いまメールフォルダ確認したらびっくりしました。もうそんなに前になる。いやね、以前当サイト宛てにメールを頂きまして、「騎士狩りゾリグについて記事を書いて欲しい」というものでした。ただゾリグについてはよく分からなかったというか、劇中で確認できる以上のことは書けないので、もうちょっと仮説なりが揃ったら書きますねと気軽に返事をしたわけですよ。
二年経ったわけです。
書くのをさぼってたんじゃないですよ。二年前から何の進展も無かっただけです。もうね、さすがにここから新しい気づきはないんじゃないかと判断することにしまして、だったら現時点で手元にある材料だけで仕上げてしまうのもアリだろうと思い筆をとりました。
じゃあサクッとやっていきますので今回もお付き合いくださいませ。
『ダークソウル 3』に登場する NPC 、騎士狩りゾリグ。カーサスの地下墓にて侵入してくる重装野郎。『3』でお初なキャラクターではあるはずなんですが、良く見ると既視感があります。その理由は彼(?)の装備。騎士狩りの名に相応しく、彼は騎士と名の付く強者を倒し、その装備を剥ぎ取り身に着けていたようです。そしてそれらの装備をシリーズプレイヤーである我々は知っている、ということで、彼の装備からその戦歴を辿ってみましょう。
まずはゾリグの纏う重装備一式。見覚えのあるプレイヤーは多いのではないかと思うのですが、かつてセンの古城で出会った「黒鉄のタルカス」その人が身に着けていた装備でした。
タルカスとゾリグ、黒鉄の騎士達
- 黒鉄シリーズ(『1』)
- 大力で知られる騎士のタルカスの兜
- 特殊な黒鉄で作られ、ひどく重くタルカス本人の他は容易に扱えないがその防御効果は高く、特に炎属性の攻撃に強い
- 黒鉄シリーズ(『3』)
- 黒鉄で作られた〇〇
- 騎士狩りゾリグの恐怖と共に知られる甲冑
- 黒鉄は防御効果が高く、特に炎を寄せつけない
まあ世界で一品とも限らない防具でしょうが、知られる装着者の名が変わっている辺り年月を感じさせる気がします。騎士狩りの名に偽りが無いのならゾリグとはタルカスに勝り、その瞬間からその黒鉄を我が物としたのでしょう。そんな……単騎でアイアンゴーレムと渡り合うほどのめちゃ強 NPC であったタルカスさんが負けるなんて……。
まあ可能性を広げるのであれば、例えばアノール・ロンドのタルカスの遺体と思わしきものから一式拾っただけ、とか、「タルカスと同じ装備を身に着けた別の人」に勝っただけとか、幾らでも想像できるのですが、ここはやはりゾリグの方が強かったと捉えるのが一番シンプルなんじゃないかと思います。
タルカスの最期も諸説ある。
次はこいつ。
エス・ロイエスの守護戦士?
ロイエスの騎士狩りの指輪
- 白の戦士の指輪
- エス・ロイエスの守護戦士たちの指輪
- 攻撃時に敵のスタミナが大きく減少する
- 暴走の火を鎮めていたエス・ロイエスは 白の門が開いたことにより寒さに沈み 生命なき世界となった
- 騎士狩りの指輪
- 騎士狩りゾリグの名で知られる指輪。
- 盾受けに対するスタミナ攻撃力を高める。
- ゾリグは、かつて古い都で守護戦士と死闘を演じ 彼らの指ごと、凍りついた指輪を奪ったという。
ロイエスの騎士が指輪の持ち主だと思うんですがどうでしょうか。当初は他にいるモブ敵の方かなとも思ったんですが、「騎士狩り」というからにはやはりこっちかなと思うんです。
ということでゾリグはエス・ロイエスの守護戦士と戦い、倒して指輪を奪った。「騎士狩りの指輪」は結構重要です。ゾリグが倒した相手から装備を奪っていたことが実際に記述された唯一のソースですからね。そしてこの指輪のおかげでゾリグはエス・ロイエスを攻略していたと仮定できるわけです。これは彼について考える上でとても重要な指標になりますが後述。
どうもこの指輪も装備しているみたいです。ただこれに関して言えばゾリグを倒して入手できるものではないですし、彼の装備の中で唯一「騎士」と紐づけできないもの、だと思います。過去の NPC が装備してたりするかとも思いましたが、見つけられません。強いて言えば『2』の「刑吏のチャリオット(篝火の熱 + 2)」がドロップしますが……。まあ「騎士」を相手にしていたというなら「馬」をカウントするのもアリかもしれませんが、いまいちしっくりこないので、この指輪については数えなくてもいいんじゃないでしょうか。キャラ性能を保つための装備なんだろうと。或いはどこぞの名も知れぬ騎士がこの指輪を装備していたと見るのもありでしょう。
煙の特大剣と、その騎士
- 煙の特大剣(『2』)
- 煙の騎士のソウルから生み出された特大剣
- 板とも言えるような独特の容姿を持つ
- 追放された剣士レイムは 黒霧を払う力がありながらも それと共にあることを選んだ
- この剣に棲んだ闇の子と共に
- 煙の特大剣(『3』)
- 黒い岩板のような異形の剣
- 特大剣の中でも最重量のもの
- 古い反逆者の武器であったというが その重さから誰も振るう者なく やがて歴史から忘れ去られた
極めつけですね。エス・ロイエス攻略のみならず、どうもゾリグは黒霧の塔も制覇していたようです。黒鉄シリーズの「タルカス本人の他は容易に扱えない」といい、この剣の「その重さから誰も振るう者なく 」といい、そういうものを好んで収集していたのでしょうか。何となく気性が伺える描写ではあります。というか、マジで強いなこいつ。
というわけで特定を試みたいことが、ゾリグはいつの時代の不死だったのかという点。結論から言っちゃうと、『2』の時代の人間だったんじゃないかと思ってます。エス・ロイエスは暴走の火を鎮める為に凍てつき、しかし鎮めようとする者が永遠ではない、即ちその寒さが永続しないなら、我々があの地を探索したのと同時期くらいに、もしかすれば別の世界線においてゾリグもまたあの国を征していたと見ることが可能です。何なら貪欲の烙印を被ってロイエスのソウルマラソンをしてたかもしれないし、壁外の雪原をイライラしながら彷徨っていたのかもしれない。かつ、黒霧の塔もクリアしているっぽいところを見るに、やはり奴は元々『2』時代、ドラングレイグの放浪者だったんだろうと。
問題はここから。ではタルカスとかち合ったのはいつでしょうか。そもそも『2』の時代や場所には諸説あるんですが、簡単に解釈するなら『2』世界とは『1』の後、何度も火継ぎが繰り返されてきた後の時代です。火継ぎの度に不死の時代が遠ざかっていただろうことも考えれば、『1』の時代の人間が『2』時代まで生きたとは考えにくい。タルカスが仮にアノロンで死なず生き延びていたとする世界線の話でも『2』時代にはいないでしょうし、ゾリグがそんなタルカスと出会うこともない。
が、この時代を超えたタイトルマッチ、それ自体は決して不可能ではありません。「灰システム」です。いつか動かなくなった不死が、しかし火の陰りに鐘の音と共に起き上がるのなら、生きた時代の異なるタルカスとゾリグは、そうしてロスリックの地で邂逅したんです。薪の王すら時代を超えた。ならば歴史上の多くの騎士たちもまたロスリックへと集い、ゾリグはこれを嬉々として狩ったんじゃないでしょうか。
(追記)指摘して頂くまで忘れてましたが、ゾリグから入手できるジェスチャー「感謝を!」は、『2』の初期ジェスチャーである「雄たけび」と同じものだったりします。これだけを根拠とするには少し弱いですが、上述諸々と合わせると印象が深くなるのではないでしょうか。
雄たけび / 感謝を
ちなみにこちらは間違いなく『2』時代の住人であるギリガンの話ですが、この遺体からはジェスチャー「大の字」を入手できました。あれは彼が致命を取られる際に大の字になることに由来するようですが、そうして生死を問わず、各々が自身の生きた時代の風習なりを伝えてくれるというのはロマンがありますね。
奇麗な大の字(『2』)が撮影できなかった。常識ねえのかよ。
以上がゾリグについて推察できることのほぼ全てになります。ただ一つ、余談っちゃ余談なのですが、この光景はどういうことでしょうか。
勝手に戦え!
カーサスの地下墓でゾリグの闇霊を倒すことで、燻りの湖ではこの騎士狩りを召喚できてしまいました。そしてなんとこの白霊を同エリアの実体ゾリグと戦わせることができるんです。どういうこと? これに関して言えば特にイベントやアイテム、特殊な挙動があるわけでもないので、エリアが隣接していたが故の不思議な仕様くらいに考えておけばいいと思っているのですが、個人的には考えさせられる絵面だなとも思います。
ゾリグは、その理由こそ不明ではあるものの、多くの騎士や戦士と出会い、これらを蹂躙してきました。そんな狩人たる彼が、或いは最後に出会った狩りの相手、それは騎士狩りたる自分だったわけです。それは時空の歪むというこの地でこそ成立した、奇妙な因縁だったのでしょうか。
騎士狩りゾリグ、最後の騎士狩り。最後かどうかは知らないが、勝負を制したのは、ゾリグでした。
騎士狩りゾリグに狩れぬ騎士なし。それが例え、己自身であったとしても。
成るか黒騎士狩り! ならない!
でも、黒騎士だけは勘弁な。