こんな記事を書きました。
前時代の終焉、世界が一点を目指し吹き溜まり続け、あらゆるものが溶け合いました。「坩堝」です。やがて狭間と呼ばれる地に一本の樹。それは坩堝を吸い上げ、すくすくと育っていったとさ。
黄金樹の機能は坩堝のエネルギーを循環させ、フィルタリングすること。生命は生まれ、戦い、殺して殺され、やがて死の代わりに還樹し、また生まれる。このサイクルの過程で「忌み」という不純物は取り除かれていき、生成される黄金は一層輝きを増していきます。戦士がつぼに回収され小黄金樹に肥料よろしくぶちまけられるのは、この縮図。「つぼ」とは小さな小さな「るつぼ」でした。
かつて「暗い魂」の重力に引かれ、総てのソウルが混ぜこぜになり、結果として世界の底には超々巨大なソウルの塊が形成されたのだと考えます。これが「坩堝」です。闇と闇以外の全てが深みでドロドロに溶け合ったそれは、そのものが暗いソウルの澱と言えるでしょうか。
- 深みのソウル
- 大主教ロイスと、彼の主教たちの魔術
- 冷たい谷のマクダネルが伝えたという 暗いソウルの澱を放つ
- それは深みに沈み溜まったソウルであり 生命に惹かれ、対象を追尾するという
ならばこの中から暗闇のみを「忌み」として分解すれば、残るものは闇に依らぬ生命のソウルの輝き。それは「はじまりの火」にも匹敵する黄金だろうか、というのが前回までの仮説。今回はここから更に黄金樹の正体、女王マリカの起源に迫ってみたい。黄金樹ってさぁ……一体なんなんだよ!
ということなんですが、樹木と言えば『DARK SOULS 3』にも、黄金樹ほどではないにせよやたら存在感のある形で登場しました。呪腹の大樹……ではなく、こちらの白木。
白木
この白木が生える場所には一定のルールがあり、ざっくり言えばどれも闇ないし深淵の中に生えていると思っています。
例えば不死街とは不死の埋葬地でした。不死人が死することで人間性の闇を零すなら、多くの不死が埋葬されたあの場所には多くの闇が澱んでいたはず。不死街の白木とはそのような場所に生えていました。
例えば深みの聖堂。あの場所は言わずもがな、闇のメッカでした。
- 深みの貴石
- 楔石が変質化したという貴石。
- 深みの聖堂、その澱みに生じるもの。
- 深みの武器は闇攻撃力を持つが能力補正は消失してしまう。
- そこは人智の届かぬ暗闇なのだ。
不死街と同じ多くの不死が埋葬され、何ならより暗い闇が澱んでいるとも読める場所。深みの聖堂の白木とはそのような場所に生えていました。
そしてファランの城塞。恐らく地下のカーサスが深淵に侵され、また監視者たちが潜んでいたことからも、あの土地が深淵に沈みかけていたことは想像に難くない。城塞の白木とはそのような場所にありました。
そんな白木ですが、どうもウーラシールに由来するようで。
- 幼い白枝
- まだ幼い白皮の木の枝
- 場所にふさわしい何かに変身する
- 宵闇の少女がはじめて手にした魔術の杖は やがて苗木となり、三本の白い木になった
- 今もその幼い枝には、彼女の悪戯が宿るという
- 擬態
- 古い黄金の魔術の国
- ウーラシールの失われた魔術
- 場所にふさわしい何かに変身する
- それはかの国の正式な魔術ではなく ある少女が悪戯に生み出したものだという
- 宵闇の森で、ただ孤独を癒すために
『DARK SOULS』ではこの白枝が魔術触媒として在ったわけですが、「幼い白枝」曰く少女が杖として手にした枝は、後々に三本の白木になったらしいです。上述した三本の白木がそこに該当するなら、 DLC エリア「輪の都」にあった白木はその内の一本なのか、新たに育ったものか。どちらにせよ、輪の都の白木は沼に生え、そしてあの沼は深淵由来だそうで、やはりこの白木とはそういった場所から生える性質があると見て良さそう。
さて、そんなウーラシールの魔術には、ある性質がありました。「光を生み出す」というもの。
- 照らす光
- 古い黄金の魔術の国 ウーラシールの失われた魔術
- 光を生み、周囲を照らす
- 光を生み出す、単純な魔術であるが それこそが黄金の魔術の精粋であり 竜の学院は、ついにそれを実現できなかった
さらっと書かれていますが、ウーラシールのみに顕現した特性と捉えればとんでもないことのように思えます。なぜウーラシールだけにそのような芸当が許されたのか。この秘密に迫るため、ご覧になって頂きたいテキストが以下。
- 歪曲した防壁
- 周囲の大気に歪みを与える闇術
- ほんの一刻、スペルを弾く
- 闇術師ギリアには、ただひとりとして弟子はおらず、その業が伝えられた経緯も謎に包まれている
- あるいは闇の術とは、どこか別のところから 生まれたものなのかもしれない
- 歪んだ光壁
- 古い黄金の魔術の国 ウーラシールの失われた魔術
- 光を歪ませ、魔法を弾く
- 光を扱う魔術の中でも、秘術にあたるひとつ
- 基本法則が一瞬に捻じ曲がるとき すべての幻はその行き場を失うのだという
歪曲した防壁 / 歪んだ光壁
同じ効果を持ちながら光と闇という相反する性質を持つらしい両者ですが、魔法のアイコンを見て分かる通り、ビジュアルの面でも似せられていることが理解できます。
ここからは想像です。ウーラシールだけが発現せしめた黄金の魔術。これ、実のところ「闇から光を生んでいた」のではないか、と考えています。
だが、いつかはじめての火がおこり 火と共に差異がもたらされた
熱と冷たさと、生と死と、そして光と闇と
(『DARK SOULS』OP より)
火がおこる前、総ては差異無き灰であり、特に光と闇は強く結びついていたように読めます。むしろその 2 つは同じものですらあったのだと。故に闇とは、相反してなお光に対し最も近い。光を生み出すためには闇を知らなければならなかったと、そういうことなんでしょう。だからこそ闇を禁忌とした時代において光の開発は遅々と進まなかったのかもしれない。一方で気づきを得た闇術師ギリアは、闇の探求の先に光を見出し、しかし本質までは届かなかった。「歪曲した防壁」とはその名残なのではないか……思わせぶりなテキストからは、そんな経緯まで想像できて楽しい。
ウーラシールは闇から光を生み出していた。全くの荒唐無稽ではないと思います。思えばかの国とは、古い人の化物、「深淵の主」と呼ばれる者の墓、その直上にありました。黄金の国とは、同時にもっとも闇に近い場所でもあったわけです。だからこそウーラシールは竜の学院にすら達成し得なかった偉業を果たしたのでしょう。
なぜウーラシールの白木は深淵から生えるのか。きっとそれはかの国の魔術の性質と無関係ではない。黄金の魔術の触媒たる白木が、術理と同様の性質を宿しているのなら、それは「闇を苗床とする樹木」であり、そして同時にそれは「闇から光を生み出す樹木」なのだと発想できます。
さながら黄金樹が、坩堝という巨大な闇から黄金の輝きを生み出したように。
というわけで今回の本題はこれ。「黄金の国ウーラシール」と「黄金律」の間には深い関係がある、そんな話になっていきます。
ウーラシールの白木についてもう少し続けますが、あれは本当に植物由来の植物なのでしょうか。「植物由来の植物」、なにを言ってるのか分からねーと思いますが、どうもこの世界の樹木は、時に人を由来とするんです。
白木女
シリーズを通して人間は呪いで石になったり、鴉や蛆になったりと多くの形態に変わってきましたが、ロスリック城や不死街などでは樹木に変化している様が伺えます。絵画世界の白木女もその一種なのでしょう。気になるのは、仮に特別な人間がいたとして、その人間が変態した蛆だの樹だのは、その特質を受け継ぐのかという点。
ウーラシールとは闇から光を生み出す技術ないし能力を有していた、その仮説を前提としますが、仮にそのような人物が樹木へと変態したならば、それは「闇から光を生み出す」特別な樹木になるのでしょうか。『DARK SOULS 3』の三本の白木は宵闇の杖を由来とするようですが、遡って、その杖の素材となった大本の白木は、果たして人由来でなかったと言えるのかどうか。『3』の白木女とは、実のところ唯の木の枝だと信じていた杖の正体を暗示するために登場していたのではないか。
黄金樹女
ところ変わりマリカを描いたものと思われる絵画を見るに、彼女がそのまま黄金樹と化したような描写がなされています。これは比喩表現なのかもしれませんが、案外事実を描写しているとも受け取れます。現に彼女の娘であるミケラは聖樹へと至る、その道半ばでした。人を核とし樹木が生まれる。ミケラのそれは黄金樹の成り立ち、その「なぞり」であったと考えるのが妥当でしょうか。
もっとも女王マリカは黄金樹と並列して活動していたようなので、それが黄金樹の中からニョキリと姿を現した彼女のアバターのようなものなのか、ある程度まで成熟すると樹と自らを切り離し活動できるようになるのか、その辺は分からないものの、ミケラがそうであったようにマリカもまた自らを核に黄金樹を育てたというのは想像しやすいでしょう。
また彼女の子だというデミゴッドや褪せ人たちは不思議に樹木のような性質を宿しています。「接ぎ木」や、死亡時に落としたルーンが苗木のような様であることなどから分かる通り、植物の性質を持った者から生まれた故、彼らは植物としての性質を併せ持つ。
ウーラシールという国は、なぜ深淵を生み出すほどの怪物を直下に抱えていたのか。ただの偶然や運命の悪戯でないのなら、そこには作為があったんでしょう。ウーラシールに纏わるもの、魔術や人、樹木が闇を吸い上げ光に変え得るなら、その効能を期待されて、かの国は深淵の上に、闇への対策として置かれた、もしかすればそんな思惑があったのかもしれない。いつかその忌まわしい暗闇が、輝かしい黄金へと変わってくれますように。
結果としてその目論見は世界蛇の暗躍により失敗に終わってしまったわけですが、もしも、ウーラシールの血筋や技術は絶えておらず、「闇を光に変える」稀なる特性が時代を経ても残り続けていたのだとすれば。その特性を宿した者が、同じ特性を持つ植物に成り得るのだとすれば。だからこそ女王マリカは選ばれ、狭間の地に黄金樹は聳え立つことになったのかもしれません。
てなわけで結論を言います。
女王マリカ。稀人であるという彼女は、即ちウーラシールの末裔だと考えています。
- 稀人のルーン
- 稀人は、かつて狭間の外からやってきた
- 女王マリカの同族であるという
『ELDEN RING』のみを掘り下げる場合、女王マリカの正体は未だもって不明瞭な部分が多い。今後の DLC で明かされることが期待されますが、大方の考察として、「かつて神肌の使徒たちを率いマリケスに敗れた」という宵眼の女王とマリカを同一視する向きが目立つでしょうか。当サイトでは、そうかもしれないし、血縁の可能性もあるかもね、くらいに記述を留めている(わかんないから)んですが、シンプルな発想として、「宵眼」とは「宵闇」に連なる名前なのだと思っています。
- エリザベス
- 「…でも宵闇様はもういないわ。古い人の化け物、そのおそろしい腕に連れ去られたの」
- 黒炎の儀式
- 使徒たちを率いた、宵眼の女王
- 彼女は、指に選ばれた神人であったという
マヌスとは「腕」を意味する言葉であり、かつて宵闇は「腕」の化物に連れ去られました。方や狭間の地で大いなる意志は「指」を使わせ宵眼を選んだのだと言います。このサイトでは頻繁に「ウーラシールの再来」という言葉を使用している気がしますが、『ELDEN RING』とは非常に巨大な規模で行われた「再現」だったのかもしれません。その繋がりを示唆するため、「腕(指)」が標的にした女性たちとは、共通して「宵」の名を冠したのだと、安直ではありますがそう考えてみると非常に面白い。
闇とは火を求めるもの。だから闇を本質とする人はソウルを求めてしまう。「欲しい」という想念の具現が「腕」を形作るなら、案外、マヌスの目的もまた黄金を得ることにあったのでしょうか。しかしそれは果たされなかったわけです。あの地には最初の監視者と、その意志を継ぐ者がいて、そして何よりも「エルデンリング」が存在しなかったのだから。
そんなわけで宵眼の女王、いずれお目にかかってみたいものですが、きっと金髪だったのかなと思います。
永遠の女王マリカ / ウーラシールの宵闇
- 擬態のヴェール
- 古い黄金の魔術の国 ウーラシールの失われた魔術
- FP を消費して、様々な物体に擬態する
- ゴドリックが、王都ローデイルを追われた時 大量に持ち出した秘蔵品のひとつであり「マリカの戯れ」としても知られる
- 擬態
- 古い黄金の魔術の国
- ウーラシールの失われた魔術
- 場所にふさわしい何かに変身する
- それはかの国の正式な魔術ではなくある少女が悪戯に生み出したものだという
- 宵闇の森で、ただ孤独を癒すために
悪戯好きは、血筋のせいだったのでしょうか。
あるいは女王の座とは、永遠の孤独であったのか。
ああ、そうそう。欄外の余談として読んで頂きたいのですが、『ELDEN RING』にも「照らす光」に該当する魔術が存在しました。
- 星灯り
- 魔術学院レアルカリアの輝石魔術のひとつ
- 小さな星灯りを浮かべ、周囲を照らす
- 足を止めずに使用できる
- 学院を離れ、旅立つ魔術師に与えられる魔術
- 星の無い夜、空の見えぬ地下、囚われの牢獄
- どこであれ、星は魔術師の側にある
ソウルシリーズからしてそうですが、『ELDEN RING』にはアイテムテキストの修正が多く散見します。上の引用は現バージョンのものですが、攻略 wiki 曰く元々は『光を生み、周囲を照らす』と記述されていたようです。『小さな星灯りを浮かべ、周囲を照らす』の部分が修正されたのでしょう。
これを「光を生んでいるわけではない」、「光であるように見えるが、別物である」と読むべきなのか、『DARK SOULS』そのままの表現を『ELDEN RING』風に味付けし直すための修正だったのかは与り知らぬところ。しかしながら、ここまで読んで頂いた仮説を踏まえてみると、何とも味わい深い。
歴史上、ただひとつ光を生んだ黄金の国の魔術。光へと至る道は、まだまだ暗く、険しい。
まだ続きます。今回で終わらせるつもりではあったのですが、予想より長くなってしまった。それではまた。少なくとも DLC の前にはお会いしましょう。