飛竜二体が横たわっている場所で「大力の指輪」が取れるんですが、これってオーラントが双剣に送ったものらしいです。ドラゴン前の焼け焦げた死体がビヨールでないとするなら……。

ストーンファング坑道

各所で鉱石を探っているような人型の mob を穴掘りというようですが、彼らにはかつて王がいたそうです。つまり坑道は一つの国だった。今や王政の名残はどこにも見られないので、坑道はボーレタリアの統治下にあるのでしょうか。ちなみにここに住む穴掘りたちや鍛冶職人たちは表皮が硬い鱗で覆われているのですが、竜信仰と何か関わりがあるのかもしれません。

ボーレタリアの飛竜がそうであったように、デーモンとはその土地に根付く伝承や想念を反映する形で誕生するようです。或いは原生デーモンが、それらのイメージを食べて大きくなるのでしょうか。ともかくこのステージの最奥に待つのは竜の神ですが、こいつも本物の竜ではありません。元々この地の先人は埋没した巨大な竜骨を信仰の対象としていたようで、また神に対処する術をバリスタという形で遺していました。そういった畏怖の念を拾い上げ、竜のデーモンが生まれたのです。ということは、古い時代には本物のドラゴン、少なくとも竜骨の持ち主が存在していたことを意味します。

ところでボーレタリアとストーンファングに交流があったことは上述しましたが、公使がいるのもこの 2 エリアだけなんですよね。これは両エリアの近しさを示すものかもしれません。ただ、実際に出現しないというだけで、後述のラトリアでライデルが幽閉された牢屋の鍵を持って行ってしまったのは公使らしいので、あいつら、他のエリアにも出入りはしていたのだと思います。濃霧が届く範囲で好き勝手やっていたみたいです。

塔のラトリア

時は移ろうもので、かつて世界を救う礎となった小人の長たちも、そして彼らが治めた土地もそのままの姿ではいられなかったようです。ストーンファングに王は無く、祭祀場に司祭の姿などなかった。腐れ谷は貧者の長が治めていたようですが、アストラエアが同じような位置に収まっていた辺り、長を無くした谷の民を不憫に思い自ら歩み出たという背景が想像できます。北の巨人たちに至っては現存しているかも怪しい。そんな長達の中にあって、今に至るまで系譜を受け継いでいるのは、ボーレタリアと塔のラトリアだけです。

かつて要石を託されたのが「知性ある象牙の塔の女王」なので、ラトリアという国は古き時代からそのままの形で存続されてきたことになります。代々女王が治めてきた国なのでしょうか。「女王」が長命の同一人物だったという可能性も無いではないですが、取り合えずは現実的に考えたいところ。さてそんなラトリア国ですが、一人のみすぼらしい老人を追放したことから全ては始まったのだそうです。断片的な情報からは、後に老人はデーモンを引き連れて戻り、以来ラトリアは変わり果ててしまったことが分かります。濃霧の発生によって、老人は力を得たのでしょう。以降象牙の塔は牢獄と化し、旧王家や貴族たちは軒並みムショ行き。あのフレーキでさえも老人の前に敗れ去り、牢にて朽ちていくのを待つばかりでした。

正気を失った囚人たちは教会にて、かつての女王に似た女神に救いを見出していたようですが、それは老人が作り出した偶像です。囚人たちの信仰心からソウルを吸い上げた老人は、塔の上層にて手製のデーモンを育てていたのでした。またガーゴイルが人のソウルを落とすこと、そして湧き出す蟲から人の名残が見受けられることから、人体実験の類も行っていたようです。老人が何を想っていたのか、今となっては分かりません。しかしどうやら老人は黄衣によって操られていたのであり、或いは初めから老人に意思などなかったのでしょうか。また偶像が女王を元ネタにした悪意あるパロディであること、そして最上層の壁に配置された絵画(恐らく女王でしょう)の顔が全て引き裂かれていたことを鑑みるに、二人の関係からは何とも芳醇なフレーバーが香ります。更に何らかの悪意が老人に付け入るという構図は、オーラント王のそれと似通っています。世界の深層からソウルを呼び覚まそうとする者たちは、いつでも老人のハートに付け込もうと準備を進めているのです。振り込め詐欺みたいな。

ちなみに「へるうううぷ」でお馴染みのライデルですが、またの名を「小オーラント」。つまりボーレタリア並びに老王所縁の人物ということに、なるかは断言できませんが、しかし「オーラントのようだ」と目された人物ではあったようです。どこに由来しているかはもちろん不明ですが、彼の冠する「辺境卿」という異名が、古き時代に獣の脅威から僅かに残ったという「北の辺境」に基づくと仮定すると、かつてオーラントが氷山を踏破し楔の神殿とソウルの業に見えたように、ライデルもまた人類未踏とされるような辺境各地を制覇して回った、というような背景が想像できます。彼が「燐光のポール」を奪ったという魔女とユーリアには何らかの関わりがあるのでしょうか。

???(通称 : 北の巨人の要石)

要石を託された長の一柱、「北の巨人たち」からの通称です。唯一砕けた要石にして、最早叶わぬ夢。身も蓋もない言い方をすれば、製作上の都合らしいです。以前はこの先が『ダークソウル』の世界なんじゃないかなんて思ってました。

しかし改めて考えると、濃霧が広がった範囲にデーモンが出現した訳で、そいつらを皆殺しにすることで古い獣へのソウル供給を絶てというのがゲームの趣旨だったはず。つまりデーモンが要石の先に残っていれば不味い訳だから、逆を言えばこの壊れた要石の先にはデーモンはいなかったということになるのでは。よかった、永遠の未攻略エリアなんて無かったんだ。最早諦めの境地というのもあるのですが、要石の中で一つだけ壊れて、しかも説明が無いというのは、今振り返れば心地よいフレーバーとして機能しているように思えます。

恐らくですが、竜と同じように、巨人などというファンタジー種族は滅び去ってしまったのかもしれません。その影響で、「根付かせた」という要石もまた朽ち果てたのでしょう。ですが「要石の欠片」は砕けた要石をネズミが齧り取ったものという説もあるので、それが本当だとすれば、気軽に神殿に帰ることができるのも要石が砕けてくれたおかげだと言えます。すごーい。

(追記 : NPC の通称アンバサ女さんは祖父の形見である要石の欠片で神殿に逃げ延びたらしいですが、入手経路はともかくとして、彼女のおじいさんがそれを手にした時、既に北の巨人の要石は砕けていた、ということにはならないでしょうか)

嵐の祭祀場

濃霧が現実と空想の境目を壊す、という意味では一番変わり果ててしまったところ言えるかもしれません。普通であれば死体は大人しく墓で眠り、審判者も伝承の中にしかいないはずでした。もちろん、エイが空を飛ぶなどもってのほかです。しかし古いソウルの時代などは、今より世界のあり様がおとぎ話に近いものだったと思うので、或いは濃霧に飲まれたことで、在りし日の姿を取り戻した場所とも言えるのかもしれません。

ここはあんまり書くことが思いつかない。強いて言うなら、後続作品で落下攻撃を体験してしまってから「嵐の審判者」戦に挑むと、「絶対こいつ落下致命取れるわぁー」っていうね、はい。

腐れ谷

デーモンとは人々のイメージを反映させて産み落とされるもの。しかしアストラエアに関して言えば、人間がデーモン化した存在です。人間はデーモンになり得る。これは『デモンズソウル』の中でも非常に重要な描写です。オーラント、黄衣の翁という二人の老人の結末に対する前振りであり、また尋常ならざるソウルをため込んできた主人公は、果たして人間と呼べるのかという問いかけにも繋がります。そしてアストラエアは確かにデーモンではありましたが、その中にある救済の意志は揺らいでいませんでした。人間とは、デーモンとは何なのか。

乙女アストラエアはガル・ヴィンランドを連れて救済の旅に出て、最初期に向かった場所がここだったそうです。始まりに選んだ場所が終わりの地になった訳ですね。「さまよえる貧者たちの長」についてはやはり不明ですが、アストラエアがそれを受け継いだようにも思えます。ちなみに不潔の巨像がいるところは、要石のテキスト曰く腐れ木によって作られた神殿だそうで、あまりに神殿感が無さ過ぎてテキストを読むたびにびっくりします。

パッチ曰く「身内の恥を注ぐために多くの騎士たちがここへ向かった」ようですが、つまり第六聖女ともあろうお方が臭ぇところで臭ぇ奴らの教祖さま気取ってるらしいぞっていう噂が流布されているようです。人は他人の醜聞を無視できるようには出来ていないのでしょう。しかし腐れ谷というところはそこまで汚らしいところだったでしょうか。

いや、まあ間違いなく汚いんですけどね。毒や疫病塗れだし。この世の「汚らしいとされるもの」全てがここに流れ着く、そんな場所です。しかし不要なもの、汚物のみで構成された場所というのは、ある意味で静謐さを帯びるようで、そのことは劇中でもセレン・ヴィンランドが触れれています。「…この地は、不思議なところですね。これほどに、不浄に満ちているのに 穢れたものではないように思えるのです」

使命を継ぐ者

基本的な部分のみ、と言っておきながら長々と失礼致しました。かくして我々はデーモンを殺しつくし、腹を空かせた獣の元へとたどり着きましたが、そこで待ち受けていたものは本物のボーレタリア王、「なりそこないのオーラント」でした。老王は何を目指してなりそこなったのでしょうか。「赤い瞳の石」にはこう書かれています。

古い獣に飲み込まれ、デーモンとなったものの証

獣の内部にいたオーラントはデーモンになろうとしていた、というのは何となく分かるのですが、ではデーモンになって何を実現したかったのか。オーラント自身、「世界は悲劇だ」「ソウルを奪いつくして終わらせる」と言っているので、王として歪んだ義憤に囚われた結果、此度の凶行に及んだのだということが推測できます。もっとも、それもどこまで正気の発言だったのか分かったものではないですが。王者の哀しみを公使に利用されたのか、理解した上で王がブヨ虫どもを利用していたのか、今となっては分かりません。確かなのは、黄衣の翁がそうであったように、弱く老いさらばえた人間というのは、デーモンにすらなれないのだという結末だけです。

さて、最後のデーモンも倒しました。後は古き獣をまどろみへ導くのみ。火防女は赤子をなだめるように獣に触れ、そして主人公の使命は終わりを告げたはずでした。しかし問題が全て解決した訳ではありません。

かくて古い獣は、娘と共に霧の海で再びのまどろみに至り ボーレタリアから、デーモンと、ソウルの業が失われた。だが、奪われたソウルは既に戻らず 拡散する世界は、新しい「要人」を必要としていた。人ならぬ力を得た戦士を。

旅の初めに示された通り、世界とは既に一度終焉の憂き目を迎え、あいまいな形へと拡散してしまいました。それを繋ぎとめるために、唯一残った確かな土地に要石を設置し、そして要人が世界を繋ぎとめている。しかし要人も永遠に生きる訳ではない。ということで、有資格者たる主人公は、新たな要人として役目を継いだのでした。めでたしめでたし。

なお、これは二週目以降に限った話ではないですが、オンラインに繋いだ状態では神殿最上階への道が開かれていて、向かった先では、自分を含む、オンライン上の他のプレイヤーの情報が開示されます。そこは殿堂だそうです。つまり、同じことが何度も繰り返されてきたんです。滅びも、救済も、全てはありふれた出来事でしかなかった。或いはあの要人は前回の……というのは無理がありますが、そういった「繰り返し」を想起させるシステムだと思います。このことから、突き放されたような失望を覚えるかもしれません。しかし得てして世界とは、そういう「ありふれた英雄」によって繋ぎ止められてきたのであり、それ故に、誰もが英雄になれるというメッセージなのではないでしょうか。そして、それを悲劇でしかないと吐き捨てた者の末路が、きっとオーラントなのです。

うるせーバカ

いえ、デーモンはまだ残っていましたね。火防女は獣とともに長き眠りに入るつもりのようですが、そうはいきません。これで戻ったとしても、要人として神殿に縛り付けられる末路が待っています。辛く苦しい旅の果て、そんな馬鹿なことがあってたまりますか。という訳で正真正銘最後のデーモンである火防女に御退場頂き、デーモンを殺す者は新たなるデーモンとなるのでした。おしまい。歪んでいたとはいえ、世界の行く末を憂いた老王はなりそこない、しかし純粋なソウルへの渇望者をこそ獣はデーモンへと導いたのです。世界が悲劇でしかないのなら、せめて悲劇の当事者となろう、ホトトギス。

かくて古い獣は、新しい、強いデーモンを得た。やがて世界は、霧の中に溶け去るだろう。ソウルを求めよ!

ところでこちらの結末を迎えた後、エンドロールでは四人の登場人物が現れます。火防女、オストラヴァ、なりそこないのオーラント、そしてフレーキです。なんでこの四人かというと、たぶん「ストーリー上の最重要人物」としてのピックアップなのかもしれません。だったら要人が入っててもおかしくはないですが、あいつ変な帽子被ってるし、まあいいでしょう。変な帽子被ってるし。ただちょっと気になるのが、フレーキだけは獣の封印に否定的な態度をとっていたことです。探求者として、あってはならない損失だと考えたのでしょう。案外、こちらのエンディングの後も彼とは仲良くやっていけるかもしれません。終わっていく世界の中、かつて人であったデーモンたちが繋ぐ友誼。そういう意味のエンドロールだったら面白いですね。『デモンズソウル』とは、老人が悪魔によって魅入られる話でした。フレーキだけは、違う結末を迎えられるのでしょうか。

おわりに

冒頭で「最初は世界観について書きます」とか言いましたが、たぶん続きを書くことは無いですね。大体書ききってしまった感があります。「誠」と「サツキ」の元ネタはスタッフの名前、とかそういう小ネタくらいです。なので次回『デモンズ』について書くとしたら、恐らく単体としての記事にはならないと思います。ではその時に、また。

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