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火と楔と血の話 04

はじめに

間が空いてしまいましたが前回の続きです。この記事は『デモンズソウル』『ダークソウル』『ブラッドボーン』は全て同じ世界の物語である、という仮定に基づいた児戯幻想の類です。必然、該当作品のネタバレを扱いますのでご了承ください。今回は人間性が上位者を産むプロセスについて。

到底理解などできぬこと

上位者。獣を狩っていたはずの我々にちょくちょく存在を匂わせたかと思えば、突如現れて黒幕面し始める奇妙な生命体。奴らの正体は何なのでしょうか。また幾度と火を継いだ王たる我々を差し置いて、ポッと出の海産物風情が誰の許可を取って神様を気取っているのか。そして、本当にポッと出なのか。火の陰り、いやもっと以前から我々は、奴らを視界の隅に捉えていたのかもしれません。今回はそのような戯言にお付き合いください。

(追記 : 今回そこまで話が進みませんでした……。)

さて上位者についてですが、とにかく謎多く難解極まりない軟体です。なにせ劇中登場する人物の口から「上位者」という言葉が発せられたことは一度も無いのです。つまり誰も教えちゃくれず、断片的なフレーバーテキストから考察するしかない。ゴースやロマ、アメンドーズなど、個体名こそ口にしてくれますが、それらが何なのかという部分に関しては特に言及無し。結局上位者って何なんだ。神様なのか、宇宙生物なのか。『ブラッドボーン』という枠組みの中で出来る限りあがいた結果こんな記事を書いてみましたが、せっかく世界観統合記事なんぞに手を出しているので、どうせならもっと無茶をやってみることにします。

「上位者」?

ところで我々プレイヤーが最初に「上位者」なる存在を意識するのはいつだったでしょうか。ロード画面のランダム・テキストやトロフィーの記述は除外するものとして、恐らくオドン教会で入手できる「姿なきオドン」のテキストか、同時期に入手できる隠し街ヤハグルの「月」、またはヘムウィックの「秘文字の工房道具」辺りが初出と思われます。

姿なきオドン
上位者オドンは、姿なき故に声のみの存在であり その象徴となる秘文字は、水銀弾の上限を高める
それは悪夢に住まう上位者の声を表音したもの
秘文字の工房道具
ビルゲンワースの学徒、筆記者カレルは 人ならぬ上位者の音を記録し、それをカレル文字と称した

つまり割と初期の段階からプレイヤーにその存在を仄めかしてはいた訳です。そして悪夢の辺境を除き、ただ本編のみで語るなら、上位者の存在はビルゲンワースから一気に開示されます(「上位者の叡智」や「精霊の抜け殻」など)。エミーリアを倒した時点で「獣狩り編」は終わりを告げたので、終幕に向けて必要な情報が解禁され始めたのですね。

上位者の叡智
上位者と呼ばれる諸々の存在
神に近い彼らの、失われた叡智の断片
真珠ナメクジ
地下遺跡の各所に巣食う、奇妙な小生物たち 特にナメクジは、見捨てられた上位者の痕跡である
精霊の抜け殻
上位者の先触れとして知られる軟体動物の抜け殻
軟体生物は多種存在し、医療教会は総じてこれを精霊と呼ぶ
眷属の死血
上位者に連なる、人ならぬ眷属たちの死血

しかし変わらず、具体的に誰がどんな理由で上位者なる存在なのかという点には触れられません。ロマが上位者だと知らないプレイヤーもいるのではないでしょうか。だって記述はトロフィーにしか無いのですから。それどころかアイテム・テキストなどをいちいち確認しないプレイヤーであれば、下手をすればその存在を知らないままゲームを終える、なんてこともあり得るでしょう。上位者とは何か。ミコラーシュの祈りから、どうやら神のように祈りを捧げる対象であり、獣化をもたらした原因であるかもしれず、そして「瞳」なるものを脳に持っている、ということを断片的に知り得るかもしれません。しかしその程度です。「上位者が何か」という命題について、それらが神なのか宇宙生命体なのか、何も分からないまま物語は終焉を迎えます。上位者、お前たちは一体……。

ですが、きっとそれでいいのです。こうだと断言できるような正解があっては、本作が持つ素晴らしいゴシックかつコズミックな雰囲気が薄れてしまうことでしょう。不明なことは不明なまま、宇宙の深みへと想像力を遊ばせ、理解不能の叡智に弄ばれる悦楽。考察など無粋。『ブラッドボーン』とは、つまりまったくそれでよいのです。

ということで建前はここまで。無粋な話をしましょうか。

上位者になろう

上位者とは何のことはない、特別な寄生虫に適合した「生物」です。医療教会は虫そのものには気づいていなかったかもしれませんが、上位者と言えど同じ血の通った生物だと信じたからこそ拝領に乗り出します。人間たちの大いなる挑戦が始まる――。

ゴースの寄生虫
人に宿るものではない

だめでした。挙句がゴースの血に穢された実験棟です。しかしこれこそが要点となります。裏を返すならば、この虫を身に宿すか否かこそが人と上位者の境界であり、人々が追い求める「瞳」とは、つまりこの「虫」への適正に関わるものなのです。

「虫」については過去の『ブラッドボーン』個別記事で散々書いてきましたが、実のところそれらは全て「人間性≒おぞみ」に置き換えられるように書いてきた、つもりです。読み返してくれと言っている訳ではなく、深海の時代の淀みは人間性を根源とする怪異であり、上位者もまたその一種にして最たるものであるという考えを改めてお伝えしたいのですね。ですが言葉にしてしまえば簡単な気もするのですが、立ち返ってみると不自然な点も目立ちます。「ゴースの寄生虫」、これも元は人間性(人の澱み)であるはずですが、人に宿らないと明言されています。一方で人に宿り獣化させる要因もまた「虫(人間性)」のはずです。根源を同じとし、そして元々人の中に存在していたものでありながら、この差異はどうしたことでしょうか。

そして「瞳」。高次元思索者が脳に抱くという「それ」は、ある種の人間性(虫)が上位者にのみ宿ることと無関係ではないでしょう。「虫」がかつて人間性という形態を持っていたのなら、「瞳」なる概念もまた、かつて不死であった我々の知る由のある「何か」なのでしょうか。

謎は深まり、それも多岐に渡ります。しかし大きく分けるならば「虫」と「瞳」、この二つこそ肝要なのでしょう。考えていきます。

「瞳」が有する女性性

以前書きました(多分)が、実は「へその緒」という例外を除き、人が上位者になる例は女性に限定されます。まず実験棟で脳液を集めるイベントがありますが、頭だけとなり脳液を生成した患者は皆女性です。かつ頭だけで襲い掛かってくる MOB の声が女性のみであることからも、「女性性」というものはそれだけで特別な資質となり得ることが分かってきます。加えて脳液収集イベントは、へその緒収集イベントのなぞりです。脳液という「瞳に至る最初の蠢き」を一か所に集めることで苗床を得るのは、へその緒を一人が複数得ることで脳に瞳を得る現象のなぞりなのですね。そして赤子のみがへその緒をドロップすることと、脳液を女性のみが宿していたことからは、「子を成す力」と「瞳」の間に関わりがあることを推測できます。漁村では瞳に似た卵から精霊が孵っていましたが、こうなると「瞳」とは「卵(卵子)」を暗示していたのだろうと考えてしまいます。

「マリア様、私はコマドリ。ゆるゆると、私卵になるのかしら?」

この理屈から行くと、元人間であったらしいロマは(それだけではないと思いますが)「女性だったから」上位者になれたことになります。ミコラーシュは自身の祈りが届かないことを嘆いていましたが、それもそのはず。「男には無理」なんです。かわいそう。

この仮説を補強するヒントはまだあって、エーブリエタースの「見捨てられた上位者」というフレーズにそれが当てはまります。含意はともかくこの言葉、「忘れられた異常者」との対比になってるのではないでしょうか。「じょういしゃ」と「いじょうしゃ」は簡単なアナグラムになっていて、要するに紙一重の存在だと言いたいのでしょう。神秘に触れ、方や上位者へと至った者、方や異常者として忘れられた者。二人の命運を分けたのは、内に「卵(瞳)」を所持しているか否か、即ち「性別」だったのではないでしょうか。

といったこともあり、どうも女性というのは先天的に「虫」に対してある種の適正を有するようです。ヤーナムもカインハーストも、蔓延する獣の病の奥には共通して女王が座しています。女王の血が獣を産むわけですが、女王が獣になることはどうやらありません。そして実験棟では特定の女性患者だけが、出来損ないとはいえ瞳を宿しました。この女性性という資質に関してはまだ語れる部分があるのですが、ひとまずは後回しにして、上記の仮説を踏まえた上で見えてくる「虫」の性質について考えてみましょう。

「虫」が有する男性性

「瞳」が「卵(卵子)」としての性質を持つ。この仮説によって起き上がってくるのが、「虫」が「精子」のメタファーであるというものです。上位者との血の交わりによって女性が子を成すという事実を基点として、更には血の穢れのアイコンが見た目そのままである点からも、ちょっと説得力があるんじゃないでしょうか。

そして虫とは元々ダークソウルの欠片、つまり人間性である訳ですが、実のところ闇のソウルには初めから「精」としての暗示が与えられていました。思い出して欲しいのが『ダークソウル 2』のさる闇術です。アイコンを確認して頂きたいのですが、「ソウルの共鳴」「ソウルの大きな共鳴」「絶頂」は、それぞれ「血の穢れ」と同じく精子を思わせるビジュアルになっています。「絶頂」に至ってはそのまんま。そんな人間性は初代『ダークソウル』の蜘蛛姫に捧げることが可能だった訳ですが、結果として彼女は「卵」を産み落とし、そして卵の中で成熟した人間性は、蛆虫として新たな生を結びます。「受精」です。

火防女の魂(混沌の娘)
あのたまごはすべて、人間性の揺り篭なのだ

人間性のテキストに「黒い精」とあったことからも、そのような意味は最初から匂わされていた気がします。闇は生命を産むのです。人間性を砕けば HP が全快し、人喰いによってネズミや豚は肉体を肥大化させます。そしてその性質はイザリスの魔女が生んだ炎と交わったのでしょう、混沌はデーモンの苗床となりました。

更に人間性は時に植物の種子ともなり、「呪腹の大樹」周辺や絵画の底、最初の火の炉、輪の都など、多くの不死が散っていった場所、或いは深淵に近い場所などには鮮やかに花々が芽吹いています。後世死血より芽吹く墓所カビや死血花、そして星輪花や星輪樹などはその一端でしょう。原初、灰の時代。最初の火が生じた後に闇こそが最初の生命を産み落としたように、そも闇とは生命の種子であったのです。それが人間性と砕け、植物となり、果ては虫と成り果てた後も、その本質自体が変わることはないのでした。

ソウルの大澱
永い間、深みに沈み溜まった 暗いソウルの大澱を放つ魔術
深みから這い出る湿り人たちには 時に大澱が憑依しているという
それはとても、人に似ている

ならば赤子の上位者とは、正しく闇の結実である訳です。「ゴースの遺子」とは文字通り彼女の遺子であることを示す名称ですが、同時に「遺(伝)子」、血の結晶であることを示しているのでしょう。転じてゴースの遺子とは、ゴースの遺志(ソウル)の先に成る存在だからこそ、人間性の結晶たる彼は人間そのものの姿を取った訳です。不死を養分として育ち狂った呪腹の大樹から、巨大な亡者の腕が生えたように、人の澱みから育った生命は最終的に人に似るのですね。

そうした「遺(伝)子」が「虫(精子)」を遺したというのは、なかなかストレートなヒントであるように思えてなりません。言葉遊びの羅列になってしまい恐縮ですが、こんなことを考えながらゲームをプレイしていると、遺子撃破後にゴースの遺体から立ち上る黒い精は、やはり人間性そのものに見えてしまうのでした。

では再確認します。なぜ女性は「虫」に対して適性を示すのか。簡単な話ですね。精によって子を宿すのが、女性のみ持ち得る能力だからです。どうやら女性とは、女性である時点で上位者に近い。「虫」が「精」であるなら、「瞳」は「卵」。「虫」と「瞳」は一対の概念であることが分かってきました。

補足 : 腐った人間性

人間性が「虫」になるのは、「火に惹かれる」人間の本質が反映された結果なのだと思います。ですがより貪欲に生命を食い荒らさん為に本当に蟲に成り果て、しかしそれ故に火を弱点としてしまったというのは何とも皮肉な話。そんな虫さんたちではありますが、人間性から芽吹く植物と同じく、環境によって多様に形態を枝分かれさせることが確認されています。代表的なものが深みに蔓延る黒い蟲。これはエルドリッチとともに聖堂へもたらされた「おぞみ」を指すのでしょうか。罪の都には大量のゲジが、そして輪の都の深淵の沼からは白面の虫が、後世には大量の血痕からノミが湧きました。

そんな数多の変容の内、アリアンデル絵画世界は興味深い。絵画世界は人血によって描かれるので、当然腐敗を免れません。そして腐肉に蠅が湧くことが必然であるなら、当然、腐敗した人血からは人に似た蠅が孵化するのでしょう。絵画の住人たちはこの現象を指して「腐れ」と呼んでいました。なお、篝火「鴉村」の近くにある小屋の中は蠅の卵に塗れた酷い状態になっているのですが、その中で蠅人が漁る死体からは闇の貴石が取得できます。腐れと闇の関わりを示すフレーバーです。

また「腐れ」と言えば『ダークソウル 2』のボスを思い出します。あれは聖壁の都サルヴァ、深い底の王が最初の死者ニトのソウルに憑りつかれることで生まれた怪異です。腐れとニトがともに死者の集合体であり、似た攻撃を繰り出すのはその証左である訳ですが、面白いのは、白骨から形作られたニトが血肉を得てしまったことで、かつて有していなかった闇属性を獲得した点でしょう。人間の本質は血肉にこそ宿り、「腐れ」ながらも闇を孕む。絵画世界の末路はこの時から描かれ始めていたのかもしれません。

虫の名は。

ということで、人間性は様々なものに変態します。ウーラシール市民が深淵によって暴走させられたように、人間性という闇は「より暗い闇」によって、よりおぞましいものへ形を変えるのですが、むしろこの性質に引きずられる形で、人間という器は様々な怪物へと変態してしまうと言った方が正確かもしれません。この人間だけが持つ拡張性、伸縮性、「際限の無さ」をこそ神は恐れ、古く「枷」をはめたようなのですが、この枷が意外と緩めに設計されていて、かねてより人間という奴はしょっちゅう怪物と化してきました。獣化などはその一端でしかないのです。

フォドリック
「神の枷は、存外と脆いものなのじゃよ…」

そうした上でやはり気になるのは、元は同じ人間性であろうというのに、「人に宿る虫」と「上位者にしか宿らない虫」の差異はどこで生まれたのかという点です。そして常々疑問でした。なぜある種の「虫」は蛆の形態に終始しているのか。蜘蛛姫の卵の中身から始まり、深みの聖堂の蛆人(と、それが吐き出す蛆虫)、更にローランの銀獣に寄生しているのも蛆虫ですし、遂に獣血の主からはでかい蛆虫が顔を覗かせました。でかい蛆虫と言えば、デーモン遺跡にも湧いていましたね。両者は恐らく近似の、或いは同じ種なのでしょう。変な話ではないですか。なぜ奴らは成虫にならず、蛆のまま大きくなるんでしょう。「成虫にならない(なれない)」という描写を意図して行っているのだとすれば、どのような意味が込められているのでしょうか。

「芽殖孤虫」という寄生虫が現実に存在します。簡単に説明すると、幼虫のままヒトの中で増殖し続ける生物です。寄生虫という奴は通常、宿主を死に至らしめることはないそうです。宿主あっての寄生ですからね。しかしそれは「一生こいつに憑いていく」と決めた対象(終宿主)に対しての性質であり、そこに辿り着くまでの仮宿(中間宿主)に対しては、その限りではありません。芽殖孤虫にとって人間は中間宿主であるため成虫になれず、その為に人中で幼虫のまま増え続け、やがて食い潰してしまうのです。これは芽殖孤虫にとっての終宿主が他にいることを意味するようなのですが、肝心の終宿主が何なのかは明らかになっておらず、言い換えれば芽殖孤虫が成虫となった姿もまた不明だとされています。

人間性から孵化したおぞみたちは、この芽殖孤虫がモデルなのではないかと考えました。感染経路も不透明な、「いつまでも蛆(幼虫)のまま」害を成すおぞましい生き物。人に宿る「虫」が蛆のまま肥大化するのは、これらが寄生する人間や獣が、この蛆虫どもにとっての中間宿主に過ぎないからであり、即ち「虫」は上位者という終宿主の中でのみ成虫に至るのではないか、という仮説をここに提言します。

ここでゴースの寄生虫を取り上げます。ゴースという存在は、果たしてこの寄生虫の影響で上位者になったのでしょうか。恐らく、違います。遡ってゴースは元人間、それも血の女王(或いはその系譜)だった可能性があります。なぜなら赤子の上位者を孕む特別な血統こそが、彼女たちを上位者へと押し上げるからです。そしてそれ故に「女王ゴース」はかつてヤーナムやアリアンナのように上位者に見初められ赤子を孕みます……という仮定を設けた上で人間の上位者化順路を想像してみましょう。

まず特別な血を持った女性が赤子を授かります。偽ヨセフカが分かりやすく、彼女は受胎の影響で脳に瞳を抱きかけていました。なぜなら「3 本目のへその緒」が混血であるが故に人に瞳を授けるのなら、混血児そのものを胎に宿す母親に影響が無いとは考えにくい。その後赤子を孕んだ特別な女性は、女王ヤーナムのように赤子の上位者の力を我が物として行使し、君臨するのでしょう。しかし進化はそこで終わらず、その後母体は大いなる精霊の苗床と成り果て、そうして母なるゴースに至ったのではないでしょうか。

この進化図が正しいとして、さてどこに「ゴースの寄生虫」の介在する余地があったでしょう。進化の要は女性たちと結びついた上位者の血(虫)であり、赤子の血(虫)なのです。いったい、いつどこでゴースの寄生虫は生まれたのか。

こういうことなのではないでしょうか。女王ゴースが宿した特別な血(に宿る人間性)は、女王(中間宿主)が赤子によって上位者(終宿主)へ変態を遂げることで、ともに「虫」は成虫へ変態した、というのは如何でしょうか。ゴースの寄生虫は、上位者ゴースとともに生まれた訳です。それならば確かにゴースの、上位者の「虫」が人間に宿るはずもありません。成虫へと変態を遂げた寄生虫にとって、もはや中間宿主に用など無いのですから。

以前、上位者の秘密は寄生虫であり、その虫から刺激を受けることで上位者は力を得ていると述べました。その仮説自体は未だ正しいと考えています。しかしながらこの奇妙な寄生虫もまた、宿主の進化に合わせて成虫へと変態したのです。だからゴースの寄生虫というのは、正しく「ゴースの」寄生虫だったのですね。ゴースだけが持つ、ゴースが生んだ寄生虫。真相だと思っていた事柄には、まだ深みがあったのです。

生きているヒモ
しかし、それでもやはり上位者であり、遺物を残す。
特に生きたものは、真に貴重である

もちろんこれも寄生虫。「メンシスの脳みその」寄生虫。

特別な女性が上位者の血と交わり赤子(より深い闇)を宿すことによって、肉体と血(虫)が変態する。以上、母なる上位者誕生及び寄生虫に関する考察でした。

しかし奇妙な話です。妊娠することで母親は体質が変わるなどと良く言いますが、これは行き過ぎですよね。「虫(精子)」と「瞳(卵子)」が赤子として結実するための因子だとして、進化を許されているのが女性に限定されるというのならば、まさか母なる上位者とは、ただ赤子を成すための副産物でしかないというのでしょうか。「全ての上位者が失い、また求めている」赤子とは、「月の魔物」とは一体なんなのでしょうか。

眷属になろうよ

ロマやエーブリエタース、星界からの使者(大)は眷属。じゃあ眷属って何なのって話です。わざわざ「眷属」という形で差別化されている理由を考えてみます。言葉通り捉えていいのなら、眷属上位者とは「元になる上位者の血」があって、その影響で上位者へと進化を遂げた者たちということになります。ロマがゴースの眷属だと言うなら、ゴースの血によって白痴の蜘蛛は生まれたのでしょう。もしかすれば実験棟に所縁のある人物だったのかもしれませんね。そして「輝ける星の眷属」たち、エーブリエタースや星界からの使者もまた、「親」となる上位者の影響で進化したのだと思われます。

……で、おかしな話をしている訳です。上位者が宿す寄生虫は成虫であり、それ故に人間(中間宿主)に宿ることはない、という話をした矢先に、上位者の血によって人間が上位者になったなどと言っている。しかし人間に宿るものではない「虫」が人間に宿った事例を我々は知っています。

3 本目のへその緒(アリアンナの赤子)
穢れた血が、神秘的な交わりをもたらしたのだろう

特別な血を有する人間のみが上位者の「虫」を受け入れることを許され、宿した赤子の影響によって上位者へと進化したという仮説が正しいのであれば、ロマやエーブリエタースも同じなのでしょうか。眷属を産んだゴースも何者かの眷属だった……確認する術は無いのでこれでも構わないと思うのですが、個人的には NO と考えたいところ。気になる描写が 3 つあるんです。

  1. 偽ヨセフカとアリアンナ
  2. アンナリーゼと血の穢れ
  3. へその緒と脳液

一つ目。偽ヨセフカとアリアンナは共にカインハーストの血を継いでいます。故に上位者に見初められて赤子を孕んだのですが、彼女たちの末路は似ているようで異なります。

「私、ついにここまできたの、見えてるのよ… やっぱり私は、私だけは違う。獣じゃないのよ だから…ああ、気持ち悪いの…選ばれてるの… 分かる? 頭の中で蠢いてるの…」

いやー、分かんないっす。しかしへその緒を落とした事から偽ヨセフカもまた赤子を宿していたと見ましょう。更には脳の中に瞳が生成されていた、つまり上位者への正当な進化が始まっていたと仮定します。対して娼婦アリアンナは、こちらから何をした訳でもないのに、赤子は母体から離れてしまいました。明らかな早産です。上述の推測と合わせるなら、母体が進化するためには胎内に赤子を納めておく必要があるのだと考えます。なぜ、アリアンナはそう出来なかったのか。同じ血統でありながら、偽ヨセフカにあったものがアリアンナには欠けていた。当サイトではこれを「啓蒙」であると仮定します。血を分けた同郷の娘二人が、聖歌隊のエリートと娼婦に分かれたというのは、ある種の教養(と呼ぶにはおぞましいですが)の差をはっきりと示すための描写なのではないかと思うのです。

二つ目。血の女王アンナリーゼは「血の穢れ」を求めていました。意外と知られていないですが、血の穢れは誓約アイテムとしてだけではなく、実は使用することができます。効果は「啓蒙を得る」。おそらくアンナリーゼは啓蒙を欲していたのでしょう。なぜかと言えば、これは上述と繋がります。ただ赤子を宿すだけならば血のみで十分ですが、それを固着させ上位者へ進化するためには啓蒙が必要なのです。赤子の上位者を得ることで、血に宿す人間性(穢れ)は成虫となり、母体もまた上位者となる。しかしそこには「多量の啓蒙が必要である」という但し書きがつくようです。

三つ目。実験棟で脳液という「なりかけの瞳」を生成したのは全て女性で、アデラインがそうであったことから、或いは全員が「血の聖女」に連なる者たちだったのかもしれません。聖女たちのように「特別な血を持つ女性」が「上位者の血」と交わることで脳液は生成される。前述した通り脳液収集イベントは「へその緒」収集イベントのなぞりになっており、それらを全て取り込んだアデラインが「苗床」の啓示を受けたこともまた、狩人がへその緒によって「瞳」を得たことの「なぞり」になっています。へその緒と脳液の対比。これはそのまま正規の(?)上位者と眷属に分類される上位者との対比に繋がるのではないでしょうか。

つまり眷属上位者とは不完全な進化でしかないのでしょう。「特別な血」を持つが、カインハーストなどと比べれば劣る、または人の手の入った血であるが故に「赤子」を宿すに至らなかった女性たちが進化した姿なのではないか、という推測が成り立ちます。そしてもう一つ。前述の推測だけでは実験棟の脳液生成者たちが眷属上位者になれなかった説明がつきません。つまり(恐らく)同じゴースの血を受け入れた者でありながら、被験者たちには無く、しかしロマを満たしていたもの。そして偽ヨセフカにあって、アリアンナが持たなかったもの、「啓蒙の量」へと注目すべきなのではないでしょうか。

整理するなら、「(人工の)特別な血」を宿し、上位者の血と交わりはしたものの赤子を宿すには至らず、しかし「多量の啓蒙」が刺激を受けることで瞳を得、上位者への進化を成功させた女性たち。それこそがロマやエーブリエタースなどの「眷属上位者」の正体なのです。

ちなみにですが、ロマやエーブリエタース、星界からの使者(大)は、自らのコピーを残すかのように小型のクリーチャーを出現させていました。さながら「赤子の上位者」を宿すこと叶わなかった反動であるかのように。例え瞳を得ようとも所詮は眷属止まり。血質で劣る女性たちが完全な上位者へ至ることはありません。残酷な物言いですが眷属上位者とは、赤子を抱くことが出来なかった「母のなりそこない」なのでした。

さて雑に類推を書き連ねましたが、仮説を重ねる上で肝心な部分を無視しました。なぜ啓蒙の有無が進化の可不可を分けるのか。ともすれば狂人の知恵、或いは上位者の叡智。「啓蒙とは何なのか」

補足 : 永遠の従者

「瞳」と「卵子」が相関している以上、一歩劣る(眷属)とはいえ上位者になれるのはやはり女性に限ります。では一応の変態、人間からの脱却を許された男性はどうなるのかというと、「ただの眷属」になるのだと思います。代表的なものが脳喰らいで、その他の眷属はビルゲンワースで確認できます。男は人間を止めて尚も上位者(女性)の為にせっせと働かされる訳です。男はつらいよ。いえ、もしかしたらそれこそ男のあるべき姿だというのでしょうか。

火の時代、我々は混沌の従者として蜘蛛姫に人間性を捧げました。そして時は流れ深海の時代、我々は飽きもせず血の狩人としてアンナリーゼ女王へと「穢れ」を捧げました。穢れが元を辿れば人間性である以上、我々は悠久の時を経て同じことを繰り返している訳です。しかも意中の女性は両者ともどうやら子供を欲しがっており、そんな彼女たちの所へせっせと運んでいたものの本質が「精」だというのですから、男の役割というやつは神話の時代から現代に至るまで変わっていないのかもしれません。

「啓くもの」上位者

まず最初に踏まえておいて欲しいことがあります。ローレンスとウィレームが重ねた警句、「かねて血を恐れたまえ」。その直前にウィレームは「知らぬ者よ」と口にするのですが、この部分、英語では「Our eyes are yet to open(我らの瞳はまだ開いていない)」となっています。つまり「瞳に該当するもの」を既に彼らは持っている。簡単な話、これが啓蒙です。ゲーム画面右上にある啓蒙のアイコンが瞳の形に描かれている理由はこれです。少なくとも「瞳」と「啓蒙」の間には深い関係があると理解していいと思います。「蒙(盲)を啓(開)く」故に啓蒙。しかし「知らぬ者」にとって、啓蒙とはそれのみでは「閉じた瞳」に過ぎず、盲の中それを開くことこそが真に「脳に瞳を抱く」ことであり、探求者に課せられた使命なのです。では「瞳(啓蒙)を開く」ことが「上位者になる」ことを指しているのだとして、具体的には何を示すのでしょうか。

と言ってもこの部分は既に解説させて頂いております。「瞳」とは「卵」である。狂人の智慧上位者の叡智のアイコンを見るに、さながら頭蓋という卵から軟体生物が孵っているかのようです。そして漁村に産み付けられた卵から精霊が孵化していたこと、これら二つの事柄と、上位者の肉体が「巨大な苗床(卵)である」という仮説は接続できます。内にある「閉じた瞳(啓蒙)」が開かれる(孵化する)時、人の肉体は進化を遂げ、上位者という軟体生物として生まれ変わるのです。赤子を身籠った者は正当な上位者として、不完全なものは眷属として。実験棟で脳液を得た女性たちも、ただ血の聖女であっただけではなく、脳に「瞳の原材料(啓蒙)」を宿していたからこそなのでしょう。

「私には無理だったんです… お願いです、マリア様… ウッウッウウッ…」

星輪樹の庭前で咽び泣く女性 NPC 。彼女は脳液を宿せなかったようです。恐らく血か啓蒙が足りなかった。実験棟各所で輸血されて絶命したと思わしき遺体を見るに、頭が肥大化した時点で多少の啓蒙は持ち合わせていたようですが。

そしてここで取り上げたいのが、人間性が人の進化に合わせて成虫になるという仮説です。啓蒙もまた同じなのではないでしょうか。啓蒙という原材料が人の内に蠢き、それは人の進化に合わせて「脳液」へ変わり、最後には「瞳」、つまり上位者を形作る「軟体」へと変わる。「瞳」と「虫」とは一対の存在です。ゴースの寄生虫が脳液の集約の果てに得られた苗床へと刺激を与えるように、「瞳」と「虫」とは互いに刺激し合うことで力が発揮され、そのような内燃機関を内に宿すものこそを上位者と呼ぶのでしょう。

さてさらりと「上位者は軟体生物である」、並びに「啓蒙は軟体を構成する」などと断言してしまいましたが、一応の根拠はあります。まずゴースやエーブリエタース、月の魔物、そして小アメンの腕などからみられるように上位者という生物には軟体質という特徴が共通すること(もちろんこの特徴を有さない個体もいますが後程)が確認できます。加えるなら「幼年期の始まり」で主人公が変態した姿も軟体でした。で、この軟体という特徴が、恐らく上位者の「根源的な正体」を解析する上で非常に重要になるのですが、その前に以下のアイテムをご覧ください。

夜空の瞳
精霊に祝福された軟らかな瞳
かつてビルゲンワースが見えた神秘の名残だが 終に何物も映すことはなかった
その瞳孔の奥には、暗い夜空が果てしなく広がり 絶え間なく、隕石の嵐が吹き荒れている
僅かに瞳を擦りもすれば、それは飛び出してくるだろう

アイコンから見て取れるように、この瞳にはビッシリと寄生虫が宿っています。現実のナメクジがそうであるように、精霊もまた寄生虫の媒介者となり、他の生物への感染を手助けするようです。前回お話させて頂いた、「精霊は『人間性の運び手』である」というくだりを思い出してください。精霊経由の二次感染を指して、後世の人間は「祝福」と呼んだのでしょう。精霊の正体見たり。

なぜ人に宿ってくれない、お高くとまった上位者様の寄生虫様が、眼球に宿ることで神秘パワーを発揮するのか。結果を見るなら、どうやら上位者・人に関わらず、「寄生虫(おぞみ)」という生き物は、「軟らかな」、瑞々しい環境の中でこそ真価を発揮する性質を持つのではないかと考えられます。教会の使いがランタンに装飾した眼球から、そして体中に眼球を装着したヘムウィックの魔女がそれぞれ神秘攻撃を放ってきたのも、この性質を利用したものです。軟体生物(精霊)が秘儀の触媒となるのも同じ理由でしょう。上位者と呼ばれる超存在が、この「軟体」という原理の延長上にあるのだとすれば、シンプルな話、「虫」の終宿主たる条件とは、軟体生物であることなのです。「夜空の瞳」は、「瞳とは軟体である」、つまり「上位者とは軟体生物である」という事実を示唆するアイテムだった訳です。

非常に重要なので繰り返します。「上位者とは軟体生物」なのです。では、「なぜ」。なぜ啓蒙は軟体質へと変化するのか。「啓蒙とは何なのか」。深海の時代のみでは限界があるので、ここで改めて火の時代へと帰りましょう。世界最初期の上位者たちに起源を求めれば、由来が判明するかもしれません。

補足 : 最も高潔な人間こそが最も醜い化物となる

上位者の「虫」を体に入れようと、男である限り「瞳」を持てない。そんな哀しい結論の後ですが、どうも少なくとも一人、特殊な例を体現した男がいました。聖剣のルドウイークです。

導き
かつて月光の聖剣と共に、狩人ルドウイークが見出したカレル
リゲイン量を高める効果がある
目を閉じた暗闇に、あるいは虚空に、彼は光の小人を見出し いたずらに瞬き舞うそれに「導き」の意味を与えたという
故に、ルドウイークは心折れぬ。ただ狩りの中でならば

教会最初の狩人である彼が見出した「導き」のカレル。よく見るとこのルーンはゴースの遺体の似姿なのだと思えます。導きの正体は「ゴースの遺志(ソウル)」だった訳です。実験棟で用いた血液が何らかの経路でルドウイークにも入り込んだのでしょうか。或いは全ての狩人が、漁村の惨劇を苗床とした呪いに囚われていることから、ルドウイーク唯一人が呪いの内より深みを探り当てたのか。

男性に瞳は宿らない。その原則に逆らうように、ルドウイークだけが神秘の体現とも言える「月光」と共にありました。最期には醜い獣と成り果て、他の獣には見られない夥しい眼球という特徴を持ちえたのは、彼が上位者になろうとしていた、というのは言い過ぎとしても、彼が他の狩人に無いものを有していた証のように思えます。

注目したいのはルドウイークが「目を閉じた暗闇」に導きを見出したという点です。前回の記事で述べましたが、古い時代、特定の女性たちは盲の中より力を取り出す術を持っていました。時代を経てウィレームや聖歌隊など、目を塞ぐことで深みに達しようとした者たちはその名残です。そしてルドウイークだけが、或いは古の領域に足を踏み入れていたのかもしれません。それを可たらしめたのは彼の啓蒙なのか、或いは導きが象徴する「リゲイン」の力、つまり彼自身の「折れぬ人間性」に月光が誘因されたのでしょうか。ならばルドウイークが誰より醜い獣となったのは、彼こそが誰より高潔な狩人だったからなのかもしれません。

闇を継ぐ者

「虫」がかつて人間性という形態を持っていたのなら、「瞳」なる概念もまた、かつて不死であった我々の知る由のある「何か」なのでしょうか――という疑問を冒頭の方で投げかけましたが、本格的な考察は次回になってしまいます。申し訳ありません。だ、だってこれ以上長くなると記事を分割してる意味が無いから……。

で、瞳とは火の時代の何かなのかという疑問への結論を先に言ってしまうと、恐らく瞳もまた人間性です。

苗床
この契約にある者は、空仰ぐ星輪の幹となり 「苗床」として内に精霊を住まわせる
精霊は導き、更なる発見をもたらすだろう

注目して欲しいのは「更なる発見をもたらす」という部分。要するにアイテムドロップ率の上昇を指すのですが、過去に人間性と呼ばれたステータスもまたアイテムドロップ率に関与していました。この記事で触れているのですが、人間性と運は同じものです。

アンリの直剣
人の本質的な力、運により攻撃力が高まる

火(ソウル)への渇望こそ人間性であり、「求める意志」がアイテムドロップ率を上昇させる。この世界の「運」という力を、誰かが「人間性(人間の本質)」と呼んだのです。で、苗床のカレルにも同様の性質が認められることから、ここにも人間性が関わっているのではないかと考えました。

闇こそ生命の産みの親。全ての起源は同一であり、そこから男性には「精」という性質が、そして女性には「卵」という性質が振り分けられた、そういうことなのだと思います。「虫」も「瞳」も、起源を辿れば闇なのです。人間性がそもダークソウルという大いなる根源の欠片であるように、かつて分かたれたものが独自の進化を遂げ、しかし後の時代に一つの存在へと回帰する。上位者とはそのような仮定から生じた闇の権化、ダークソウルの継承者なのかもしれません。

一旦のまとめ

  • 闇が人を変態させる。
  • 上位者になれる者、そして上位者を宿すのは女性だけ。
  • 「虫」は「精」であり、「瞳」は「卵」の暗示である。
  • 「虫」と「瞳」は一対であり、そのどちらも人間性を根源とする。

続きます。

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