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ドラマ『岸辺露伴は動かない』 第三話「D.N.A」

ドラマ『岸辺露伴は動かない』第 3 話「D.N.A」場面写真 10 点公開

『岸部露伴は動かない 2』に収録された一編が原作。露伴の担当編集である泉の恋人、平井太郎は 6 年前の事故で記憶を失っていた。露伴に催眠術の心得があると知り、泉はその技術で平井へと働きかけてくれないかと持ち掛けるのだが断られてしまう。一方、片平真央という女の子がいる。少女は特異な瞳を持ち、そして何故か言葉を逆さまに喋るのだ。そのような普通でない娘と母(真依)は寄り添って暮らしていたが、ある日親子で外出した先で太郎と出会った。真央は太郎に対して奇妙な反応を見せ、そして偶然に出くわした露伴は、それを見逃さなかった。

面白かった。ただやや強引な点も目立ったかなという印象。例えば露伴が片平親子に興味を持つ部分にしたって、「なんかおかしい」という直感的な理由で家にまでいきなり押しかけている。コロンボばりの疑い深さだ。だったらいっそのこと、原作にもある真央の透明化を先に目撃させてしまった方が、露伴が興味を持つ流れとしては自然なものになったんじゃないだろうか。あとは「ヘブンズ・ドアー」で対象が丸ごと本になってしまう描写。ラストの「飛び出す絵本」の連結シーンをやりたかったのかもしれないが、「これまでは何で一部分だけだったの?」という点が気になってしまって刺さらなかった。或いは抽象的なシーンでしかなく、現実には顔だけが捲れていたのかもしれないが、どうにも細かい整合性が気になってしまった。しかしだ、意欲的な試みであることは間違いない。「飛び出す絵本」のシーンにしたって、それだけ取り上げれば「最終話」を飾るに相応しい、目の覚めるようなアイデアだ。せめて一話か二話の間で一例でもいいから「人を丸ごと本にもできる。疲れるからやらないだけ」みたいな描写を差し込んでおいてくれれば……と思ってしまうのだが、細かい部分を気にしすぎているだろうか。ともかく文句をつけてしまったものの、全体的に良い改変だった。正直原作の「D.N.A」は分かりやすい話ではなかったので、遺伝子に纏わる因縁を精子バンクから臓器移植にすり替えるだけで、結構まとまりがよくなるもんだなと、偉そうにも思わせて頂いた。

総評として、ドラマ『岸部露伴は動かない』は非常に素晴らしい出来だ。実写映画の続編が望めないのなら、こういう形で定期的に供給して欲しいと願わざるを得ない。

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