ご機嫌いかがですか。今回はシリーズにおいて馴染み深い「岩のような」あの人についてちょろっと書きます。ちなみに本稿は、少し前に Twitter でたらたら書いたことを編集・改稿したものです。更新通知用に作ったアカウントですが、好奇心に負けてつい「ついーと」なるものを嗜ませて頂きました。悪くは無かったのですが、やはり腰を据えて書く方が性にあっているようです。見たくない方の目に映してしまうことも、このサイトでやっていれば極力防げますしね。ということで今回もお付き合いください。
手始めに下記をペタリ。
『1』
- ハベル・シリーズ
- 「岩のような」ハベルの戦士の〇〇
- まさに岩塊を彫って作られたもの
- 岩の鎧をまとったハベルの戦士は決して怯まず、後退せず 敵としたものを必ず叩き潰すという
- ハベルの指輪
- グウィン王の古い戦友として知られる「岩のような」ハベルに由来する指輪
- 彼を信奉する戦士達が好んで身に付けたと言われ 装備重量を増やす効果がある
- 大竜牙
- 朽ちぬ古竜の牙をそのまま武器にしたという「岩のような」ハベルの伝説の大槌
- その牙は岩よりも硬く、決して折れず また使用者に魔法と炎に耐える力を与える
- ハベルの大盾
- まさに岩塊を彫って作られた「岩のような」ハベルの伝説の大盾
- すさまじい重さと防御効果を誇り さらにはハベルの魔力すらも秘めている 大竜牙と並ぶハベル本人の聖遺物
- 大魔法防護
- 「岩のような」ハベルの司祭に伝えられる奇跡
- 全身を強い魔法防護の膜で覆う
- グウィン王の古い戦友であり 白竜シースの敵対者でもあったハベルは 魔法を嫌い、それに対する手段も怠らなかった
- 見張り塔下層の鍵
- 城下不死街にある見張り塔下層の扉の鍵
- 見張り塔の下層は石の牢となっており 亡者となった英雄が、友の手により閉じ込められた 以来ずっと閉ざされたままだという
『2』
- ハベル・シリーズ
- 「ハベル」の名の由来は伝わっておらず かつてこれを愛用していた戦士の名とも 戦乱によって滅びた国の名とも言われる
- 魔法防護
- 全身を魔法防護の膜で覆う奇跡
- 魔法、雷、炎、闇に対する耐性を高める
- 「岩のような」身体を得ることができると伝えられるこの奇跡は、ミラの魔法騎士団に広く伝えられている
『3』
- ハベル・シリーズ
- 「岩のような」ハベルを信奉する戦士は決して怯まず、後退せず 敵としたもの全てを叩き潰したという
- ハベルの大盾
- 巨岩を彫って作られたという大盾 すさまじく硬く、そして重い
- 決して折れぬ大竜牙と並び ハベル本人の遺物であるといい 彼らしい特別な力を宿している
- 戦技は「岩の体」 盾を捧げる静かな祈りにより 装備者自身を岩塊へと変える
- 魔力防護
- 歴史上、聖職者と魔術師はしばし対立した だから質実な聖職者たちには 魔術に対する手段が必要だったのだ
- 大魔力防護
- 「魔力防護」の原典にあたる物語
- それは「岩のような」ハベルの物語であるという 白竜シースの敵対者であったハベルは 魔術を嫌い、それに対する手段も怠らなかった
全部ではありませんが、ハベル並びにその信奉者についての記述です。「岩のような」ハベルは、シリーズ通して語られているにも関わらず、意外なほどその全容が分かっていないキャラクターだと思います。確かなことは男性であったこと、そして彼がグウィンの戦友であったこと、そしてシースのアンチだったこと。以上です。あとは銀騎士レドとも仲が良かったはず。人間関係だけかよ。ちなみに『1』の見張り塔下層で登場した NPC 、あれはハベル本人ではなく、「ハベルの戦士」みたいです。大竜牙と大盾は本人の持ち物だったようですが、それはハベル亡き後に受け継いだやら盗み出したやら幾らでも想像がつきますし、本人にしては「大魔法防護」を使いませんし、倒した NPC が落とすものが、ハベルを信奉していた戦士が好んでつけていたという指輪なので、ほぼ間違いないでしょう。鎧などのテキストは戦士に対する記述ですしね。また『デザインワークス』には「ハベルの戦士」としてイラストが掲載されていることも根拠に数えていいと思います。
一応ハベル本人であるという方向でも考えてみると、「見張り塔下層の鍵」曰く「亡者となった英雄が、友の手により閉じ込められた」そうなので、これと「グウィンとハベルは戦友の関係にあった」という記述から、ドラマが読み取れてしまう。ドラマティックであるということは、物語の世界においてこれ以上ない説得力を帯びます。なので想像力を広げていけばどちらとも解釈できるかもしれません。ですが、あくまでこのサイトとしては「あれは本人ではない」という前提でいかせて頂きます。
ちなみに古竜の頂で英雄霊として召喚され、また同エリアで実体として相対したあいつは『1』と同一個体だと思っていて、それが時を経て「火の無い灰」となって再登場したと考えると胸が熱くなります。それと『3』のはぐれデーモンのソウルからなぜハベルの指輪が錬成できたかという部分ですが、あそこにハベル一式が落ちていたことから考えるに、あの場所でハベルの戦士がはぐれデーモンに敗れたからだと考えています。錬成というのは中々融通が利くシステムで、グウィンドリンの記憶、或いは血統からプリシラの業を、そしてミディールの記憶からは古き月光を取り出すことができました。同じように、はぐれデーモンがその手で倒したハベルの戦士のソウル、または戦いの記憶が、指輪の錬成に繋がったのではないでしょうか。
『1』と『3』に登場するハベルの戦士は同一人物であるという話の流れですが、過去に活動を停止したはずなのに灰として蘇ったであろう NPC は他にも何人かいますよね。アンドレイやパッチは特殊枠っぽいので割愛しますが、まあカークとかクレイトンですよね。悪人が多いような。あと誰かいた気がしますが、常識が無いので忘れてしまいました。またハベルの戦士がかつての功績を評価され、灰となった後に英雄霊としての栄誉を与えられると仮定すると、「流浪の王子」もまた本物なのでしょうか。そういえばこの人の名前も皆勤賞でした。
- リカールの刺剣
- 『1』 : 王子リカールの物語は貴種流離譚の1つであり 王家に生まれた彼が運命の悪戯で各地を流浪し 最後は不死になり、北に旅立って終わっている
- 『2』 : 流浪の果て、不死となった王子の物語には 数多くの異文異説があり その多くは悲劇的な結末を迎えるが 中には例外も存在する
- 『3』 : その物語の多くは眉唾であるが 王子の刺剣と、彼の華麗な剣技は 確かにここに残っているようだ
これ、結局「リカールについては諸説あるけどよく分かってないよ」って話です。センの古城に配置されていた彼が本物だとすると、最後には理性を無くして、何となく悲劇的な結末だったんだろうな、ソウルシリーズだしな、と思わせておいて、実は古竜の頂で召喚されたような半裸スタイルが本性だったのかもしれません。だとすると結構人生楽しんでそうで何よりじゃないですか。……実は裸に近い恰好にウォルニールの王冠と腕装備っていう、まんまウォルニールを模倣したような恰好が気になってはいます。これ、かつてシースの啓蒙にあてられた「服のない」ローガンを思い出しませんか。さて何があったのか。
何の話をするつもりだったのか忘れましたが、要するに、かつて亡者と成り果てた不死も、灰として復活した際には呪いがリセットされるのではないかというようなことが言いたかった気がします。基本的に皆襲い掛かってくるので正常と異常の区別がつきにくいのですが、英雄霊として召喚される彼らは多分まともであるように思えます。暗い穴を開けなければ亡者にならないという、灰特有(?)の性質と関連しているのでしょうか。そしてこの呪いリセット説に基づくなら、『3』冒頭で灰瓶を所持している上級騎士の遺体がいましたが、あれって『1』でエスト瓶をくれたオスカーその人なのかもしれません。シリーズの始めと終わりに主人公へエストを託す、その為に彼はあの場に存在していた、とすると少々残酷ですが、考えてみればオスカーはかつて使命の本意すら知らずに不死院で果てた人です。それが、永い時を経て蘇ってみれば、使命も祖国も失われ、「火継ぎ? 灰? なんのことです?」というような状態で放り出されていた訳です。目覚めた直後に全て投げ出すように二度寝したのだとしても、責められはしないでしょう。せめてもう一度殺害せずに済んで、それだけが救いでしょうか。
今回の議題はハベルとは何者だったのかということなんですが、まあ作中の描写からは分かるはずもありませんよね。ハベルに対して信奉者がおり、司祭までがいて、彼に纏わる奇跡までが存在したというのは、つまりハベルは神に分類される存在だったということ。ただこの神というのが曲者で、『1』に登場した黒弓のファリスも、ヒトでありながら後の時代には「狩りの神エブラナ」なる神格を与えられていました。生まれではなく、物語を綴られた者の所作が奇跡となり、そして崇め奉られた者が神とされるんですね。そして古竜討伐の戦線に人間も参列していたことを加味しても、「グウィンの戦友ハベル」が人間でなかったと言える確たる証拠はないのです。つまり結論として「わかんないや」という話になります。しかしそれではあんまりなので、考えるだけ考えてみましょう。
以前の記事に遡ってしまうのですが、古竜は「外」から来たやってきた人間だというのが自説です。忌み人として永きを耐えて、彼らは巨大不明生物として完成しました。人間性の石をウロコとして纏い、彼らは「岩の古竜」となります。だからこそ雷という弱点を抱えてしまった訳ですが。では、そんな世界にあって古竜スレイヤーとして名を馳せた「岩のような」ハベルとは何者だったのか。全くもって想像ですが、彼は同じく外側からやってきた人間だと思います。
ハベルの戦士はハベルの外形を模す形であのような外装を纏うエグゾスカル戦士だった(明言はされてないはず)と思うのですが、つまりハベルは言葉通り「岩のよう」だったのでしょう。大竜牙のように彼が竜素材で身を固める思想の持主だったという可能性も否定はできませんが。しかし『3』の「ハベルの大盾」曰く、戦技「岩の体」は「彼らしい能力」だそうで、この言葉を深読みするなら、ハベルというのは竜と同じ力を有していたのではないかと思うんですね。しかし竜と同じ頂まで辿り着きながら、彼は超越者たちと敵対する道を選びました。何故かということまでは解るはずもありませんが、同じ道を歩んだとしても、それは決して同じ場所に辿り着きたかった訳ではなかったからなのか、或いは最初から古竜を狩るために「中」に渡ったのか。ちょっと手に負えません。ただ、ハベルがそのような存在だったとして、「岩のような」ハベルが「鱗の無い」シースと折り合いが悪かったのは必然だった気がします。鱗を持ちながら竜とならなかった者と、竜でありながら鱗を持ちえなかった者。最も劇中ではシースからハベルに対する感情は語られていませんし、ハベル側にしても、単に古竜という存在への嫌悪感があったのかもしれません。
ちなみにロンドールのヨエルを始めとして、『3』で巡礼者と呼ばれる者たちは皆甲羅を背負っています。聖職者も同じ甲羅を背負っていますが、後者が闇からの防護服であるのに対し、前者は闇が漏れないようにするためのものだったのでしょう。そして巡礼者は自身と甲羅を、鎖でグルグル巻いて固定しています。決して外れないように、中身が漏れ出さないように、という思惑でしょう。ちなみにこの鎖は巡礼の蛹の足元に残骸が確認できたはず。そしてそんな苦行の末に彼らはめでたく竜となり得た訳ですが、実はハベルの鎧にも鎖がついてるんですよね。もちろんあの鎧はハベルの戦士たちのものなので、本物の外形がどうだったかは分かりません。しかしあの装飾がオリジナル・ハベルに限りなく似せた模造品だったのだとすると、ちょっとワクワクしてきませんか。
(追記)古竜については色々考えを改めたというか整理しました。こちらをお読みいただけると幸いです。
そういえばハベルがシース封じに編み出したという「大魔力防護」、を原典とする「大魔法防護」は、灰の湖(古竜への道)に落ちていました。あそこにいる五足のバイバル(人食い貝)は結晶洞穴にもいましたし、ハベルとシースの関係を考えると、何らかの因縁を勘ぐってしまいます。話は変わりますが、灰の湖にも出てくるヒュドラは正式には「湖獣」というそうです。湖にいるからなんでしょうが、「湖」という漢字には「古」という漢字が含まれていて、奴らが古竜の系譜だと示すための言葉遊びなのかなと思いました。
可能性と言うならまだあります。気まぐれに結晶の娘クリエムヒルトについて調べていたら、『ニーベルンゲンの歌』がヒットしましてですね。ジークフリートとかバルムンクって名前は色々なお話で耳にしたことがあると思うんですが、このジークフリート、竜殺しの武功を持っているんですね。で、該当記事から気になる部分を引用します。
魔力のこもった竜血を浴びて全身が甲羅のように硬くなり、いかなる武器も受け付けない不死身の体となる
甲羅(!)。こういうものは自分が望む文脈でサーチすれば幾らでもヒットしてしまうものだと思うので、あまり「これだ!」と断定したくないのですが、もしかしたらハベルの元ネタはこれなのかもしれないな、くらいには思いました。上述のように大げさな経緯ではなく、あくまで竜殺しの過程でその血を取り込み、「岩のような」姿を獲得した、というような。その伝承が長い歴史の中で捻じれて伝わり、後の竜血騎士団や古竜院が生まれたのだと考えると、これはこれで面白い想像だと思います。ただ後の時代のクリエムヒルトとハベルに何らかの繋がりがあるとすると、やはりハベルは絵画の外からやってきたのでしょうか。「結晶の娘」という言葉が想起させるシースと彼女の間にも何か関わりがあるというなら、殊更ハベルとの関係が気になるところですが……。そして「ジーク」から連想できるカタリナ騎士の関係や如何に……。
知らなかった。知らなかったんですよ! 『3』の「岩の体」、ハベルの大盾の戦技であるそれは、使用時に「雷ダメージが増加する」んですって。
古竜に戦いを挑んだグウィンの雷が、岩のウロコを貫き
ハベルが「竜と似た進化を遂げた人」なのか、或いは「竜血を浴びた人」なのか、どちらの考えも見当違いなのか、それは分かりません。しかしその「岩のような」体躯の成り立ちが古竜のそれと同質のものだと考えさせる材料が揃っている、そう考えて損は無さそうです。
ハベルは人間だったのでは、という話の流れで差込みますが、銀騎士たちは神族の系譜ではなく、彼らもまた人間だったようですね。というのも、「亡者狩りの大剣」の特効が銀騎士にも適用されるんですよ。当初完全なる不死だった人間たちが火の封と枷によって「仮初」の形を与えられ、その後太陽信仰を得て銀騎士として戦列に加わったと考えると、特に不備は無いでしょう。墓王ニトの元にも「眷属」という形で人間の信奉者が存在していた訳ですし、神による人間の統治は、雇用形態にまで食い込んでいたことが分かります。黒騎士が最初の火に焼かれることで、「灰」となりロードランを漂うようになったのも、元の不死性が関与していたのかもしれません。しかし一度灰になってしまった彼らは、元が銀騎士であるにも関わらず既に人間ではなく、故に亡者狩りの大剣による特効は望めないのです。
また以前は体が大きければ神、小さければ人、というような雑な区分をしていたこともありましたが、キアランが人間サイズであったことを鑑みると、実用性のない考えでしたね。あくまで自説が正しいという仮定の上でですが、巨人もまた人間の一種だとすると、「鷹の目」ゴーは人間でありながら四騎士に上り詰めていたことになります。すゴーい。
(追記 : 一応補足しておくと、巨人は人間なのか? という疑問はあります。ただヨルシカが「代々火継ぎは人が行ってきた」と明言してしまっているんですよね。ならば巨人ヨームだけがヨルシカの与り知らぬ例外だったと捉えるか、ヨームが表記通りの巨人ではないのか。よくわからないので、人間には「小人」「中間」「巨人」の三種が存在したとすることにします)
- ゴーの兜
- 彼をただの巨人に貶めんとする者により 名高い「鷹の目」に用意されたはずの覗きは 樹脂により、すべて隙間なく潰されている
城を守る巨人衛兵も、一見煌びやかな装備に身を包んでいるようでいて、しかし「ただの巨人に貶める」といった意識がアノール・ロンドには存在していたようです。だとすれば同じように城の番兵であった銀騎士もまた、多くの神族からして「ただの人間」であったのかもしれません。痛快と言えるのは、大王グウィンが出自ではなく実力を評価する思想を有していたことでしょう。或いは奴隷や身分制度というものに、何か思うところでもあったのでしょうか。