『映画大好きポンポさん』を観ったぞーっ!!
2021.06.30
観てきました。
作画良し、キャラクターに声がついて動いて良し、この度のアニメ映画化は大変喜ばしく、それだけに中身は駄目でしたね。原作はスピンオフ合わせて全部読んでいるんですが、映画版に関してはどうにも口に合いませんでした。予告を劇場で観た時から嫌な予感はしてたんですよ。余計なことしてくれているんじゃないかと。予感は正しかった。
なんと言えば良いのか。正しくニュアンスが伝えられている自信は無いんですが、この映画って「足し算の為に引き算をしてる」んですよ。本作は 90 分の映画だったんですけど、ベースである原作 1 巻の内容的にはそんな長尺には成り得ないんです。 60 分か、下手したら 45 分くらいに収まってしまう。しかし原作再現という意味でも「90 分」に仕立てる必要があり、だから原作に無い要素を付け足すことになるわけですが、よりにもよってその付け足したシナリオが「何を犠牲にしても削れ」なの、こんなチグハグなことがあるのでしょうか。有り余る素材を編集の技術によって 90 分に収めることと、無い土を持ってきて 90 分の山を作る。数字の上では同じ「90 分」でも、その意味はまるきり違う。それでいて「原作通り」だという顔をしているわけです。全く美しくない。
というかジーン君はあんなチンケなことで悩んだりしないんですよ。映画のクオリティの為なら自分の体はもちろん、他人の存在ですら結構なところまで差し出せてしまう狂人なので、その結果として編集で悩もうが、それは「嬉しい悲鳴」以外のものではないはずなんです。一応 3 巻では若干そんな素振りを見せるっちゃ見せるので、もしかするとあのシーンを膨らませた結果なのかもしれませんが。
極めつけはポンポさんの脚本ですよね。「この脚本には足りないものが」……なんて有り得ないんですよ。ポンポさん天才なんですから。これはキャラ設定というより、あの物語世界における「ルール」であり「前提」と言っていい。本作の天才ってある種の舞台装置なので、そこは崩してはならない部分だと思います。原作に無いものを足したいがために、持っているはずの個性をキャラクターから取り上げるんだったら、それはあの原作でなくてもいい、ということになりませんか。
あと劇場によるのかもしれませんが、挿入歌がすげえ大音量でかき鳴らされるものだから後半のプレゼンシーンで登場人物のセリフが聞き取りにくくて、これはびっくりしましたね。
難点ばかりも何なので良かったところを挙げますが、ジーンくんが『マイスター』の編集を何パターンか見せてくれたシーン。あそこは素晴らしかったです。カット如何で印象が変わる、まさに映画を題材としたお仕事ものならではだったと思います。個人的には要らんシナリオを付け足すのではなく、ああいった映画製作の風景を見せる方向で盛り立てていってくれたなら、文句は無かったですね。あんま説得力無いでしょうが、別に「原作そのまま」を期待しているわけではないんです。「その原作でやる意味」さえ汲んでくれれば、正直どれほどクラッシュされていても楽しめるタイプなので。しかし本作はどうにも。
総評として、劇場版はアニメーションとしては上質。シナリオの膨らませ方にも無理は無かった。ただその結果「『ポンポさん』ではないもの」が出来上がるなら、あんまり褒めたくないなあというのが正直なところでした。というか、そもそも「90 分」に拘る必要なんてあったんですかね。ジーン監督が気に入っているのは「そこに収めたこと」であって、「膨らませたこと」ではない。意図は汲みますが、「90 分」を「必要な尺」と捉えている時点で、本作は『ポンポさん』本編と同期が取れておらず、故に傑作には成り得なかったのだと思います。以上です。