おはようございます。「エルデンリングのつくり方」、その 2 です。別にシリーズ化する予定の無かった記事なのですが、ふと新たな導線を思いついたので置いておこうかなと。『ELDEN RING』発売によって跳ね上がったユーザー人口に比例する形で考察人口もまた増大し、もしかするととっくに多様な解答が存在している気もする本日の題材ですが、ネットの片隅に置いておくくらいなら罪に問われはしますまい。ではやっていきましょう。
前回の記事 : エルデンリングの作り方
前回、エルデンリングが狭間の地に構築された根幹の仕組み、その一端に触れました。そして魔術師塊とは新たな「律」の種子であったのではないか。そんな内容でございました。今回はもうちょっと別の側面からエルデンリングの秘密に迫ってみたい。みてぇんだ。
早速ですが、こちらをご存じですか。
- 結晶投げ矢
- 純度の低い結晶を削った投擲用の刃
- 製作可能なアイテムのひとつ
- これに似た結晶の道具を かつて、ゴーレム技師が用いたという
動画上でバチバチいってるのがお分かりと思いますが、結晶投げ矢の特殊効果として、ゴーレム系の敵(ガーディアンゴーレム、インプ像、還樹の番犬)を混乱・同士討ちさせることができます(元々は結晶ナイフにも同様の効果が付帯されていたようですが、 ver 1.04 に際して削除されちゃったみたい)。
詳しい方からすれば、なにを今更……こんな常識をさも大発見したかのように……と思うかもしれませんが、結構知らない人も多いんじゃないかなと思ってます。
で、理由の話になっていきますが、結晶投げ矢のテキスト曰くゴーレムを作成する際には結晶の道具が用いられていたようで、シンプルに考えると結晶には対象の行動を「律する」、言い換えれば「律」を入力する効果があり、これによって技師はゴーレムを稼働させていたのではないか、つまり結晶投げ矢によって複数の「律」を打ち込まれたことでバグッてしまった、それが混乱の理由と考えます。
結晶はある種の保存・入力装置であると。例えば現実にもホログラフィック・メモリといった結晶を記憶装置とする技術がありますが、ここら辺をイメージすることで飲み込みやすいんじゃないでしょうか。そしてこの「記憶装置としての結晶」については『ELDEN RING』本編でも仄めかされています。
- セレン
「…輝石とは、星の琥珀なのだ。金色の琥珀が、古い生命の残滓を、その力を宿しているように 輝石には、星の生命の残滓、その力が宿っているのだよ。覚えておくがいい。輝石の魔術とは、星と、その生命の探求なのだと」
輝石を結晶の一種(或いは結晶が輝石の一種なのか)とした上での解釈ではありますが、セレン師匠の台詞からは、結晶(輝石)を通して保存された生命、その記録(記憶)を辿る業こそが輝石魔術の本意であると受け取れます。なのでその技術応用の極地として人間の記憶装置である脳を輝石(結晶)に置き換えたのが、アズール師やルーサット師だったわけです。学院の「輝石頭」なるものが、その地点を目指した結果生まれたのだとすれば、彼らが輝石の持つ記憶装置としての面に如何に着目していたかが伺えるのではないでしょうか。
裏を返すのであれば、場合によって脳は結晶の代替物と成り得る道理です。魔術師塊とは、即ち学院の魔術師たちの脳を寄せ集めたことで作り上げたスパコンのようなものであり、結晶がゴーレムに対してそうであったような「律の入力装置」となってくれる。だからこそ前回の記事で書いたように、魔術師達の頭部は「別の地、別の時、新たな律を構築する星の種」として機能するわけですね。
- 魔術師球のタリスマン
- 魔術師球と呼ばれる 学院の悪夢を象ったタリスマン
- 魔術の威力を高める
- 輝石魔術には、源流という禁忌がある
- 魔術師を集めて星の種となす
- 源流では、これは探究の一手段なのだ
結晶、そこに込められた律はゴーレムを動かす。
これが言いたいことのまず一点になります。
『ELDEN RING』において獣という存在は少し特殊な立ち位置にありました。
- チンクエディア
- ファルム・アズラにおいて 高位の司祭に与えられる短剣
- かつて獣たちに贈られた知性 その象徴たる、五指が象られている
- 獣の石
- 黄金樹の以前、知性を得た獣たちは
- 石を最初の武器にしたという
- 獣の生命
- 知性を得た獣たちは、感じていたのだろう
- 文明が、やがて野生を失わせることを
- 獣集いの鎧
- 獣は英雄に惹かれ、王に惹かれる
- 故にこれは、王たる英雄の鎧であり ベルナールはそれに相応しかった
獣は黄金樹以前に知性を得(贈られ)、引き換えに野生を失ったようです。劇中に登場した人間よりも品格のある獣たち、クラングやブライヴなどが例として顕著でしょう。そして獣とは英雄に惹かれ、王に惹かれるのだと。神人に影従したという獣らも根っこには同じ理由があるのでしょうか。
- 戦鬼の〇〇
- 古い伝承によれば、狼は神人の影であり バルグラムもまた、そういうあり様を望んだ
- 黒き剣の追憶
- マリケスは、神人に与えられる影従の獣であった
ラニ
- 「デミゴッドの中で、ミケラとマレニア、そして私だけが それぞれの二本指に見出され、女王マリカを継ぐ、次代の神の候補となったのだ。だから、私はブライヴを授かった。神人の特別な従者としてな」
狼とは神人の影だそうで、マリカにとってのマリケスなどが該当するのでしょう。
そしてもう一例、影従の獣に分類されるかは不明ですが、ある王に憑き従う獣がいました。
獣王セローシュです。
- ラダーンの〇〇
- 黄金獅子は、最初の王ゴッドフレイと その宰相の獣、セローシュに由来するという
- 幼き日、ラダーンは戦王に心奪われたのだ
- 獣爪の大槌
- 黄金の鬣を纏う黒き爪は 後にゴッドフレイ王の宰相となった 獣王セローシュの象徴であったという
- ホーラ・ルー
「もう、よい。ずっと、世話をかけたな、セローシュよ。行儀のよい振りは、もうやめだ。今より、俺はホーラ・ルー!」
戦士よ!
この台詞を境に最初の王ゴッドフレイは戦士ホーラ・ルーに戻り、暴の権化となりました。
セローシュを殺害したのはなぜか。状況からの推測ですが、蛮地の王ホーラ・ルーはエルデの王となって以来、セローシュの知性を借り受けていた、つまり自らの野生を獣の知性によって律していたのです。借り物の理性を枷とし、しかし終にはセローシュを殺害することで、ホーラ・ルーの野生は解き放たれました。
そう「律して」いた。或いは二本指から贈られた影従が神人の行動や思想を「律する」ためのものであったのなら、獣とは意志を制御するための「軛」、ある種の「律」として機能したのではないか、これがこの記事で言いたいことのもう一点。
だから最古の祈祷に注目したい。
- エルデの流星
- 最古とされる黄金樹の祈祷
- 「伝説の祈祷」のひとつ
- 無数の黄金の流星を生じ、周囲を攻撃する
- かつて、大いなる意志は 黄金の流星と共に、一匹の獣を狭間に送り それが、エルデンリングになったという
エルデンリングの破片が大ルーンなどと呼ばれていることから推察するに、そもそもルーンとはそれ自体が力のある命令・制御文のようなもので、あらゆる「律」を構築するプログラムの断片なのでしょう。狭間の地に根ざした制御文の極みこそエルデンリングであり、それが黄金の律を稼働させている。
そしてエルデンリングというプログラムとは、かつて一匹の獣から放たれたのだと。
さて。点が二つあれば少なくとも直線にはなります。作った直線がいつか星座の一辺となることを祈りながら、最後に仮説を一つブッ立ててみましょう。さあこっからですよ。こういう無茶苦茶やってる時が一番楽しいんだから。
- 結晶とは保存および入力装置であり、そこに込められた「律」はゴーレムを動かす
- 獣とは意志を制御するための「律」として機能する
かつて黄金の流星によって狭間の地に獣が送られたと言います。
エルデのフレンズ
エルデの獣。このフレンズが最初からこの形態だったのかは不明ですが、印象で語るのであればどことなくその姿は鉱石、或いは結晶質を思わせるものであり、実際に攻撃してみると、黄金の体液を吹き出しながらも、その感触はさながらガラスのようでした。結論を言うと、エルデの獣とは結晶(輝石)としての性質を持つ生命なのではないかと考えています。つまり獣であると同時に「律の入力装置」でもある。
なぜエルデの獣が分かりやすく生きた獣然とした外形ではなかったかと考えると、複雑な「律」の媒体とする為に結晶という保存装置でなければならなかったから、という理由が思いつきます。ではなぜ結晶人のような外形ではなく獣でなければならなかったかと考えると、それは獣が持つ「王や神に惹かれ、その意志を律する」性質が必要だったからではないでしょうか。獣だけでは不足で、結晶であるだけでも不十分。恐らく双方の性質を兼ねる必要があったのです。
そしてもう一つ重要なのが、最後に姿を現すマリカが石造りであるかのように崩れかけていたこと。
壊れかけの Marika
そしてここでエルデの獣が結晶質である可能性が効いてくると思っているのですが、この時点でのマリカは神人であると同時に、ある種のゴーレム(被造物)だったのではないか。つまり結晶による入力対象、言い換えれば律する存在がゴーレムに属する何かであるからこそ、エルデの獣とは結晶質である必要があったわけです。
ただそうなると、「じゃあマリカって女は最初からゴーレムだったんかい?」という発想になるかと思いますが、個人的にはもう一捻りあると踏んでいます。大いなる意志によってその肉体を黄金律による支配対象とすべく無機物の器に作り変えられたのか、或いはそれが可能な肉体に、魂を移し替えられたのか。
個人的には後者っぽいな、というのが現時点での想像です。思うに娘であるラニがその魂を人形に移したことが、奇妙な親子の因縁として結ばれている気が……しているのですが、まあ本当にこれは想像でしかない。
しかしこの考えに基づくと、我々は旅の最中に狭間の各所で崩れたマリカ像を目撃してきましたが、最後に目にしたマリカも、結局は崩れたマリカ像でしかなかったなんてオチにも発展する。事実かどうかはともかく、面白くはあると思います。
ちなみにマリカがその魂を被造の器に移し替えられたと考える理由はもう一つあって、実のところマリカの本当の肉体は既に黄金樹そのものと化していると考えています。
聖樹
これはマリカの子であり神人であるミケラ……の抜け殻と表現すべきでしょうか。つまり黄金樹もこうして出来て、成り立っているという観点です。しかしどうもテキストを紐解くと、女王マリカは黄金樹の存在とは別に活動していたと読めます。そもそも黄金樹がマリカを苗床として育ったというところから想像ですし、仮にこの想像が正しいとしてもマリカは黄金樹を任意に脱着可能であったとも考えられますが、ここは都合よく生身のマリカは既に黄金樹そのものと化していて、だからこそ外界を活動する為の身体を用意していたと考えてみましょう。
肉体と魂を分ける。ラニは母という前例に従う形で、大いなる意志から逃れたのでしょうか。子は親から多くを受け継ぐもの。神人ともなれば尚更でしょう。残る神人マレニアはどんな運命を受け継いだのでしょうね。
そんなわけで、時系列の精査もせず書きたいことを書いただけです。ありがとうございました。今回の主張としましては、
- 結晶とは保存および入力装置であり、そこに込められた「律」はゴーレムを動かす
- 獣とは意志を制御するための「律」として機能する
この 2 点から、エルデの獣が結晶生命であった可能性、その上で(ある時以降の)神人マリカがゴーレムの一種であった可能性、以上の 2 点へと線を結んで仕舞いとしたいと思います。
え? 何か抜けてないかって? そうですね、ラダゴンについて全く触れていません。そこが現状手に負えず、そして今後の課題だと思っています。「マリカとはラダゴンである」。それはいつから? それとも最初から?
可能性の候補は幾つかあります。何となくラダゴンとはマリカの中にいつしか入り込んだ、或いは生じた人格だという印象があるように思いますが、マリカが被造の器に魂を移された後にインストールされたものとも考えられますし、この被造の器こそがラダゴンという名のゴーレムだったとも考えられ、個人的には最後の線が面白いなーと思っているのですが、本当に面白がっているだけなので、考えとしては全くまとまっていません。
しかし不完全な仮説ながらもあえて述べるなら。
- 暗月の指輪
- ラニが神人であれば、伴侶とは即ち王である
神人にとっての伴侶とは王でなければならず、そして獣とは王に惹かれるもの。これは王という器を通して、獣による神人の制御を行うため、或いはその為に都合の良い性質を大いなる意志が利用したとも解釈できます。だから黄金律を運用する為、エルデには王が必要だった。一介の英雄でしかないと称されたラダゴンがマリカの伴侶と成り得たのは、そもそも彼が最初から「マリカの器であり制御装置」として作られたから、そう考えると全くの闇雲に解釈するよりは、多少理解が進む気がします。「黄金律、ラダゴン」の名は、即ちそういう意味であったのではないでしょうか。
黄金律、ラダゴン
ちなみにマリカ・ラダゴン関連については以下のテキストがヒントになってくれないかなと期待しております。
- 双児の〇〇
- 黄金と白銀、絡み合う双児を象った〇〇
- 分かたれぬ双児、Dは二人いる
- 二つの身体、二つの意志、そしてひとつの魂
- 共に起きることはなく、言葉を交わすこともない
この D の装備のテキスト、これはマリカとラダゴンを始め、『ELDEN RING』の諸々を示唆する超重要なテキストだと思っているのですが、まだ考えがまとまってません。ラダゴンが巨人に似た赤髪を有していたこと、そして白銀(しろがね)人、生物と物質の中間にあるという「銀の雫」、王を創らんとして生み出された「写し身の雫」、それら点在する謎がやがて一本の線を形作ってくれるんじゃないかと、暇を見つけては考えている最中でございます。どなたか答えを知っている人がいたら教えてください。
以上、お付き合いいただきありがとうございました。またどこかでお会いしましょう。