『Demon's Souls』と『DARK SOULS』は同じ世界の出来事であるッッッ!
そんな反社会的与太話が吹聴されている事実を皆様は御存じでしょうか。おはようございます。日々を地道な労働に、そして陰謀論の撲滅に捧げる ACID BAKRY でございます。今回は唾棄すべき「『デモンズソウル』と『ダークソウル』が同一世界説」を真っ向から斬って捨てると共に、そのような妄言を流布する冒涜的畜生めらを完膚なきまでに叩き潰すべくこの記事を執筆することを決定いたしました。御期待ください。
ACID BAKERY 、嘘は申しませぬ。
今回は最後の地、腐れ谷を取り上げます。当時のプレイヤーに衝撃を与えたソウルシリーズ名物の「毒エリア」ですが、その後様々な作品にも必ずと言っていいほど「今回の腐れ谷」は登場し続け、プレイヤーに笑顔をもたらしてきましたよね。後々のインタビューでも宮崎社長は「気づけば毒沼を作っており自分でも止められない」などと証言しており、社長の趣味であることは間違いなさそう。ただ勘違いしないでほしいのですが、ソウルシリーズ以前の『キングスフィールド』『シャドウタワー』、『アーマードコア』などにも「毒エリア」は存在しています。つまり「毒沼」「毒エリア」は現社長の趣味以前にフロム・ソフトウェアの「社風」なのであり、単純に毒沼好きの会社に毒沼好きの男が入社して毒沼好きの社長になっただけなのでしょう。
そんな毒エリアですが、ソウルシリーズなどで扱われる場合において、大抵は「最も深い場所」として扱われます。そうでなくとも、汚いもの、捨てられたものが「最後に行き着く場所」として描かれてきました。要は差別や忌避を描く舞台装置でもあったわけです。
ここでもう一つ合わせて考えてみたいのが、「深い場所」はそれだけで闇の集積地になること。
闇
- 「人間性」と深い関わりがあるらしい。 或いは同じもの。
- 「闇の貴石」により変質強化した武器は信仰補正を持つ。この事実と聖職者が多くの人間性を溜め込んでいたことは無関係ではなさそう。
- 人間性はアイテム発見率に直結する。 同じく発見率に関わる 「運」 は、曰く 「人間の本質的な力」。 人の本質、即ち「人間性」である。
- 闇の魔術に見られる特徴として、「生命を追い」、そして「重い」。人の内にある最も重いものだという「人の澱み」とは、つまり人間性そのものか、近しいものと読める。
深淵
- 深淵もまた闇である。
- ただしウーラシール民がそうであったように 深淵の闇は人間性の闇すらも暴走させる。「よりおっかない闇」と言える。
深み
- 深みもまた闇である。
- しかし深み派生した武器からは能力補正が消失する。曰く 「人智の届かぬ暗闇」 であるそれは、同じ闇でありながら人の闇すら暴走させる深淵の在り方に通じる。
- 「深みのソウル」とは深みに沈み溜まったソウルだという。大主教マクダネルは聖堂に澱む暗いソウルを「世界の底」と称した。推測するに、深みとは特定の場所や深度を指すというより暗いソウルが澱んだ場所を「深み」と呼ぶのではないか。つまり暗いソウルが澱んでいる、その事象そのものが深みを深み足らしめていると言える。
- 「人の澱み」がその重さ故にどんな深みにも沈むのなら深みのソウルとは「濃く溜まった人の澱み(≒人間性)」と言い換えられるかもしれない。仮に深みと深淵が同質の存在だと解釈するなら、人間性が濃く溜まった場所は「深淵」化する。
- 転じて人間を多く喰らい、人間性を多量に溜め込んだ者がいるとすればその者の肉体はそれ自体が「深み(深淵)」と化していると考えていいかもしれない。
- おぞましい人喰いで知られるエルドリッチ。またの名を「深みの聖者」と言った。
別所でも使用した「闇」と「深み」についての箇条書きですが、掻い摘めば、闇が濃く溜まることで、そこは場所を問わずに「深淵化」……つまり「深み」になる。だから多くの人を食べたエルドリッチは彼自身が深みと化した訳ですし、深淵を宿した血液を用いれば、それは人々の人間性を暴走させる。これは後に血の医療と呼ばれます。
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しかし場所を問わずとは書きましたが、闇は「重い」ために、やはり物理的に深い場所を目指すのが自然の成り行きです。聖杯ダンジョンが深度を増す毎に神秘を濃くするのはそれが理由なのでしょう。余談ですが神秘の探究者にとって発狂は「あるある」だそうですが、深みが人間性を暴走に導く事と無関係ではないでしょうし、同時に人が血を飲むことで狂いを鎮めるのは、人血によって人間性(理性)を補填しているからです。「我ら血によって人となり、人を超え、また人を失う」。
深い場所に闇は溜まる。だからこそ深みはそれだけで闇に関する幾つかのルールを適用することが可能になります。それは「虫や毒の苗床となる」といったものです。
- 闇の霧
- 人間性に近しいはずの闇の霧は だが、人にとっては恐ろしい毒となる
- 多くの人が、よく人を蝕むがごとく
- 蝕み
- 蟲の群れを召喚し、敵を蝕む
- 深みに潜む蟲たちは、小さな顎に牙を持ち 瞬く間に皮膚を裂き、肉に潜り込む
- それは激しい出血を伴うという
人間性が火守女の魂を「蝕んで」いたように、そしてクラーグの妹が背負う卵が人間性の揺り籠として、やがては虫を生み出していたことからも、人が持つ闇とは虫のようなものであり、実体を得れば虫そのものとなります。深みを寝床とする「おぞみ」とはつまり実体化した闇。それは時に牙持つ蟲の群れであり、霧であり、そして形態を問わずそれらは「蝕もう」とする性質を有するのでしょう。
また『DARK SOULS 3』、妖王オスロエスの庭では人の膿なる怪異が跋扈していましたが、あれは不死たる人が溜め込んだ呪い(死)を遂には溢れ出させたものと読んでいます。
- 幽鬼のトーチ
- ファランの幽鬼たちが用いた戦松明
- 灯具であると共に、武器としても作られている
- ある種の深淵は、人中を膿で満たすという
- 炎は、古くそれに対する有効な手段であった
幽鬼のトーチ曰くの「ある種の深淵」とは、底なしに深い、人に開いた暗い穴を指すのでしょうか。
- 暗い穴
- 不死人の証にも似た暗い穴。
- ぽっかりと体に開いている。
- その暗い穴に底は無く、人間性の闇が徐々に漏れだし引き換えに呪いが溜まっていく。
- それは決して消えぬ呪いの印であるが、かつて一人の、深淵から戻った火防女だけがその呪いを癒したという。
人は死なないのではなく、本来一度きりであるはずの死を溜め込むことが出来る種族です。故に死後も動き続けるようですが、「死」と内にある「闇」が交換関係にあるのなら、つまり死ねば死ぬほど人の闇は失われていくということ。古くは「人間性を失う」という形で表現されていたわけですが、恐らく、果てしなく失い続けた闇は死と引き換えに周囲に溜まり続けていくのでしょう。妖王の庭が猛毒の沼となっていたのは、要するに不死から漏れ出した闇が周囲に溜まり続け、遂には毒性を帯び他者を「蝕む」ようになった、そういうことなのだと思います。
闇は形や名を変えて人を蝕むもの。霧であり、蟲であり、そして「疫病」と。深度を問わず闇が澱む場所を毒地とするのなら、それが深い谷底であれば尚更でしょう。
腐れ谷は深い闇の集積地であり、故に疫病の蔓延地でした。
ところで腐れ谷 2 番目のボス「不潔な巨像」ですが、こいつ自身に説明はありませんでした。一体なんだったのか。
- デーモン「不潔な巨像」の残した要石
- 毒クラゲと大ナメクジの棲む沼の奥には すべての不浄を飲み込む地溝があり デーモンを奉る腐れ木の神殿が作られていた
- 貧しき人々は、そこで進んでソウルを献じ 苦痛をもたらす思考から自由になる
不潔な巨像との戦闘エリアは神殿だったらしいので、巨像はご神体か何かだったのでしょうか。
- ウィッカーマン
- ウィッカーマン(wicker man)とは、古代ガリアで信仰されていたドルイド教における供犠・人身御供の一種で、巨大な人型の檻の中に犠牲に捧げる家畜や人間を閉じ込めたまま焼き殺す祭儀の英語名称である。
wikipedia より引用
有識者から御指摘頂いて把握できた事ですが、元ネタはたぶんこれだったんでしょう。不潔の巨像とは、要は人の死体を詰め込んで作られていたわけです。で、何を思い出すかと言えば『DARK SOULS 2』の「腐れ」ですね。腐れと表記されたときに腐れ谷を思い出したプレイヤーも多かったと思いますが、或いは製作サイドもそのつもりだったのかもしれません。いまいち正体の判然としない巨像の正体とは、まさに腐れた遺体の集合体だと示唆するための。
更に『DARK SOULS 3』の「蝕み」を見た時、不潔な巨像のハエ飛ばしを思い出した方も多いはず。
『デモンズソウル』の方の画質が終わってますが「蝕み」比較
たぶん本当に蝕みだったんでしょう。エルドリッチが多くの人を取り込むことで自身を深みに変えたのなら、人の死体の集合もまた深みと成り得る道理です。そして蝕みとは深みを寝床とするもの。エルドリッチの蕩けた肉体が蛆に塗れていたように、ラトリアの囚人から作られた肉塊から人面虫が湧いたように、人の遺体を詰め込んだ巨像もまた深みを宿し、蝕みの寝床となっていたんです。
火の時代が終わり、それが闇の到来を意味するなら、礼賛すべき太陽の光が失われてしまったことになります。空を見上げて輝くそれは、火の時代のように神聖なものではないのでしょう。『Bloodborne』の星輪樹の庭でひまわりに似た星輪の植物が、まるで日の光を見失ったかのように不揃いに咲き乱れるのはその暗示だったのでしょうか。
さて『Demon's Souls』には敬虔な祈りの指輪というものがあります。この指輪は奇跡を強化するものであり、しかしその真価はモーションの変化。
太陽あれ
太陽礼賛ですね。聖女アストラエアが天啓と共に得たというこの祈りの形。そんな彼女が日の光も届かないような谷底で汚物に身を浸し、忌み人たちの救いとなることを選んだのは皮肉なのか、或いは自身が放つ輝きを自覚したからこそ、彼女は谷底を照らす聖女になろうとしたのでしょうか。
そんな乙女アストラエアのソウルはプレイヤーに「ブルーブラッドソード」なるものをもたらしました。
- ブルーブラッドソード
- デーモン「乙女アストラエア」のソウルから生じた白鉄の直剣
- 人が生まれながらに持つ本質的な力により 威力を増す、「本当に貴い者の剣」
- アンリの直剣
- 火の無い灰の一人、アストラのアンリの愛剣
- 亡国アストラにあって、最も鈍らとされたもの
- だがそれは「本当に貴い者の剣」であり 人の本質的な力、運により攻撃力が高まる
この「運」によって強化される剣は『DARK SOULS 3』にも登場したわけですが、この人間の本質である運とは何か。人間の本質、言ってしまえば「人間性」です。
人間性とは、人の本質、人らしさの象徴です。
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ウーラシールがそうであったように、深淵、深み、「より色濃くなった闇」は人間性の闇を暴走させます。腐れ谷もまたある種の深淵であったなら、その底に身を置きながら、狂わず、それどころか捨てられた者たちの救済者たらんとした聖女アストラエアの「人間性」とは如何ほどのものだったのか。ブルーブラッドソードとはまさしく、乙女の理性の証明でした。
また余談になってしまいますが、『DARK SOULS』の幾人かの NPC、ソラールやオスカー(上級騎士)、そして『3』アンリもまたアストラという国を出身地とするようです。
アストラの貴族顔 : 美形の貴族顔、アストラに多い
『DARK SOULS』キャラクターメイク画面より引用
ブルーブラッドソードやアンリの直剣のテキストにあったように、人の本質を「貴さ」と称するなら、アストラと紐づけられる「貴族」とは、この「貴さ」に掛かっているのでしょうか。
既に亡きアストラ(星)の名を持つ国は、つまり人間性に富む者たちの地だったとも言え、だとすれば乙女が「アストラ」エアの名を持って生まれたのも必然だったのかもしれません。
『DARK SOULS』墓王ニト前で無限湧きする骨の赤ん坊を覚えておられるでしょうか。
ニト前の骸骨ベイビー
あのスポットで人間性稼ぎした方も多いとは思うのですが、あれらの正体については以前やりました。これについては過去にラジオ『ゲームの食卓』に御出演なさった宮崎社長が言葉を濁していたことも併せ、水子、つまり幼少期に死亡した子供が地の底であのような姿になっているのではないかとの説もあるようです。それもアリだとは思うのですが、個人的には、あれもまた「蝕み」の一種だったのかなと考えています。
- 闇の貴石
- 楔石が変質化したという貴石。
- 主なき人間性に生じるもの。
- 闇の武器は闇攻撃力を持ち信仰による補正も高くなる。
元が同じものだからか、闇と光の武器は共に信仰によって強化されます。言い方を変えるなら、太陽への信仰がそうであるように、闇もまた祈りを何らかの形で聞き届けてくれる性質を持つわけです。そしてニト前のあの水場には、既に白骨死体たちが多くばら撒かれており、恐らくニトの信仰者であった彼らは祈りながら朽ち果てていました。
死ぬときは祈りながら
もう一つ。
- ソウルの大澱
- 永い間、深みに沈み溜まった暗いソウルの大澱を放つ魔術
- 深みから這い出る湿り人たちには 時に大澱が憑依しているという
- それはとても、人に似ている
巨人墓場の底という「深い場所」に澱んだ人間性の闇は、それが人間から零れ落ちたものであるが故か、死者に対する祈りに感応したからか、或いは両方か、結果として「人に似た骸骨」としてあの場で誕生したのだと推測します。赤子骸骨が噛みつきを用いるのは、あれらもまた深みを寝床とする「牙持つ蝕み」の一種だからであり、そして闇を由来とするが故に毒を持っていたと考えれば帳尻は合うでしょう。
だから、腐れ谷の底で延々と湧いた真っ赤な赤子たちも、多分同じ。
谷底の疫病ベイビー
あの場所には汚物や疫病と共に、祈りもまた渦巻いていた。谷底に澱んだ闇が、きっとそれを叶えたんです。
フロム・ソフトウェア伝統のムーンライトは『Demon's Souls』にも登場しました。対象の盾を無視するパッシブな特性を持つ一方、「奔流」を持たない一風変わった月光です。
- 月明かりの大剣
- 月明かりを映す伝説の大剣
- 月光の騎士ビトーの名と供に広く知られる
- 現存する、数少ない神の啓示物のひとつ
- 青いクリスタルの刃はただ光にすぎず 故に盾などで防ぐことはできない
『現存する、数少ない神の啓示物のひとつ』だというそれは、腐れ谷の中腹でこのような有様でした。
ナメクジまみれ
なにこれ。なんでこんなことになってんのという話ですが、この手の軟体生物は魔法の力に惹かれるというのが、現状の考えの一つです。
- 白くべたつくなにか
- 真っ白な蝋状のねばつくなにか 右手の武器に塗り、魔法効果を付与する
- 光水に浴した、ナメクジの老廃物であるという
光水に浸かっていた影響でしょう、祭祀場のナメクジだけが魔法属性のエンチャントアイテム「白くべたつく何か」をドロップしました。光水が魔法に由来するものなら、同じく魔法属性を帯びる月明かりの大剣に群がるのは、ナメクジたちが何に引き寄せられているかを推測する指標になるでしょうか。
しかしあえてこの仮説を突っつくのなら、より魔法が色濃く思える塔のラトリアにナメクジが湧いていなかったのが気になります、しかし『DARK SOULS 3』で登場した際にもナメクジは毒沼に涌いていましたし、あれら巨大な軟体どもは水気を好むのかもしれません。血液や光水がそうであるように、ソウルとは水に溶ける性質を持つようで、ある種のナメクジを引き寄せるのでしょうか。陸上生物とはいえナメクジも貝ですからね。
ちなみに付け加えておくと、ファランの城塞には「古老の種火」があり、これは武器を結晶・祝福・深みの三種に変質強化させるものでした。そして光に過ぎないとはいえ、月明かりの大剣とはクリスタル(結晶)で出来ている。城塞自体が腐れ谷のオマージュであろう点に加え、水と結晶、或いは魔法が揃った場所にナメクジたちは引き寄せられる、そんな視点を持ってみても良さそうです。
懐かしき「肉斬り番長」の名で親しまれた赤霊がいましたが、彼女の系譜もソウルシリーズにおいては皆勤賞と言えるでしょう。病み村の「人食いミルドレット」、クズ底の「肉断ちのマリダ」、生贄の道の「狂女イザベラ」と、段々毒沼からは離れていますが、この系譜は『ELDEN RING』にも「褪せ人喰い、アナスタシア」という形で登場しました。
これは別シリーズを持ち出さなくとも初代「番長」の武器から類推できることかもしれませんが、彼女がなぜ沼地で人を殺していたかと言うと、まあ食べるためだったのでしょうね。
- 肉斬り包丁
- デーモン「審判者」のソウルから生じた武器
- 審判者の武器そのままに、咎人をうまそうな肉塊に変える
その後の系譜たちも皆一様に、恐らく食べる為に襲ってきている。フロム・ソフトウェアはなぜか女性に人喰いをさせたがるようです。女性だけが可能とする「生命を内に宿す」という行為を、食人描写で表現しようとしているのかもしれませんし、もしかしたら「気付いたら作っている」のかもしれない。
オイちょっと待てと。話が違うだろうと。黙って聞いていれば好き勝手やりやがってと。『Demon's Souls』と『DARK SOULS』は違う世界の話だと宣っておきながら、思い切りやってるだろうと。しかも『Bloodborne』や『隻狼』なんかも持ち出しやがってと……いや、お叱りごもっともでございます。
しかし聞いてください。ここからが本題です。もう一度言いますが、『Demon's Souls』は『DARK SOULS』と同じ世界の話ではございません。ここからその点についての言及となります。
まず考えてみて欲しいのですが、腐れ谷の住人である腐敗人……そもそも何者だと思いますか?
腐敗人とは
根本の部分として、口先が尖ってるんですよ、こいつら。人間なのでしょうか。『Demon's Souls』には亜人種の類は明言されていないはずなのですが(蛸看守は……人間じゃないと思う)、なぜか腐れ谷の腐敗人だけがこのような造形です。なんの説明もないから受け入れてたけど、なに? なんで? 要石に残る、かつて谷を治めたという貧者の長はペストマスクのようなものを装着しているので、住人たちが畏敬の念から模倣したのでしょうか。リメイク版では似た解釈が採用されているようで、マスクとして描かれていますが、旧版だと実際に実際に口元が伸びているように見えます。
先に考えを述べてしまうと、彼らのこれはクチバシなのだと思います。そのうえでこの動画をご覧ください。
腐れ谷の腐敗人とは何者なのか。カラスです。
結論。アリアンデル絵画世界の鴉村。腐れ谷とはそのずっと先の姿であり、谷に住まう腐敗人とは、鴉人(鴉頭)たちの末裔なんです。
腐敗した鴉
「世界絵画説」というものを提唱したことがあります。
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お嬢様に求められるまま火と顔料を用意すると、彼女は「暗い魂」を使って新たな世界を描き出します。名を問われ、答えなければ「火の無い灰」に由来する「灰」の名が画には与えられ、そうして開闢する絵画の中では暗く冷たい「灰」の時代が始まり、やがて「火」が描き足され、その画は次の「ダークソウル」の始まりとなるのです。こうした入れ子構造によって『DARK SOULS』はずっと続いてきたし、これからも続いていく。以上が世界の成り立ち、その概要です。
しかしこの仮説には別の側面もあります。
もしお嬢様に火も顔料も用意できなかったとしたら。新たな世界が創造されないとするなら、その後新たな「灰の時代」は描かれず、その瞬間を以て『DARK SOULS』は断絶することを意味します。一方で火がもたらされなかったアリアンデル絵画世界は燃える事無く、存続し続けていくことになる。
その後、アリアンデル絵画世界は総てが腐れに沈んでいくのでしょうか。都合よく物事を捉えますが、そうはならないんじゃないかと思います。恐らく我々が探索した絵画の範疇は、その全容の一部でしかない。『DARK SOULS』の世界が一枚の絵画で表現されたように、アリアンデル絵画世界もまた、探索エリアの外側には途方もなく世界が広がっていたのではないでしょうか。
「外側の世界」がそうであったように、絵画世界は今後、「腐った場所」と「そうでない場所」に分かれていく。絵画が忌み者の居場所であったのだとしても、その安息地の中であってさえ、迫害する者とされる者できっと分かれていく。差異も差別も無くなりはしないんです。
腐った鴉人たちが暮らすあの渓谷は、絵画の中、「そういう場所」として、あらゆる汚物や捨てられたものが流れ着き、押し付けられ、澱んでいくことになるのでしょう。そうして後世、その場所は「腐れ谷」と呼ばれることになります。
火と顔料が無ければ新たな世界は描かれず、代わりに、腐った絵画世界は全く別の時代を重ねていく。『DARK SOULS』が存続する世界で『Demon's Souls』は興らず、『Demon's Souls』が興る世界で『DARK SOULS』は断絶する。
だから『Demon's Souls』と『DARK SOULS』は違う世界の話なんです。
ソウルシリーズ時系列 - 超簡易版
ちょっとややこしいかもしれないので、色々省いた超簡易版が以下。
ソウルシリーズ時系列 - 超簡易版
ちなみに正規版もあるのですが、ちょっとどうかしている上に未完成なので見なくていいです。
この「分岐説」が正しいのなら、一部仮説を考え直す必要が出てきます。
関連記事 : 北の国から - 契 - (1)
過去、通称「北の巨人の要石」は噂通りロードランだったのでは、という可能性を提示しましたが、『Demon's Souls』と『DARK SOULS』が別世界ならそうはならないでしょう。ただし
- 別棟の鍵
- エレーミアス絵画世界の別棟の鍵
- 雪深い絵画の世界は、古い寺院を模しており別棟は倉庫の類であるようだ
このテキストを読むに、絵画世界は「外の世界」をモデルにしていることが伺えます。つまり我々が知らない絵画エリアの外側は、我々が知るロードランなどの地がそっくりそのまま存在するのかもしれず、ならば北の巨人が住んだというエリアが、アノールロンドに似た場所であるといった可能性も捨てきれないでしょう。
『Demon's Souls』と『DARK SOULS』、まったくの別世界でした。
ACID BAKERY 、嘘は申しませぬ。
「古い獣」についてもやっておきたいところですが、過去記事でやっちゃいました。
関連記事 : 火と楔と血の話 07
が、長い記事を読んでくれというのも忍びないので要点を纏めますと、混沌の炎とは信仰・理力、そして人間性の闇によって威力をいや増しました。大雑把に捉えるなら、それらの条件が揃えば、混沌の炎とは灯り得るのではないか。
人の内にさえも。
混沌の炎の獣化者、ローレンス
人を由来とする獣が内に混沌を灯すなら、人はデーモンにすら成り得る。そして混沌がデーモンを生むのなら、究極、人は「デーモンを生むデーモン」にすら到達するわけです。
- 獣のタリスマン
- 古い獣の似姿となる、古木のお守り
- 奇跡、魔法の両方を使用できる
- 神の象徴は、古い獣の似姿にすぎなかった
『Demon's Souls』の奇跡と魔法が、元を辿れば古い獣に行き着いたのは、やはり規格外とはいえデーモンたる古い獣の力が信魔を両輪とする「混沌」に根差していたからなのでしょう。ローレンスが血の医療によるデーモンであったのなら、神が残したという獣もまた、聖職者の獣であったのかもしれません。
元は「はじまりの火」の模倣であったと思わしき暴走の火、混沌。そのものではないとはいえ、しかし「火」より生じたものには違いない。古い獣の傍らにあった黒衣の火防女とは、即ちその「火」をこそ守る為にあったのでしょうか。
最後に「秘匿者」と呼ばれるNPCについて。「ソウルの業を奉じた」という彼女たち。名の通りソウルの業を隠しておきたかったからなのか、メフィストフェレスはユルトや主人公に関係者の暗殺を依頼します。当時も思ったものですが……そんなことしてる場合なんですかね。世界は滅びの瀬戸際なわけです。秘匿者たちの命題がソウルの探究なのか独占なのかは知りませんが、色の無い濃霧に世界が飲み込まれようとしている中、関係者の排除などしている場合なのか。
秘匿者たちにはデーモンの世界で生きていける算段があったのか、そんなことは関係のない境地に達しているのか。一切分かりませんが、彼女たちについて考える上でとっかかりとなりそうなのが、過去記事で申し上げました、「要石がロンドールの技術に依る」という仮説です。
楔の起源
契りと楔
要石は契りの儀式に使用された剣と人頭を彷彿とさせます。仮に両者に関係があり、「契り」が転じて「楔」となったのだとすれば、古い獣の封印や神殿建造の流れにロンドールの影響を想像することが可能です。
ロンドールとは闇の時代の為に火の簒奪を望む勢力でした。秘匿者たちがその流れを汲む者たちであり、獣が宿す火を求めていたのなら、ロンドールのユリアと秘匿者メフィストフェレス両名が共に暗殺を頼んだのは、彼女たちの繋がりをうっすらと示すものであった……のかもしれません。であれば、両名に近い位置に居た「沈黙の長」ユルトと「沈黙の騎士」ホレイスの間にも、何かしらの示唆が与えられていたのか。今後はその辺を考えてみるのも楽しいでしょう。
ということで想定したより(いつも通り)長くなったこのシリーズですが、一旦畳みます。
大事なことを纏めると
- 『Demons's Souls』は、絵画世界の成れの果て。『DARK SOULS』を選ばなかった未来。
この一点に集約されるでしょう。
余談ですが、この世界の神は既に去ったのだそうです。曰く悪意によって、古い獣と一振りの剣を残して。
神の行く先など知る由もありませんが、それは、もしかすれば「世界の外側」なのか、それとも「別の世界」なのか。
描けば生まれる世界なら、その入口も出口も、我々が思うより多くあるのかもしれません。