その夜渡り人形は復讐をする
2025.09.23
レビュー記事を書きました
『エルデンリング ナイトレイン』のレビュー記事を書きました。
クリア自体は大分前に済んでいるんですが、「糸の端」を未取得なのにクリアしたと言えるのか、いや普通に言えるでしょうけど、何か負けた感じがあるなと思いながらタラタラ書き進めていたら結局取れないまま書き上がってしまった。ちなみにまだ出てません。
あと各キャラ雑感のところに「無頼漢は堅くて強い」ってなことを書いてるんですけど、過去作を遊んでると御存じの通り、近接キャラは相当うまいことやらないと、高周回では「ワンパンされるのに突っ込むしか術が無いキャラ」に成り果てます。深き夜ではどうだろう、と思ってたら、見事にそうなってるっぽい! 現状深き夜はあんまり遊べてないんですけど、深度 1 で大分マズい気配が漂ってるのを感じっぜ。
『着せ恋』文化祭編いいよね。
『その着せ替え人形は恋をする』。最近アニメの 2nd シーズンが終わりました。麗様編、もとい文化祭編を観て改めて原作読み返しましたが、いいですよね……このあたり。少数しか把握してなかった主人公の特殊な技能がクラス中にバレて一挙にヒーローに!? という、古来から続く夢がここにある。「凄さ」を殊更に主張しない五条くんと、「凄いでしょ!」を一切隠さない喜多川さんのタッグが主体と客体のバランスを上手く取っていて、謙遜と自慢の美味しいところを臭みとか無く一緒に口に運べるのがこの作品の強みだと思います。
文化祭編の良いところは沢山ありますが、やはり公開メイクのくだりは特に良い。どこまで意図してのことかは分かりませんが、原作だと柄シャツを着た喜多川さんの腕と胴体が一体化して見え、その様相は、さながら頭だけの雛人形が筒から突き出しているよう。そしてこれまでのように職人の技術をコスプレに転用していた五条君の意識が、ここでは完全に頭師「そのもの」となる。一気に張り詰める場の空気。何か面白そうだからと見学に集まったクラスメイトたちが、眼前で行われる「仕事」に、一斉に息を飲む。うーん、良い。
作品タイトルの「着せ替え人形」って直感的に喜多川さんのことだと理解できるじゃないですか。そして続く「恋をする」という文言から、それはあくまで喜多川さん視点でのタイトルだったと思っていたのですが、この公開メイクの場面で「五条君にとっての」着せ替え人形という視点が改めて入ってくる。タイトル回収の場だと思う。
場合によってはヒトに対しあまり使うべきで無い「人形」という表現ですが、人形をこよなく愛する五条君が喜多川さんを人形として見る、ここにどれほど愛情が注ぎ込まれているか、言葉にするのも無粋というもの。
だからこそ、この後も格別なんですよね。本番。壇上での一連の麗様お披露目は言うまでもなく、その完璧な「綺麗」に五条君は見惚れ、また彼女と自分の間にある距離を実感します。職人とは孤独です。仕事を評価されることはあっても、人形そのものが注いだ愛情を返してくれるわけではないし、常に自己評価と相対するクリエイターの闘いに終わりはない。五条君は人形に向かって語りかけてしまう、職人の中でも取り分け変なタイプだとは思いますが、実際に言葉に出すかどうかの違いだけで、職人というのは皆同じく、一方通行の会話を投げかけているのかもしれません。だからこの時も、壇上で光を放つ喜多川さんに対し、孤独に感嘆の表明を行おうとする五条君だったのですが……この時、あり得ないことが起こります。
「注目ポイントはどこですか!?」
「ごじょー君が作ってくれた衣装とメイクです!」
『その着せ替え人形は恋をする』 - 8 巻
ものを言わないはずの人形が言葉を返したのです。「最高の仕事だ」と。それを受け取ってしまった五条君の表情が、もうね、グッとくるんですよ。
『着せ恋』、良い作品です。未読・未視聴の方は是非。
あとこれはアニメの現行範囲から外れた先の展開についての話なんですが、ここからは凄いことになります。ここまでは喜多川さんの「これが着たい」を五条君が形にする運びになっていましたが、ここに五条君の「これを作りたい」というエゴが乗っかります。するとどうなるか。コスプレイヤー喜多川海夢、人知を超える。残り話数を 3rd シーズンでやるのか、豪勢に劇場版で完結させるのかは分かりませんが、楽しみに待つこととしましょう。生きる理由は多い方が良い。
『スーパーマン』(2025)
この記事を読んで、最新のスーパーマンがパンツスタイルに回帰した理由を知ったのですが、まあプロレスの美学は分からんし、アメリカの人たちほどスーパーマンへの造詣も深くないので「そんなもんか」くらいに思っていました。でも本編を観て、理解できた気がする。
終盤でスーパーマンがビルに押しつぶされそうになる民間人を助けた後、自身はその倒壊に巻き込まれる。助けられた後、心配そうに背後を振り返る女性。スクリーンいっぱいに広がる砂煙の中、ポツンと、しかし堂々と姿を現すスーパーマン。灰色のスクリーンにその赤い衣装の映えること……。これなのだと思いました。人を救い続ける無敵のスーパーマンを気遣う民間人に「大丈夫」と示すために、彼のパンツは赤くある必要があった。
ただ素朴に「優しくある」ということが、いつの間にかこんなにも難しくなってしまった世の中で、スーパーマンは誰よりも優しい。しかし か弱き一般人だって、スーパーヒーローの身を案じる優しさを持ったっていい。我々が倒れたビルの跡にヒーローの姿を探すと信じているからこそ、彼のマントは赤く翻るんです。
劇場版『鬼滅の刃』 無限城編 第一章 猗窩座再来
無限列車編の時に「30 分削ってくれ!」と願いましたが、「うるせえ!」と強い力で殴り返されました。長いって! 3 時間はさァ! 内容もテレビ放送の 8 話 9 話分を劇場版の尺に合わせて繋げた感じで、再編集して分割放送するのがやり易そうな作りですわね。今回に限らずアニメ版全編に渡るテンポの悪さ・冗長さには息を飲んでしまうところなんですが、戦闘シーンと過去回想の反復横跳びで 3 時間やり通した堂々たる立ち居振る舞いにはもう白旗を上げるしかない。これがあとニ編続く。覚悟を決めるしかないんだ。
ただ冗長であるという点を除けば内容はメチャ良かったんですよね。メチャ良い漫画のメチャいい部分なのでそりゃあそうよ。ufotable お得意の、圧巻の戦闘! そして猗窩座戦でいきなり舞台とステージライトが出現する笑っちまうようなブチアゲ方とか、こういうのを観る為に劇場に足を運んだのだという感慨はありました。