この世で一番強い動物でございますか。ライオン……ゴリラ……いろいろございますなァ……。ただ――たった一つだけというのならやはり……スタンドが使える動物でございます。
イギーは NY の町から無理矢理砂漠まで連れてこられて DIO 討伐に協力させられるという、考えてみれば結構可哀想なやつである。しかも前回に至っては捕獲者であるアヴドゥルから「役に立たない」とか言われる始末。おまえーっ。おまえ……人間がなーっ。犬をなーっ。しかし御存知、イギーは結構活躍している。だめ押し担当というか、オチ担当というか、ともかくこの犬がいなければ、一行はもうちょっとだけ手こずっていただろう。人知れず、そして多分自覚も無しにクソ犬は一行をサポートし続けているのだ。だが、イギー自身はともかく、「スタンド使い」としての戦闘描写は非常に少ない。というかまともにスタンドを出してすらいないし、初出のンドゥール戦ですら、ほぼ承太郎のサポートに徹していた。「ザ・フール」はどんな戦いができるのか、というのはここまでにあまり語られていないのである。もしかすると、元々スタンドに頼った生活を送っていなかったのかもしれない。 NY で野良犬界の頂点に君臨していたらしいが、のし上がるのにスタンド・パワーは使わなかったのではないか。一睨みで凶暴な犬をビビらせていたこともあるし、むしろ「犬としての強さ」がスタンド発現に繋がったのであって、スタンド使いであることがイギーの強さを支えているのでは無いのかもしれない。かっこいいぜイギー。職業はルンペンだぞ。
そんなイギーの前に、ペット・ショップなる鳥野郎が現れた。同じ動物のスタンド使いだ。イギー曰く「負ける気はしない」が、わざわざ戦ってやるつもりもない。この強力なエゴと、ドライな性格が、砂のスタンドを形作っているのだろうか。しかし通りがかった少年の命が危ない。他人などどうでもいいと無視する素振りを見せたものの、次の場面、イギーはペット・ショップの前に立ちはだかっていた。果たして少年が犬好きでなければ、イギーは無視を貫き通したのだろうか。彼の心は計り知れない。だがそんなことができるような犬であれば、イギーは「クルセイダース」に名を連ねていなかったと思うのだ。