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『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』第 37 話「王の中の王」

何度も同じ事を言うのは無駄だから嫌いな新入り v.s. 大事なことはしつこいくらいに何度でも言うボス

正直トリッシュの中に潜んでいる間、ディアボロであればジョルノ達を一人ずつ殺せていけたと思う。それが「矢」を追う為に「二の次」を追わず、結果としてその判断がディアボロを追い詰めた。運命を騙る者が、気づけばこうして追い詰められている。吉良もそうだった。お前もそうなる。個人的に好きなのは、ブチャラティが「レクイエム」を消滅させる際にディアボロが本気で説得し始めるところ。「俺が正しいという事に、どうか気づいてくれ」と心から思っていなければ出ない行動だと思う。 6 部でプッチ神父も幸福論を盾にエンポリオを説得していたが、『ジョジョ』の敵は基本的に自分こそが正義だと信じている点が良いのだ。一番強くそう信じるものが、その部のボスとなる。

さてボスは逃げる判断をする。一端退くべきだと。さすがだ。正しい。暗殺を恐れるお前の能力が一番暗殺向きなんだ。次の暗殺チームのリーダーはお前しかいない。だが娘に煽られ、ボスは逃げる事を止める。逃げる事は「絶頂」に背くと思ったらしい。だが考えようによっては、ディアボロの生き方は困難から逃げ続けてきたものとも言える。それを少しでも自覚していたのなら、また結果も変わったかもしれない。

という事で、本当は立ち向かってなどこなかった男が立ち向かう判断をした途端に全て零れ落ちていく。人間、慣れない事はするもんじゃないのだ。そして「矢」はジョルノの手の内にあった。そして申し訳程度のピンチの後に現れる……「ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム」。明らかに空を飛んでいる。これだけでスタンドパワーが推し量れるというものだろう。ここからはもう闘いではない。「真実から出た『真の行動』は決して滅びはしない」。これが第六部の総括であり、この結論に対しボスが如何に抗うかという運びだ。そして依然無敵に思える「キング・クリムゾン」は、しかし何の役にも立たなかった。如何なる力だろうと、どこにも到達できない。それが「ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム」なのだ。

どうも、「レクイエム」と化したスタンドは元の能力からの進化という感じがしない。その点が、同じように「矢の二度刺し」で更なる力を引き出された「キラー・クイーン」との違いだろう。思うに「スタンド」が「そばに立つ者」であるのに対し、「レクイエム」は「何者をもそばに立たせない」、独立したエネルギーなのだ。本体は必要ない。従って誰からの命令も強制も能力も受け付けない。「シルバー・C・レクイエム」が世界中の生物を変態させようとしていたのは、「矢」のウイルスが生物の進化を促す、その意志に形とパワーが与えられた結果なんじゃないだろうか。スタンド使いは、スタンドの先にあるものを産み出す苗床。何を言ってるのかわからねえが、とにかくディアボロは次回、そんな大いなる意志の眼前に立ってしまった報いを受ける。拡大版でまた会おう。

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