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ジャンケン対決終了後インタビュー : キュアピース

キュアピース氏は「伝説の戦士プリキュア」と呼ばれるボランティア団体の一員で、日夜世界の平和を守っているらしい。何とも可愛らしい正義の味方だが、ヒーロー(?)だけあってプロフィールは非公開。分かっているのはアニメ(※1)や漫画、ゲームが大好きな七色々丘中学校の 2 年生で、家庭科部と漫画研究部を掛け持ちしているという事だけ。漫研所属という所からも分かる通り、絵を描くのが大の得意で、最近では何と某有名漫画雑誌の賞に佳作で入賞(※2)したらしい。他にも料理に洋服のデザインから役者など、マルチな才能はとどまることを知らない。今回のインタビューでは、新人ジャンケニストにも関わらずあのサザエさんに勝利した心境や、対決に至った経緯など、全てが謎に包まれた彼女の素顔をつまびらかにしていく所存だ。

※1 アニメ : 『鉄人戦士ロボッター』がお気に入りの様子。またアニメでは無いが特撮番組『太陽マン』のファンでもあるようだ。

※2 入賞 : 『ミラクルピース』。自身の理想とするヒーローを主人公とした漫画。

最初何が起きたか分からなかった

――この度は優勝おめでとうございます。

キュアピース(以下 : CP) あ、はい! ありがとうございます! よ、よ、よろしくお願いします!

――そんなに堅くならなくていいですよ(笑)

CP す、すみません慣れてなくて。

――(笑)。では早速ですが、勝負を終えてみての感想など……

CP 緊張しました! あとすっごく楽しかったです!

――対戦相手のサザエさん氏に対する印象などをお願いします

CP 最初にこのお仕事を頂いた時はもう、なんていうかびっくりしてしまって。「本当に?」「私が?」って。だってあのサザエさんですよ!? 初めてプリキュアになった時よりよっぽどビックリしましちゃいました。

――周囲の方々はどんな反応をされてました?

CP ママは声もでないみたいでした。でも「胸を借りる気持ちで頑張ってきなさい」って言ってくれて。友達も応援してくれました。

サザエさんに勝っちゃった、どうしよう

――優勝したとお知らせした時はどのような反応でした?

CP ママ倒れちゃいました。

――ええ!?

CP なんて嘘です(笑)。でも腰を抜かしてしまったみたいで、家に帰ったらおでこに冷えピタ貼って寝てるんですよ(笑)

――さぞ驚かれたでしょうね。ご友人たちは?

CP 私よりもはしゃいでましたね。私は、なんていうか最初何が起きたか分からなかったんですけど、友達の様子を見て初めて実感が湧きました。「あー、勝ったんだなあ」って。でも何だかいけない事をしてしまった気もして。私なんかがサザエさんに勝っちゃった、どうしようって。でも友達が「一生懸命やったんなら、みんながウルトラハッピーだよ」って言ってくれたんです。

プリキュアが戦う理由と同じ

――対決する上で心がけていた事などはありますか?

CP 要所要所でチョキは出せって「上」から言われてたので、せめてそのタイミングは読まれないようにって思ってました。でもサザエさんには完璧にバレちゃってたみたいですね。

――「サザエさん氏は手加減していた」なんて意見もありますが、対決した実感としてはどうですか?

CP うーん……手を抜いたとかわざと負けたっていうのとは違うと思います。上手く言えないんですけど、 SVC って私とサザエさんの勝負っていうのと別に、やっぱりサザエさんはいつもどおり「みんなとの勝負」もしなきゃいけない訳じゃないですか。私に対して手を抜いたっていうよりは、「両方に全力を出す為に」いつも以上の力を出してたんじゃないでしょうか。どっちかの為にどっちかを犠牲にするんじゃないんですよね。それって私たちプリキュアが戦う理由と同じなんですよ! あとやっぱりプロって凄いなって思ったのは、サザエさんはこのジャンケン対決を通してみんなを楽しませようって工夫もしてたと思うんです。それが分かったから、私はもう、絶対に全力を出し切ろうって思いました。サザエさんみたいにあれもこれもっていうのは無理だと思ったので、せめて絶対に勝ちたいって思いました。

――その「全力」が終盤の「タイムアウト戦術(※3)」に繋がった訳ですね。出来れば詳しくお聞きしたいのですが。

CP 実は友達に提案されたんです。「ジャンケンしない事もまた道」「直球を投げるだけが直球勝負じゃない」「熱血パワー」って。もしかしたら卑怯なんじゃないかって、ギリギリまで決心が付かなかったんですけど……別の友達が言ってくれたんです。「勝ちさえすればウルトラハッピーだよ」って。プリキュアが負けるなんて許されないですもんね。

――ちなみにキュアピースさんは漫画をお描きになるそうですが、解説役の岸辺露伴(※4)先生の作品はお読みになりましたか?

CP 『ピンクダークの少年(※5)』大好きです! 友達と一緒に「ピンクダーク展(※6)」も行きました! あの、実はこの対決が始まる前までは読んでなくて……聞いた事はあったんですけどちょっと絵が恐いっていうか……。でも対決が始まって、解説者の方が岸辺露伴先生だって知って頑張って読んでみようかなと思ったら……もうすっごい面白くて! 一気に読んじゃいました! そう言えば知ってます? 露伴先生は皇帝ピエーロ(※7)に地球を砕かれた時も平然と原稿を仕上げてたんですって。でも出版社が粉々になってて結局入稿できなかったってエピソードがあるんですよ!

――『ピンクダークの少年』は現在第 8 部まで連載中ですが、何部がお好きですか?

CP え〜(笑)。 4 部……かなあ。「日常感」っていうか、普通に暮らしている日常の中に事件が隠れてる感じが好きですね。私も学校に行ったり友達と遊びに行ったりしてると急に怪物が殺しにかかってくる毎日だったので、共感できるというか(笑)。舞台になったっていう町(※8)にいつか行ってみたいなあ。もちろん他の部も大好きです。

――最後になりましたが、何かひと言お願いします。

CP ピカピカぴかりん……ジャン、ケン、ポン(チョキ)! キュアピース! ありがとうございました!

※3 タイムアウト戦術 : 終盤戦においてキュアピース氏がとった戦法。サザエさんと 1 勝差がついたとみるや否や、彼女はジャンケンをやめた。

※4 岸辺露伴 : 27 歳。漫画家。週刊少年ジャンプで『ピンクダークの少年』を連載中。尊敬する人物はこせきこうじ。家は焼け、最近では山を買って破産するなど壮絶な人生を送る。この度のジャンケン対決では解説役を担当していただいた。

※5 ピンクダークの少年 : 岸部露伴が現在週刊少年ジャンプで連載している作品。デビュー作であり代表作でもある。

※6 ピンクダーク展 : 岸部露伴デビュー 10 周年を記念して開催された原画展。 M 県 S 市と東京の 2 ヶ所で行われた。代表作『ピンクダークの少年』を主に、デビュー当時のカラーイラスト、書き下ろし原画等の展示がなされた。

※7 皇帝ピエーロ : キュアピース氏の所属するグループ「スマイルプリキュア」最大の敵。地球を砕いてみせたという。終盤、キュアピース氏の「タイムアウト戦術」を破るべく、一度はプリキュアの変身を解除する等善戦したものの、ジャンケンをさせるまでには至らなかった。

※8 舞台になったっていう町 : M 県 S 市紅葉区杜王町。『ピンクダークの少年』第 4 部と第 8 部の舞台のモデルになった。元々観光地として有名だが、一時期は変死体や行方不明者が続出したり、町全体に奇妙な曰くつき名所が点在していたりと、何とも観光し甲斐のある町だ。名産物は牛たんのみそづけ。