2024 年 9 月 の一、二週 - 「努力だけが私たちをやっと家族にするの」
- 『ホーキーベカコン』完結。読了。『春琴抄』を原作としたコミック作品。……いや、わかる。分かるんだけど、『シグルイ』をやりたい気持ちをもう少し抑えてほしかった! ただこれは「『シグルイ』のオマージュは否応なしに面白くなってしまう」受け手の、こちらの責任であるところが大きい気もする。加えて言うと、シリアスに振れるシーンの前振りとしてのキャラクターのコメディ仕草が(悪い意味で)滑稽に映り、全体的に演出や引用が上手くキマっていないといった印象です。面白かったけどね。
- アニメ『僕の妻は感情がない』。この種の、「人間が被造物に思いを向ける作品」に登場しがちな、その倒錯を「悪い事だ」と指摘するキャラクターがいよいよ登場……してのコレ。凄いシーンだ。人が被造物を対等な存在だと言うのは易いが、それは人の側が「対等な権利」を一方的に剥奪できてしまう状態とも言える。こんな不平等な「対等」があるか? と。そしてこの問いが、この後のお母さまの「家族が家族の所有権を所持していてはならない」に繋がるんですが、それに対するミーナの返答が、良い。「仕事を奪わないでください」。この、平等不平等という一連の視点すら人間本意のものでしかない。ロボットにとって与えられた仕事を遂行することこそ至上命題であり、それは人から見れば寂しい物言いかもしれないけれど、それを寂しいというのは人間でないものを人間のフレームに押し込めることでもある。だから、これで良いのだ。
- と、同時にタクマを自分の第一所有者でいさせてくれという、ロボットからの「お願い」が発せられた瞬間でもある。そこに要求する者がいて、理解を示す者がいる。現状想像できる中で、限りなくベターな形での「対等」だと思います。
- それにしても、名言しか言わないタクマのお母さまの「他人同士が暮らすから上手くいかない事ばっかり」のシーンの表情、もうちょっとなぁ……。ここの、これまで色んなことがあって乗り越えてきたであろう人の、多層の感情が綯交ぜになったここの表情をさ、アニメで見たかったんですよ。
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