観てきたので軽く感想をば。
以下ネタバレします。
「ゴジラ−1.0」公開、興収 82・5 億「シン・ゴジラ」動員対比 265% ロケットスタート
つまらなかった……とまでは思わないんですが、ちょっと話の筋が酷かったかな。
まずフックとしてゴジラを序盤に登場させるのは良いとして、そこから再登場までが長すぎる。自分は怪獣映画の人間パートが邪魔、という類の過激派でもないんですが、この映画に関して言えば「人間ドラマ」が悉く退屈。もっと言えば戦争・終戦という舞台装置が大きすぎて、そこに思いを馳せる瞬間はゴジラの印象が消えるんですよ。「ゴジラ映画」を観に来たのに。戦争と言う手痛すぎるダメージに、更に容赦なくゴジラという脅威を被せていく、このコンセプトが上手く機能しているとは言い難いかなと。少なくとも相乗効果は感じませんでした。
で、海での対峙、銀座での大暴れ。ここは良かった。海中でおっかけてくるゴジラ本当に怖いし、熱線を放って出現したキノコ雲を見上げるゴジラの絵面などもなかなか観られるものじゃない。ここの為だけに観に行くのはアリだと思います。とても良かったですね。
問題なのはゴジラ討伐作戦から先です。深海に沈めて圧殺する! 絶対に成功するのか? 予備作戦がある! ……じゃあ本作戦失敗するの目に見えるじゃないですか。で、作戦準備の傍らで神木隆之介が特攻の準備を進めるわけですが、じゃあ予備作戦も上手くいかないのが読めるわけじゃないですか。そんで特攻する気まんまんの神木隆之介を置いて、機体を補修中の青木崇高が意味ありげにシートを眺める……脱出装置でも仕込んでるんだなって予想つくわけじゃないですか。これを丁寧な伏線とか前振りと呼ぶのは結構ですが、観ている側を馬鹿だと思ってないと書けない脚本だなーと非常に白けさせられました。(しかしシナリオというのは子供にも分かるように書けとも聞くし、これが正しいのか? 分からない。そういや神木隆之介は銀座で被爆していたような気がしますが、なんだったのあれ)
やっぱり「人間ドラマ」部分が単純に好かない類のものでしたね。政府を批判しておきながら民間の「自助」で作戦をあそこまで奇麗に完遂させてしまうのは、回り回って現代のアレコレを肯定してしまっているようで。ゴジラ映画を作る上での腕の見せ所になっている熱線ギミックや、砕け散るゴジラなど、絵面としては非常に良いものが揃っていただけに残念に思ったかな、結局は。
或いは神木隆之介を酷い目に合わせたいという方向で味を出すシナリオにするなら、決着後にしかし復活したゴジラが、ワダツミ作戦から一人も欠けずに生還した仲間をあっさり皆殺しにして、再会した浜辺美波も子供も熱線で焼き払って、もうどうにもならなくなったゴジラに対しアメリカに原爆をもう一発落として貰ってようやく討伐! そうしてやはり最後には一人生き残ってしまった神木隆之介の慟哭をゴジラの断末魔に被せて終劇……とかで良かったんじゃないですかね。まあ露悪が過ぎるかこれは。最後のアレは恐らく表層的にはハッピーエンド、よく考えると不穏……という両得を狙ったエンドなのでしょうが、そこも含めて自分には余り刺さらなかったかな。個人的にはあらゆる方面に対して物足りなさが勝つ、そんな映画でした。
いや、絵面は本当に良かったんですよ……。