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劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』

知り合いが『ワンピース』好きで、『FILM STRONG WORLD』から『FILM Z』、『FILM GOLD』、『STAMPEDE』と観てるんですが、その中だと本作が一番滅茶苦茶な内容で面白かったです。過去作を振り返ってみると、全作当然ながらきちんと筋道だった起承転結で物語が展開されていた気がするんですが、どうにも「承」が退屈だった覚えがあるんですね。何だったら「起」も「転」も「結」も所々間延びしていたように感じられて、「思い切って 30 分くらい削ればもっと良くなるのに」とか偉そうに考えていた記憶があります。それを思うと「退屈な起承転結」より「ぶっ壊れた起転転転転転転転転結」の方が娯楽としては正しいんだなと。「オールスターもの」って事で「キャラクターが登場するシーン」の継ぎ接ぎで話が転がっていくんですが、それでお話を作るのはやっぱり難しいんでしょうね。「『ワンピース』版『アヴェンジャーズ』をやってくれ」というお偉いさんからの依頼があったと考えるのは邪推が過ぎるでしょうか。ただそれでも「観ているものを頭で理解する間もなく展開がころころ転がっていく」というのは、それはそれでお祭り感があって楽しく、出来が良くなくとも「無茶苦茶」をやって客を楽しませる事ができるのは『ワンピース』が積み重ねてきたもののポテンシャルなのかなと思いました。

強いて不満をあげるなら対バレット決戦のくだりで各勢力の実力者が集う展開。いまいち燃えが足りなかったのは、やっぱり「頭数それだけ?」って気持ちが強かったからでしょう。全員それなりの猛者とは言え、その人員でなんとかなっちゃうなら、バレットってその程度の敵だったんだなという感想になってしまう。それこそミホーク級の最強格をばんばん投入して、それでも決め手に欠けるくらいのバランスの方が面白くなったとは思うのですが、やっぱり本編で底が知れないキャラクターの限界値を提示するような事は避けたのでしょう。本作に限らずジャンプ原作系映画の目立った欠点とも言える。そう、だからこそボア・ハンコックは凄く良かった。「王下七武海」の一角であり、原作でも一応誰かと戦って苦戦する描写も無かった筈の明確な「底が知れない強キャラ」の一人だったと思うのですが、そんな彼女がバレットに全力の蹴りをいれてその硬度に戦慄する。これですよ。こういう描写を重ねてくれると気持ちが沸き立つ訳です。「やりゃあ出来るんだから、もっとやってくれればいいのに」 本作の感想を一言に集約するなら、それですね。

ちなみに以前「ワンピースの正体」について書いた事があるので暇な時にでもどうぞ。

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