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ウーラシールについて知る

おはようございます。今回は知ってるようで何も知らないウーラシールという国について、今更ながら紐解いていく回となります。

教えてウーラシール! ねえ教えてくれよ!

あ、もう滅んでたわ。

DLC はいつの出来事?

意外と知られていない、というより意識されていない事実として、ウーラシール攻略は「本編の数百年前」だったりします。なぜって公式サイトにそう書かれているから。

『数百年前に滅んだとされる過去世界ウーラシールでの冒険』

公式サイトより)

劇中でも色々と決着がついた後、宵闇さまも仰っていました。

ウーラシールの宵闇
「あれは何百年も前、ウーラシールでのことです」

言葉の印象だけで語るなら 300 - 400 年前ってところでしょうかね。

気になるのは劇中のあれこれの、どのタイミングなのかという部分。ここに関しては多分に推測になってしまうのですが、少なくとも最初の火継ぎが行われた、つまり大王グウィンが薪の王となった後ではないかと考えています。根拠として挙げたいのは次のセリフ。

ゴー
夕暮れには、手前勝手な感傷を、しかし抑えがたく懐かしむのだと」

かつてグウィンは火の陰りを察知し最初の薪の王となりました。繰り返しになりますが、恐らくこの本編より数百年前の時点でグウィンは火継ぎの旅に出ているか、既に終えているのでしょう。と言いますのも、太陽の光の王グウィンが名の通り太陽そのものになぞらえられるのであれば、だからこそゴーはグウィンが火に身を捧げ、今や半ば故人となっている状況を指し「夕暮れ」と口にしたのではないかと考えるからです。

さらに根拠を挙げるなら、エリザベスのセリフのこの部分。

エリザベス
「あなた、とても先の人ね。それにとっても人臭い」

人とは元より不死でした。火の陰りが人を呪われた不死に変えてしまうのではなく、不死たる人を恐れた神による「火の封」が解除され、元の姿に戻っているだけ。であるなら、我々が人らしいと信じている定命の姿は、むしろ人の本質から遠ざかっていると言えます。それを知るエリザベスにとって、だからこそ不死である主人公は「人臭く」感じたのではないでしょうか。

従って DLC 時点、本編より数百年前において既に火継ぎは終わっており、不死のいない世界に紛れ込んでしまった主人公は、それ故に「人臭かった」。もちろん通常の不死よりソウルや人間性を溜め込んでいるという意味とも取れますし、一概に時期を特定できるものでもないのですが、ゴーの「夕暮れ」発言と合わせることで、「DLC は火継ぎの後」という推測に多少の確度を与えてくれるのではないかと思います。

また考えてみればゴーの幽閉にもキナ臭いものを感じます。

ゴーの兜
彼をただの巨人に貶めんとする者により 名高い「鷹の目」に用意されたはずの覗きは 樹脂により、すべて隙間なく潰されている
ゴー
「兎がいなければ、よい猟犬も不要なものだ。…煮られぬだけ幸運というものさね」

アノール・ロンドきっての英雄たる四騎士の一人「鷹の目」に対し、ここまで巨人差別の意志を露わにできるのは、それを咎める大王が不在である証拠と言えるでしょうか。

と、まだまだ四騎士周りは掘り下げる余地がアリアリなのですが、これ以上やると「ウーラシールについて」ではなくなるので、また別の機会に致しましょう。

ウーラシールの業

さてここからは別記事の内容と思い切り被るのですが、そちらをわざわざ読んで頂くのも忍びないのでもう一度やります。

ウーラシールには特別な業が存在しました。

照らす光
古い黄金の魔術の国 ウーラシールの失われた魔術
光を生み、周囲を照らす
光を生み出す、単純な魔術であるが それこそが黄金の魔術の精粋であり 竜の学院は、ついにそれを実現できなかった

何とシリーズ通して最後までウーラシールだけの特性であった「光を生み出す」技術。以下二つの魔術がヒントとなるでしょうか。

歪曲した防壁(『DARK SOULS 2』)
周囲の大気に歪みを与える闇術
ほんの一刻、スペルを弾く
闇術師ギリアには、ただひとりとして弟子はおらず、その業が伝えられた経緯も謎に包まれている
あるいは闇の術とは、どこか別のところから 生まれたものなのかもしれない
歪んだ光壁(『DARK SOULS 3』)
古い黄金の魔術の国 ウーラシールの失われた魔術
光を歪ませ、魔法を弾く
光を扱う魔術の中でも、秘術にあたるひとつ
基本法則が一瞬に捻じ曲がるとき すべての幻はその行き場を失うのだという
歪曲した防壁
歪んだ光壁

歪曲した防壁 / 歪んだ光壁

同じ効果を持ち、ビジュアルも両極端でありつつ同様のもの。さっさと結論を書いてしまいますが、誰も知らぬウーラシールの魔術の秘密とは、「闇から光を生む」ものだったのではないかと考えています。

だが、いつかはじめての火がおこり 火と共に差異がもたらされた

熱と冷たさと、生と死と、そして光と闇と

(『DARK SOULS』OP より)

「最初の火」によって灰色の世界に色が付き、あらゆるものに差異がもたらされたわけですが、特に光と闇は元々強く結びついたものの一つだったようです。ならば光を知る為に最も近い経路は闇の中にあるはず。だって二つは同じものだったのだから。

ウーラシールの宵闇
「ウーラシールの魔術は、この時代のそれとは、少し違うようです。私にもうまく言えないのですが…ウーラシールの魔術は、なんというか、寛容で、クスッ 少しいい加減なところがあるのですが 貴方の時代の魔術は もっと真摯で、自己以外を拒絶するように見えるのです。思えば、とても興味深いことですね…」

以上のことからウーラシールの光の魔術とは、人なら誰しもが持つ人間性の闇に触れた結果だったと考えます。それが尋常の発想の外側にあり、或いは倫理を踏み越える行い、その先にしかなかった境地であるなら、黄金の国ウーラシールには、宵闇も知らない影があったのでしょうか。

だとしてそんな国の直下にマヌスの骸が眠っていたのは果たして偶然であったのか。もしくは何かの意図のもとに興ったのか。ここは想像するにも手が出ませんが、闇の中に光を見たウーラシールは、終にはその権化とも言える者の死体を漁りました。

ゴー
「貴公も、おそらくは目にしているだろうが 友アルトリウスを蝕んだ深淵の闇は いまやこの国、ウーラシールを飲み込もうとしている。…おそらく、滅びは避けられまい。だが、たとえ、闇の蛇に唆されたとして 彼らは自ら望み、あれを起こし、狂わせたのだ。…滅びは自業というものだよ…」
素晴らしいチェスター
「深淵など、まさにウーラシールの自業自得。出っ歯の大蛇に謀られ、墓を掘り、古人の躯を辱めるなどまさに恥知らず、愚者ではないか」

墓暴き、死体漁りを行ったうえで、更に「何か」やってますね。

マヌスなる人物(?)に元々危険が無かった、とは思いません。恐らく何か深淵の主に成り得るものを宿していたのでしょう。しかしウーラシールは眠っていたものをわざわざ起こしてしまった。そしてその上で「何か」を施している。黄金の国が滅んだのは、その業の結果だったのです。

ただ一つ黄金の光を手にした魔術の国。その秘密が推測の通りであるなら、その末路は最初から定められていたのかもしれません。

マヌスの欲したもの

ところでウーラシールの宵闇って結局なんなの? と思いませんか。

宵闇の頭冠
ウーラシ−ルの姫君たる宵闇に 誕生と共に与えられた、特別な魔法の頭冠

姫君ですって! いや普通にテキストに書いてあるだろと言いたくなるかもしれませんが、殊更劇中で強調されることでもないですし、意外と見過ごされてるんじゃないかと思い改めて取り上げてみました。宵闇が名前なのか、特別な立場や能力を有した者を意味する符丁なのかまでは分かりませんが、とにかく偉い人だったみたいです。宵闇の女王なんてのもいたんでしょうか。

んで。なぜ深淵の主マヌスがウーラシールの姫君を連れ去ったのかについてですが、以下のテキストを頼りとしたい。

深淵の主マヌスのソウル
それは尋常のソウルではなく どろりとして生あたたかい、優しい人間性の塊である
マヌスは、古くとも明らかに人であった
人間性を暴走させ、深淵の主となった後も ずっと寄る辺、あの割れたペンダントを求めていた

マヌスとペンダントの関係については……分かるはずがありません。しかしマヌスが、暴走した後も残る執着のままに手を伸ばすのだとすれば、宵闇をさらった理由もまた同様に彼の人間性を由来とするのでしょう。墓から掘り起こされて狂うまでの間、宵闇との間に何かあったのかとも思いましたが、それにしては宵闇からの言及が何も無いのが気になります。

もしかすれば彼の記憶の中だけにある何者かと宵闇の姿を重ねたのか、或いは「ウーラシールの姫君」という存在の中に、マヌスの渇望を満たす何かがあったのか。今となっては分かるはずもない。

黄金の国ウーラシール

ところでこれはウーラシールというより深淵についてなのですが、深淵というものは宿った者の理性を侵す性質を持ちました。

肥大した頭部
深淵の主マヌスの闇に飲まれ 人間性を暴走させたウーラシール民の頭部

この「人間性の暴走」とはマヌスのソウルにもありました。(宿)主に獣のような狂暴性を与える、これが深淵の、いえ、闇が元来持つ恐ろしさなのでしょう。

そう、それはアルトリウスも同様でした。最古の深淵の監視者であり、狼騎士と称されたアルトリウスは、しかしマヌスによって敗れます。深淵によって染め上げられた彼は、明らかに尋常ではない狂暴性のままに我々へと向かってきます。人でないが故に人間性を持たない狼騎士ではありますが、出自に関係なく闇とは理性を侵し暴走へと導いてしまう。

もう一人闇によって暴走した者を挙げるなら、後々、『DARK SOULS 3』に登場するゲール爺でしょうか。深淵ともまた違う、もしかすれば深淵よりも深い原初の闇、「暗い魂」を宿した奴隷騎士は、まさに獣と見紛うほどの挙動で我々を襲いました。アルトリウスとゲール爺の開戦前ムービーを見比べると、その類似にニヤリと出来る人も多いでしょう。

ということなのですが、せっかくなので最後に深淵の犠牲者をもう一人挙げておきましょう。ウーラシール市街から深淵の穴に至る道中で待ち構える謎のモブ「鎖巻き虜囚」です。

チェインド・プリズナー

鎖巻き虜囚

このモブ、意味が分からなさ過ぎて様々な憶測を呼んでいるようですが、今や一番有名なのが「正体がアルトリウス説」でしょうか。この仮説に関しては賛否があるようで、個人的には「否側」なのですが、それでも「鎖巻き虜囚のモーションがアルトリウスに似ている」というのは良い着眼点だと思っています。

そりゃ似てると言えば似てるんじゃないでしょうか。アルトリウスも虜囚も、共通して深淵に侵されているのだから。

両者の動きの共通項は、たぶん深淵に染め上げられたもの特有の狂暴性だと解釈します。だから虜囚のモーションがアルトリウスに似ているというよりも、両者ともに深淵の主マヌスに似ているとした方が個人的には飲み込みやすい。

どうです。如何ですか。敵のモーションひとつとってもここまで解釈が分かれるのです。これだから考察遊びは止められねぇんだ。

で、重要なのは鎖巻き虜囚の動きだけではなく、そもそもこいつが何者で、なんであそこにいたのかという点。考えて欲しいのが、深淵の穴の篝火周囲が牢獄であったこと。鎖巻きにされた虜囚は、この牢獄から抜け出してきたと考えるのが自然です。

墓から掘り起こされたマヌスから深淵が広がったのなら、その場所に近い牢獄と、そこに収容されていた虜囚たちが最初に影響を受けてしまった。アレはそんな「深淵による憐れな犠牲者」なのでしょう。

たぶん。きっと。それ以上のことはないはず。

……いやね、虜囚が元は犯罪者であり、それ故にウーラシールの地下に幽閉されていたのだとすれば、巻き込まれた事に同情の余地があるとはいえ、これも自業自得なのかもしれません。しかしちょっと穿った見方をするなら、もちろんこれはあの国が人間性の研究をしていたという仮説を前提にしての深読みなんですが……ウーラシールは人に宿る人間性、これをどこから調達していたんでしょうか。

臆病者の紫水晶
「試練の戦い」から離脱する
その戦いは古来アノール・ロンドへの道であり 既に管理者なく、その本分が失われた今でも 離脱するの者は臆病者の誹りを免れない
故に、この紫水晶は軽々に使用すべきでない
仮そめでも、戦いに意味を求めるならば

ウーラシールという国には闘技場が隣接していました。闘技とは試練であり、それは古くアノール・ロンドに至る道だったそうで。それは神の都に至る試練を管理するという、大変な栄誉があの国にあった証なのかもしれません。

その上で素朴な疑問なのですが、あの決闘で敗れるとどうなるんでしょう。勝った闘士はもしかすればアノール・ロンドに辿り着ける。では、負けた者は? あの時代に不死はいないと前述してしまった手前、敗れた者はただ死ぬと解釈するべきなのでしょうか。

チェインシリーズ
製造難度、防御力、重さのバランスがよく 人の世界ではひろく普及している防具
騎士たちは見栄えもよい甲冑を好むが 戦場にある戦士にはどうでもいいことだ

鎖巻きの虜囚。鎖に巻かれていることからのユーモアでチェイン装備を落とすのか、それとも元々どこかの戦士であった示唆なのか。

まさかね。そんなことは無いとは分かってるんです。なのでこれは一応確認の為に聞くんですが、「寛容でいい加減」な、黄金の国ウーラシール……負けた闘士を別の目的の為に回収してませんよね

教えてウーラシール! ねえ教えてくれよ!

あ、もう滅んでたわ。

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