劇場版 HUNTER × HUNTER 緋色の幻影(ファントム・ルージュ)
総括 : なかなかお目にかかれないクオリティの映画でした。
- まず「緋色の幻影」というタイトル、宣伝の打ち方、「元旅団」「クルタ続滅亡の真相」がどうのという前情報によって「これはクラピカの物語なんだな」と思った人間は、その浅はかさを猛省していただきたい。与えられた情報だけで全てを判断しようとするのは凝り固まった先入観であり差別偏見の苗床であり戦争の火種であり思考停止であるからです全員死にます。
- クラピカの過去に触れ、キルアの内面の掘り下げもやる。両方やらなくっちゃならないのが作り手の辛いところだ。で、結果どうなったかというと、主題がブレにブレてどちらも中途半端になりました。彼氏彼女と大人の事情。うーん。
- 商業的に旨みがあり、利便性の高い「人形」という能力・テーマに「熱を持たない闇人形」を絡めたのは理解できるんですが、ただキルアをこの時点で掘り下げた所で、イルミの呪縛から解放されるのは先だから発展のさせようもない。みんな辛い。みんな苦しい。
- そういえば CM でダウジング・チェーンを使っていたシーンがあったと思いますが、本編では使われてませんでしたね。そういうことしちゃうんだ。
- 新アニメ版はゴンとキルアのホモセクシャル描写に余念が無くて微笑ましいですよね。興奮するよ。
- レオリオの口頭及び回想で「目を失ったクラピカに何があったか」を説明しだした時に目を疑いました。こんな構成があんのかと。重要な導入部に成りうると思うんですが……。なんか、ここも含めて「途中まで作っていたものを別のものに変更した」臭いがするんですが、勘ぐりすぎですかね。
- ビッグバン・インパクトがまるで放出系。
- 「破岩弾」がオーラ纏ってんですけど、こんな技だっけ。老いぼれのなまっちょろいスタンドを触れるまでも無く倒せる的な技だと思ってたんですが。
- ゴンとレツが友達になり、キルアが嫉妬する流れが予想できた時点で「うへぇ」となったのですが、その直後に訪れる展開には素直に清涼感があって良かったです。
- 「なーんだ、女か。じゃあいいや」
- マチといい、キルアはおっぱいを触りすぎだ。
- 劇場版で解決する筈のない「キルアの闇人形問題」に食らいついてまるで離さないイルミ。しかもこいつ本物じゃないんで、緊張感が、ちょっと。この人形を何とかするだけでもうちょっと全体的な流れがスマートになった気がします。
- ただ「邪悪なイルミに純粋なゴンの瞳」「パウロに親友クラピカの瞳」という対比構造はグッドだったと思います。この部分を基点に作劇したら良かったのでは。
- レツとオモカゲに繋がりがある事をゴンが見破ったくだりが性急過ぎて驚きました。その事実を示唆する描写はちょいちょいあったのですが、「観客が気づいているから」登場人物にも気づかせるというのはあまりにあべこべで悪夢を見ているようでした。これがメタ描写ってやつですかね。多分違うと思います。
- レオリオがあんな刃渡りの短ェナイフで敵の木剣を受けだしてビックリしました。そりゃ負けんだろ。そもそもナイフってそう使うんじゃないと思うけど、そのようなつまらない固定観念を覆そうとする強く前向きな意志を感じました。
- え? レオリオだって一応「纏」が使えるんだから、ナイフより「纏」で受けた方が賢い選択だったんじゃないかって? 得物は木剣だし、相手は念能力者じゃないんだからって? ええい、言いがかりはやめてもらおうか。
- 劣化コピーとは言え念能力者の従僕を作り出し、それらを取り込む事で自分の能力として行使できるチート能力者オモカゲさん。何がチートかって、特に誓約や制約が無かった事でしょう。『HUNTER × HUNTER』及び念能力の独自性は発動条件が極めてロジカルな点にあると思うのですが、そこら辺の「らしさ」は消え失せていて残念至極。ただここら辺、文字表現を多用できない映像作品でやるのが難しいのは理解しているつもりです。
- TV アニメ版では能力名を『イナズマイレブン』宜しくの表現方法で演出しているのに、本作ではその手法を一切取っていない辺り一貫した思惑を感じます。感じるんですが、だから何なのかと言われると困ります。
- 意地でも「視聴者が見たことのあるもの」の範疇でしか戦闘を展開しない点にパズルゲーム的要素を感じて楽しかったです。ただのパンチを「廻天(リッパー・サイクロトロン)」と言い張る点にも注目。ファンサービスとは良く言ったもの。
- あれ? 「インドア・フィッシュ」って密室でしか使えな……んでもないです。
- かつては旅団でありクルタ族滅亡にも関わっていたのに、現メンバーではないので、旅団ハンティング用の能力が使えないジレンマ……そんな展開を期待していた時期もありました。
- 仮初めとは言え、記憶そのままのパウロに自分の目を与えた事で達成された「親友の目の治療」という悲願。偽物なのは分かっている、しかし、という戸惑い……そんなものは序盤に会話だけで解決したるわ!
- ノブナガ登場シーンで絶対に尺八が吹かれるのは間違いなく『続・夕日のガンマン』の踏襲、いや『エクスペンダブルズ 2』の踏襲……いや、この映画がオリジナルというべきでしょうかね。もう何書いてんのか分からなくなってきた。
- 主題歌の『REASON』は掛け値無しに良い曲で、しかしそれが驚くべきタイミングでかかり、炎上する館をバックに物語が何となく畳まれます。シリアスな笑い。こういうアプローチもあるんだな、表現というものには無限の奥行きがあるんだな、と感心させられました。
- お、カイト。
- おお、劇場版第 2 弾ですか。はあ。
- 「驚愕! 冨樫義博 一問一答」は勿論面白かったのですが、最後の解答の畳み方と、その真下に太字で刻まれた「冨樫先生ありがとうございました!」が何だか笑えました。
- 帰宅途中にコンビニに寄ったのですが、漫画雑誌を立ち読みをしていたホームレスから放たれていた強烈な悪臭が印象的でした。外は寒いですからね。
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