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『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース』 第 48 話「遥かなる旅路 さらば友よ」

ところで「世界」の背面にはボンベのようなものがくっついている。友達と「背中のこれなに?」という話になったのだが、まさに「酸素ボンベ」ではないかと思う。「時を止める」というのは、ダイバーが水中へ潜り続ける様に似ている。恐らくはそのイメージから「世界」は酸素ボンベを二つも背負わされたのであり、承太郎の言う「水の中に 1 分しか潜ってられない男が…」に繋がっているのだろう。この決着は、荒木先生の中で計算されていたものなのだッ! 後の「ダイバー・ダウン」は同じコンセプトをより直球に表現したものだと考えると面白い。じゃあ腰のところについてるやつなんだよって? これはですね、あれですよ。その……「もなか」ですよ。お腹空いたら困るでしょ。

本題

くだらねえ話はやめろッ! ピンチをチャンスへと転換し、 DIO はジョセフの血を吸った。 DIO はかねてより「まだ回復しきってねーわー」と漏らしていた。ならばこの展開は至極自然なもの。敵が不完全な状態で勝敗を決するという展開は、少年漫画ではありえないのだ。カーズが究極進化を成し遂げたように、 DIO もまた体力全開最強状態へ己を押し上げた。しかし承太郎もまたパワーアップを果たしていた。祖父が惨たらしく吸血される有様を目にしての怒り。その精神テンションは正しくスタンドへ反映される。両者最高に「ハイボルテージ」というやつだ。

ハイボルテージ状態の二人は、ともに「静止時間」が延長された。 DIO は 9 秒。承太郎は 2 秒である。伸び率自体は承太郎がやや勝るが、元々の時間が短い分、差は更に開いてしまった。だが承太郎が明確に勝った部分がある。「スター・プラチナ」のパンチが「世界」のパンチを砕いたッ! ラッシュ対決時は拮抗していたパワーも、怒りの精神テンションによって、「スター・プラチナ」が上回ったのだ。これはとても大きい。静止時間で勝る DIO、パワーで勝る承太郎。普通に考えて前者の圧勝かと思われるが、しかしそうとも言い切れない。なぜか。「世界」が近距離パワー型だからだ。花京院の時とは違う。対象に認識されずに接近するということができない今、 DIO は「近づかなければ勝てない」のだ。そして承太郎は DIO にとって「一撃必殺」に等しい威力を、二秒も行使することができるのである。例えまだ圧倒的優位にあるとしても、 そんな相手にうかつに近づくのは賢い者のすることではない。だから 7 秒の優位を利用して更に更にナイフを投げまくってェ――! とはならなかった。 DIO が用いた方法は、ナイフでもなく「空裂眼刺驚」でもなくタンクローリーでもなく、ロードローラーであった。素直にナイフを使えと思うだろうが、彼らにとっての「二秒」である。 DIO がどれほどナイフをばらまこうと、今の承太郎ならばその圏内より脱出することは容易いと見たのだろう。ならば、だ。「スター・プラチナ」の拳を 2 秒以上やり過ごすことが可能で、後はそのまま攻撃態勢に移行することができる、即ち「遮蔽物越しに殴り抜ける」ッ。これこそお互いの静止時間差、そして静止解除後の物性すら考慮した、合理的戦術の極みなのだ。

もう駄目だ。一分の隙もない。第三部完!? 否ッ! 押しつぶされたと思わしき承太郎は、しかし DIO の背後を取っていた。 DIO の静止時間限界である 9 秒の時点で時を止め返していたというのだッ! 最高に燃える展開……え? おかしくないかって? 承太郎は 2 秒使い切ったはずなのに、その直後にまた 2 秒止めてるのはなぜだって? 4 秒止めてんじゃねえかって? この点に関しては諸説ある。各々検索するなりして読み込んで欲しいところだが、個人的に「こういうことなのでは」と納得している推論を述べようと思う。

「時を止める能力」と「止まった時の中を動く能力」は、別なのだ。思い返してみよう。秒数で劣る承太郎は、常に DIO の時止めに対応すべく能力を発動してきた。よって最後のこの部分、承太郎は初めて自発的に「動いている時を止めた」のである。時を止める能力と止まった時を動く能力を別のものと考えると、合計 4 秒は妥当ではないだろうか。やったね。一片の不自然さもなく全て解決……ごめんなさい、嘘です。この考えでは、承太郎が止めた 2 秒の中を DIO が動けなかった理由が説明できない。いや、直後の「スター・プラチナ」の時止めの中、鈍いながらも DIO が動作できていたということは、意外とこの考えで正解だったりするかもしれない。とまあ、推論の余地があり、厳密な決着がついていないのが現状なのだ。しかしながら、色々と述べておいて何だが、きっとそういうことではないのだ。「なぜ DIO は敗北したのかッ」。それは承太郎がはっきりと断言している。『ジョジョ』とはロジックで勝敗が決まる。より先のことを想定した者が勝利する。『ジョジョ』とはそういう作品だ。そういう道のりだった。しかし最後の最後、この瞬間だけは違う。なぜ DIO は負けたのか。承太郎は言った。「てめーは俺を怒らせた」。とどのつまり、それだけだ。

さて、こうして 50 日間に及ぶ、 50 話近い旅は終わった。失ったものはあまりに大きい。だが失われようとしていたものを取り戻すための旅は、無事目的地にたどり着けたと言っていいだろう。 100 年に及ぶ因縁はこうして決着の時を迎えた。だがしかしその残滓、因縁を「受け継ぐ者」との戦いは、これから始まるのだ。第 3 部完、そして。

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