そういや黒騎士について書いてなかったので、思い出を振り返るって言うには変なタイミングですが、彼らの事をちょっと書いておこうかなと筆を取りました。『DARK SOULS』のアイコンとも言うべき、黒い騎士たちについて。
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ちなみに前回の記事もある意味で振り返り記事。別に意図したもんでもないので読む必要はないです。
忘れもしない。『DARK SOULS』初プレイ時、不死街の小橋を渡っている最中アイテムが落ちているのを発見しました。ちょうど眼下に視点を移動させないと見つからない位置で、当時は巧妙に隠されているように思えましたし、これは本作から導入されたジャンプ移動を利用するチュートリアル的な配置なんだと思い込み、だから頑張って成功させたわけです。結論を言うとそのアイテムとは「青い涙石の指輪」で、ご存じの通り向かい側から普通に歩いて取るアイテムでした。そして無理やりな辿り着き方をしてしまうと、基本的にはもう逃げられない作りになっていたんですよね、目の前の黒騎士から。だって飛べるように丁度いい位置が崩れてるんだもん。絶対わざとだって。「よく頑張ったね! 殺してやる」っつってゲラゲラ笑ってんだってフロムの奴らは。思えばあれが黒騎士との初遭遇。
いやあ泣ける話。涙石だけに。
さて黒騎士。ロードラン各地に配置された、「エリアレベルと釣り合っていない強モブ」。もっとも終盤までいくと黒騎士よりやっかいな敵がゴロゴロしているゲームでしたが、それでも最初から最後までその存在感は大きかった。理由は強さと、何よりもその名の通り黒く染まったビジュアルでしょう。そして火をテーマとするゲームにおいて、黒騎士の黒は火と紐づけられていました。
- 宮崎
- 「(省略)黒騎士については、使い方が変わっただけで、設定は変わっていないですけどね。グウィン王を追って、彼の継いだ炎に焼かれて、以来世界をさまよい続ける騎士たち」
- 初山
- 「銀騎士から黒騎士に変わったっていう設定にも、気づいてくれたユーザーさんがけっこういらっしゃるみたいで。この模様は、焼かれちゃったときに出てきたんだって言ってる人がいて、ああ、わかってくれる人がいるんだなって」
(『DARK SOULS DESIGN WORKS』より)
余談ですが初期案では黒騎士は設定通り「さまよう」キャラクターだったらしく、常に徘徊していて、どこで遭遇するか分からないようにする予定だったらしいです。怖すぎ。
- 黒騎士装備(『3』)
- 世界をさまよう黒騎士たちの〇〇
- 最古の王グウィンに仕えた彼らは王の火継ぎを追って火に焼かれ以来灰となってさまよい続けているという
旅のはじまり
インタビューを併せて読むと黒騎士は「はじまりの火によって黒焦げた」と解釈できるかもしれませんが、個人的にはいまいちしっくりきません。というのも黒騎士とはそも、ロードランにおける対デーモンの部隊だったようです。
- 黒騎士の盾(『1』)
- ロードランをさまよう黒の騎士たちの盾。
- 表面に流れる溝が深く彫り込まれている。
- かつて混沌のデーモンと対峙した彼等の盾は全身に黒ずみ、炎に対して高い防御効果がある。
- 黒騎士の斧槍(『1』)
- ロードランをさまよう黒の騎士たちの斧槍。
- 混沌のデーモンと対峙するための武器。
- 大きな動きから体重をのせた攻撃は、かつての彼らの敵の強大さからくるものだ。
少なくとも盾はデーモンによって焦がされたものでした。盾だけ黒焦がされた銀騎士たちが、後々の火継ぎの余波で全身も黒くなった……というのは、ちょっと不自然な流れに思えてしまう。シンプルに考えてデーモン狩りの過程で盾を含めて全身が黒く染まったと考えた方が自然じゃないかなーっていう。もちろん身体を焼かれないための盾だったと考えてもいいのでしょうが……これは解釈の問題でしょうか。
また黒騎士の武器にはそれぞれ「デーモン特効」が付帯されています。実際のところ『DARK SOULS』劇中に炎を放ってくるデーモンが全然いないのでイメージし辛いかもしれませんが、あれらは混沌の炎から生じた獣であるが故、それを狩る騎士たちは自ずと炎熱に相対することを余儀なくされたはずです。インタビューの通り、彼らは最初から黒騎士であったのではなく、闘争こそが騎士たちを黒く染め上げ、鍛え上げていったのだと考えます。デーモンこそが黒騎士を作ったわけです。
そんな混沌の炎に耐え抜いた歴戦の黒騎士たちではありましたが、継ぎ火はそんな彼らをも灰に変えました。炎に耐える者を、しかし焼き尽くす。「はじまりの火」がどれほどまでに別格であったか。全てはそれを理解させる為の導線だったのだと解釈しているのですが、如何でしょうか。
というわけでそんな黒騎士たちですが、『DARK SOULS 2』では武器のみ出演したかと思えば、『3』で御本人が再登場しました。不死人への問答無用の斬りかかりは健在ですが、デーモン遺跡にて異形を、ファラン城塞にてダークレイスと敵対したあたり、デーモンのみならず、アノール・ロンドと敵対し得る者たちを延々と狩り続けていたとも考えられます。もっともその頃アノール・ロンドは……。王を失い、王が継いだ火も消えかけた世界で、帰る場所すら失った彼らは永遠に戦い続けなければならないのでしょうか。
とんだブラックですよ。黒騎士だけに。
しかし、或いはそんなこともないかもしれない、というのが今回お伝えしたいこと。先ほど引用した「黒騎士の斧槍」ですが、『3』では不思議に「黒騎士のグレイブ」と名を変えて登場しました。
- 黒騎士のグレイブ
- 世界をさまよう黒騎士達のグレイブ
- 混沌のデーモンと対峙するための武器
- 自らよりも大きな敵と戦い続けた故だろうか 独特の攻撃は、敵の強靭度を削る力が強い
黒騎士武器の中で、唯一の変更です。特にテキストの内容で何かが示唆されているでもなく、ただ名前だけが変えられた。何故かと考えてみて、恐らく単純な言葉遊びだったのかなと思い至りました。
とても、とても単純。黒騎士のグレイブが落ちていた場所は無縁墓地でした。墓地……そう「グレイブ(墓地)」です。つまるところ無縁墓地とは黒騎士たちにとっての「グレイブ(墓地)」だったのだと、そういう意味になります。はい。今回ダジャレ言い続けてたのはそういうこと。
ちなみに通常の斧槍「グレイブ」は、グレイラットに不死街へと盗みに行って貰うことで売り出すようになります。不死街とは不死を葬る場でもあり、それ故に埋葬者の遺灰が手に入りました。不死街にグレイブがあったのは、つまりそういうことなんでしょう。『DARK SOULS 3』におけるグレイブとは、常に「グレイブ(墓所)」の暗示だったわけです。
灰となった後、仕えるべき王もいない世界で戦い続けた黒騎士。彼らは混沌を追い、そして混沌とは、やはり最初の火と共に消えていく定めでした。そうして戦う理由さえも消えて。やがて語り継ぐ者すらも絶えて。時代と共に在った黒い騎士たちは、時代の終わりに、ただ静かに闇の中へと消えていくのでしょう。
そこは縁もゆかりも失った者たちの墓所(グレイブ)。寂しい結末ではあるのでしょうが、それでも戦い続けた者たちへ、最後には眠る場所を用意してやりたかったフロム・ソフトウェアの計らいだと信じたい。『DARK SOULS』の、恐ろしくも頼もしい立役者たちへの、これが手向けとなるでしょうか。
火は消える。旅は終わる。黒騎士たちは、ここに眠る。
旅のおわり