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『響け!ユーフォニアム 2』 - 「そんなに頑張らなくていいのに」

この作品は一貫して「我慢を強いられてきた人」への、「我慢を強いてきた張本人」による、「なんで我慢しちゃったの?」という残酷さで構成されている。そしてその残酷さは事実でもある。だから一たび「あなたのためだ」と反論しようものなら、「誰も頼んでないですけど」という最強の一撃が見舞われる。そしてそれは正しい。「やるしかなかったこと」というのは、原則的に報われないようにできている。それが嫌なら最初からやらなければ良かったのだ。「なんで我慢しちゃったの?」 でもえてして、そういう場で手を挙げた人というのは、挙げざるを得なかった訳で……。しかも引き受けたからといって資質が備わっているとも限らないし、適当なタイミングで横から口出してくる奴に限って上手い事回してみせてくれちゃったりするし……。いいですね、このストレスのかけ方。大なり小なり誰にも身に覚えはあるのではないでしょうか。

だけどこういった報われない生き方が報われる方法は 3 つある。 1 つは、酔うこと。「自分はなんてかわいそうなんだろう」 その陶酔は一時でも気を紛らわせてくれるはずだ。そして 2 つめは、目に見える形で成果を出すこと。スーパーマンになること。それでいいっ! それが BEST! みんな感謝してくれて、ハッピーエンド。けどそうはならないんですよ、大抵の場合は。だから殆どの「我慢してきた人」が取れる方法は、結局最後の一つしかない。それは、「全て自分で選んで決めた」のだと納得することだ。報われないと知りながら、「それでも」と腹を決めることだ。この方法は強い効力を持たない。環境は変わらず、周囲は依然として残酷なままだろう。報われる方法といいながら、何一つ報われない方法かもしれない。むしろ「あなたのためだ」と食い下がる権利すら剥奪される。だけど、胸を張ることはできる。「自分は逃げなかった。立ち向かったのだ」と、自身を規定することができる。無意味かもしれない。しかし間違いなく「高潔」である。『響け!ユーフォニアム』は、弱さゆえに流されるしかなかったと自他を責める者たちが、自身の強さに気づく物語だ。そしてこの先もずっと、戦い続けるしかないと知る物語なのだ。

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