「わたしは DIO 様のために闘いに来たのではないッ! 生まれついての『賭け師(ギャンブラー)』だから闘いに来たのだッ!」 つまりはそういうことである。「『オシリス神』のダービー」ではないッ。「ダービー・ザ・ギャンブラー」なのだッ!
ところでダービーが「世界」の正体を把握していたのはなぜだろう。少なくともホル・ホースは知らなかった。九栄神は知っていたのだろうか。アレッシーは知らない気がする。オインゴ・ボインゴ兄弟も知らない気がする。「アヌビス神」は知っていたっぽい。エンヤ婆も知っていた。プッチも知っていた。ケニー・G は微妙。ジョンガリ・A は……まあ知らないだろう。ヌケサク? 誰それ。今後登場する側近レベルの者達は皆知っているのだろうか。「世界」は最強のスタンドである。「理解されたからといってどうなる」類の能力ではない。しかし自らのスタンドをべらべらしゃべる DIO というのも想像しがたい。思うに、エンヤ婆のように(恐らく)発現に立ち会うか、 DIO がやろうとしている何かに深く関わっていて知る必要があった人物か、もしくは自ら「見破る」しかないのではないだろうか。ダービーはどれか。恐らく「見破った者」ではないか。ダービーって奴はどうしようもないから、 DIO という超人にギャンブル勝負を挑んだ、いや、挑まずにいられなかったに違いない。容易に妄想できる。そして負けた。 DIO もそういう場面ではあっさり能力に頼ると思うので、その時にダービーは「世界」の恐ろしさを知ったのだろう。ホル・ホースも片鱗を見ただけで心が折れていた。ダービーという男は凄まじい男だ。スタンド使い同士のスタンド戦だろうが、ギャンブルに落としこんでしまう。だが「世界」が相手ではそうもいかなかった。賭けに生きて賭けに死ぬ男が、圧倒的なスタンドパワーで、賭けにならない戦いを強いられたのだ。きっと、あの常軌を逸した恐怖の根源はそういったところにあるのではないだろうか。
だが承太郎は違う。主人公の宿命通り、相手の土俵で勝利を収めてみせた。敵の得意手を真っ向から乗り越える承太郎たちと、敵対する者共の頂点に座する DIO 。決戦の時が迫っている。