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『SPRIGGAN LUNAR VERSE』

ここに『スプリガン』という一作の漫画がある。2022 年、連載終了後 20 年以上の時を経てアニメ化された本作は、実はかつてフロム・ソフトウェアという謎の企業によってゲーム化されたこともあるんですって。今回はそんな神秘のベールに包まれた『スプリガン ルナヴァース(SPRIGGAN LUNAR VERSE)』というゲーム作品についてご紹介していきたい。

また原作漫画『スプリガン』のネタバレにもやや触れていますので、御注意あそばされよ。

スプリガン ルナヴァース

『SPRIGGAN LUNAR VERSE』

公式サイト

ストーリー

十年前、深海で一枚のプレートが発見された。それは現代の科学でも解明できない未知の物質でできており、決して人類が造り上げることができないことから"神の伝言板(プレート)”と呼ばれた。その神のプレートには古代へヴライ語でこう刻まれていた。"我々の遺した文明の遺産を悪しきものから護って欲しい”と。

このメッセージを誠実に受け止め 超古代の遺跡を語るものたちがいる。彼らは遺跡を荒らすものの前に現れては罰を下す遺跡の番人の妖精の名にちなんで"スプリガン”と呼ばれていた。スプリガンは第二のロックフェラーと呼ばれるほどの大財間 アーカムに所属する世界最強のS級特殊工作員であり、超古代の遺産を狙うものたちから恐れられていた。

そしてここにそのスプリガンに憧れ、スプリガンになることを目指す若者がいた。彼は普段ごく普通に学校に通う高校生であるが、同時にアーカム日本支部に所属し、命を懸けた危険な任務をこなす工作員という裏の顔も持っていた。彼は現在、スプリガンになるための最終試験の最中であり、この試験に合格するためには上官から与えられる任務を難なくクリアしなくてはならない。その任務は試験とはいえ、完全な実戦であり失敗はすなわち、命を落とすことである。だが彼はスプリガンになるためにその危険な試験に挑むことを決意する。このとき、彼は表の世界に決して知られることのない、だが人類の存亡を懸けた戦いに飲み込まれようとしていたことに気づく由もなかった

原作(漫画版)完結後のオリジナルストーリー

本作『スプリガン ルナヴァース』のストーリーは「本編完結後」という位置づけであり、「その後」の御神苗優やジャン・ジャックモンドとの再会も叶うものになってます。もっとも本当に要所要所で手助けしてくれる程度であり、あくまでプレイヤーはゲーム版オリジナルキャラクターである大槻達樹の視点で物語を進めていくことになるんですが、だとしても原作既読者やアニメから入ったよ、という方には嬉しい話じゃないでしょうか。

大槻達樹はスプリガンを目指す高校三年生。バックボーンや日常パートが語られないので詳しい人となりなどは不明ですが、随所で飛び出す調子の良さそうな発言などを見るに性格は年相応の男の子と言ったところ。もっとも原作主人公の御神苗も表層的な人格に反して暗黒の過去を背負っていたので、彼も何かあるかもしれない。残念ながら今後語られることはないのでしょうけども。

ちなみに大槻少年が高校三年生でスプリガン候補である一方、御神苗は同学年時既にスプリガンとして活躍していた辺り両者の素質差、境遇差のようなものが見えるんですが、大槻少年は大槻少年で「オリハルコン(精神感応金属)との相性が滅茶苦茶いい」という設定があるらしく、ちゃんとキャラクターごとに「主人公っぽい尖り方」が設定されているのは嬉しいですね。今後掘り下げられることはないのでしょうが。

またネタバレになりますが、「ルナヴァース」というタイトルの通り、本作では「月」がキーワードになります。そして終盤では何と実際に月が舞台になります。で、この月ってやつは超古代文明が作り上げた「地球を意のままに操る装置」であることが判明します。原作の終盤では「地球そのものの意志」が脅威として顕れましたが、月はこのガイアの意志すらも統制してしまえるのでしょうか。一応『ルナヴァース』は原作者(たかしげ宙、皆川亮二)御両名が監修という形で関わっておられるので(フロムの構築した設定に GO サインを出したのか、設定そのものをたかしげ先生らが提供したのかは知りませんが)、『スプリガン』の世界観が、設定が好きだ! という方には興味深い代物でしょう。

いや良いものですよ『スプリガン』。最近になって急にアニメ化したのは『スプリガン』というコンテンツそのものに何か大きな動きがある予兆……だったりしないかな〜。

大槻達樹
御神苗優
ジャン・ジャックモンド

大槻達樹 / 御神苗優 / ジャン

投げ出さないための手引き

フロムのゲームで感想を探すと大体「むずかしい」「詰んだ」などの一文と抱き合わせなところがあり、本作も例外ではありませんでした。余談ですが『スプリガン』好きの友人がこのゲームを持っていて、感想を聞いたら「途中で投げ出したから分からねえ」とのこと。アーカムの恥さらしがよ。

ただまあ、実際の所このゲーム、難しいというか「操作性に難がある」という方が正しいと思います。お馴染みの『キングスフィールド』『アーマードコア』のシステムをベースにしているんですが、「小回りが利かない」「軸合わせがしにくい」「ロックオンができない」などの難点があるんですね。そんで敵は敵で「複数でボコってくる」「吹っ飛ばしてくる」「吹っ飛ばした上で起き攻めしてくる」「飛び跳ねて軸をズラしてくる」などといった挙動で巧妙にこちらの弱点を突いてくるので、まあその辺が途中でゲームを投げ出してしまう理由なんだろうと推察しています。

そういった難点に対して「諦めずに頑張ってください」と返すのでは余りにも無慈悲で芸が無い。よっていきなりですがゲーム攻略情報。うおお。このゲームには裏技が幾つも仕込まれているのですが、ミッション 1 から 4 の間に 10 回以上ギブアップしてください(コンテニューではなくギブアップです)。そうすると防御特化の AM スーツが手に入るので、それを着装すれば当面は防御面で心配がなくなります。後は下手に敵の攻撃を避けようとせず真正面からジャブで殴り殺すプレイを心がけましょう。敵によってはジャンプ攻撃なども駆使した方がいい場面こそありますが、基本的にゴリ押しを心がけます。力こそスプリガンの故よ。あとこのゲーム、ステージ選択ができるのが全クリ後なので初周では同じステージを繰り返し遊べないのですが、コンテニューという手段においてのみ同じステージを周回することができます。当たり前だろと言われそうですが、肝心なことは、回復アイテムなどはリスタートする度に再配置され(敵も落とす)、コンテニュー時に所持数はそのまま残る、つまりコンテニューを繰り返すことにより稼ぎが可能になるんですね。前述した通りゴリ押しを心がけるゲームとする以上、ゴリを助ける手段である回復アイテムは最重要です。序盤(ステージ 2 がおすすめ)で 50 程度は稼いでおくと楽になります。ゲームは現実と同じなので、稼げば稼いだぶん楽になる。そして最後に一つ。このゲームにはステ振りの概念があるのですが、防御面を AM スーツに任せられる状況は作ったので、今後ステータスは全部攻撃に振りましょう。こちらの火力が上がれば敵がさっさと倒れてくれるので、ゴリ押しの安全性が上がります。割と早い段階でカンストするので、後は HP などに振っていくと良いでしょう。 AM スーツの性能を上げるステより主人公そのものの性能を上げた方が良い。以上がお粗末ながらも本作の攻略手引きとなります。操作性に難があるゲームなら、操作を単純化させるための立ち回りを心がける。これが次世代スプリガンのやり方ですよ。知り得たか?

あとこれはワンポイント・アドバイスなのですが、このゲームは基本移動がダッシュになっていて、(□)が「ダッシュしない為のボタン」になっています。何のためにあるかというと、崩れる足場を渡り切る為に必要なんですね。あんまり使わないとは言え、忘れないようにした方がいいです(ちょっと間を開けてプレイしたせいか完全に頭から抜けており、劇中で一カ所詰みかけた)。

ああ、大事なことを忘れていました。このゲームは操作が難しいという点を最大限活かすようにして落下死頻出ゾーンをお出ししてきます。……そんな……あのフロムが落下死を狙ってくるなんて。信じられない人もいるでしょうが、そういう場面では防御力や HP の高さなどはクソの役にも立ちません。ではどうすればいいか。答えは一つ。諦めずに頑張ってください。

フロムゲー温故知新

さあやってきました。セルフオマージュ大好きで知られるフロム・ソフトウェアですが、『キングスフィールド』などの有名どころ、ソウルシリーズ以降のネタしか知らんという方も多いはず。このコーナーでは過去作という地層まで掘り進めてみて、現在に繋がる遺産(レガシー)を探索していきます。結局外野からは、それがセルフオマージュなのかただのネタ被りなのかの区別がつかないので明瞭なご紹介には成り得ませんが、面白いと思って頂ければそれで良し。「へー」の二文字を引き出せれば御の字、興味を引いて過去の作品に手を出して頂けたならば万々歳といったところでございます。

では参りましょう。とはいえ本作からご紹介するのは二点、いや三点か。

混種
『スプリガン ルナヴァース』
『ダークソウル』

混ざりもの

この獅子ベースの混種ですが、てっきり初登場は『エターナルリング』だと思っていました。が、なんとお初は『スプリガン』。オーソドックスなキマイラタイプと言えばそうですが、フロム・ソフトウェアはこいつを気に入ったのか、後続作をやってると割と見かけるようになります。

人間を止めるゾ
『スプリガン ルナヴァース』
『スプリガン ルナヴァース』
『スプリガン ルナヴァース』

石仮面

これはまあ、ちょっと本旨からずれますが、個人的に。何をしてんだ古代人。

宝箱から骸骨が
『スプリガン ルナヴァース』 - 骸骨
『スプリガン ルナヴァース』 - 骸骨

我々はこの骸骨を知っている

アーカムの地下宝物庫のあるアイテムを調べると登場する骸骨。「宝物(宝箱)を調べると骸骨が出てくる」というのは、今は失われた『キングスフィールド』シリーズの定番ネタでした。もうずっと前のことだ。

宝箱から骸骨が
『スプリガン ルナヴァース』 - ムーンライト
『スプリガン ルナヴァース』 - ムーンライト
『スプリガン ルナヴァース』 - ムーンライト

ムーンライト

物語のキーワードが「月」だから、というよりキーワードが「月」であることも含めてなのか、「フロムといえば月!」のノリで登場しちゃったムーンライト。良いんだ、それ。いや石仮面の方がアレだと思いますが。上記のスケルトンを倒すと手に入りますし、ちゃんと装備品として使用できます。「現代」の夜空を切り裂く月の光波はちょっと感慨深い。頼む! フロム! 現代版ダークファンタジーを作ってくれ!

というわけで

『スプリガン』が6月18日(土)からNetflixで配信されるとのことで、PSで発売された『スプリガン ルナヴァース』を始めてみようかな。ちょっとずつ進めよう。

いつもいつもフロムゲーばっかりやってると思われたら心外なんですよ??#スプリガン pic.twitter.com/jCmPqkrhhB

— ACID BAKERY (@cid_bakery) June 6, 2022

以上。お付き合い頂きありがとうございました。フロムの他社 IP 作品もいいもんです。

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