みんな大好き『DARK SOULS 2』。中でもとりわけ評価の高いエス・ロイエス、灼けた白王戦の話をします。させろ。長くはなりませんのでどうぞ読んでいってください。
ちなみに『DARK SOULS』および『3』の内容にも触れています。お気を付けください。
さて、凍てついたエス・ロイエス。なぜこの地が冷気に沈んでいるかといえば、それは白の門とやらを開けてしまった為らしいです。
- 白の戦士の指輪
- 暴走の火を鎮めていたエス・ロイエスは 白の門が開いたことにより寒さに沈み 生命なき世界となった
- 白王シリーズ
- エス・ロイエスの地は古き混沌を 封じるための大きな壁だった
- 白王は混沌の穴の上に自らの玉座を置き 自らが尖兵となったのだ
エス・ロイエス自体が混沌を外に漏れ出さないようにする為の壁であり、そしてそれは外部からの冷気を遮断し国として成り立たせるためのものでもあったのでしょう。しかし門が開いてしまった為にエス・ロイエスは凍てついてしまった。白の門とは入り口の大門のことでしょうか。なぜ開いてしまったかは知りませんが、我々のせいではないはずです。だって来たときにはもう開いてたし……。
暴走の火。古く混沌と呼ばれたその炎を封じるために、そもそもエス・ロイエスという国があったと読めますが、細かい背景はよくわかりませんね。さすがに国ごと凍てつかせることは混沌を封印する際の算段には入ってなかったでしょうが、そんな折に現れたのが我々です。最初は天の声に素気無い態度を取られたものの、虎殺しを成し遂げたことで信用されたのか、道は開かれました。声の正体は一人の女性、沈黙のアルシュナ。あの王妃デュナシャンドラや、穢れのエレナ、煤のナドラたちと同郷同種たる「闇の子」。即ちあの深淵の主マヌスの欠片が一片のようです。
- 煤のナドラのソウル(欠片)
- 身体を捨て黒霧の塔を彷徨う 煤のナドラのソウル
- 闇の子ナドラがこの地に来た時 身を寄せるべき王はすでにいなかった
- 失望しソウルを捨てたナドラは古王の遺物を寄る辺としている
ナドラのソウル(欠片)を読む限り、個々の事情や特性である程度左右されても、彼女たち闇の子は大まかには「王」を求め、這い寄ろうという姿勢だったように思えます。しかしアルシュナはまた、少し違う。
- 白王の冠
- かつてこの地を統べた王 白王の冠
- 暴走の火を鎮めるために 王は北限に大聖堂を建立した
- だが自らのソウルが枯渇すると いつしか傍らにいたアルシュナに全てを託し 人知れず消えていった
- 王の名はすでに失われている
- 沈黙のアルシュナのソウル
- エス・ロイエスで祈りを続ける 沈黙の巫女アルシュナのソウル
- 終末を恐れる闇の落とし子は 暴走の火を鎮めるために祭儀に身を捧げている
- エス・ロイエス
- アルシュナのソウルから生み出された曲剣
- 奇妙な二つの刃を持ち 強攻撃が味方に当たった場合、味方の HP が回復する
- この地の名を銘として与えられた剣は 白王がその力を使い果たした時 いつからか傍らにいたアルシュナに与えられたものだという
『いつしか傍らにいた』というアルシュナ。やはり彼女も他の落とし子たちと当初の目的こそ同じだったのでしょうか。しかし白王はそんなアルシュナに全てを託し、そして託されたアルシュナはその身を以て暴走の火を鎮めているといいます。それは終末を恐れるという彼女の性質に起因するのでしょうが、彼女だけが、王たる存在と独特の信頼関係を結んでいたようにも読み取れます。彼女たち闇の子は人間性の権化たるマヌスの子。故に、その本能や目的意識に依らない、なにか「人間的」な感情が互いの間に構築されていたのでしょうか。
そんなわけでアルシュナに後を託した白王は、ロイエスの騎士たちと共に混沌へと身を投じたのだそうです。それは暴走の火を封じんとする王と、そんな王へ忠義を尽くさんとする騎士たちの最後の姿でした。そして彼らは帰らず、今も焼かれているのだと。
必要な犠牲だったかもしれない。しかしもういいのではないか。アルシュナに請われ、我々は各所で「その時」を待ち続けるロイエスの騎士たちを束ね、かくして古き混沌へと飛び込むのでした。
混沌の苗床へ / 古き混沌へ
『DARK SOULS 2』、 DLC 3 弾、その最終決戦。そして、ああ、見よ。この圧巻の多人数バトル。
総力戦
『DARK SOULS 2』は、ソウルシリーズという限定されたシステムの中でどれだけ拡張的な遊びが出来るかを試みた作品だったと思っています。古き混沌での総力戦はその総決算だったと言えるんじゃないでしょうか。
かくして無尽蔵にも思える灼けたロイエス騎士たちを倒し続けた先、遂に白王は姿を現します。「白」の名を持つ王は、しかし今や灼け焦げ、完全に正気を失っているのか、或いは失って尚、王は混沌に何人も触れさせまいと奮闘するのか。古き混沌の地で、今、解放の為の戦いが始まる――!
はい。まあここまではゲームやってりゃ分かる話でした。というのを踏まえてなんですが、さてこの白王なる人物、どうも女性なんじゃないかという話があります。
- 白王シリーズ
- 白王はその貌を誰にも見せなかった
- ロイエスの騎士たちもそれに従い 人前で兜を脱ぐことはなかったという
白王はその鎧の下の素顔を誰の目にも触れさせなかったのだそうです。そして目を引くのがこの装備の特殊効果。なんと装備中において敵を倒すことにより着装者の HP を回復する(吸収している?)のです。女性キャラクター限定で。ならば白王とは……。そんな発想に至れば、途端に「白王の冠」が女性用に見えてくるという寸法。どうでしょう、見えるでしょうか。
女性のもの……?
白王シリーズの効果についてはただのバグではないかなどと色々物議を醸し出していますね。まあ PS3 版から PS4 版にかけて修正されてないバグってなんぞやとは思いますが。加えて、個人的には白王女性説は面白いと思っていて、甲冑を纏い武器に光を纏わせ戦う白王の姿は、仮に中身が女性だとすれば、それは『1』の火防女が一人「暗月の女騎士」を彷彿とさせます。彼女の騎士にして火に近しい姿を白王の境遇へと重ねる、その為の類似、セルフオマージュの一種だったと見ることは可能です。
更に言うなら、王を求める闇の子たちの中で唯一アルシュナだけが王との間に友誼のようなものを結んだと仮定するなら、それは二人が女性同士であったことに由来するのかもしれない、などとまあ色々想像できてしまうわけです。
付け加えるなら、白王シリーズ曰く、ロイエスの騎士たちも王のように人前で鎧を脱ぐことはなく、またその鎧にも同様に「女性を限定とした回復効果」が存在しました。何ならロイエス騎士とは女性のみで構成されていたなんてことも考えて良いでしょう。夢がある。女騎士ルカティエルがこの地を訪れたことと何か関係があるのでしょうか。
フロムゲーは自社製品のセルフオマージュが散見することで有名ですが、『Demon's Souls』以来登場していなかった「女性限定装備」を久しぶりにやってみようか、という意図があったとしても不自然ではないと思います。
しかしですね、白王女性説に対する反論もちゃんと在って、例えば白王シリーズの英文テキストには男性代名詞が使われているじゃないかと。
- 白王シリーズ(英文)
- The Ivory King kept his countenance from his people, the Knights of Loyce dutifully followed suit, never unhinging their helmets in public view
- Armor of the ivory king of Eleum Loyce.
- The land of Eleum Loyce was a vast rampart built to contain the ancient chaos. The Ivory King placed his throne upon the very mouth of chaos and served as the first line of defense."
「his」。テキストにそう記述されている以上、白王は男性である、という主張です。
ですが性別が不明瞭である場合には 3 人称単数代名詞に男性のそれを用いる、という英文法上の通例も一応存在している点も忘れちゃいけません(最近は改められ始めているようですが)。つまり英文テキストの男性代名詞は必ずしも白王の正体に迫るものとは限らないと、こちらも反論が可能です。
もちろん逆も然りで、前述した根拠も白王を女性と確定させるものではないでしょう。白王シリーズ及びロイエス騎士シリーズが持つ女性限定回復効果を、果たして当の王や騎士たちは受けていたのか……とまで考えてしまうと、そんなものは誰にも知れたことではない。結局のところ、王と騎士たちの鎧の下に各々がどのような素顔を想像するかという話になります。
皆様はどうですか?
っちゅーわけで前置きはここまでにして本題、最後にこの話をして、広げた風呂敷を畳んでいきましょう。
「もう一人の白王」について。
シリーズ経験者に限った話でしょうが、この白王と、そして王と共に炎へと身を投じた騎士たち。酷似した伝説を我々は既に知っているはずです。
- 黒騎士シリーズ
- グウィン王が火継ぎに旅立ったとき 騎士たちは王を追い、再び熾った火に焼かれた
- 以来彼らは灰となり、世界をさまよい続けている
今では幾度も繰り返された火継ぎですが、その要となる薪の王には当然「最初の 1 人」が存在しました。偉大なるグウィン王です。そして王を追ったアノール・ロンドの騎士たちは、王と同じ火に焼かれ、灰となって世界を彷徨い続けているという。
似ているわけです。
片や最初の火の存続のため、片や暴走の火の封印という差異こそあれど、それは共に、「火へと身を投げた王と騎士たちの伝承」として似せられている。
そして極めつけとして、当サイトでも何度か申し上げていることですが、「グウィン(gwyn)」とはウェールズ語で、ある色を意味しました。そう、「白」です。白教の由来もここでしょう。
即ちエス・ロイエスの「白」王とは、それ自体がある意味でグウィン王の再来として設計されていたのだと考えます。
ならば古き混沌の決戦とは、「主人公と銀騎士 VS グウィン王と黒騎士」という構図を意識したものだったと言えるわけで、だったらあの気合の入りようも頷けるというもの。
大王とその再来
大王グウィン。『DARK SOULS』シリーズ最初のラスボスであり、そして最後のラスボスと言える存在でした。『2』製作時にどの程度まで先のことが考えられていたか本当のところは不明ですが、それでもシリーズを終えるにあたって、その最後の敵には大王の似姿こそが相応しく、そして最後の戦はグウィン戦の再演以上のものはあり得ないと、『3』で用意されていた構想が、少なくとも『2』の段階から意識されていたことが想像できます。
故にエス・ロイエスの王はその名に「白」を冠し、そして古き混沌での最終決戦とは、まさしく物語の幕引きの為の戦いでありました。伝説は繰り返されていく。尽きたかに見えた火が、その後何度も燃え上がるように。
白王、「白」の名を持つ王でした。