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ドラマ『岸辺露伴は動かない』 第二話「くしゃがら」

ドラマ『岸辺露伴』禁止用語”くしゃがら”を調べる人続出 NHK も注意書き「視聴者の皆様の安全のため」

原作は『岸辺露伴は叫ばない 短編小説集』収録の「くしゃがら」より。ある日露伴は同業者である志士十五から奇妙な話題を持ちかけられる。「禁止用語リスト」。失踪した担当編集者から渡されたものらしい。下らないと言いつつリストを眺める露伴だが、一つだけ理解できない言葉があった。「くしゃがら」。十五もまた、その言葉が気にかかるのだという。ネットにも文献にも存在しないその「禁止用語」は、徐々に十五を蝕んでいき、やがて……。

いやー、参った。くしゃがら面白かった。演者の力に依る部分は勿論大きかったのだが、何より「ルール」を順守した作劇が最高に『ジョジョ』。大抵の物事は「ヘブンズ・ドアー」を使って書き込めば解決してしまう中、「使ってはいけない言葉」は「使えない」から「書き込めない」という、あくまでルールに基づいた危機が露伴を追い詰める。一話と二話のスパンでよくもこうまで自然な形で危機感をパワーアップさせてきたものだ。結局のところ今回の山場は「禁止用語を使わない」やり方で割とあっさり解決できてしまったわけだが、後日談によって「問題の根深さ」が煽られるのも最高。「ヘブンズ・ドアー」は自分に対しては使用できないと考えていいし、(『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』ではうっかりと自分に使用していたが)たぶんドラマ版でも同じ扱いだろう。そういう意味でもルールの強固さが旨味として効いている。『岸部露伴は動かない』はこういう形で「根っこからは解決しきれない問題」が登場し、露伴にも解決する気はさらさら無い。なので今回の話は『ジョジョ』本編というより、『岸部露伴は動かない』っぽい出来で、最高にくしゃがらだった。ラストの貼り紙もディ・モールトくしゃがら。ああ、それにしてもくしゃがらが存在しない言葉でくしゃがら良かった。実在しないという保証が無ければ、こんなくしゃがらな内容のストーリーを安心してくしゃがらすることは出来ないだろう。

追記 : 十五にくしゃがらを押し付けて難を逃れたかに見える元編集者だが、その後どうだろうか。原作未読ではあるが、思うに症状が緩和したのは「リサーチの手間を他人に任せた」ことと、「十五なら辿り着くだろう」という安心感からであって、くしゃがらへの好奇心自体は消えていない気がする。当の十五が全て忘れてしまったのであればまたぶり返してくるんじゃないだろうか。露伴がそこまで気を回すなら彼は助かるだろうが……うーん、くしゃがら。

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