鈴の母親は「拡張型心筋症」と呼ばれる病気で、しかも心不全を合併しており、定期的に入退院を繰り返している状態だった。
「完全に治すためにはもう心移植しかないの! だけどドナーはみつからない、順番がいつまわってくるかもわからない。そのうえ渡航移植の自粛が求められてる中で、いつ心臓がイカれるかわからない。だったら、せめて限られた時間を穏やかに過ごして欲しいって思うのが、そんなにおかしい?」
「ファックマニ! 母親だろうがなんだろうが、世界の命運と天秤にかけていい『事情』なんて存在しないマニ! いいからおまえらは黙ってプリキュアになって闘っていればいいマニ!」
「……。わたしはプリキュアになんてなりたくなかった。それでも仕方なくやってやろうとおもったのは、わたし以外にこんな重荷を背負わせたくなかったから。……ねえ、ひょっとして、プリキュアになったり、グラヴィティーズレインボーの力で病気を治せたりなんてことは? それだったら……!」
「そんな都合の良いもんがあるわきゃねえだろくされビッチがマニ! だいたいプリキュアに必要なのは使命感と正義の心だけマニ! そんな崇高な戦いにやっすい見返りを求めるなんて、プリキュアをなんだと思っているマニ! 頭どうかしてんじゃねえのかマニ!」
「……」
傷を残さずに痛みだけ与える術を司は熟知していた。