梨花「これで……私ひとり。どうしてなの? ライトのいる雛見沢では、今まで見えていた筈の『選択肢』が見えない…。最悪の展開を回避するために行動しても、どうしてか人が死んでいく……。まるで『死』に引っ張られてしまうような…。なぜライトの世界に限ってそうなのか、原因も分からない。見当もつかない。竜崎の世界で色々な対抗策を学べたと思ったのに……。」
羽入「……。恐らく山狗に踏み込まれるまでにそう時間はかからないのです。」
梨花「隠れても見つけられる。警察に保護を求めても無意味。……いっそ自殺してみればいいのかしら。そうすればライトだけでも……。もしかしたら……もしかしたら……。」
羽入「梨花。」
梨花「……分かってる…打開策を得ないまま死んでも、また繰り返すだけ…。だけど! ……彼に死なれるのは……もう嫌ぁ……。」
羽入「梨花……前回、私たちはライトより先に殺されましたのです。だけど竜崎の明かした滅菌作戦が実行されたとすると、あの後ライトも同様に、雛見沢村ごと消されていた可能性が高い……。結局はそれだけのこと。私たちはライトが死ぬ場面を見たわけではないのですよ。ライトはもしかしたら…死んでいないのかもしれないのです。」
梨花「……。前回、ライト以外がみんな死んで、私は半ば自暴自棄になっていた。その上で護衛につけた警察を死なせるのは絶対に嫌だった。だから警察にも知らせず、ライトに『東京』のことを話しもせず、ただ、逃げた。……結局はすぐに捕まったけど。……最低の展開だったわ。沙都子を助けた時の手並みを考えれば、ライトは決して竜崎に負けてない、と思う。ライトに竜崎のように、警察を動かす力があれば……。」
羽入「……前にも同じようなことを考えていたのです…。でも、それは梨花の願望なのではないですか?」
梨花「………。」
ライト「おじゃましまーす」
梨花「! ライト!?」
ライト「家に閉じこもったままって聞いたからさ。……元気だせ、なんて言えないけど」
梨花(しまった……。私が家に残っているとライトが来るのか…。……そうよね。前にも仲間達がここに来てくれたことがあった…。ありがとう、ライト……。でも…)
「……巻き込みたくなかったのです。」
ライト「……僕たちだけになっちゃったね。」
梨花「……はい。」
ライト「ここに来て……本当の意味での『友達』っていうのが出来た気がする。なんて、言ったら臭すぎるのかもしれないけどさ。……。…だから……そんなこと……言うなよ…。力になれるかどうかは知らない。でも……。」
梨花「……はい。」
リューク『自分で殺っといてすげーな』
羽入「……。梨花……ライトに話すのです。やれることは全てやる……ではなかったのですか?」
梨花(……話したからどうにかなる? ……ううん、そうね。出来ることはなんでもやる。ライトなら、もしかしたら…!)
リューク(……この村の人間の寿命はみんな共通して異常に短い……。 最初から気になってはいたが……。そしてその期限は近い。もうすぐ何かが起きるのか……? ………面白ェー!)
梨花「話せる範囲で……話すのです。」
梨花「これが…『東京』と私の関わりなのです。そして奴らの予定では、恐らくは今日、ボクは…。」
ライト「……そんな組織があったのか……」
リューク『白々しいなー』
ライト「梨花ちゃんはずっと自分が殺される恐怖に怯えていたのか……」
梨花「あっ! ……ライト……苦しいのです……。」
ライト「ちくしょう! ふざけやがって! なんで梨花ちゃんがそんな目に……! どうなってるんだ!? 大切な人が、みんな僕を残して死んでいく…! 僕の所為だ、僕にもっと力があったら……!」
梨花(……。……。ライトは……優しいなぁ……。そう……私はこの人が好き。大好き。繰り返す生と死の中で嘆くことしか出来なかった私が、こんな気持ちを抱けた。こんなにも矮小な私だけど、ようやく生まれてきて良かったと思えた。この人の為なら何度だって死んでもいい。永劫の苦痛だって耐えられる。だけどもしも願いが叶うなら、私はこの人と一緒に生きていきたいです。ライトやみんなと部活やって勉強して、将来の事を悩んでみたり…。見たことのない未来を、この人の隣で見たいです。普通の女の子みたいに、好きな人の事だけを考えて眠りたいです。駄目でしょうか……神さま)
ライト(あっ…これはこれで気持ちいいな……)
ライト「……警察に保護を求めようとは思わなかったのか?」
梨花「………警察を信じさせるだけの材料が無いのです。警護を頼むくらいは出来るかもしれなかったのですが、……少数の警察官なんて、いないのと同じなのです。……山中に身を隠しても見つかります。どこにいても同じなら、少しでも居慣れた場所の方が考えが纏まるのです。………ライトが来てしまうとは思いもよらなかった。」
ライト「……。なるほど」
梨花「彼らは皆、自分達の経歴を偽ってこの村に来ていたのです。」
ライト「……。…!…。……経歴を偽って…?」
梨花「はい。彼らは全員、この世には存在しない人間の筈なのです。ライト、出来るなら今からでも逃げてほしいのです。最初からそう伝えればよかったのですが……全てはボクのわがままなのです。」
ライト「梨花ちゃんの話では……鷹野三四も『東京』の一員…山狗のまとめ役らしいけど…。」
梨花「え? はい……当然、鷹野三四なんて人間は存在しないのです。だからこそ自分の死体を偽装する、なんてことが出来たのだと思うのです。」
ライト「死体を偽装…だと…?」
(……どういうことだ? 確かに鷹野は僕が指定した死に方をしたはずだ。全てが梨花の妄想……いや、筋は通っている。……。待て……。待てよ……。まさか……?)
リューク『くっくっくっくっくっく……』
ライト(! ……リューク……知っていたな!?)
梨花「……ライト?」
ライト「………。……彼らの本当の名前を……いや…それは無理か…。奴らからしてみればいくら梨花ちゃん達が自分達と関わりがあるとしても、そこまで教える意味がない」
(まずい、まずい…どうする。仮に『東京』が梨花を狙っているのだとすれば、もう包囲されている可能性が高い。僕ならそうする。そして機密保持を謳うのなら、梨花が僕に『東京』の詳細を話した可能性を考慮され、僕を消しにかかってくるかもしれないじゃないか。……このクソガキ、余計なことを…! どうする……くそ! まずい状況だ…! 鷹野の偽装方法と僕の指定した死に方が一致していたなんて…そんな偶然……。せめて鷹野の本名だけでも分かれば、現場指揮が機能しなくなったことで山狗は撤退するだろう。ここを乗り切ることさえ出来れば後はどうにでも出来る……ちくしょう……どうすれば……! この村があまりにもぬる過ぎて油断した! ……どうする…!? 逃げることは出来る! どうとでも! だが、僕は神だぞ!? 新世界の神に逃げろというのか! ふざけるな!! ……! リュークに頼めばいい! リュークなら簡単に殺せる! 馬鹿が! リュークの性格を考えろ! そんなつまらない展開に乗るわけがない! そんなことを頼めば、それこそ僕がノートに名前をかかれる! 分かりきってるだろう! ……そうだ、レナは? レナの戦闘力なら切り抜けられる! そうだね、死んだね。沙都子! 沙都子はどうした! ご自慢のトラップを仕掛けろ! そうだね、死んだね。魅音……詩音は!? こんな時になにやってる!? 今こそ園崎家の力をそうだね、死んだね。うぐうううううううううううううううう!!!!)
鷹野「……何をしているのかしら。パソコン抱えて。」
L「ちょっと動画を落とそうかな、と。こう見えても私…蒼井そらのファンでして」
ワタリ「私は荻原舞の方が……。」
鷹野「梨花ちゃんはどこ?」
L「富竹さんはどこですか?」
鷹野「ここよ。もうすっごい重かったのよ。引きずっちゃったわ。許してねジロウさん。」
L「ところで……生きていたんですね。」
鷹野「何の話かしら?」
L「……。富竹さんは生きているんでしょうね。」
鷹野「何を言ってるの? もちろんよ。確かめてもいいわ。」
レナ「レナがいくよ。」
沙都子「レナさん……。」
ワタリ「いえ、私が…。」
詩音「………。」
ワタリ「……確かに富竹氏の生存を確認しました。」
鷹野「ね? 分かったでしょ? 梨花ちゃんは? 演舞がとてもかわいかったから、会いたいわ…くすくす。」
梨花「……ここなのです。」
鷹野「こんばんは…くすくす。さて、それでどうするのかしら?」
L「……本当に富竹さんをここに連れてきましたか。これで沙都子さんのスグカケツケールは役に立たなくなりました」
鷹野(思 い 通 り !!)
鷹野(お祭りの時……竜崎エルはジロウさんにわたあめをプレゼントしたわね。その時にこっそりとジロウさんに何かを取り付けていたのを私は見逃さなかった。沙都子ちゃんの事件は山狗の監視下にあったから、あの時に何があったのかも大体は掴んでいる……。だからその際にしようした発信機を今回も使うことは『伏線』として読んでいたわ。ここにジロウさんが来なかった場合の予備策だったんでしょうけど……はい、これで一個潰したわ。でもそれだけじゃないでしょう? ……くすくす。抱えているパソコン……ここの状況や私との会話、もしくは映像を入手し、P2Pにでも流そうとしていたのかしら? 残念だけど、それも読んでいる。対応策は既に完了している。他にも、この場で出来ることは沢山ある……。あなたのギミックは読みに読んでいるのよ。私の提示した罠にあなたは乗り、そしてそれを上回ってくる。なら、こちらはそれすらも想定して動けばいい。……ゾクゾクするわ。たまらない! でも……)
「そろそろいいかしら? 私のワンちゃん達が今か今かと待ち構えているのよ。出来ることは可能な限りやって御覧なさい。私は既に策を講じ終わっているけどね……くすくす。あはは!」
L「……。……。」
鷹野「さぁ、ワンちゃん達。……皆殺しにしなさい。」
L「!」
-数時間前-
L「魅音さん、リンゴ飴を買ったのですが、一ついかがですか?」
魅音「あ……ありがとう。」
L「……詩音さんに言われたことを気にしているのですか?」
魅音「………。」
L「……私は貴方の立場も気持ちも知り得ません。全世界の警察を動かせる権限を持ってはいますが、基本的には独断専行の人間です。魅音さんのように帝王学を学んだわけでもありませんし、必要なわけでもない。ですから全ては私個人の勝手な意見なので大変恐縮なのですが……」
魅音「……?」
L「魅音さんは、唯一部活メンバーの中で完成している、ということです」
魅音「え……」
L「人格的なことや能力的なことを言っているのではなく、貴方の在り方、というのでしょうか」
魅音「在り方…。」
L「魅音さんは部活ではとても意気揚揚としていて頼もしい風貌ですが、肝心な時に打たれ弱い」
魅音「あれ?」
L「固めた地盤が崩されると途端に力尽きてしまう」
魅音「あれれ?」
L「ヘタレ」
魅音「うぉい!」
L「空気が読めない」
魅音「…おーい…。」
L「これは全部魅音さんの弱点と呼べるものですが……。私に言わせればこんなものは些細な問題でしかない。魅音さんは身の安全が保障された温室でこそ、その真価を発揮するのですから」
魅音「それはおじさん……誉められてるのかな?」
L「もちろん。いいですか。貴方は命令を下す側の人間であり、下々の頂点に立つものです。こういう言い方をすると魅音さんはいい気がしないでしょうが……。安全な場所で、圧倒的な配下を従え、戦に勝利する。この在り方は『王』たる貴方にのみ許された特権なんです」
魅音「……『王』。」
L「続きます」
L「……レナさんらの気質や才能や持ち物に憧れ、嫉妬することもあるかもしれません。しかし精神的な成長だとか、意志だとか、そういった内面的なものでは勝ち取りえないものを、あなたは既に所持しています」
魅音「……園崎家。」
L「はい。確かに他の部活メンバーは美しく素晴らしいものを有している。それらは魅音さんの目にとても輝かしいものとして映っていて、対して自分の持つ家柄や技能はひどく即物的なものに見えてしまうかもしれない。……本来は、自分のものでは無かったはず、というのも加えて」
魅音「! エルちゃん…!」
L「貴方が人生の殆どをかけて自分に叩き込んできた知識、予め用意された財産、そしてそれを得る機会を持ちえた偶然……これらは全て魅音さんの『王者の才覚』です。部活メンバーは各々が自分の未来を模索する時期であり、言うなれば不安定と言えます。しかし魅音さんは違う。先に述べたように、そういう意味で貴方は完成している」
魅音「……他の生き方が出来ない、みたいに聞こえるなぁ〜。」
L「そうですか? 欠けているものは認識です。己が如何なる存在か、という認識。自分が本物か偽物かなんて、本当に大切なことですか? そもそも貴方は、この地球上で最も長く『園崎魅音』を続けてきた唯一の存在なんですよ」
魅音「……!」
L「継続は力、なんて言い方をすれば陳腐に聞こえてしまいますが、魅音さんが背負い続けてきた鬼や、架せられた努力は誰にも真似できることじゃありません。もちろん、魅音さんが他人と自分を比べてショボーンとしたりするのはご自由です。しかし園崎魅音という存在は、そんなものでは揺るぎようのないものをその骨子に据えている。私の個人的且つ勝手な見解ですが、つまりはそういうことです」
魅音「続くの?」
L「はい」
魅音「つまり……自信を持てってこと?」
L「まあ……要約してしまえば。ただ、自信を持とうが持つまいが貴方は変わりません。逆を言えば魅音さんはどう足掻いても園崎魅音でしかないのですから。時間さえ経過すれば魅音さんの立場はさらに強化されるわけですし。……それを生涯の苦悩とするか、それこそ私がどうこう言えることではないです。しかし」
魅音「私が何者であるかって認識を常に念頭に置いておかないと、いざという時に動けなくなる。」
L「……そうです。園崎家を全てひっくるめて魅音さんなんですから。それに引け目を感じたり、個人としての自身と分離させてしまうと、そのハツラツとした性格や頼りがいのある行動力やその他諸々の魅力が、半減してしまいます」
魅音「……うん。」
L「魅音さんの『魅』は、魅力の『魅』です。
魅音「……。…誉められたってことでいいんだよね?」
L「そうなんですか?」
魅音「うぉい!」
鷹野「……。……。……?」
L「……。」
詩音「皆殺しだなんて、おっかないですねー。」
沙都子「恐いですわー!」
梨花「……。……」
レナ「ワンちゃん……その響きだけでかぁいいんだよ〜☆」
ワタリ「お持ち帰りィィィヤァァッ! すみません、レナ様の台詞を……。」
レナ「レ、レナそんなこと言わないよ!」
鷹野「なによ、これ…! どうしたって言うのよ……! ………。………。………。ちょっと待って……。園崎魅音は、どこ?」
L「……聞こえませんか? 狂犬駆除の騒音が」
鷹野「!」
イヌA「園崎組だワン! すっげぇ数! 周囲を完全に囲まれ……アッー!」
鷹野「どういうこと!? どうして!」
イヌB「アッー!」
鷹野「それどうやって発音してんの!?」
L「残念でしたね」
鷹野「……! ぐっ……!」
鷹野「そんな……ありえない…。園崎魅音がここにいることは確認されていたはずよ……!」
L「そうなんですか?」
詩音「あー…ごめんなさい。それ私です。」
鷹野「……嘘よ……!」
沙都子「つまらない入れ替わりトリックに引っかかっちゃいましたわねー。」
レナ「一人ずつ外に手をふったとことで気づくべきだったんだよ。」
L「罠? 策? なんのことです? こちらはこういう状況さえ作れれば良かった。内通者の疑いを捨てきれないあなたがここに山狗を全員集めることは読んでいましたから。もっと高度な対応でも期待していましたか? ……でしょうね。だからこんな古典的な手に引っかかった。…大石警部ですか? ……はい。全て終わりました。古手宅にお願いします。」
鷹野「……園崎魅音がこれだけの人数を集めたっていうの……? 当主でもないのに…? それだけの根拠も無いのに…? あの、土壇場で力が出せない、甘えん坊の園崎魅音が…? 私の認識違いだったっていうの?」
詩音「いえ、それで合ってますよ。」
鷹野「え?」
詩音「この状況も、全ては憶測にしか過ぎない。あの鬼婆がこれほど迅速に、これだけの園崎組を動かすとはとても思えません。どうせまた、おっかなびっくり婆さまの顔色伺いながら、心臓バックバクいわせてお願いしたんじゃないですか? 泣き喚いて叫び散らして…怒られて怒鳴られて、もしかして爪剥がされたりしちゃったかもしれないですね〜」
レナ「……詩ぃちゃん……。」
詩音「でも。」
レナ「?」
詩音「泣き喚いたり叫び散らしたり、怒られて怒鳴られて、最悪、爪を剥がされる。言ってしまえばたったそれっぽっちのことですよ?たったそれっぽっちのことで、ここまでのことが出来てしまうんです。園崎魅音は……これほどまでの存在だったってことなんですよ。……すごいじゃん、魅音。」
L「いくら次期党首と言っても、魅音さんにここまでの人員を動かすのは不可能です。ですから、それが出来る方に『お願い』しに行って貰いました。それが叶わないならこちらの負け。ここまでスマートに決まったから良かったものの、神頼み……この場合は鬼頼みですか? とてもハイリスクな賭けでした。……勝ちましたけどね。……今でこそ白状しますけど、本当にピンチでした。ここで死ぬのかと思いましたよ。必死で策を考えました。こちらの策に対してあなたが先読みしていることも込みで、なんとかしてその上を行くために頭をフルに働かせました」
沙都子「……角砂糖をそのままガリガリ食べるくらい頭を使ってましたわね。」
L「はい。……しかし幾重の策を講じようとも、不安は拭えませんでした。
それもそのはず、そもそも鷹野さんが作り出した状況が前提にあるのですから、どれほど思考を構築しようとも全て想定されている……という不安です。そこで砂糖が無くなったんです。ワタリに補充させようと思い……気づきました。ここで考えるのを止めてみるのも一つの手なのではないのかと。私が考えることそのものが鷹野さんの策の内であるのなら、考えることを放棄してしまえば勝機が見えてくるのではないか、と。そこで魅音さんに全てを委ねることを思いついたわけです」
鷹野「……ッッッ!」
L「策と策をぶつけ合うという決戦場で人頼みですよ? そんなこと、高度な頭脳戦を望む鷹野さんは真っ先に捨てる選択肢でしょう。そう考えたらあとは簡単でした。頼まなくても仕組まなくても、貴方は勝手に脳内知略戦を複雑化してくれたんですから。読み過ぎましたね、鷹野三四。いえ、自分の人生に物語性を求めすぎたんです。神になる。しかしその直前に、世界最高の探偵なる敵が現れた。これは試練だ。神になる者には相応しい物語だ。……そんなところでしょう。残念ですが、あなたは神なんかじゃありません。ただの夢見がちな殺人鬼です」
鷹野「……!」
L「現実を飲み込めましたか? あなたの負けです。鷹野三四」
鷹野「……にゃ……。にゃああああああああああああああああ!!」
L「終わりましたね」
梨花「……はい…なのです。」
鷹野「そうそう……私がこんなことを企む原因になった、凄く泣ける過去話があるんだけど、聞きたいかしら?」
L「結構です」
鷹野「それは残念……くすくす。」
L「鷹野さん」
鷹野「……?」
L「……いえ、なんでもありません」
鷹野「……ジロウさんが起きたら…。」
L「はい」
鷹野「コーヒーを入れてあげて。彼、寝起きに絶対飲むのよ。」
L「……はい。」
赤坂「久しぶりだね梨花ちゃん。ところでこの騒ぎはなに?」
梨花「……温泉は楽しかったのですか?」
赤坂「もう最高だネ! 梨花ちゃんも今度行こうね。」
梨花「遠慮しておくのです。」
赤坂「えー行こうよ!」
梨花「遠慮しておくのです。」
赤坂「行くんだよッ!!」
梨花「うるっせーよなのです。」
L「詩音さん。突然ですがお電話です。」
詩音「? 私に? もしもし……。……嘘……。」
L「ワタリに探させました」
沙都子「え? え? なんですの?」
詩音「悟史くん……!」
沙都子「に、…にーにー!?」
レナ「…! なに、この取ってつけたようなハッピーエンドは!?」
魅音「みんなー! みんなー。みんなー……。あっれー? どこー? うわーん。」
梨花「偽名…ですか?」
L「ええ。まあ『東京』なんて場所に身を置いているくらいですから、名前など無いに等しいというのは分かっていました。鷹野三四という名前は偽名でした。本人が先程吐いたようですよ。何でしょうかね。全てがどうでも良くなったようです」
梨花「そうなのですか……。」
L「これが鷹野三四を始めとする、山狗と呼ばれる組織、そして『東京』の主なメンバーの詳細だそうです」
梨花「見せてくれるのですか?」
L「はい。ついでに参考ばかりにお話だけ聞かせて頂きたいと思っています。ケーキ食べますか?」
梨花「いえ、遠慮するのです。どれが鷹野の名前なのですか?」
L「これです。では、梨花さんの分のケーキは頂きますね」
梨花「あの…。」
L「はい?」
梨花「色々とありがとうなのです。」
L「? 友達ですから」
L「それじゃあ、またどこかで、なんていうのは無責任な言葉でしょうか。富竹さんには事の真相を抱えて『東京』に戻って貰いましたし、雛見沢症候群などへのその後の処置は魅音さんに伝えてあります。私が雛見沢ですることはもう何もなくなってしまいました」
魅音「うん……。誰も不安にならないように……。みんなで力を合わせて……。それは園崎だから出来ること。古い確執も全部、園崎なら壊せる。……私の当主としてのやり方が、分かった気がする。」
レナ「エルくん…! じゃあね、じゃあね……!」
L「…泣かないでください。」
詩音「寂しくなりますよ。」
沙都子「エルさんからは得たものが大きすぎて、一生かかっても返せそうにありませんわね。」
L「気にしないでください……と、言いたいところですが、じゃあ一つだけ」
梨花「…なんでも言うのですよ。」
L「私と一生友達でいてください。それでもう、本当に十分です」
魅音「……なんかそんなこといまさら言われてもねぇ。」
詩音「そうですよ。なに言っちゃってんですか?」
レナ「エルくん…! エルくん…!」
L「…泣かないでください…。……。」
沙都子「? どうしましたの?」
L「……こんな気分は初めてです。余計なことまで口走ってしまいそうな……。
……。……。………教えておきたいことがあります。」
詩音「?」
L「……私の……私の、本当の名前は……。」
梨花「終わったのですね。……。」
羽入「………………。」
梨花「終わってしまったのです。……。」
羽入「…………。………………。」
梨花「……羽入?」
羽入「……………………………………………………………………。 ……………………………………………………………………。……………………………………………………………………。……………………………………………………………………。……………………………………………………………………。」
梨花「どうしたの?」
羽入「なんでもないのですよ。本当に良かった……正直、ボクには今でも信じられないのですよ。」
梨花「あはは……そうかもね。」
羽入「……。でも不思議なのです。梨花はあまり嬉しそうじゃないのです。」
梨花「! ……。な、なにを……。」
羽入「もしかして……彼のことなのですか?」
梨花「!」
羽入「まさか、ここでもう一度やり直したいなんて言わないのですよね?」
梨花「……出来るの?」
羽入「! ……。出来るのですよ。けど、馬鹿なことを考えるのは止めるのです。梨花が死んでもこの世界は続いていくのです。残された人たちはきっと悲しむのです。……。……。」
梨花「そうよね……。」
羽入「でも、彼のいないこの世界で生きていくというのは残酷なことかもしれないのですね……。」
梨花「……。」
羽入「……結局は梨花が決めることなのです。今回が上手くいったのですから、今度も上手くいかもしれないと思うのも普通のことなのです。」
梨花「そう……そうなのよ! ……だけど……。」
羽入「私は本心で梨花とずっと一緒にいることを望んでいるのです。そんな私が言うのはおかしいのですが……。梨花のしたいようにするといいのですよ。もしかしたら梨花がやり直した分だけ、その世界は改善されるかもしれないのです。助からなかった人を助けられるかも。だって梨花には、もう『一度突破した』という前例があるのですから。諦めるなんて梨花らしくないのですよ。諦めなけば掴めるのです。それを今回、証明して見せたではないのですか? 失敗することを恐れては駄目なのです。………………やり直しは無限に出来るのですから。」
梨花「ぅ……ぅぅ……。」
梨花「……名前なら、わかっているのです。」
ライト「! ……。……本当に?」
梨花「はい……でも、彼らに対する対策等は全く思いつかないのです……。申し訳ないのです…名前だけ分かっていてもボクには使い道が思いつかなかったのです。書類化されているわけでもないですし……。」
ライト「それはどの程度なんだ? 名前と顔が一致しているのは鷹野三四だけなのか?」
梨花「……理由は上手く説明できないのですけど、鷹野を含め、今回の実動隊のメンバー全員と顔はほぼ頭に叩き込んだのです。完璧とは言えないかもしれないのですが、何かの役に立つかと思いましたのです。でも…。」
ライト「……いや。十分だよ」
梨花「え…?」
ライト「言ったはずだ。僕の父は警察だと。そして梨花ちゃんが知る、山狗の情報があるのであれば、それは大きな手がかりになる」
梨花「手がかり…ですか。」
ライト「そうだ。僕なら父達を信用させることなんて容易いし、仮にこの瞬間に踏み込まれても取引することが出来る。だってこっちは向こうの機密を握っているんだから。僕に任せておけば何も心配はない」
梨花「ライト…。」
(すごい……ちゃんと道を示してくれた…! ほら羽入、見なさい! ライトは決して竜崎に負けてない! それどころか、自信に溢れている! あは、あはははは!)
羽入(………。………。)
ライト「梨花ちゃんは絶対に僕が助ける。でも、万が一ってこともあるかもしれない……。……この紙に、梨花ちゃんが、知っている限りの名前を記して欲しい」
ライト「絶対にそんなことはさせないが、もし僕たちが倒れた後に誰かが発見してくれれば、僕たちの意志は受け継がれるかもしれない。さらに言えば、形にした情報は分かりやすい取引の材料になる」
梨花「分かったのです。」
ライト「僕は下に降りて電話をかけてみるよ。警察を動かす。…封筒はあるかな?」
梨花「? あるです。……これです」
ライト「書き終わった後、用紙はこうやって……中に入れておいてくれ。そうだな…。あの時計の裏にでも隠しておこうか。警察が見つけてくれるかどうか不安だけど、山狗達には絶対に発見されたくないからね」
梨花「……わざわざ封筒に入れてくれなくても、そのくらい分かるのです。ライトはボクを馬鹿にしすぎなのです。」
ライト「ははっ。ごめんごめん」
梨花「……ふふ」
ライト「梨花ちゃん」
梨花「はい?」
ライト「名前を書く時にその人の顔を思い浮かべながら書いてね。効果があるかどうかは分からない。けど、そういう行為に厄払いの効果があるって聞いたことがあるんだ」
ライト「こんな時に神頼みだなんて情けなくて涙が出るけど、こんな状況だからね。それに梨花ちゃんみたいな可愛い巫女さんなら神様も……オヤシロさまも味方してくれるかもしれない。もし神が無力でも、死んでいった皆が力を貸してくれるかもしれない。……ごめん、変だよね、こんなこと……」
梨花「…そんなことないのです。分かったのです。出来る限りやってみるのです。」
ライト「ああ…ありがとう」
梨花(……ライト…ありがとう…。)
羽入「ライトは頼りになるのです……。」
梨花(ええ、そうね。今回も沙都子たちを助けられなかったけど、だからといって自暴自棄になることは出来ない。ライトならきっとなんとかしてくれる。もしも次の世界に行ったら、まずライトに助けを求めましょう。今までは行動が遅すぎたのよ。)
羽入(……。……。)
梨花「……? ライトの用意してくれたこの紙、端っこの方に文章が書いてある。『大きな声でおっぱいと叫んで静かに自殺』? ……なにこれ。」
羽入「……さっき封筒に入れる前に書いていたのです……。おまじないではないですか? さぁ、今は時間が無いのです。出来ることをするのです。」
梨花「……ええ。まずは……。」
羽入「ボクも協力するのです。……梨花。」
梨花「なに?」
羽入「……なんでもないのです。」
リューク『……なぁ』
ライト「なんだよ」
リューク『お、会話してくれるんだな』
ライト「……ノートを触った瞬間に梨花にリュークの姿が見えるだろ。騒がれたら台無しだ。封筒からページを取り出してる間に僕は退散する時間を稼いだってわけだよ」
リューク『よく俺の聞きたいことが分かったな』
ライト「僕は器用だからね」
リューク『……。お、電話か?』
ライト「父さん、あるいは大石を言いくるめて警護を求めよう。無論、大人数だ。梨花の話が本当であればこの場はで全て終わるはずだが、この村の人間は総じて頭がおかしいからな。全く信用できない。………。………」
リューク『……くっくっく……話し中か?』
ライト「くっ……! 携帯は…!? ……。……くそっ!」
(まずい! ……電話線を切り、その上、妨害電波か? 妄想じゃなかったのか! ……既に行動を起こされているとは……。だが……もうすぐ……)
??「おっぱい!!」
ライト「!」
??「おっぱい!!」
??「おっぱい!!」
リューク『……』
ライト(やった! 梨花の情報が正しいかどうか不安だったが……)
リューク(おっぱい好きだなー、こいつ)
ライト「さて、作戦変更。まずは余分なものを処分処分」
梨花「ライト…終わったのです。…ライト? どこですか?」
(部屋が……暗い……まさか…なにかあったの…? 電気を落とされた? ……でも2階は……。)
ライト「お。早いねー。おつかれさま」
梨花「! …ライト? どこに…。……ふざけないで欲しいのです。…ライト。」
ライト「待って。いま書き終わるから」
梨花「…何をですか? …ライト…恐いのです。…ライト。」
(なんだろう……なんで私はこんなに震えて…。)
ライト「封筒はちゃんと隠した?」
梨花「はい…。時計の裏に…。」
ライト「偉いぞ梨花ちゃん。ここまで暗いとさすがに書き辛いや。」
梨花「明かりをつけて書けばいいのです……。…ライトはお馬鹿さんなのです。」
ライト「あははあと5秒」
梨花「ライト…ライト……。ぅ…恐い…ライト…恐いよ…。」
(恐い…死ぬのが、じゃない…ライトが殺されてしまうのが、恐い…でも! 恐がっている場合じゃない! 早く逃げないと……。ライトを…助けないと……!)
ライト「ゼロ。あーお腹減った」
梨花「ライト…ライト…ぁっ…ごほっ…」
ライト「おやおや? 風邪?」
梨花「分からないのです……ごほっ…ごほっ…。ライト…。」
(この症状は……。ライト…逃げて…!)
ライト「『明かり』だけに『ライト』なんちゃって」
リューク『最高につまんねーよ』
梨花「! だれ…!? うぅ! あっ…がっ…ごほっ! ライト…逃げ…ぐぅっ…あぐっ……。」
(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)
ライト「持つべきものは友達だ」
梨花「―――。」
助けてあげられなくて、ごめんなさい。
羽入「ただいまなのです。」
梨花「おかえりなのです。」
羽入「……なんだか梨花の機嫌がえらく良いのです……。」
梨花「今日ライトがね…。」
羽入「またライトの話ですか。梨花はライトが大好きなのですねー。」
梨花「…そ」
羽入「そ?」
梨花「そー」
羽入「そー?」
梨花「そんなんじゃないわ。…………多分。」
羽入「……多分…ですか。ライトは圭一のように飛び抜けた『運命への対抗心』はありませんが、圭一には無い冷静さと知性があるのです。それを言えば竜崎もそうなのですが……意外とイケメン顔が好みなのですか?」
梨花「恋愛云々は魅音とかレナとか…とにかく自分の事としては考えたことないし……。そー、なのかなー…。よくわからない。みー。」
羽入「……ああいうのが好きなのですか…へぇー…ふーん…。」
梨花「……なんだか生意気ね。今は沙都子が留守だから、なんでも出来るのよ?」
羽入「な、なんですか?」
梨花「キムチ食べるわよ!」
羽入「あぅあぅあぅ……い、いつまでもそんな圧力には屈しないのです!」
梨花「ポーション飲むわよ!」
羽入「こ、殺される!!」
富田「あれ? ライトさん、こんばんわ……え? はい、今までこいつと二人で遊んでました。いや……2時間くらいは誰とも会ってないし、誰も見かけてないですね。どうかしたんですか?」
岡村「俺らはこれから帰るところです。ライトさんもですか?」
岡村「はい……。僕はライトさんに誘われて梨花ちゃんのお見舞いに行きました。元気を出して貰おうって……。はい…。ライトさんは僕を電話で呼び出した後、『他の子も呼ぶから先に行っててくれ』って……。そうです。それで僕、梨花ちゃんの家に言って……はい、梨花ちゃんと色々お話しました。ライトさんは富田くんと一緒でした。一緒に他の子の家に……。あの、その、僕、梨花ちゃんのこと好きだったから……気を使ってくれたんだと思います。それでしばらくお話して……ライトさんが遅かったので電話しようと思ったんですけど……そうです、梨花ちゃんの家の電話が……。その後は……急に電気が消えたり、周りから変な叫び声が聞こえたり……。僕、恐くなって…梨花ちゃんは大丈夫かなと思って2階に上がったら……。」
富田「はい。ライトさんと一緒に他の友達を呼びに行きました。ライトさんは『岡村くんと梨花ちゃんの邪魔しちゃ悪いから』って、ちょっとゆっくりめに友達の家を周ることにしたんです。そんで他の友達も結構集まって、夜遅くだからってことで大人のひと2人にも同行して貰ったんですけど……。その後は……はい、梨花ちゃんの家の周りには沢山の……。」
総一郎「証言にあった『変な叫び声』は周囲の住民からも裏が取れている。内容までは分からなかったそうだが…。近くで誰かが騒いでいるんだと思い、大したこととは考えなかったそうだ。一方、ライトは富田くんと共に友達の家を周り、その中の一人の保護者の方に同行して貰っている。そして古手宅の周りで6名の死体を確認。ライトは1人の保護者に子供達を預け、もう1人の保護者と古手家に入った。電気は大本から断ち切られているようで点かない。暗闇の中……月明かりを頼りに二人は屋内を進み……。携帯電話の微弱な液晶ライトに照らされ、気を失う岡村くんと、自ら喉を掻き毟って死亡したとみられる古手梨花くんを発見した。……」
刑事C「そしてすぐにライトくんは警察へと通報。その頃には古手家一帯の電波異常は消失していたそうですね。後の捜査で計20余人分さらに鷹野三四の死体も発見されている、と。そして余りにも不可解なのが、その全員が統一性の無い自殺者だということ。銃を所持していた者もそれを使わずに死んでおり、各々が『音を立てずに』自殺したという共通点があるにはありますが…。まるで騒ぎを起こすことで警察に駆けつかれることを嫌がったかのように。警察内部に潜り込んでいたと思われる山狗も同じように死んでいます。そして何よりも不気味なのは、岡村くんと富田くん両名が、事情聴取を終えた直後に……交通事故で死亡しているということですね。これは…敬虔な信者じゃなくても、オヤシロさまを信じたくなりますな。」
ライト「『東京』の連中が乗ってた車からはわんさかと情報が手に入った。入江診療所からも重要な資料が大量。入江も重要参考人として引っぱった。ついでに言えば、村人はともかくとして古手梨花の死は雛見沢症候群感染者や、古くから雛見沢に住む人々に絶大なる悪影響を与える可能性がある。だから出来る限り隠蔽する方向に僕も進言した。まあ、これだけの手柄を立てたんだ。父も本庁に返り咲けるだろう」
リューク(村の連中……急激に寿命が長くなったな)
ライト(しかし大勢の死者を出してしまった。犯罪者を殺すという、神としての行動に矛盾は無いが、すこし身近な場所で人が死にすぎた……。もっと慎重にやらなければ……)
リューク『ライトの検査はいつ終わるんだ?』
ライト「異常なんて出るわけないからすぐに終わるよ。そりゃあ雛見沢症候群なんてものが公になれば検査もされる」
リューク『なかなか面白な村だったな』
ライト「そう? 食べ物は美味しかったかな。ああ、それと証明も出来た」
リューク『証明?』
ライト「僕の行動が『東京』を打ち倒し、雛見沢を救った…。リュークはデスノートで人を殺すことしか出来ないと思ってるだろう? 僕はそうじゃないことを証明したんだ。僕は大勢の人の生命を救済した。まさに神の行い。神の力! ああ……僕は神になる……!」
総一郎「ライト」
ライト「……なんだい父さん」
総一郎「やはりお前の言う通りだった。心臓麻痺による死亡者が複数発見された車から『東京』とやらの有力な情報がつかめた。何らかの圧力がかかると思っていたが……。私も『東京』の捜査の為に本庁に呼び戻された。……こう言ってはなんだが、沢山の犠牲を代償にしての復帰だ。素直には喜べんが、やはり彼らの死を無駄にしてはならない」
ライト「………理性では理解してる。でも……!」
総一郎「ライト……雛見沢には辛い思い出が多い。忘れたいこともあるとは思う。だが、それだけではないだろう?」
ライト「ああ……僕はここでのことを忘れない。それが、彼女達への手向けだと思うから。忘れない……僕は忘れない!」
総一郎「…粧裕や母さんは身近な人たちの死で傷ついている。二人で支えてやろう」
ライト「……そうだね。それは僕たちの役目だ」
(思っていたよりも簡単に事が進んだな……。つまらない…やはり、新世界の神の前では何人も平等に無能なのか……)
リューク『どうしたんだ、ライト。退屈そうな顔をして』
ライト「事実、退屈だからね……仮にも旧世界をぶち壊して新世界を創世しようというのに、それに対抗する存在があまりにも馬鹿揃いで…少しでも強敵がいないと張り合いが無さ過ぎる。最終的に僕が勝つにしても、何か刺激というか、手ごたえが無ければつまらない……。新しい世界が生まれるのであれば、やはり相応の演出が必要になると思うんだよ」
リューク『俺は十分に面白だけどな……』
ライト「まぁ、もうすぐ僕の撒いた種が発芽すると思うんだけどね」
リューク『? 種?』
ライト「ああ。神の存在を世界に認めさせるための種……。不自然過ぎる心臓麻痺の連続……もうすぐ気づく…誰かが…」
ワタリ『L……。……』
L「言うなワタリ……世界最高の探偵を謳っていても、所詮は友人も助けられない無能、それが私だ」
ワタリ『………しかし、貴方が残したものは決して嘘ではないはずです』
L「…ワタリ…」
ワタリ『貴方が自分を否定してしまうということは、そんな貴方を信じた友人達をも否定してしまうことになるのではないですか?」
L「……そうだな……済まなかった……私に休んでいる暇など無い……」
ワタリ『早速ですが、興味深いデータがあります』
L「なんだ? ……これは……」
ワタリ「全世界の、最近の心臓麻痺によって死んだ人間をグラフにしたものです」
L「……犯罪者に随分と偏っているな……それも短期間でこんなに……」
ライト「わざと理解できるように示してやったんだ……退屈させてくれるなよ……」
L「……どこの誰かは知らないが、やってくれる……これは明らかな挑戦だ」
ライト「最後には」
L「私が勝つ」
「勝負だ!」
ひぐらしがなくですの
ライト「なんだ。じゃあ本当にこの村には死神はいないってわけだな」
リューク『ああ……俺以外はな』
ライト「安心したよ。さて、今日は虐待少女を救出するために色々と疲れたから、早めに寝よう」
リューク『なんだ。ゲームはやらないのか?』
ライト「また明日ね」
リューク『寝たか……退屈だな…俺も寝るか?』
羽入「こんばんは、なのです。」
リューク『…………お前か』
羽入「お話は聞かせていただいたのです。」
リューク『な? 面白だろ? 俺は当たりを引いた』
羽入「確かに…見事な人間なのです。竜崎エル以上かも…。」
リューク『リューザキ?』
羽入「こっちの話なのです。……夜神ライトは私にとっても当たりのうちの一本ですよ。この人間のおかげで、梨花は諦めることを止めたのですから。……当分は。」
リューク『お互い退屈しのぎに精が出るな』
羽入「私にしてみればその対象は梨花しかいないわけですし、機会さえあれば何度でも違う人間で試せる貴方が羨ましいのです。」
リューク『そうかもな。俺は死神以外の神に詳しくはないが……。お前を見てると死神に生まれて良かった気もするな』
羽入「あぅあぅあぅ……。」
リューク『うぜー。まあ、何にせよ…』
羽入「何にせよ…。」
リューク『人間は』
羽入「面白い。」
ひぐらしがなくのです