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『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』 第 26 話「『愚者(ザ・フール)』のイギーと『ゲブ神』のンドゥール その 2」

場所は砂漠で水が敵。恐怖のンドゥール戦後半でございます。果たして盲目のスタンド使いが敵に触れることなど可能なのか。出来る、出来るのだ。はい。

敵が音を探知していることに気がついたアヴドゥルは、その性質を逆手に取った戦術を行使する。火と水、ドゥルとドゥールの熱い知能戦だ。しかし不足を知る者は「足る者」。読み合いを制したのはンドゥールであった。視覚という弱点を有する故に得た長所は、聴覚だけに留まらなかったのだろう。自身の弱点を弱点のままにしなかった精神性こそが彼にスタンドを与えた原点だったのかもしれない。後半戦開幕に相応しい強敵である。

そんな訳で、花京院に続きアヴドゥルもやられてしまった。アヴドゥルに至っては再加入したばかりだというのに。ジョースター御一行様の頭脳担当が二人も……あ、いや頭脳担当じゃないの一人だけだった。じゃあ平気だ! しかし平気であって平気ではないので、我らが承太郎が走り出す。無策の蛮勇、否、イギーの探知能力にしっかりと気づいていた。なんたる不良の抜け目無さ。火と水の戦いは水の勝利に終わった。次は砂が挑む。半ば強制だけど。

さあここからが熱い(砂漠だけに)。狙い撃つシューターと、接近を試みる近接能力者の攻防。しかも新キャラの能力お披露目も兼ね、かつ二人掛かりに対して一歩も譲らない敵の手強さ、そして『ジョジョ』伝統の早打ち対決と、イギーと承太郎の交流。凄まじい熱量だ(砂漠だけに)!

「愚者」は空も飛べる。といっても滑空することしかできないが、それでも足音を判断材料とするンドゥール相手には非常に効果的だ。しかしンドゥールはそれで終わる男ではない。承太郎が行ったただ一度の着地で大まかな位置を探り当て、更に砂を巻く。潜水艦が海中で音を発し、その反射音によって岩礁などを探るように、ンドゥールもまた音によって外界を見極めるのである。吸血鬼並の探査性能だ。

狙撃(シュートヒム)!

抜群の精度を誇るスタープラチナも、同程度のスピードを持つゲブ神に対し後手に回ってしまえば、圧倒的に不利と言わざるを得ない。しかもこのクソ犬、裏切りやがった! いやそもそも向こうに仲間意識は無いだろうから、責めるのも酷というものか。だが事態は絶望そのもの。どうしよう。承太郎が出した答えは簡単だった。「犬(イギー)だぜ」 投げるッ! 犬をッ! スタープラチナの鬼のようなパワーの前では、掴んでいるもの全てが必殺の投擲武器と化す。これにはンドゥールもビビッた。遠隔操作型最大の弱点、「本体を防御するために遠い距離を呼び戻さなければならない」事態である。惚れ惚れするようなパワー・プレイ。スタープラチナはこの強引な逆転劇があるから怖いのだ。

防御は間に合った。また承太郎の位置を割り出し、攻撃に転じなければならない。だが時すでに遅し。両者の距離の差はゼロになっていた。だが勝敗は未だ決しない。ゲブ神は遠隔操作型であるものの、近距離戦も十分にいける。むしろ本体に近い分、更にスピードとキレが増しているかもしれない。だからこそ追い込まれてなお、あのスタープラチナに対して戦意を維持できるのだ。ここの自ら杖を倒すシーンは最高に格好いい。

緊迫感が伝わったのか、イギーが震えて縮こまる。そして緊張に耐えかね、吠える! だが両雄動かず。凄まじい集中力。杖が倒れる寸前、二人は同時に抜刀し、勝利したのは承太郎であった。直後のスタープラチナの雄叫びは非常にレアな光景だ。海の中でも取らなかった帽子が取れたことといい、承太郎も内心ではギリギリの戦いだと感じていたのではないだろうか。いや「手加減した」って言ってたわ。

ともかく勝負はついた。命を奪うつもりは無かったが、ンドゥールはしかし自害した。自らのスタンドで自分の頭を貫いたのだ。ここから結構しぶとい気がするけど、細かいことを気にしてはいけない。ンドゥールは死よりも DIO に失望されることを恐れた。その口から語られる残り八人のスタンド使いとは、彼のように DIO に心からの忠誠を誓った者達ばかりなのだろうか。……そうでもないな。

お前も大変だよなとイギーを許す承太郎。すっかり萎縮してしまったように思えたイギーだが、承太郎に対して悪戯で返す。なんという食えないヤツ。パーティーメンバーとしての資格は十分だろう。

To be continued……と見せかけ、まだ続く。オインゴ・ボインゴ・ブラザーズである! これがどういうことか分かるだろうか。来週はギャグ回だ!

ところで細かい追加点として、承太郎から逃れようとグライダーを出したイギーが、この時地味に身代わりの砂人形を作っていた。後々のための布石として、こういう描写は嬉しい。特にンドゥールが使用した「砂を巻き上げる戦法」はその時を想起させるものでもあるので、尚更組み込んだというのはあるかもしれない。

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